蒼い森
鬱蒼とした木立に囲まれた森。周り一面、森しかなくただ特徴としてその森は青一色に染まっていたという。
そんな森に訪れたのは真っ黒いローブに身を包み、紺色のとんがり帽子を目を半分覆うほどかぶり、緑色のリュックを背負っていました。
少年の背丈ほどの長い杖を握りしめながら森を上ってきていました。先端に三日月のような黄色い月のシンボルがついておりました。
右手首に銀色の腕輪をつけていました。見た目は魔法使いそのものでした。
「シク、順調そうだね」
シクと、腕輪は少年に声を掛けました。シクという名前の少年は自信の腕にはめられた腕輪に視線をむけ、「そうでもないよ」と答えました。
蒼く一面に染まったこの森は、古くから存在し、多くの魔法使いの素材を集めとして親しまれていました。
シクの師匠も何度か一緒に訪れたことがありました。シクがまだ新人として師匠が素材を集めることと学ぶことは大事だと告げ、素材がなくなるたびに市場やお店で買うことはなく、ここへ来るように師匠はシクへ促していました。
シクは、師匠と一緒に来るたびにこの森は右か左かさえわからなく地形になっていることを突き止めるようになりました。
この森は生きているのです。まるで魔法にかけられたかのような森は年中で自分たちで動き、この森に訪れる人たちを迷い込ませ用としているのです。
シクも師匠も、この森に訪れる度に道に迷いそうに何度か遭遇したことがありました。
しかし、師匠は一度も迷わず目的地にたどり着いては、目的の素材だけを集め、考えることなく最初に入った入り口に戻ってきました。
師匠は手に取るようにどこで素材を調達できるのか記憶していました。
師匠と連れられ、何度か訪れることで、この森は魔法使いにとって神聖な場所だということをわかってきました。
師匠はにっこりと笑みをうかんでおり、師匠が伝えたかったことを弟子のシクに伝えることができたと満足していた様子でした。
それから年月がたち、シクは師匠のもとから旅立ちました。
一人前の魔法使いになって、師匠のもとから世界へと羽ばたき、各地に眠る魔法を求めてシクは師匠の元から離れました。
あれから何年以上出会ってはいません。
一人前となった魔法使いは、師匠のもとから旅立つとき、“別れの紋章”を魂に宿す契約を施され、師匠と弟子は再度出会うことはないような呪いを掛けられます。この紋章は師弟の関係を持った者に必ず与えられ、一人前となった魔法使いは二度と師匠と出会うことがない呪いにかけられたのです。
師匠と会いたいと思ってもこの呪いのせいで、たとえ隣ですれ違ってもお互い気づくことはなく、ただ赤の他人のように過ぎていくのです。
もし、だれかに名前やそのひとと出会うきっかけを得ても、この呪いはするどく、記憶を改変したり、幻覚として別人に変えたりして、会うことを拒否しようと走ります。
それでも気づいてくっついたりすると、魔法使いの源である魔法力を永久的に失い、紋章は晴れて効力を打ち消し、二度と魔法使いの道を歩むことができなくしてしまいます。
師匠の元から旅立つのは当たり前。二度と頼ってはいけない。
そうやって生み出したのがこの魔法なのです。古くから存在し、師弟は、一人前と定めたとき、この魔法を使うかどうかは師匠に尋ねられると聞きます。
師匠とはもうあれから会っていません。
この森に来れば会えると少しながら心の中で懐かしく思いながら来ますが、一人前になっていこう、会ったことはありませんでした。
「師匠、元気にしているかな~シク」
腕輪は昔を懐かしむかのようにシクに尋ねました。
腕輪もまた、シクと同じごろにいました。腕輪はシクが昔、どんな子だったのか師匠と同じく知るただひとつの存在でした。
「きっと元気にしていらっしゃる。あの人はそういう人でしたから」
シクは胸に悔やみきれない気持ちを残しながら、師匠が周りと代わっていたという印象を浮かべながら答えました。
