ログ3 『殲滅戦』
アシストドローンを駆使して周辺にある中で一番大きな木を見付ける。
そこに治療用ナノマシンによって昏睡状態を維持している救助者を隠した。
ただ、このままここに目覚めるまでというのは無理だろう。
裸のゴブリン達が嗅いでなにかを探していたことを考えると、奴らは嗅覚に優れている可能性があるからだ。
どの程度のものかはわからないが、血の匂いを漂わせている俺達に気付かないというのはまずありえないだろう。
今はヘルメットで隔離されているから自分ではわからないが、強化服の嗅覚センサーがかなりの匂いを俺達が出していることを示している。
であるのなら、周辺にいるゴブリン達をまずは殲滅しないと安心して彼を介抱できない。
治療が上手くいっているので今は安定しているが、さて治るのにどれくらいかかるのやら。
物語におけるナノマシンは万能であることが多いらしいが、今の人類が到達しているレベルではまだそこまでに至ってない。
役割ごとの専用機が必要なことは勿論、安全に最大効率で使うには高度な制御が必須だ。
サムライドレスがあれば相棒であるサポートナビ雷火がそれを行ってくれるが、オフラインを確認してまだ一時間もたってない状況ではそれは無理な話だろう。
まあ、多少の安全性が失われるとはいっても内外に腫瘍ができるぐらいであり、効率が幾分か悪くなるといっても全治一日が一週間になるぐらいだ。
うっすらと覚えているナノマシンを体内に入れる時の講習でそんなことをいっていたような?
正直、眠気を堪えながら聞いていたのでちょっと自信がないんだよな。
ちなみに俺のようなアースブレイドの戦士は専用ナノマシンを体内に入れているので、サポートナビの支援なくても誤作動などを起こすことはない。
ん~こういう自分に関することは覚えているんだが、どうしてそれ以外は興味を失うんだろうな? しかも、眠くなるし。
ともかく、少しでも治療効率を上げるためには安静にさせ、外的影響を最小限にしなくてはいけないのは間違いない。
が、かといってさっきと同じ戦い方は極力避けるべきだ。
バックパックに入っているアサルトライフルのマガジンは、装填しているのも含めて三十発が五つ。
既に単発式で三発撃っているので、残り百四十七発か。
拳銃に関しては、ニ十発装填済みの予備が四つの計百発。
ゴブリン達は装備の違いや動きから考えて、ある程度の社会性を持っていることは間違いない。
周辺で確認できるだけなら十分過ぎるぐらいだろうが、後々を考えると極力弾は使わない方がいいだろう。
多少の幸運があるとすれば、相手が切れば死ぬ奴だったことだろうか?
ブレインリーパーは昆虫みたいな見た目の癖に、妙な特性やら兵器らしい能力を持っていたりしたからな。
銃弾が効かないのなんてざらだったあんな奴らに比べれば実にやりやすい相手だ。
が、だからといって油断するのは戦士としてあるまじき行為だろう。
なんにせよ。そろそろか?
