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美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます   作者: 網野ホウ
環境変化編 第八章:走狗煮らるる

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引っ越しまでの…… 態度が伴う舌先三寸

 それから数日経った。

 店に立ち寄った『ホットライン』副リーダーのリメリアからの連絡でシエラが慌ててやって来たり、『風刃隊』が依頼を受けてる真っ最中にやって来たりと騒々しい。

 店主も普段よりも早いペースで依頼をこなそうとしている。

 この世界に腰を据えてからの依頼はそれ以前と違い、前払いを受け付けないことにしていた。

 この世界に来たばかりの頃の店主は、依頼数が少ない分期限もしっかり守り、確実に仕事をこなしてきた。

 ところが依頼客から見れば、本当にやってくれるのかどうか心配な面もある。だからこそ、依頼客からの依頼は責任を持って要望通りに仕事をこなす証しとして前払いを受け取っていた。

 つまり受け取った時点で店主は自ら、客からの依頼に責任を持つという宣誓をしたということでもある。

 しかし今では前払いを請求しないし受け取りもしない。

 巨塊事件が収まってから店主の話が広まり、依頼数が段違いに増えてきたのだ。

 そして無理な依頼でなければなんでも受け入れる窓口役のセレナの性格も相まって、依頼は聞くが、すぐには取り掛かれない。いつ取り掛かるか分からないしいつ達成するかも分からない。

 ひょっとしたらその依頼の仕事が出来ないかもしれない。

 そんな状態に陥ってしまった。


 だが依頼する側もその状態を理解してくれるようになる。


「予約がそんなにあるならしょうがない」「出来たらいいなと思ってるだけだから無理するな」


 職人としては不本意だが、店主を労わるそんな声も増え始めた。


「だってこんなに依頼が殺到するなんて想像できなかったもん。だってテンシュの性格、アレだし」


「アレとか言うな!」


 職人としての腕は確かなのだから、客から頼りにされ、その店からいい評判が流れるのは時間の問題であるが、当人たちはそこまで先を読むことは出来なかったようだ。

 評判が評判を呼び、常連客が常連客を生み出す。

 そしてどこからともなく聞こえてくる『法具店アマミ』の立ち退きの噂。

 七日間の休店は、そんな彼らが二人の行く末をに心配させることとなり、再開してしばらくは来店客数に占める買い物客数の比率が下がった。


「例えば商店街の組合から正式に、引っ越しの要望とか出されたら引っ越しに本腰入れるけどな」


「私はついて行きますからねっ」


「やだよ。面倒くせぇ」


 押し掛けて弟子入りしたシエラを突き放す店主。

 その経緯の途中で、店主の人格を疑うこともあったシエラ。

 店主に接する姿勢が変わったことで、店主も多少当惑することがあった。

 店主が彼女にそう感じるのも、彼の性格上致し方ないことだろう。かといって、彼女の行動は彼女が決めることだから店主が拒絶しても、ついて来る者はついて来る。


 シエラに対しては特に問題はない店主の言動。

 だが、引っ越しについては店主の言葉はどうか。

 要望があったら本腰を入れる。しかし要望がない限り引っ越さないとは言ってない。

 ゆえに嘘ではない。

 そんな防御理論でも用意しているのだろうか。表情は全く変わらない。


 シエラの生活も、休店前同様『法具店アマミ』二階での住み込み生活に戻る。

 店主とセレナの二人きりの時間はこれまでたくさんあったので好き放題にいろんな話が出来たが、シエラが再び混ざったことによって、出したい話題が制限された。

 素材が採れる所を探していたとは周囲に触れたが、二人が首都に行ってきたことすら誰にも知られていないのである。


「テンシュー、あの人から遠話来たよ」


「エンワ? 何だそりゃ?」


「え? テンシュさん、遠話知らないの? ここで何年暮らしてるのよ」


 営業時間中に二階からセレナが店主に呼びかけ、それを理解していない店主に驚いているシエラ。

 二人からの簡単な説明で、店主はそれが電話と同じ役割を果たすものと理解した。


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いつも見て頂きましてありがとうございます。
新作小説始めました。


勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした
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