「そうだよね、いつもへらへらしていて、泣き虫のシクを何度もはげましょうとけなげにかんばっていたよね」
シクは顔を赤くして、恥ずかし気に答えました。
「昔のぼくの話はしないでほしいな。今でも気にしているから」
「もしかして、恥ずかしいの? シクは泣き虫でよく師匠を困らせてい――」
腕輪がちゃかす。
「昔は昔だ、昔の話はしないでくれ!」
いつもの穏やかとは一変とし、声を荒げました。
腕輪はビクリと震え、「ご、ごめん」と謝りました。
シクは少し肩を払ってから「急に怒ってごめん」と謝りました。
少しの沈黙。
腕輪はまだ怒っていそうなシクにどう口にすればいいのか戸惑いつつ、シクがもう一度話しかけてくるのを待つことにしました。
シクは一向に口を開くことなく、森を突き進み、ある広々とした畑に出ました。
そこは草一面も真っ青で先ほどとは比べ物にならないほど青く発光し、夜間でもその明るさは圧倒的な輝きでキラキラと発光していました。
「うわーきれいだねーシク」
腕輪が思わず嬉しそうに言いました。
シクも「そうだね、きれいだね」と感想を言いながら、周囲を見渡し、目的である木の実を探しました。
その木の実はすぐに見つかりました。
青く発光する草に隠れるかのように光った瞬間だけ青い木の実が形となって現れました。青く光る瞬間を狙ってその木の実を専用のハサミで切って、持ってきた空き瓶の中へと入れていきます。
ひとつ、ふたつと複数なっている木の実もありました。
その実を丁重に無駄なく空き瓶へ入れていきます。
空き瓶に入れた木の実は発光せず普通のその辺にある小さな木の実と変わらない姿でたまっていきました。
瓶がいっぱいになるまでその木の実をとり、次の素材を求めてさらに奥へと足を進みました。
少し進むと、木の根っこに生えたダンスをするキノコを専用の瓶に入れ、ダンスを永遠と繰り返すキノコを見ながらシクと腕輪は笑いこけました。
リンゴのような苗木にぶどうがなっているのを見つけ、持ってきた小瓶の中から液体が入った小瓶にそのぶどうの実を入れていきました。
ぶどうは液体に触れると虹色に光り輝きました。
大人の手のひらほどの大きさしかない妖精たちがシクに群がるかのように舞い、ウザがられる腕輪を無視して、シクに話しかけます。
「キミ一人で来たの? あぶないよ、ここは囚われの森だよ」
「その容姿、魔法使いだね。君みたいな弱い魔法使いは危ないよ」
「なんなら、ぼくたちが案内してあげようか?」
「一緒だったら、きっと危なくないよ!」
妖精が飛び交い、シクをどこかへと誘導しようとしています。
シクはそんな妖精たちの言葉に耳を傾くことなく、妖精たちが示す道とは異なる方へと進んでいきます。
焦った妖精たちは自分がたちが進みたい道へ案内しようと必死で言葉を巧みに扱いますが、シクは遥か一点だけを目指して妖精たちの言葉を聞くことはしませんでした。
妖精たちはあきらめ、シクの元から離れていきました。
きっと、別の人を誘うつもりで飛び交ったのでしょう。
「昔とは大違いだ」
腕輪がそう言うと、シクは特に返答なく聞き流しました。
「まだ新人だったころ、師匠と一瞬だけ離れ、迷子になっていたところを妖精たちが来てくれたよね。妖精たちの言葉を信じて、師匠の下へ帰ろうとした矢先、師匠の妖精が飛んできて、引き止めてくれたよね」
妖精たちは言葉を巧みに扱って、目論見を達成するためにその人を誘うという。妖精たちは一種の魔法生物だと異論を唱えたという。
妖精は人間や動物のように食べ物を摂取することなく、魔力を糧に生存しているといったのだ。実験も大勢の前で披露し、魔法生物だと世の中に知らせようとしたとき、人と同じように肉や果実といったものを摂取しているのだと異論を唱えたのだ。
それが師匠だった。
「この実験は無駄なことです」
