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サムライドレスは異世界を駆ける  作者: 改樹考果
ファイル1『落ちた地球の刃』
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ログ11 『ゴブリンナイト・ゴブリンシャーマン・ゴブリンアサシン(前)』

 大型ゴブリンは最初からサイパワーを全開にしてこちらに向かっているようだった。

 直接見ているわけではないが、俺はしっかり奴らを知覚している。

 勿論、木々に阻まれているので五感のどれでもない第六感といえる感覚でだが。

 幾度も、時には命が助かったことがあるほど、それには信頼度がある。

 本音としては視覚的情報も欲しいところだが、アシストドローン達はそれぞれ、ゴブリンの巣とウリス達の上に……いねえし。

 岩山の方はゴブリン王がゆっくりと巣穴に戻っているところだったが、大樹の方はウルグしかいなかった。

 まさかと思って後ろに意識を向けてみると、ほんの僅かだがゴブリン達とは違うサイパワーを感じる。

 駆けながらため息一つ吐き、地面から木の上へ飛ぶ。

 何本かの幹を足場にして木の上に上がり、枝から枝へと渡っていく。

 その際に若干速度が落ちたため、直ぐに後ろから違うサイパワーの大本が現れた。

 と思ったら、なんかいきなり飛び込んできた!?

 反射的に避けると、

 「はにゅ!?」

 見事に幹にぶつかり変な声を上げるウリス。

 「……なにしてんだ?」

 思わず彼女がぶつかった次の木の上で止まると、ゆっくりと俺の方へ首を向けてきた。

 「う~!」

 「そう恨みがましく睨まれてもな」

 「ハヤテ!」

 さほどダメージはないのか直ぐに幹から離れ、俺の隣に飛び移ってきた。

 そんなウリスにあからさまなため息を吐いとく。

 逃がさないようにか手を握っても来るので苦笑もおまけで付けといた。

 「============!? =======!」 

 弓を持ってフンス! と意気込んでいる様子を見るに、まあ、俺が射撃したのを見た後に付いてきたことを考えるだけでも、一緒に戦いたいということなんだろう。

 戦えるのは救出した時に確認しているからさして問題は感じない。

 が、だからこそあの場に残ってほしかったんだよな。

 「誰がウルグを守るんだ?」

 完全に伝わるとは思ってないが、言葉のニュアンスと状況からある程度は察せるだろうとの問い。

 思惑通り伝わったのか、彼女は俺と並んで飛びながら小さな枝を折り取った。

 そして、何事かをつぶやき前方に放る。

 サイパワーを込めた?

 枝に纏わりついた緑のサイオーラを確認しつ重力に捕まって落ちるそれを見ていると、僅かに付いていた葉が一気に増殖し鳥の形になった。

 それは羽ばたくと共に上空へと急上昇し、枝葉に邪魔されて見えない場所まで行ってしまう。

 「なるほど……傀儡系まで使えるのか」

 仲間の中にはAIや動力も積んでいない人形をまるで生きているかのように動かせるサイ現象を扱う者がいた。

 なのでそれ自体には驚きはしないが……サイ技術が別格というか別物過ぎる。

 過酷な環境下で人類統治機構の保護を受けずに生きてきたからこそなのだろうか?