強化服のナノマシンが俺に付いた血を分解除去し、ステルス迷彩が正しく機能しているかどうかをチェックする。
なにかしらが付着しているとそこだけが不自然に浮いているように見える。
さっきの戦闘中は返り血を浴びないようにしていたが、流石に怪我人を運ぶ時はどうしようもなかった。
見えないけど匂いで見付かるなんてことを防ぐために、ステルス迷彩機能を持った物には基本的に消臭用ナノマシンも常駐させられている。
よし。問題なさそうだな。
再び姿が完全に消えたこと自分の手足で確認していると、アシストドローン達から周辺索敵完了報告が届いた。
確認できた数は、五十。
全て裸ゴブリンで、俺が殺した連中のところにいるのが半数、残りは向かっている最中といった感じだ。
命じられたこと以外も自己判断できるのか、単純に怖がって戻ったのか。
惨劇の現場を目撃した裸ゴブリン達が、パニックを起こしたようにギャアギャア言っているので後者なような気がするが……どちらにせよ。それを利用した方が効率的だ。
アシストドローン一機にここに戻るように命令しつつ、俺は大樹の上から飛び降る。
腰に付けたスティック爆弾をちぎって小さくしつつ、影響範囲内に入らない距離まで離れて周辺の根や岩に貼り付けていく。
無味無臭なので木の葉などで偽装すれば野生の動物でも気付くことはない。
起爆は脳内ディプレイを使っていつでも。
よし、これで万が一の事態になっても時間は稼げるだろう。
ほどなくしてアシストドローンが帰ってきたのを確認して、駆け出す。
勿論、ステルス迷彩が正常機能する範囲内での速度なので、常人が走るのとほとんど変わらない速度でだ。
どうにも遅さを感じてしまうが、こればっかりはどうしようもない。
本当に開発部にはなんとかしてほしいところだ。
向かうは大樹から一番遠くにいる個体。
途中、不安そうにぶつぶつつぶやいている奴や、何故か大声を出している奴を素通りする。
それぞれに個性があるのは面白いが、なにを言っているのかわからないのは多少不気味だな。
一応、強化服には自動翻訳システムが搭載されている。
これは世界中から国籍人種問わずに人が集まった地球防衛組織内での意思疎通を円滑にするための標準装備だ。
よってどんな言語であっても会話ができ、仮に世に知られていない少数民族独特の言語であってもそれに対する情報を収集すればシステムが勝手に適応してくれる。らしい。
本当にそれを使う事態になるなんて正直考えもしていなかったが……あ~そういえば、これもサポートナビの支援がないと適応化が遅くなるんだったけ? となると、そのせいなのだろうか?
アシストドローン達が勝手に収集しているデータを除くと、多少鳴き声の違いが確認できるだけで言語と呼べるものを確認できていないようだった。
俺自身も獣の鳴き声と全く同じように聞こえるのだが、集まっているゴブリン達の様子を見ていると明らかに会話している仕草が見える。
話の内容が盗み聞ける状況だというのに、それがわからないというのは実にもったいない状況だ。
戦闘において可能な限り相手の情報を習得し、それを活かすのは常套手段だからな。
特になんなのかよくわからない連中であればなおのことだ。
時間があれば翻訳システムの解析が終わるのを待ちたいところだが、流石にそれは状況が許さない。
あれだけの数だ。この近辺で繁栄している可能性がある。加えればメスがいなかった。
だとすれば、どこかに集落もあるのだろう。
現状確認できる範囲内では他のゴブリン達はいないが、このまま放置していれば他の場所にいると想定される仲間を呼ばれかねないからな。
こいつら程度なら百や千いたところで大したことはないが、いかんせんサムライドレスがない上に装備も乏しい。おまけに守らなくてはいけない人がいるのは下手すれば物量で押し切られる。
なんともアースブレイドの辛いところだ。
まあ、
「この刃、ただ人を守らんがために」
苦笑と共に組織の常套句をつぶやきつつ、ターゲットである大樹から最も離れた裸ゴブリンを肉眼で捕える。
そのままそいつの横を通り抜け、その足を辻斬った。
突然両足が切断されたゴブリンは呆けた表情になって前のめりに倒れていくが、地面に落ちると同時に強烈な叫び声を上げる。
それに反応した四十九匹が、一斉に悲鳴がした方へと駆け付け始めた。
うん。こいつらどうやら馬鹿だが、勇猛で仲間想いだ。
実に都合がいい。さあ、そいつの下に集まれ。
大樹から離れさせると共に、散らばっているゴブリン達を一か所に集めていっぺんに殺す。
これがこいつらには最善だろう。
仮に悲鳴で散り散りに逃げ出すのであれば、大樹に一番近い奴を切って行動を縛るつもりだった。
ただ、それだと追い駆けなくてはいけなくなるので、面倒だという問題があるが……
そんなことを思ってちょっとだけほっとしていると、こっちの思惑とは違う動きをゴブリン達が見せ始めた。
ギャアギャア言いながら叫び続ける個体に殺到しようとするゴブリン達。