師匠は大勢の前で妖精が人のように動き、生活し、食事をしていると見せつけたのだ。もちろん、最初に異論した男性は否定しましたが、師匠に連れて歩いている妖精がその男性が調べた研究資料を焼き捨てたところ、男性に騙され、妖精たちがまるで生きた肉塊にされたと訴えた人が現れたことから、この男性が言っていたことは事実なのかどうか改めるべき必要があると広まっていきました。
男性は師匠に皮肉な言葉を言い残し、裁判所へ連行されていきました。
師匠が連れている妖精は正真正銘の生物で、魔法で動いていることもなくカラクリのような機械仕掛けでもなく、精霊召喚として呼び出されているわけでもなく、師匠を愛し飛び回り、言葉もちゃんと発して自分の感情を伝えていました。
妖精は大人びた雰囲気を持ち合わせており、師匠とはウマが合いそうでした。現に、独りで研究に没頭する師匠を気遣うように妖精は世話をしていました。
家庭的な妖精と野生的な妖精と区別するように学会にもとめられ、認められると世間は、妖精を連れているのは魔法使いとして必要最小限だと決めるようになりました。
妖精ブームが起きたのはそれから数日後のことでした。
野生の妖精は家庭的な妖精とは違って、人を巧みにだまして、自分たちの目的を達成するか餌にしようと食肉生物がいる場所へ案内しようとします。
そのため、魔法使いでも家庭用に育てられた妖精と違って、相手にする人は少ないのですが、気が優しかったり子供だったりと毎年、犠牲者が出ています。
シクもその犠牲者に成り果てようとしていたとき、妖精が助けてくれたのです。
「私の私物になに勝手なことをしようとしているのよ!!」
と、それを聞いた妖精たちは慌てて逃げ出したのだと後からやってきた師匠は言っていた。
師匠は優しくてとても頼りになる人でした。
面白おかしく実験を失敗してはそれを悔やむことなく、堂々と周りに面白く話したり、シクたちに失敗の恐ろしさはこういうものだと伝えていました。
そんな師匠はシクにとって誇りで憧れでした。
この森にきても、師匠は相変わらず明るくて誰よりも光り輝いていたのが印象でした。
しばらく歩くと川に出ました。最終目的地に到着しました。
「昔と変わらないね」
腕輪はそう言い、「ほんとうだね」とシクは返答しました。
川のほとりを歩き、サラサラと流れる川の音は穏やかで心を落ち着きます。この川はどこから流れているのか、昔、師匠に尋ねたことがありました。
「それは、この森が生まれたときからあって、この川のおかげでこの森は生きていられる。この川の出発点と終点は誰も調べることはできない神秘の一種だよ」
と告げていました。
現に、師匠も妖精もこの川がどこにつながっているのか知っていませんでした。いや、知っていても簡単に教えてくはくれなかったのでしょう。
しばし歩いて、川の先がどうなっているのか腕輪に尋ねられました。
「この先、どうなっているのかな? 師匠はなにも言わなかったんだよね、ならぼくたちで調べようと思わない?」
腕輪が言っていることはシクが思っていたことと同じでした。
けど、道を外れたら、この森から出ることはできない。
シクは足を止め、しばし考え込みました。
「どうしたの?」
「うーん」
シクは川の先がどうなっているのか魔法で調べようとしました。けど、魔法はこの森では役に立ちません。
そのことをシク本人は知っていたはずなのに、魔法で川の先がどうなっているのか試しにやってみようとしました。
「やってみるか」
「お、いつも以上のやる気だね」
まず、地面に持ってきた大きな一枚の紙を広げ、四方の角に象徴とする依り代となるものを用意します。
リュックの中身はこれといったものは入っておらず、素材を集めるためだけ、中身は空にした状態でやってきていました。
入っていたの空き瓶と多少の食糧、先ほど採取した素材たちだけ。
