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2歳児にロリコンと呼ばれた男

異世界から現実世界に転生した主人公と息子が異世界に転移するので、タイトルには転生って書いてあるけど異世界転移モノになります。(ややこしい)


「パパー」

「お~、ただいま~」


仕事から帰ってきたときに笑顔で迎えてくれる2歳の息子。

疲れも吹っ飛ぶというものである。

子供がまだ居ない人にはわからないだろうが、自分の子供というのは異常に可愛い。

名前は陸という。


「パパってさ~」

「ん~、なんだい? 陸」


最近言葉が話せるようになったのだが、毎日使える言葉が増えていく。

成長著しい時期である。


「猫耳萌えなの?」


ん?

ちょっと待て、今なんて言った?

――いや、聞き間違いだろう。


「ね、猫は好きだよ~」

「そうじゃなくってさ、猫耳に萌えるのかって」


いやいやいや。

いくら何でも一気にここまで話せるようになるかね。

っていうか、萌えの概念が2歳にわかるのかね。


「実はさ、ベッドの下の本を見ちゃったんだけど」


な、何だとぉ……。

俺のお宝を!?

いや、待て。

見たとしたって、意味はわからないはずだ。

だって2歳だもん。


「あんなに猫耳ばっかりエロ漫画集めるって相当だよね」


え~!?

エロ漫画だって理解しちゃってる!?

ってかさ、喋れるのはともかく文字が読めるの?

天才かな?

神童かな?

だとしても嬉しくねえ~!

2歳でエロ漫画を読んでたってどんなエピソードなの?


「もしかして、もしかしてなんだけど」

「な、なに?」


おそるおそる聞く。


「猫耳族のいる世界に居たことない?」


その刹那、俺の脳に電流走る!

こいつ、異世界あっちから転生したのか?

様々な疑問が、それなら合点がいく。


あまりに早く使える言葉が増えること。

オムツが取れるのが異常に早いこと。

そしてエロ漫画を理解できること。


おっと、不安げな顔で俺を見上げている息子を安心させてやらなければ。


「ある。お前は転生したんだな?」


目をじっと見て話すと、ほっとしたような表情に変わった。


「良かった。そうなんじゃないかと思ってさ~。そう、僕は転生者なんだ」


マジか。


お前もか(丶丶丶丶)