それが一匹の咆哮でピタリと止まった。
裸の中では一番体格のいい個体だ。
全員が動きを止めたのを確認したそいつは、もう一度吠えて四十八匹を自分の下に集めた。
どうやらリーダーはいるようだ。
……あいつのせいで思ったより大樹から離れていないな。
しかも、組織的行動を未熟なりともし出したことで、一匹一匹斬るのが難しい状態になっている。
斬撃速度はどうしたってステルス迷彩機能の限界を超えるからな。
しかたない。あんまり使いたくはないが……
ちょっと立ち止まって、バックパックから必要な物を取り出す。
アサルトライフルに消音機を取り付け、アルテミスをオンにする。
射撃アシストシステムが反応し、即座に撃つ。
リーダーゴブリンの頭が弾け跳ぶ。
奴を中心に集まり周りを警戒していたゴブリン達が少し間を置いて恐慌状態になる。
散り散りに逃げ始めるゴブリン達だが、流石に悲鳴が続く方向へは行きたくないらしい。
若干の方向制限はできたが、かえって救助者に近付く個体が出始めたのは……少し早計だったか。
自分の未熟さに苦笑しながら、走り出す。
銃の出番は終わりなのでアサルトライフルは戻し、柄に手を掛ける。
それに消音機を付けたからといっても、完全に発射音を消せているわけではない。
科学技術の発展によって普通の人間が聞いても聞き取れないぐらいまでにはなっているが、相手によっては聞こえる音が出ている。
このゴブリン達がどれぐらいの可聴音域を持っているかは知らないが、大きく尖った耳をしているのであれば耳が悪いというのは思わない方がいいだろう。
なので、あんまり過信して撃つのは良くない。なにより弾がもったいないからな。
その数からどうにもため息が出つつ、俺はゆっくり刀を鞘から抜いた。
さて、鬼ごっこの始まりだ。
サムライスーツとアシストドローンを駆使した高速ステルス鬼ごっこは、それなりに時間が掛かった。
大樹から上手く誘導するように斬る相手を選んだりしていたからだが……直ぐには戻らない方がいいか。
戦場を離れた場所にし、移動をコントロールしたとはいっても、五十匹も騒がせた上に血も大量に流されているのだ。
新たなゴブリン、場合によっては別種の脅威が集まってくる可能性がある。
もっとも、それが獣であるのなら大した脅威ではない。
が、結構な範囲をドローンに索敵させているのに、緑色の奴ら以外をまだ見付けていないんだよな。
ん~奴らに狩り尽くされているのか?
もしその可能性があるのであれば、少なくとも人類の管理下にある存在ではないのはもはや確定だな。
現状、再生した自然環境での狩りや採取は禁止されている。
昔は食料として食べられていたみたいだが、ブレインリーパーの影響で核荒廃からの回復は僅かしか進んでいない。
何%だったか詳しくは知らないが、少なくとも全人類を賄えるほどではないとか。
まあ、そもそも、百年にも及ぶ期間で整えられた人工食料生産施設で十分満足できる量と栄養を確保できているので、わざわざ寄生虫やら放射能などの危険がある可能性があるようなのは必要もないってのもある。
それ故にもし再生した自然環境を食べようものなら、重罪に問われ、下手すれば死刑だ。
現状一度も動物を探知していないことを考えると、確実に環境破壊が起きている。
こんなことを人類統治機構が許すとは思えないし、現人類の犯罪率は一パーセント以下だ。
それを成し得るシステムがある限り、許可も得ずに奴らを生み出せる存在は人類以外。
サポートナビ達は論外として、結局、ブレインリーパーしかいないってことになるんだよな。
だが、今まで奴らが送り込んできた生物兵器はどれもが昆虫のような容姿をしている。
それが一度だって変わったことがないのは、百年にも及ぶ戦争の歴史が、なにより俺自身の経験が証明していた。
ん~……考えれば考えるほどわけがわからない奴らだよな……はあ、もうよそう。そもそも俺は頭脳労働に向かない。
大して賢くもない頭を無駄に使うのなら、わからないことではなくわかることに使うべきだ。
そう、例えば今考えていたことから連想して食糧問題。
パックパックにあるスティック型レーションの量は丁度一週間分。
最高のパフォーマンスを出すために計算された量に基づいての一食分なので、節約して食べるというのはするべきではない。
遺伝子改造とナノマシンによって強化されている肉体は、その分だけ必要とする栄養は多いからな。
そして、表示された修復時間はあくまで予測だ。
なにかしらの要因で時間が延びるという可能性を考慮すると、一週間分というのは多少の不安を覚える。
最悪、処罰を覚悟で一人が喰っても大して影響がなさそうな草や木を喰うしかない。
戦闘用強化服には着用者の行動を自動記録するシステムが組み込まれているので、バレないようにってのは不可能だからな。
さっきつい思ってしまったサポートナビに関することもしっかりと確認されるだろう。
……いや、ホント、信用しているからな?