四方における素材は何一つありませんでした。
「ねえ、この森で集めた素材を使ってみない」
腕輪が言いました。
「それが、合わないんだ」
魔法を使うための材料としては足りないと言ったのです。
「うーんそうかー無理そうだねー」
腕輪も悩み、何かいい方法がないかしばし考え防ぎ込みました。
もう一度、集めた素材を見つめなおし、ある素材に視線を合わした時、シクは思いつきました。
「どうしたの?」
「こうすればいいんだ」
パッパッと素材をある一定の法則に従って置いていく。
それは、素材を集めたときのおおよその位置関係でした。
森は常に動いていますが、とれる素材や場所は昔と変わらず、動かないことがわかっています。その素材が取れる方向へ素材を置けば、依り代として役に立ってはくれるかもしれないと考えたのです。
「アッタマいいー!」
最高の誉め言葉です。
「さて、配置は準備完了した。この森は魔法は使えない。もし失敗したらどうなるのか想像できないし、それに成功しても失敗しても素材は失ってしまうから、もう一度集め直さないといけない」
「あ、そうか…」
腕輪は思い出すかのようなしぐさをした。
素材は必要な量しか採取していない。今回の魔法を使った素材は採取した量の半分以上使用する。そうなれば、もう一度採取しなくてはならなくなる。
腕輪に視線を寄せ、シクは言った。
「やめようか」
せっかく集めた素材に未練が募ったのかシクは素材を元の小瓶に戻そうとする。それを腕輪が止めに入った。
「せっかく、気づいたんだ。“成功しても失敗しても、実験してこそ結果を得られる”と師匠が言っていたじゃないか!」
「そ、そうだね」
腕輪に説得される形で手を止め、そっと見を引いた。
用紙の真ん中には大きな魔法陣が描かれている。
地図を写すための魔法で、あらかじめ持ってきている紙には魔法陣がすでに書かれている。現地で書こうとすると風で揺れたり、雨や露、鳥の糞などで大惨事になることもある。それに、書くのに時間を模すことから一次的に隙だらけになるため、あらかじめ紙に書くことにしているのだ。
「よし、準備万端だ」
シクは呪文を唱えた。
四方に備えられた素材が光り輝き、液状となって溶けていく。液体となったものは魔法陣へ向けられ一本の線となって魔法陣へ注ぎ込まれる。
魔法陣のインクを頼りに、液体はそのインクの上からもう一度書くようにして流れていく。そうして、すべて書き込まれたとき、魔法は完成するのである。
シクにとって大掛かりで大変なもので、あまり好まれることはない魔法である。師匠ゆずりの魔法のひとつで、主に道に迷ったときや探し物を見つけるときに使う。
魔力の消耗量は少ないが、供物となる材料を多く消耗するうえ、広々とした場所でしか使用できないことから、普段は薬草や素材を用いだ安易な魔法で済ましてしまう場合が多い。
「これで、うまくいくはず」
そう感心し、魔法陣のありかを心待ちにする。
が、不意に誰かの手がシクの肩をつかんだ。
フゥーと息を吐き捨てるかのように魔法陣をはった紙は風に吹かれ、宙を飛び、紙は爆発とともに吹き飛んでいった。
「え、ええ!!」
腕輪が爆発した魔法紙ではなく、シクの後ろを見て驚いている様子だった。
「だれかいるのか」
後ろを振り向くと妖精がシクの頬にビンタをくらわした。
いきなりだったのでその力に抗えず頬は真っ赤に染まった。
「全くもう! 進歩しなんだから」
それは見たことがある妖精でした。
師匠が常に一緒に同行していた妖精。姿かたちは変わらないが、一回り成長したかのような身長が高くなっていました。
「ねえ、弟子に何か言ってくださいよ」
と木の裏でこそこそとする一人の影があった。
まさか、と言葉がでたとき、その影は照れ臭そうに笑みを浮かべながらゆっくりと光がある方へ歩いてきた。師匠だった。
「師匠ー!!」
