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ペットが主人に名をつける

感想貰ったのでテンション上がって続きを一日で書いてしまいました。


「先程はすまぬ、時間があまり無くてな。もう少し詳しい話がしたかったのじゃ」


あれから俺たちは王の部屋であろうところに通された。

もともと面白いものを持っているやつがいるという噂で呼びつけたので、あまり時間を取っていなかったらしい。

俺たち自体に興味を持ったので、改めて話をしたくなり、謁見時間を越えて自室で話すためにペットにしたとのこと。

話をするためにペットにするって、斬新なアイデアだな。

聞けば吟遊詩人やら絵描きやらも過去にはペットになったことがあり、従者たちはそれほど驚いていなかった。

なぜペットかというと客という扱いの場合、護衛の兵士がつく。

そりゃそうだよな、王といえばVIP中のVIP。

なぜ王と俺と陸の三人だけでいることが不思議だ。


俺と陸は首輪をつけられた。

赤い革でできており、まさにペットっていう佇まい。

これは飼い主が誰かわかるようにするためではない。

魔法によって王の一言で、いつでも首を締めることができる恐ろしいアイテムだ。

西遊記の輪っかみたいなもんだね。

これがあれば俺たちは暴れることも出来ず、王の一言ですぐに抵抗できなくなる状態だ。

なので、護衛の兵士などの付き添いがなくてもいいのだと言う。

であれば人間であってもペットにしてしまえば気兼ねなく話せる。

この裏技というべきものを見つけた王は嬉々として個人的に興味のある者をペットにしているそうだ。

もちろん折を見て開放されるので、実質お友達ということらしい。


そして俺はカバンの中のものを紹介しつつトークを始めたのだが……



どうしてこうなった!



眼の前では王が、犬のような少女が俺の手に乗ったドッグフードをぺろぺろと犬食いしている。

尻尾をブンブンと振りながら、がっつく姿はまさに子犬。

さっき玉座にいたときはシェパードのような凛々しさだったが、今や柴犬のような懐っこい可愛さだった。

王のペットになったと思いきや、これでは主従が逆転しているじゃないか!?

右手をくすぐったくさせている美少女をゆっくりと見下ろす。

耳と髪、尻尾は全て競馬でいう尾花栗毛とでも言おうか、金髪の混じった栗の色だ。

獅子のような雄々しさがありつつ、シマリスのような可愛さを併せ持っていた。


な、撫でたい!

犬耳と犬耳の間の頭部をナデナデしたい!

でもこの人は犬じゃなくて王!

王をナデナデするなんて有りえないので、処刑されても文句は言えない。

処刑されたら文句なんて言えないけど。

一言で首を締められちゃうんだぞ!

とにかくダメ! 絶対!


「ふあああ」


王は頭を撫でられて恍惚の表情を浮かべて、声を漏らした。

ああ! なんてことだ!

俺の左手が勝手に……!?

くっ、静まれ封印されし左手の獣よ……ッ


「パパ、王様の頭を撫でちゃって大丈夫なの?」

「これは左手に封印された暗黒の獣の仕業だ、俺の意思ではない……」

「そんな言い訳通じるわけじゃん」


息子は冷たい声で俺を非難する。

若いうちに親孝行しないと将来後悔するぞ!


「くうううん」


しまった、左手は完全に俺の意識とは別に彼女の頭を撫でくりまわしていた。

その間も俺の右手に乗ったドッグフードを齧ることは止めていない。

完全にペットの犬!

そして猫派の俺が犬派になってしまいそうなほどに可愛い犬娘!


猫カフェによく行く俺は気持ちいい撫で方については自信があった。

猫でも犬でも俺のテクの前ではメロメロである。


目を完全に閉じて、満面の笑みを見せる。

なんて嬉しそうなのでしょう!?


それを冷ややかに見つめる息子。

もともとお前のせいだろ!


ドッグフードのカリカリを美味しいものだと認識している陸は、俺がバッグをひっくり返している間に暇だったのか、勝手にカリカリを食っていた。

美味そうに食う陸を見て、王は味見させろと所望されたのである。

ペディのときと同様に、コレは人の食う物ではございませぬとは言えず。

恐る恐る右手に乗せて渡そうとしたら、そのままがつがつ食われてしまったのだ。

やっぱりペディもそうだったけど、犬尾族ってドッグフード好きなのね。


右手のエサ……もといドッグフードが無くなると王は悲しげな顔をして、チワワのようなくりくりとした瞳で俺を見上げた。

目線でおかわりを要求するとか犬すぎるだろ、言葉を喋ってくれ。


「王様、他にも美味しいものは持っておりますので」


そう言って俺は顎のあたりをくすぐる。

しまった、顎は普通に人間じゃないか。

犬と同じに扱いすぎた!


「あうっはうっ」


気持ちよさそうだった!?

やはり犬耳で犬尾を持つというのはそういうことなのか。

俺は背中を撫でながら、左手をとって少し屈んでいた彼女を立たせる。


「ちょっと、気に食わんな」

「ヒイイ!? 命ばかりはお助けを!」


そりゃそうだろ、ペットにしたつもりのやつに完全にペット扱いされるって。

これほどの屈辱はそうそうないだろ。

猫カフェで培った俺のアニマルテイマーとしてのスキルがこんなところで命取りになるとは。


「王様なんて呼び方は可愛くない。 あだ名で呼ぶことを許す」


ええー!?

そっちなの?

もっとフレンドリーな仲をお望みでしたか。


「ちなみに名は、カナンアイムス・アカナプロプラン・ヘリテージであるが、名前の略称などは許さぬぞ」


これは一大事だ。

さすが偉い人は名前が明らかに長い。

この世界では普通の人は名字がなく、爵位やら領地やらが頭についてくるタイプだ。

王様にあだ名を付けるとか、どうしていいやらわかんねえ。

そもそもペットにされた俺が名前をつけられるならわかるが、何で俺がご主人様の名前を考えるのか?

思案していると陸がポロッととんでもないことを言った。


「定春でいいんじゃね」

「バカタレ! 良い訳あるか!」

「ほう、それはどういう名だ」


気になっちゃったよ!?

やめて! 銀さんを食うとかそういう説明やめて!


「おっきい犬」

「ほう!?」


大きいなんて言われたことがないのだろう、小柄な王様が興味を示してしまった。


「大いなる犬か……朕には相応しいな……」


やぶさかじゃない顔をしていらっしゃる!

しかし俺はこんなに小さくて可愛い少女を定春とは呼びたくない。


「定春は偉大すぎて可愛らしくないかと。えっと、えっと、ニャンコちゃんはどうでしょう」

「ふむ、可愛いではないか、許す」


苦し紛れに言った言葉が許可されてしまった。

”ニャンコちゃん”は俺が通っている猫カフェの名前だ。

さっきまでのやり取りが”ニャンコちゃん”での俺と猫のふれあいそっくりだったので、思いついてしまった。


「それ、猫の」

「しっ、頼むから黙れ、陸」


俺は右手で陸の口を塞いだ。


「むぐぐ、べたべた……」


そういや右手はさっきまで王……ニャンコちゃんが舐め回していたのだ。

よかったな陸、犬耳の美少女と間接キスだ。

陸はニャンコちゃんに全く好意がないらしく、嫌そうに口を拭った。


しかし、ちゃん付けの名称にしてしまったから今後王様をちゃん付けで呼ぶことになるな……。

あだ名の由来を聞かれたらなんて誤魔化すか、今から考えなければ。


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