とにかく、できれば自然物なんて食べたくはないし、なにが食用に向くとかここら辺の植生は知らないのが余計に不安を誘う。
まあ、例え毒があっても体内にあるナノマシンによって平気なので、可食域は一般人より広い。
流石に解毒速度より早い奴とかは駄目らしいが……なんであれ、無理は通せる。
第一、自然物を食べることを禁止されてはいても、情状酌量の余地はあるはず。もっとも禁止されている動物を狩り尽くしている可能性がある存在を倒してもいるわけだしな。
そもそも、食わなくてはいけない状況にならなければいいわけだしな。
不幸中の幸いか、今のところ最も警戒すべきブレインリーパーは探知してない。
ゴブリンと勝手に命名している謎の人型生物が目下の脅威となりそうだが……結局、奴らはなんなんだろうな?
結局、考えないようにしていたことをついつい考えてしまう自分自身に苦笑するしかない。
どうせ思考は暇だ。多少の想像をしたところで、俺の警戒が緩むはずもないのでもう頭が欲するままにするか。
若干の無駄さとくだらなさを覚えつつも、思考が赴くままにしてみる。
なんとなく妄想するのは、サポートナビ達に無理矢理見せられた映画だろうか?
テラフォーミングに失敗して生まれた化け物達と戦うとかなんとかそんな奴。
古い作品で当時の未熟な科学技術で考えられた話なので、仲間の一人が「これはコメディか?」と言ったら、サポートナビ達が「SFバトルアクションです!」とか怒ってたな。
そもそも環境調整用や改善用のナノマシンがそういう悪さをするなんて聞いたことがないし、そんなのを使う許可が下りるはずもない。
だが、そう考えるとちょっと納得できなくもないか?
核荒廃から再生させるためにばら撒かれたナノマシンにより、クローンチンパンジーなどが人を喰う化け物になった。
と考えると幾分か納得できる。が、そんなナノマシンが使われるとは正直思えないしな。結局というかやっぱりというか、俺では納得できるものは考え付かないな……ん~……あんまり使わない方面で頭を使っていたせいか、なんだか妙に熱っぽくなってきた。
つくづく知的労働は俺には向かない。
またしても自分自身に苦笑していると、アシストドローンが新たな個体を確認したと報告を上げてきた。
しかも、それは怪我人のいる方の機体。
思わず舌打ちをしてその場所に向かいつつ、なにが来たのかを見る。
「……ゴブリンか?」
それを脳内ディスプレイで確認した時、思わずつぶやいてしまった。
何故ならチンパンジーぐらいの大きさだったゴブリン達より二倍の大きさのある筋骨隆々の個体だったからだ。
これまで目撃したゴブリンとは容姿的に同じ種類なのは間違いないが、そいつはどう見ても別格だった。
その違いは、体格だけではない。
動物や木の皮で作った鎧のようなものを着込んでいることと、その手には己の身長ほどある石の斧を持っているのだ。
それなりの重装備なはずなのに、それを苦としている様子もないことから見た目通りの筋肉なのだろう。
例え強化服を着ていても下手に喰らったらダメージを覚悟しなくてはいけない。
しかも、厄介なことは他にもある。
周りには五十匹ほどのノーマルゴブリン達が追従していた。
装備も先程殲滅した連中とは違い、鎧とまではいかずとも獣の皮や草を着込み、思い思いの武器を持っている。
そして、それぞれの恰好ごとに円を組んでいるのだ。
密度もそれなりなので、ステルスで近付いて斬りまくるという手段は使えない。
そう思いながらそいつらをよく確認する。
一番外に裸のが二十五。その次に木の盾と石の槍を持ったのが十。更に内側に弓を持ったのが十。大型ゴブリンの周りに杖か? を持ったのが五。
……杖が意味わからないが、なんかしらの宗教的な奴とかだろうか?