俺は異世界から、この世界に転生したのだ。

といっても正直なところ、大したメリットはなかった。

向こうの世界は日本に比べたら文明も古いし、教育水準も低い。

魔法はたくさん覚えていたが、こちらの世界では発動しないし。

剣も扱えたが、剣道で活躍するなんてこともなかった。

二度目の人生なんて楽勝ムードと思われるかもしれないが、意外と普通の人生を歩んでいる。

精神的に大人だったということはあるので、多少早めに結婚はできたけどな。


「俺も転生しているんだ。向こうの世界では猫耳族の女性と付き合っていた」

「そうだったんだ! いや~、単なる猫耳フェチだったらどうしようと思ったよ」


その可能性も無くはないよな。

徹底的に猫耳にしか興味がない奴くらい、日本にはいっぱいいるだろ。


「それならロリコンでもしょうがないね」


……をい。

誰がロリコンだ。


「パパに向かってロリコンと言ったか今」

「そりゃそうでしょ。どう考えてもそうでしょ」

「ロリコンに子供ができるわけないだろ。お前のママは24歳だよ?」


ちなみに俺は、今27歳だ。

妻が3歳年下くらいでロリコンとは言わないだろう。

やれやれとでも言いたげな顔で、陸は小さい背で腕を組みながら仁王立ちになった。

威厳も何もない。ただ可愛いだけだ。


「ママの身長は?」

「143センチだ」

「ママのブラのサイズは?」

「Aカップだ」

「ママの顔は?」

「超童顔」

「やっぱりロリコンじゃないか!」

「お前それママに絶対言うなよ! 大人の女性な所に惚れたことにしてんだからな!」


うちの妻はガキっぽいのがコンプレックスで、徹底的にレディとして扱うことで結婚までこぎつけたのだ。


「ママはもっと胸の大きい人が良かったよ」

「おまっ、そのくせ未だに乳離れしてないよね!?」


そうなのだ。

もう階段も歩けて、オムツもいらなくて。

こんだけ喋れるのに乳離れしてないのは不自然なのだ。


「僕、おっぱい大好きだからさ」

「ママをそういう目で見るのやめろ!」


とんでもないやつだ。

これだから転生者ってのは。

ちなみに俺の母親は巨乳だったよ。

小さい方が良かったって思ってたよ。


「2歳児がおっぱい大好きで何が悪いんだ」


悪びれもせず胸を張る息子。

食欲と性欲を一緒にするんじゃないっての。

顔は俺に似てめちゃくちゃ可愛いが、言ってることは最低だ。

純真無垢そうな、きらっきらの目でそんなことを言わないで欲しい。


「転生する前は? 何歳だったんだ?」

「17歳」

「一番危険な年齢だな!」


考えてみて欲しい。

自分の妻のおっぱいを男子高校生に吸われていると思ったら、正気ではいられないぞ。

例え愛する息子でも許せん。


「僕は女って200歳くらいから良さが出てくると思うんだよね」

「ん? ひょっとして長耳族だったの?」


長耳族ってのは日本のアニメに出てくるエルフに似た見た目の種族だ。

4歳くらいで大人になり、そこから300年ほど見た目が殆ど変わらない。

2次成長期が非常に短い、なんともつまらない種族である。


「僕は猫耳族。長耳族の恋人がいたんだ。」


あっちの世界では種族間の恋愛は珍しくない。

猫耳族は50年かけて大人になっていく種族だ。

17歳くらいではまだ子供にしか見えないだろう。


「ところで何故17歳の若さで死んだんだ?」


俺が転生したときの死因は、いわゆるドラゴンと呼ばれるものとの戦闘である。

それなりに剣が扱えるつもりだったが、その程度では勝てない相手だった。

しっぽで跳ね飛ばされて、穴に落とされた。


「僕はわざと転生するために死んだ」


――なんと。

そんなことがあるのか。


「僕は世界を移動する魔法を取得したんだ。詠唱呪文スペルを唱えられる今、いつでも向こうに戻ることができる」


そんな魔法が。

俺は聞いたことがない。


「僕の恋人は捕らえられてしまったんだ。猫耳族の俺では助けに行くのも難しい」


ふむ。

17歳の猫耳族では身長120cmがいいところだ。

30歳になったところで、140cmになるかどうかである。

そして残念ながら猫耳族は猫のように俊敏に動けたり、走るのが速かったりしない。


「魔法はかなり自信があるんだけど……字が読めなかったし」


ちょっと恥ずかしそうに言う。

日本は識字率が100%という驚異の国だが、現代であっても字が読めない人は沢山いる。

異世界あっちではそもそも教育を受ける事ができる身分は2割もいない。

だから魔法力があっても魔法を知ることが出来ないし、練習も出来ない。

レシピが全く読めないし手に入らない状況なら、料理の腕にも限界があるように。

さらに猫は3日で恩を忘れるなんていうが、猫耳族は記憶力が良くない。

人づてに教わってもすぐに忘れてしまうのだろう。


「だからこっちの世界に転生されると言われているドラゴンの巣の穴に落ちたんだ」

