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美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます   作者: 網野ホウ
『法具店アマミ』再出発編 第十章 店主が背負い込んだもの

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『法具店アマミ』の休暇の日 準備全部済ませました

 店主はその日の夕方、『法具店アマミ』の休業日の報せをボードに書き、店の入り口にぶら下げた。

 この日を含めた十日後の予定だから、たまにしか来れない客達も一度は目にするに違いないと、店主、セレナ、シエラは考えた。


 隠れ家的な店を作る予定でいた店主、セレナ、シエラの三人の思惑は外れた。

 店内が騒がしくなることはないが、店主の居場所が周囲に知られてからは一定の賑わいを見せている。

 しかしおそらく上がった知名度が、休業日の報せを広める効果も上げる。

 長期にわたる仕事でこの地を離れた者達も、口伝でこの情報は耳に入るのは確実。

 冒険者の仕事の斡旋以外にも、店の営業の宣伝にも斡旋所は一役買っていた。

 しかし斡旋所に出向いてまで、店の休業を知らせる必要はないだろうと店主は考える。それをすることがすごく面倒くさいというのが本音ではあったが。


「で、テンシュさん。子供達は何人くらい集まるの?」


 保護者役の冒険者達が全員揃っての打ち合わせ。

 あちこちから似たような質問が来る。しかし店主からのその答えはぶっきらぼう。


「知らん。ただ、休業日はこの日からこの日までっていう宣伝をしただけだ。ガキ共には朝の勉強会の時に口頭で教えてる」


「教えてるだけ? 募集かけたり参加者名簿作ったりしないの?」


「あぁ、作ってねぇよ。ここにきて出発しなくても、移動中に合流したり現地集合希望するほうが都合がいいって奴もいた。いちいち数えてらんなくなった」


 身寄りのない子供達の名前は、姓を名乗ることが出来なくなった者も多い。

 好き勝手に名前を考えてもいいが、普通に暮らす実在する人物と同じ名前になってしまったことが分かった時に、偽証の罪をかぶることになってしまうことが多い。

 逆に自分の名前だけの場合は、それだけで身寄りのない子供、何か事情を抱えている子供として受け止められ、保護されることが多い。

 自分の名前だけならばなおさら他の者と同じになる場合があるが、彼らにとってはメリットのほうが大きい。

 姓の代わりに種族名をつけることを思いついたが、亜種の場合、他種族で混ざり合った割合によって変わってくる。

 店主はいろんな種族を目にすることに慣れてきたとは言っても、その割合の違いや線引きまでは決められない。

 参加者名簿作りは、予定を発表したその日から諦めた。


「全員がここに集まってから出発するって言うならテンシュさんの代わりに私が作ってもよかったんだけど、飛び入りするかもしれない参加者までリストに入れるのはさすがに私もちょっと無理でした」


「気が向かなくなったら参加しないって子もいたしね。人数だけ合わせればいいかなって」


 シエラもセレナもお手上げのようだ。

 しかしかといって無責任というわけではない。

 浮浪児でひもじい生活を送っていても食べ盛りの子供もいる。

 現地調達では賄い切れるはずもない。

 店主達はその量を見計らって、足りないと思われる分をあらかじめ町の店で買い求めていた。


「ふーん、じゃあそれ以外は準備万端ということ?」


「お前ら大人だけなら野宿でも十分だろうが、大勢のガキ共を野ざらしにして夜を明かすわけにもいかねぇだろ? テントとかも買ってきといた。これを使うのはこのことに限ったことじゃねぇ。俺も素材集めに出かけるときに使えると思える物を選んできたから、俺の物を貸すってことだ」


 実際そうなのだがわざわざ口にすることで、本当は子供達のために買ったがそうではない言い訳みたいに聞こえることもある。


「ツンデレとか何とかって言うんだっけ?」


「……下らねぇこと言ってねぇで、話進めるぞ」


 子供達の行動がその範囲からそれることを防止する監視役、危険な情報を察知する役などの役割分担を決め、タイムスケジュールや目的地までの移動中の休憩地点などの細々とした部分も決め、その計画はどんどん進んでいく。


 そして出発の当日を迎えることになった。


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いつも見て頂きましてありがとうございます。
新作小説始めました。


勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした
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