恰好的にも猪ぽい頭の皮をすっぽりかぶっていたりしているので、シャーマン的にも見える。
どういう集団なのかそいつらのせいでよくわからないところがある。が、計五十一匹が急ぐでもなく、しかし着実に大樹の方へと向かっていた。
彼にかけたナノマシンは治療用なので、優先順位の低い体や服に付着した血の分解除去はまだ終わってないのだろう。
先頭を行く裸ゴブリンが鼻を動かしながら集団を誘導しているからな。
どうする? 抱えて逃げるか? いや、奴らの全速力をまだ確認していない以上、下手にこちらの行動を制限するのはかえって危険だ。
そうなるとリスク的に戦う方がいいか。
奴らの武器は原始的で、それなりに近付いているとはいっても駆け付けるには十分な距離だ。
こっちが気を付けさえすれば戦闘に巻き込まれることはないだろう。
だがだ。
大型ゴブリンが気になる。
例え自分より大きく、人外の筋力を持っていても後れを取るつもりはないが……まあ、ここは定石通りにか。
ほどなくして俺は大型ゴブリン達を肉眼で捉えられる位置にまで来た。
木の上に陣取り、アサルトライフルを構える。
アルテミスをオンに……しようとしたが、脳内ディスプレイに表示しているマップに、今奴らがいるところはスティック爆弾を仕掛けたところだと表示されていた。
使えばかなりの衝撃が発生することになるが……まあ、散々爆発する銃弾を使っているのに今更か。
今使っている弾丸は、爆裂貫通金属噴流弾。Explosion penetration Metal jet。通称EPM弾と呼ばれているものだ。
これは二段構造になっており、着弾と同時に先端から最初の指向性爆発が起こり対象に穴を開け、内側を二回目の爆発が蹂躙する。
ゴブリン達の頭や足が吹き飛んでいたのはこれを使ったからというも大きい。
同時に、人が使える銃火器に搭載できるEPM弾だとそれぐらいの爆発しかできないということでもあるが、その仕組み上、普通の生物に使うには過剰な弾丸だ。
今はこれ以外の弾がないから仕方ないが、着弾時の爆発音がどうしても派手になっていたからな。
さっきは別の場所におびき寄せるという副次目的もあったからよかったが、果たして爆弾とまでとなると考え物だ。
こうも早く別のところから集団が現れるということは、結構な数が探知可能範囲外にいるということ。
出来ればサイレントキルが望ましいが、この距離で一匹一匹倒していくのは下手すれば怪我人のところに辿り着く可能性もある。
なんであれ、これが終わったら移動は確定だな。
そう思いながら俺は木から降り、その陰に隠れると同時に遠隔操作でスティック爆弾を起動した。
集団のほぼ中央で起きた爆発は、五十一匹をまとめて覆い尽くすほどの爆炎と、周囲の木々をなぎ倒すほどの衝撃波を生み出す。
一欠けらでこれなのだから凶悪極まりないが、これでもブレインリーパーの中には効かない奴がいるから恐ろしいところだ。
まあ、あいつらにはやり過ぎ感を感じるが、これが今の最善手であ……嘘だろ!?
爆発に一瞬翻弄されていたアシストドローンが自動的に現場に戻り、その爆心地を脳内ディスプレイに映し出していた。
煙がまだ晴れ切らない中、大型ゴブリンがほぼ無傷の状態で姿を現す。
「まさか……」
嫌な予感に襲われた俺は、木の影から飛び出し、アルテミスをオンにする。
狙うは頭部。
「違ってくれよ!」
予想が外れることを願いながら引き金を引いた。
撃ち出されるEPM弾は狙い違わ!?
大型ゴブリンの頭部に着弾しようとした瞬間、何故かその直前で爆発が起きてしまった。
小さな爆炎が晴れた後に現れるのは、平然としている顔。
その現象に俺は覚えがあったため、思わず口にしてしまっていた。
「サイパワーだと!?」




