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「ちょちょちょっと!ちーちゃんトイレ!ついてきて!至急!大至急!!」
「えっ何何?急にどうしたの?」
「私も行く~!」
ちーちゃんを引っ張って廊下に連れ出す。りんちゃんも付いて来た。
とりあえず一番近くの女子トイレに入る。
「ちーちゃん!あの人誰!?今朝ちーちゃんに話しかけてきた式部くん?と話してた人!!」
「えーわかんない・・・見る前に美和に連れ出されちゃったもん。」
「あ、私わかるよ!安藤くんじゃない?私の隣の席だから登校してすぐによろしく~って挨拶した!」
「さすがりんちゃん~!」
「で?安藤くんがどうかした?タイプだった?」
とちーちゃんがニヤニヤしながら聞いてくる。
「そうなの!ドストライク!見て!ブラデイの奏くんにそっくりじゃない!?」
私はスマホを取り出して奏くんの画像を2人に見せる。
「あー確かに?黒髪で黒縁メガネってとこは一緒だね?」
「美和のカレシの奏くんねぇ・・・奏くん目の色青じゃなかった?多分安藤くんは純日本人だから茶色か黒だよ?」
「メガネ掛けてれば!あんまり見えないから!」
「それでいいんだ・・・」
りんちゃんに若干引かれた気がするけど気にしない。
「ちひろ様!安藤くんの情報何か無いですか!何でもいいんです!フルネームとか部活とか身長体重とか!好きな女の子のタイプとか!」
両手を合わせてちーちゃんにおねだりする。
「教えてあげても良いけど~美和、この情報の代わりに何してくれる?」
そうきたか・・・
「今度の部活で桜のシフォンケーキ作るからそれをちーちゃんに1ホール丸々あげる!」
「それと?」
「うっ・・・今度の学力テスト用にまとめたノートのコピーでどうですか・・・!」
「よし!それで手を打とう!」
ノートまとめておいて良かった・・・
ウチの高校は一応進学校だから、学年が上がった時に去年つまり1年の時の総復習のテストがある。私が入ってる家庭科部は春休みは部活がなかったから去年1年分のノートをまとめてたのが役に立った。
「えーちーちゃんいいなー!私も美和のノートのコピー欲しい~」
「ふふふ・・・美和のノートさえあれば70点はカタい!美和のまとめたノート下手な参考書よりわかりやすいんだよね~りんちゃんには吹奏楽部の内部情報と引き換えにコピーを渡してあげよう」
「やった!えっとねー」
「ちょっと!私のノートで取引しないでよ!いや別にいいけどりんちゃんだけだからね!?結構ノートまとめるの大変だったんだから!」
「わかってるわかってる!コピーはりんちゃんにしか渡さないよ。」
「まったく・・・りんちゃんも他の人に渡しちゃダメだよ?」
「りょうかーい!」
「で?安藤くんの情報は・・・?」
ちょっとまって~とちーちゃんがスマホを操作する。ちーちゃんのスマホには閻魔帳よろしくいろんな情報が詰まってる。もし落とした時の為に複雑なパスワードが掛けられてる。そこまでする情報を集めてどうするんだろ?
「あったあった。えーっと安藤 奏多くん去年は1-C 南中学出身私たちの中学の隣の中学じゃん。部活は入ってないね。図書委員。成績は中の中・・・身長170センチ体重は52キロ。後は~あ、式部くんが幼なじみだって。美和、式部くん隣の席じゃん!チャンスだよ!りんちゃんは安藤くんの席隣だし!」
「やっっった!ありがとう!頑張る!・・・どう頑張ればいいんだろ・・・?」
うーんと3人で首を傾げて考える。
「とりあえず教室戻ったら式部くんと安藤くんに挨拶してよろしくねって可愛く言う?とか?」
「あ、同じ委員会に入れば?安藤くん図書委員でしょ?図書委員なら競争率高くないし!」
「それだ~!りんちゃん天才!さすが彼氏持ちは違うね!よし!そうと決まったらとりあえず教室戻ろう!ちーちゃん式部くん紹介して!」
「了解!美和リップ直していけば?」
「そうね!最初が肝心だよね!」
あぶらとり紙でTゾーンの皮脂を取って、リップを塗り直す。やりすぎはいけない。ケバいなんて思われたくない。高校生らしいナチュラル~なメイクを心掛ける。
「よし!行こう!アシストよろしくお願いします!」
「まっかせて~!」
「もちろん!美和が現実の男に目を向けてくれて嬉しいよ!」
「いやまぁオタクは卒業しないけど。」
「しないんかい!(笑)」
どうにか仲良くなれますように・・・!
祈るような気持ちで教室に戻った。
女子トイレで作戦会議(笑)
果たして上手く行くんでしょうか・・・