「無茶するなあ」


しかし、その穴はもはや伝説ではない。

俺を含めて2例もあるのだから。


「身体鍛えて、勉強もして早く向こうに帰ろうとしてたんだけどさ」


俺の息子も立派なことを言うようになったなあ。

まだ2歳なのに。


「僕は運が良かったよ。パパが一緒に来てくれれば今すぐ助けに行ける」


む。

期待に満ちた目で見てくる愛しの息子。

そんな目で見られてもな。

俺にも生活ってものがあるぜ。

特にお前を養うために仕事をしないといけないんだ。


「一緒に来て、僕の恋人を助けるのを手伝ってよ。息子の恋人だ、娘も同然だろ?」

「いやいや、それは前世の話だろ。俺の息子に恋人なんて10年、いや15年早いぜ」


泣きそうな顔になる息子。

ところが2歳位の子供ってのは普段からよく泣くものだ。

泣いてもなんとも思わないもんね。


「えっと、ほら、異世界あっちの料理とか懐かしいんじゃない?」


健気にもプレゼンを始めたぞ。

なんとかして俺を異世界あっちに連れていきたいのだろう。


「残念ながら日本の料理はむちゃくちゃ美味いんだ、おっぱい飲んでる場合じゃないぞ」


当然だが、異世界なんて日本に比べたら食い物のレベルは低い。

品種改良を重ねて進化した食材。

世界中から取り寄せている調味料。

日々、試行錯誤されていくレシピ。

そして異常に発達した物流。

獲りたての魚がその日に都会の料理人に届くとか、魔法を使っても難しいことだ。

間違いなく向こうの王侯貴族より現代の日本人の方が豪華な食事をしている。

王様に鶏のから揚げを食わせたら勲章でも貰えるんじゃないだろうかね。


「じゃあ、歌とか、踊りとかさ」


言いたいことはわかる。

向こうの世界では唯一の娯楽だな。


「今度、映画というものに連れて行ってやろう。とりあえずエンタメで日本に勝てるわけがない」


こちらも同様だな。

歌は好みだから演歌が好かれるかどうかは微妙なところだが、歌唱力で度肝は抜ける。

映画なんて見せたら卒倒してしまうから、それは逆にできないだろうな。

落語でもやってみたら、俺でも一躍大スターになると思うね。


簡単に断る俺に、とても悔しそうな顔を見せる陸。

なにか無いかと思案しはじめた。

2歳児が一所懸命に考える姿は非常にかわいい。

顎を擦って思案する2歳児なんてそうそう居ないよ。

何か思いついたのか、試すように口を開く。


「んと、僕のお姉ちゃんも捕まっているんだ」


なにっ。

つまり猫耳族の女の子が。


「な、何歳?」

「20歳」


猫耳族の20歳は、日本人なら中学生くらいの見た目だ。

それは助けないと!


「お前の姉は俺の娘ってことじゃないか。さぁ、助けに行こう」

「ちょっと、さっきと言うこと違うじゃんか」

「ばっか、お前の恋人は他人だろう。姉は家族だろ、全然違うだろ」

「う~ん、まあいいけど、僕の恋人も助けてよ?」

「仕方ないなぁ」


やれやれという顔を見せるが、行くことになって若干安心しているようだ。

しかし、一つ問題がある。


「さて、異世界あっちに行くのはいいが、ママにはなんて言おう」

「一回の移動で時間と空間はある程度指定できるんだ。今のこの場所に戻ってくるようにするから大丈夫だよ」

「そりゃあ、便利だな」

「とりあえず着替えたり、身支度をしよう」

「そうだな、スーツ着て行ったら目立ってしょうがない」


売って資金にはできるだろうけどな。

そう言えば、異世界あっちでもお金は必要だ。

高く売れそうなものを持っていこう。

あと懐中電灯やらテントやら、便利なアウトドアアイテムを持ち込んでやる。


あ、そうだ。

陸にアニメを見せよう。

魔法というのはイメージと詠唱呪文スペルによって発動する。

具体的なイメージを持っていた方が良いのである。

そういう意味ではアニメは最高だ。

なんとなく電撃を出すのと、ピカチュウのように電撃を出すとイメージして行うのとでは威力が違う。

役に立ちそうなものを幾つか動画で見せておく。


よし、準備できたな。


「って、僕の服はなんとかならないの?」


陸の服は赤ちゃん本舗で買った、蒼い甚平であった。


「他にはキャラクターものの服しかないんだよ。目立ってしょうがないだろ?」

「これも目立つでしょ……バリバリの和服じゃないか」

「アンパン○ンとか、きかんしゃ○ーマスに比べりゃ地味だ。贅沢いうな」


子供服ってそういうのしか無いんだよね。

そしてそういうのが似合うんだよね。

甚平もめちゃくちゃお似合いです。


俺は完全に登山家のような格好だ。

実用性重視、当然。

ジーンズ最強。トレッキングシューズ最高。


「さぁ、準備できたぞ」

「んじゃ、行くよ」


陸が詠唱呪文スペルを唱え始める。

短い両手を前に突き出して周囲が青く光り始めた。

90センチにも満たない身長に対して、3倍以上の魔法陣が地面に浮かぶ。


「抱っこ」


えっ?

