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美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます   作者: 網野ホウ
巨塊討伐編 第二章:異世界と縁を切りたい店主が、異世界に絡み始める

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休業開店 5

 実力者と見られている冒険者二チームから、スウォードの腕輪に施した修繕と改良の解説を懇願されている。

 それだけではない。

 その解説を真剣に理解しようとしている。

 今までそんなことを言われたことがあっただろうか。

 石が力を持っている。

 そんなことを子供の頃に喋ったことがあった。

 妄想。笑い話。

 そうとしか受け止めてもらえなかった。

 職人になってからちらっと話をしたこともある。

 面白い冗談と思われたこともあった。

 そんな話をまともに真剣に聞こうとしている者達が、よりにもよって自分が手掛けた物を利用し、目の当たりにした者達だった。

 店主は再び転寝をしようと作業部屋に向かう踵を返し、カウンターの前のソファーに深く腰掛けた。


「バカにするようなことを言ったら説明する気が失せるからな」


 店主はそう前置きして、自分なりの理論を語り始めた。


 ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※


 地水火風空とか木火土金水といったあらゆる宗教上での物の成り立ちについての考え方が存在する。

 しかしその宗教はこの世界では何かの役に立つのだろうかと疑問を持った店主は、それらを空想上の物語として話し始めた。

「他にもいろんな種類の力があって、今では石に留まらなくなったが石が持つ力を見ることが出来る。ただしあくまでも、どんな力を有しているかってことだけだ」


「でも防具全体に比べたら、こんな小さい腕輪でもあれだけ違う効果を生み出すんだもの。あ、素材を変えたのかしら?」


「でもスリング、素材が変わったら物質の密度も違うんじゃないか? 重さも変わってくる。けどそんな感じは一切ない。ただアローがいつもそばにいるような感触が……」


 ペチ、と叩く音。

 アローがまたも顔を赤くして、スウォードの腕を軽く叩いていた。


「いちいちツッコむなよ、アロー。でも……何となく体温っぽいのも感じるんだが、これはどういう仕掛けなんです? これも石の力なんですか?」


「んなわきゃねぇだろ。中の綿だよ。そいつと握手したろ? 装備した者が同じ感覚を得るためにその握力とか手の大きさとか体感して、それを再現……」


「握手しただけでその人物が持つ力加減とかが分かるのか!」


 説明を耳にした全員が目を見開いて店主に注目する。

 注目する店主はその視線を軽く受け流す。


「彼女さんからの贈り物なんだろ? ただの防具じゃないならそれくらいのことはしても問題ないだろ。で、俺にはその力を見る能力はあるが、俺の世界じゃ体や道具からその力を放出する魔術とか魔法とかは存在しない。せいぜい何かのトリックを要した奇術とかそんなもんだ」

 別の世界がある。

 『ホットライン』のメンバーは、その話を聞いた時はかなり驚いた。

 同じように『クロムハード』の全員も同じくらいに驚き、互いに顔を見合わせる。


「魔術がない……って……。どうやって魔物を倒すんですか?」


「そんなのいねぇし。話し続けるぞ」


 横道に逸れるその先の話題も時間の無駄。

 盛り上がる前に修正し、講義を続ける。


「その元素以外の力も見える。けどそれがどんな効果を生み出すのかまでは分からない。水だったら水流。火だったら燃焼。そんな想像を働かせるくらいだ。まぁゲームでそんな物は数多くあるが……」


「げーむ?」


 娯楽の数では店主の世界の方が圧倒的に多いようで、店主の世界の概念を中心に話を進めると、度々話の流れが中断されそうになる。


「とにかく、その力を内部に込めるのではなく、外部に放出する力を持つ物質やそんな性質を持つ力が必要になる。その放出の仕方は装備者に一任ってわけだ」


 あれだけの効果がある防具を作ることが出来るのに、力を発揮させたときの効果が分からないというのは、彼らにとっては意外だった。

 効果が分からなければ、効率のいい出力の仕方も分からないはず。

 なのに彼らの模擬戦では、思った以上に効率が高い戦い方が出来たという。

 店主は、彼らから模擬戦の様子をいくら聞いても雲を掴むような曖昧なイメージしか出てこない。

「俺達の戦い方を知らない店主が作った道具が、俺達の役に立つなんてどうにも不思議な話なんだが」


 アックスが首をひねる。

 彼の疑問に同意する者も少なくない。


「実際俺にはこの世界の魔術や魔法の理論はよく知らん。が、その原動力がなけりゃ魔法をかけることも出来ねぇだろ? それくらいは分かるからあとは今言った放出の仕方の調節を自由にしてもらうための細工も仕掛けるってこと」


「放出の仕掛け?」


「あぁ。魔術の戦力や原動力を中心とした力を装備品に組み込むことは当然するが、使用者の個性を見てそれに合わせて仕掛ける方がより効率的だ。だがもちろん例外はある」


「『風刃隊』の五人のことね? 確か誰にでも扱える道具を渡したって言ってたわよね」


 セレナが、店主が何度か同じような話を聞いた記憶をたどる。

 店主はさらにそれに説明を付け足した。


「同じことを何度も言うが、誰にでも扱える装備品を用意した。あいつらの場合は成長に合わせるよりも、誰からも相手をしてもらえなかったらしいからそんなもんでも十分役立てるはずだったしな。だが使用者がある程度決められた戦術を持ってて体質も成長も極端に変化することがない場合なら、使用者に合う属性をその力に加えるとさらに効果的になる。まぁまるっきり成長しない奴はほとんどいないだろうけどな」


「私達は一通り見てもらったものね。それはもちろん……」


「そう。個性に合わせてってことだ」


 リメリアは店主の意図を酌んでいた。

 『ホットライン』全員もそれは分かっていたからこそ、彼らの依頼がなかなか終わらないのも受け入れていた。

 しかし『クロムハード』は納得しない顔をしている。

 冒険者のほとんどは、理論よりも実践で知恵を身につけている。

 想像上だけの理論では腑に落ちないことも多い。


「俺だって石とかに入っている力を外に出す技術ってのはよく分からんよ。ただ、少しは見せてもらったが、魔術の効果ってのはこっちでの自然現象や事故の一部と似た現象がある。調理で火は使うし水道もある。火事や洪水だってある。その様子をそれに照らし合わせてその属性を考えると、使う者の資質や特性とかは分かるから、それを手がかり足掛かりにしてそいつに見合った道具を作るって訳だ」


 店主の世界では魔術はない。ない物を存在する物として考えること自体難しい。

 全てが予測になり、予測不能のことまで考える必要もある。

 しかしその現象をニュースで何度も見聞きしていれば、魔術の効果の予想もしやすい。


「広狭、強弱、伸縮、剛柔、曲直、動静。石やその他の物体が持つ力にこういう属性を加えることで、装備者の力量によってはいろんな効果を調節できるはずだ」


「え?」


「え?」


 これには全員が驚きの声を上げた。


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いつも見て頂きましてありがとうございます。
新作小説始めました。


勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした
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