 そんなことを思いながらアシストドローンを周囲に向けると、ウルズが寝かされている大樹以外の木々が微妙に位置を変えていることを脳内ディスプレイ内に表示された。

 肉眼ではないのでサイオーラは確認できないが、動くのかもしれない。

 どれほどの強さであるかは不明だが、それなら通常のゴブリン程度が襲い掛かってきても大きさから考えて問題ないように思える。

 だが、大型ゴブリンは駄目だな。

 杖持ちも怪しい。

 加えてサイ現象で動かしているのなら、探知される可能性がある。

 総じて悪手なのだが……それを翻訳システムなしに説明するのが難しいな。単純なことならなんとなく伝わるのはわかったが……そもそも、それほど時間がないか。

 ここで立ち止まっている間も、三体はこちらに迫っている。

 向こうがこちらの位置をどれほど察しているかわからないが、こちらというか先程射撃を行った場所に向けて動いているのは間違いないだろう。

 予定としてはこちらが動いていることを示すために、巣の方へ接近してからもう一回撃ち込んで大型を誘い込もうと思っていた。

 初撃をウルグがいるところでしなければいいだけの話だったかもしれないが、あの状態がいつ終わるかわからなかったからな。

 アースブレイドの一振りとしては早計だったかもしれないが、反省するより可能な限り早く脅威を排除すべきだ。

 倒してしまいすれば、少なくともこの地域での安全は確保できる。

 仮に一向に現れない他の地域のブレインリーパーが現れたとしても、それだけの動きをすれば流石にアースブレイドが気付くはずだ。

 ……色々とふに落ちないことはあるが、とりあえずそう考えておこう。

 疑問は判断を鈍らせるからな。

 俺はアサルトライフルを背にしまい、代わりに刀に手を掛ける。

 こちらの意図に気付いたのか、ウリスは弓を持って頷いた。

 正直、戦闘ネットワークで繋がっていない相手と連携を取るのは不安があるが、言葉が通じない相手とそういうのを構築する時間はないからな。




 狙撃地点と巣の中間地点で到達した時、不意にサイ反応の一つが消えた。

 多分だがウリスが気付かれた可能性がある。

 彼女は木の上を飛び回るのに微弱ながらサイパワーを使っているようだった。

 強化系のサイ能力でなくても、オーラは纏うだけでも物体や現象は強くなる。

 勿論、俺のサイ能力ほどの増強は見込めず、個人差も大きいのでアースブレイドとしては全戦士の基礎能力向上のために科学的な強化をメインにしていた。

 場合によってはサイオーラを纏って得られるものより強くなることがある上に、こういう時に気付かれ難くする効果がある。

 もっとも、今回の場合はウリスが見付からなければ俺がサイオーラを発するつもりだった。

 最初は巣への再攻撃でそれをとも思っていたが、脳内ディスプレイに映る映像ではシールドをなかなか解こうとしないので無駄玉を撃つ気はない。

 なによりもうそろそろサイ感覚以外で相手を捉えられる距離だ。

 わざわざこちらの正確な位置を相手に教えるわけにもいかないしな。

 ウリスに対して手で止まるように指示し、立ち止まると共に強化服のヘルメットを生成する。

 「=、====!?」 

 どうにも科学的なことに対する驚きが強いな。サイ技術がメインの文化文明を築いているってところなのだろうか?

 生きている植物の服を着ている時点で、こちらとは全然違うのはわかり切ってはいるが……とりあえず人差し指を顔の前に置いて静かにすることを促しとく。

 口に両手を当てて可愛らしく黙るのね。

 どうにも幼さを端々に感じるウリスに不安を覚えるが、目撃した戦闘能力を加味するに適切な距離で戦えれば早々と後れを取ることはないだろう。

 仮に窮地に立たされるようであるのなら、俺がフォローすればいい。

 そんなことを思いながら、アシストドローン達が作った地図を脳内ディスプレイで確認する。

 俺自身のサイ感知と経験を合わせながら敵の位置を予測しつつ、ここで狙い撃つように弓引く動作で伝えてみた。

 わかったのか頷いてはくれるが……まあ、今はサイオーラを纏ってないから少なくともそれで奴らに見付かることはないだろう。

 とはいえ直前までこっちの位置は感じ取られていただろうからな。

 頭の中でウリスを入れた戦術をいくつも考えながら、俺は木の上から飛び降りた。

 同時にステルスを起――

 左腕に付けた投げナイフを空中で抜き取り、着地する直前でウリスに向けて投げる。

 彼女が驚きの表情になっているが、それ以外の動作をするより前に刃が到達した。

 背後に迫っていた大型ゴブリンへ。

 「ギャアアアアアアアアッ!」

 左目に突き刺さったことにより喧しい声を上げて顔を抑える大型ゴブリン。

 全身を植物のツタと葉で覆ったそいつの手には、石で作られたであろうナイフが握られていた。

 奴に殺された者の中に喉をかっ切られていた人がいたので、サイ反応が消えた時点で警戒していたのだ。

 案の定、ウリスから離れた瞬間に僅かな気配が彼女の背後に現れた。

 なので、反射的に攻撃したわけだが……流石に空中&サイパワーなしでは致命傷までには至らないか。

 ウリスが慌てて別の木の上へ飛び退く間に、俺は自動拳銃を抜き撃とうとした。

 だが、それより早くそいつは後ろに飛び、森の闇の中に消えてしまう。

 一瞬だけサイオーラを確認できたので、隠形系のサイ現象を起こしたようだ。

 遺伝子レベルで強化され、科学的補助もされている俺の五感でも捉え切れないか。

 この手のは初動に強いサイパワーを使うが、それ以降は微弱のみしか使わないことが多い。

 勿論、大きな動作や攻撃などをする時は隠さなくてはいけないことが増えるため、必然的にサイパワーが強くなる。

 よって微弱なサイオーラを感知できるほど集中するか、大きな動きをするのを待つのが対処方法なのだが……

 「まあ、そうじゃなきゃわざわざ三体を送らないよな」

 後を振り返るタイミングに合わせたかのように残り二体の大型ゴブリンが現れた。

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