抱っこですか?

ファンタジー感満載のビジュアルに対して、セリフがアットホーム過ぎない?


「抱っこしてくれないと俺だけ転移しちゃうでしょ、抱っこして」


そうか。

必要な行為なんだな、抱っこ。

俺が陸を抱っこすると、俺の足元から魔法陣が発生した。

陸は詠唱呪文スペルを唱え続ける。

青い光のエフェクトが、2歳児を抱っこしている俺に広がっていく。

異世界に転移する場面にしては、なんとも緊張感の無い絵面である。

詠唱が終わると、身体が浮くような感覚がした。


フッと、一瞬のうちに移動したことがわかる。


――って暑い!

むしろ熱い!


なんじゃココは!?


周りを見渡すと、村が燃えていた。


「なんてこった……、こんな田舎の村が襲われるなんて」


抱っこしている息子による状況説明が行われた。

安全だと思っていた田舎の村に転移したのに、襲われて燃えているということのようだ。

とりあえず、鎮火したほうがいいだろうな。


「陸、ハイドロポンプだ!」

「……僕はポケモンじゃないんだけど」

「まぁまぁ、そういうイメージが大事なんだ」


そして俺は抱っこしている息子の耳元で水を放出する詠唱呪文スペルを伝える。

なお、発声しただけで魔法が発動するようなことはない。

歌詞を伝えることと、歌うことが異なるように。


俺も魔法は使えると思うんだが、抱っこしながらはキツイ。

魔法は基本的に手を使うからだ。

ちなみに、この世界では杖やロッドのようなものを使うことは無い。

いや、意外と使ってみたら威力が増したりするのかもしれないが。


陸はハイドロポンプのように水流を両手から出して家屋を鎮火していく。

確かに魔力は大したものだ。

俺が唱えるより威力が倍以上はあるだろう。

俺が覚えている詠唱呪文スペルを伝えて、陸が発動するのが一番いいかもしれない。


背後から、物音がした。


「誰だっ」

「わ、私はこの村の、あぶぶぶばばばばあああ」


振り向きざまに見た女の子は、陸のハイドロポンプをモロに食らっていた。

俺が振り向くと抱っこしている息子も振り返ってしまうので、発動中の魔法ごと向きが移動してしまったのだ。


「陸、詠唱やめやめ」

「おっと」


びしょ濡れの女の子に近寄り、本当に久しぶりに生まれ故郷の言葉を使って話す。


「だ、大丈夫か?」

「うう……」


可哀想に、orz(こんな)になっている。

……俺のせいか?


よく見ると、美しい人だ。

ま、うちの妻に比べたら大したことないが。

水に濡れて服が透けて、エロい、エロ過ぎる。

まあ2歳児には関係ない、が――あ!

陸は顔を真っ赤にしてお尻を凝視していた!


「くぉらー! 見るな!」


俺は陸の目を手で塞ぐ。

あ、お尻に犬のしっぽがある。

犬尾族か。

美女は顔をぶるぶると振って、こちらを向きながら叫んだ。


「そんな小さな子より、あなたに見られたくありませんよっ!?」


びしょびしょの美女に叱られる俺。

違うんだって、こいつ中身は男子高校生なんだって。

説明しても絶対わかってもらえないけど。

俺はバッグの中からブランケットを出して身体にかけてやる。


「あ、ありがとうございます。私はこの村の村長シバの長女です。先程カッパに襲われたのです」


カッパってのは俺の勝手な翻訳だ。

見た目が日本で言う河童に似ているモンスターの事を言っている。

簡単な道具を扱えるくらいの知能を持っていて、体毛がなく、二足歩行。

ゴブリンにも近いな。


「お、お姉さんのお名前はっ!?」


陸、お前、惚れちゃったの?

恋をしている目というか、2歳児のする顔じゃないよ。

恋人を助けに行く旅の最初でそれはどうかと思うぜ。


「私はペディ。私と一緒にあいつらを、あいつらをやっつけて貰えませんか?」

「勿論ですとも!」


叫んだのは、俺ではなく陸だ。

こいつ、美人に弱いな?

まぁ、この状況を放置していくのは俺も良い気はしないがな。











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