「ああ、まあ、いや。あぶなかったねー」
ぎこちなく返答する師匠は、変わりがない様子だった。一人前として旅立ってから何年たっているのかさえ分からないのに、姿は昔と変わらず、灰色のとんがり帽子に濃い灰色のローブを身に着け、ボロ布の服を何枚かぎこちなく着ていた。
師匠の服のバランスは相変わらずおかしい。けど、流行に流されずマイペースな師匠は師匠だった。
「どういうことですか!? だって、紋章で近づけないはず…」
「ああ、この森は特別だって前、言ったよね」
「話しを逸らさないでください!!」
「この森は紋章でさえ、受け付けないんだ。それに、ここで使う魔法はどんな魔法でも失敗してしまう。川のほとりで魔法を唱えようとしている若い青年がいるのを見かねて、思わず、手を出してしまった…ハハァ、師匠失格だな」
師匠は軽く笑い飛ばしていた。
それよりもどうして、師匠がここにいるのか不思議だ。それに、魔法が失敗することをあらかじめ知っている。
「師匠、この森は――」
「ストップ! この森の秘密は今度の課題にしよう。わしが次に訪れるのは来年じゃから……それまでこの森の秘密を存分に探るといいじゃろう。わしに結果を求めても解決には至らない。魔法使いは常に学んでこそ結果を生み出す。容易に結果を求めても、それは学んだとは言わない」
師匠の言葉はグッと心をつっかえた。
師匠は師匠だ。本物だ。偽物でも幻覚でもない。師匠はここにいるんだ。
いてもたってもいられず、シクは師匠に抱き付いた。
懐かしいにおいに包まれ、シクはわんわんと師匠の胸の元で泣いた。
「これっ! お主はもう立派な大人じゃぞ! やめろ、せっかくの着替えたばかりの服が汚れる!」
わんわんと涙するシクにどうしようもできず、妖精と腕輪に助けを求めた。
「いいんじゃない、たまにはこうなるべきよ」
「よかったねシク、師匠にあえて」
師匠は困った様子でただ、シクが泣き止むまで、その状態で過ごすこととなってしまった。
数分後、泣き疲れ眠ってしまった。
子供と変わらない。けど、大人でもある。身体は大人でもやっぱり中身は子供のまま、師匠は大きく息を吐きながら、妖精にシクを運んでもらうように頼み、シクは妖精のもと、師匠とともに森を出た。
必要な分だけ消耗した分も人一倍の量で加算されて、師匠がプレゼントしてくれた。気づいたときには、宿屋に戻っていた。
師匠はおらず、再び一人の生活に戻っていた。
宿屋の窓を開け、外を見つめる。
すっかり日が空け、太陽がまぶしく光り輝き、雲一つない空を見上げ、あれは夢だったのかと思い、背後へ視線を向けたとき、少し大きめの瓶の中に魔法で使用したはずの素材が多く入った状態で置かれていた。
一通の手紙とともに、シクは、夢じゃなかったと誇らしげに思い、その手紙を開いた。
『シクへ、泣いた気分はどうでしたか?
ワシの服はお主の涙でビショヌレです。
費用はここに請求しておきました。期日まで払ってくださいね。
わしはすぐに北の大陸へ向かうことになった。
しばらく会えることはないじゃろう。
紋章は絶対じゃ、外れることも会うこともできないが、あの森なら唯一会える。
次に会うときは泣き虫でないことを祈る。
来年の課題じゃ、あの森の秘密を調べる事。
・森の発光について
・川の秘密』
手紙はここで途切れていた。
最後の一通に妖精が書き残していた。
『相変わらず、弟子に甘いんだから、助けた分、費用を請求しておきました』
もう一枚紙があるのを確認し、その紙を拾い上げた。すると、そこに書かれていたのは請求書でした。かかった費用はこの仕事と次の仕事を足しても足りないぐらいの金額が請求されていました。
「いっぱいくらわされたね」
「師匠ぉぉーーー!!!」
高らかに声が響いた。宿を突き抜け、遥か空へと呑まれていく。
シクよ、がんばれ。泣くことなく、ただ金を返すことだけにせいっぱいに動くのじゃ。