幕間 二:異世界にない物を贈る 5
身長二メートルを超えるセレナ。それよりも大きいぬいぐるみの会計をしている店主。
それをそのまま持ち帰るのでは目立ってしょうがない。
そんな大きな商品に使うラッピングの包装紙があることにも驚いたが、あのぬいぐるみをむき出しで持って歩かれるよりはいくらかはまし。
「金髪とか目立つ部分を隠す格好で、店に入る前はほとんど目立たずに済んだが……」
それでも大きい物を持って町中を歩く人物がいれば、その正体が何者であろうとも流石に目立つ。
車で来ればよかったと後悔するがもう遅い。
町中の評判になるとは思えないが、たとえ人数が少なくても注目を浴びる間は恥ずかしくてしょうがない。
ただ、見る人全員が『天美法具店』の社長であることを知っているわけではなさそうなのは救いだった。
『法具店アマミ』に戻った二人。
「あ、おかええぇぇぇえ?!」
「おかええぇぇええぇぇっ?!」
バイトの双子は、出かける時と帰ってきた時のセレナの表情の違いにも驚いたが、彼女が抱えている、彼女の背丈より長く大きい物を見た時は言葉を失った。
「な、何なの……あれ」
「……防具とか……じゃないよね……」
二階に上がる二人を目で追い、姿が見えなくなってからようやく呟けた。
二階に上がった店主は、セレナの行動を棒立ちのまま見ているしかなかった。
セレナはすぐさま包装紙をとにかく破る。
白い大きな狐のぬいぐるみが現れるとすぐに抱き着き、そのままカーテンに寄り掛かったかと思ったらそのままベッドの上に体ごと倒れ込んだ。
「かわいいっ! 柔らかいっ! あたたかいっ! ん゛ん゛―――っっっ」
ベッドの上ではしゃぎ続けるセレナを見て、店主は肩の荷が下りた思いを持つ。
セレナは休養日。しかし店主は『天美法具店』では同じように休養日だが『法具店アマミ』では通常通り。
「……んじゃ、仕事続けてるぜ?」
そんなセレナを放置して一階の作業場に向かった店主は双子から質問攻めにあう。
「あれ、何だったんですか?」
「何持ってきたんですか?」
「いいからお前らはバイトしてろ」
作業場に入る店主の背中を見るウィーナとミールはガラス越しに作業を始めるのを見届けると、セレナが持ってきた物を予想するお喋りが始まった。
店主の『法具店アマミ』での現在の仕事は、冒険者チーム『ホットライン』のメンバーからの依頼とセレナが作った商品の改良。
作業を続ける集中力は途切れないが、同じ用件の仕事を続けるには、流石の店主でも作り方や改良の仕方の思考が煮詰まることもある。
疲労の色を隠せないセレナに、一瞬で完了する接着や溶接の魔法は頼めない。
そのため完成まである程度の期間が必要な物理的な溶接、接着の仕事も必要になる。当然一つの品物の完成にも時間を要する。
しかし作業をしている本人は、その仕事中は時間の経過の長さは全く気にならない。
気になることと言えば、作業の邪魔をされた時。
好きなことを中断させられると、気分はあまりいいものではない。
それが仕事で、しかも誰かに頼りにされていることであるならば、その品物を早く手に入れたい依頼人にも迷惑をかけることになる。
その迷惑行為が天井越しからやってきた。
「でえぇぇぇぇい!」
「キューリア! いきなり何やってんの!」
「ちょっとー! 何すんのーっ!」
集中して作業に没頭している店主が驚いて飛び上がる。
怒り心頭の店主が作業場から飛び出すと同時に階段を駆け上る大きな足音が聞こえてきた。
「何があったの?!」
「皆さん、どうした……ええぇぇぇえぇ?!」
双子も驚いて二階に駆け付けたらしい。
しかしその足音が止まった直後の二人の絶叫。
「ったく……みんなで何やってんだか。……晩飯どきだってぇのに」
店主は不快感むき出しで階段を上っていった。




