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異世界で100円グッズ売ってみると?


俺たちはペディを村に送り届けた。

お礼にと言われた、村の財宝は丁重にお断りした。

現代の日本に住んでいた俺からしたら、大概のアイテムは前時代的なガラクタだ。

現金は必要だが、貧しい村から金品を貰うわけにはいかないしな。


何のお礼もできないのは気がすまないというペディに、陸がぱんつを貰おうとしたので、お尻叩き5回の刑に処した。

尻を撫でながら泣く陸を哀れに感じたペディがほっぺにちゅーしてくれたので、大変喜んでいた。

俺は羨ましかった。

ペディが(丶丶丶丶)

だって今までずっと陸には、ほっぺにキスしてたんだぜ。息子だもん。

中身が転生した男ってわかっちゃったらもう出来ねえよ。

パパは寂しいぜ。


その後、村の近くから乗合馬車に乗ってやってきたのがグランデリー城下町。

犬尾族の王が治める王国である。

町も犬尾族が多めだが、自由に入出できる国なので、様々な人種が歩いている。

城下町と言っても大きさはそこまで大したものじゃない。

郊外のイ●ンくらいかな? この世界では十分にデカい。


今は市場、いわゆる場所を借りて物を売るフリマみたいなもので店を開いている。

食料や衣服は足りているが、この世界の現金を手に入れるためだ。


「ハイラッシャイラッシャイ、ミテイッテネ~」

「パパ、なんで年季の入った八百屋みたいな感じなの」

「雰囲気あるかと思って」

「変すぎて近寄って来ないじゃん。テレビショッピング風にしなよ」

「そっちだったか」


さて何から売るかな。

正直、100均で売ってるものでも王様に献上できるレベルなのだが。

俺のような身分では、いきなり王には会えない。

庶民が欲しいものとなると限られてくる。

字が書けない人にボールペンは売れない。

時刻を見て活動する習慣がないから時計も売れない。

USBメモリや外付けバッテリーなんて言うまでもない。


逆に魔法が一般化しているこの世界だから売れないものもある。

火をおこす魔法くらいは使える人が多いから、ライターは不要だ。

風も起こせるので、うちわなども要らない。


そういったことを考慮して俺が売れると思って持ってきたものの一つが――。


「はい、見て下さい、このコップ! 軽くて透明で、落としても割れない! 最強のコップと言っても過言じゃありません!」


透明のプラカップである。

この世界はガラスで出来ているグラスなどはまだ高級品。

庶民は木で出来たジョッキか、金属でつくったカップを使っていた。

中の液体が見える時点で凄い! 高級品っぽい! となるのである。

100均で10個入り。1つ10円だな。


「この新商品、なんと、ハウンド銀貨20枚でいいぞ!」


現代の日本の貨幣価値に換算すると――4000円くらいかな。

この町での一泊の宿代であり、店で働いた時の半日の給料に該当する。

庶民がコップに出せる金としたらこのくらいだと思う。


「1つ頂戴!」

「俺も!」

「買った! 10個、いや、20個くれ!」

「こっちもだ! 30個買うぞ!」


飛ぶように売れた。

持ってきた100個が完売したので、当分金には困らない。

銀貨ってのは重いなぁ。

しかしこの世界で紙幣が登場するのはいつのことやら。

印刷っていう技術が無いからね。

なまじ魔法なんてものがあるから技術が発達しないんだろうなあ。

あと戦争がないからだ。

戦争によって科学が発達したことは否定できない事実だろう。


「さて、宿に向かうか」

「ご飯は?」


飯かぁ。

正直、気が進まねえ。

この世界の食い物は食文化なんて呼べるもんじゃないからね。

カップ麺の方が絶対美味いもん。

肉食ったとして、わさび醤油を持ってこいって言っちゃう気がする。


「ほら、あそこに酒場あるじゃん」

「あっ! お前も好きだなぁ」

「男の子ですから」


こっちの酒場には男性向けっていうのがよくある。

メイド喫茶、というかフー●ーズみたいなもんだと思ってくれ。

つまりムフフというわけである。


「いらっしゃいませ~……ガキ連れてくるとこじゃないよ! 帰れ!」


入るなり尻を蹴っ飛ばされて追い出されてしまった。

……そりゃそうか。


「今のお姉さん良かったよね~、いいなパパ、蹴ってもらって」


え、お前そういう趣味なの?

知りたくなかった……息子がドMとか……。


「普通の食堂行くか」


ずずず……。

懐かしいな~、このスープ。

出汁入れ忘れたんじゃないの? っていう味だ。


この麺も懐かしい。

給食のソフト麺に何の味付けもしない物みたいな感じ。


うん、これこれ!

これだよな、茹でても甘くない芋!


「不味い……」

「カリカリの方が美味しいね」


そうだね、食ったこと無いけどドッグフードの方がマシだと思う。

あっ!?


「忘れていた、こんな事もあろうかと」


俺はバッグを探る。

あった、これだ。


「なにそれ?」

「麺つゆ」


まさに万能調味料と言えよう。

俺はスープと麺と芋、全てに入れた。


「うめえ」

「ほんとだ」


さすが麺つゆだぜ、あらゆるものが美味いぜ。

醤油やソースより便利に使えるぞ。

異世界に行くときは麺つゆを持っていけ! 


「う……ん……」


陸が食いながらウトウトしている。

陸は中身は子供じゃないが、肉体は2歳児だ。

一日のうち13時間は睡眠時間である。


俺は眠ってしまった陸をおんぶして宿に連れていき、ベッドに寝かした。

そして、一人で街に出る。

俺にはやらなければならない事があるのだ。


「いらっしゃいませ~、あら? 子供は?」

「この店に、猫耳族はいるかい」





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