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美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます   作者: 網野ホウ
巨塊討伐編 第一章:「天美法具店」店主、未知の世界と遭遇

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店主とエルフは互いの世界を知る 9 『天美法具店』でのトラブル、解決に向けて

 セレナの世界で軽く一仕事を終えた店主は『天美法具店』に戻る。

 店の中の時計はセレナの言う通り、確かに移動する前と同じ時刻を示していた。


「うまく時間のやりくりをすれば、こっちでもそっちでも普通に仕事は出来るってことか。睡眠時間も減らさずに済むし欲しい石も選び放題か? 瓢箪から駒ってやつだな」


 岩の撤去も随時急かすことも出来る。ようやく安心材料を手に入れられた。

 そのことから、『天美法具店』での宝石岩騒動は一つの落ち着きを見せる。

 異世界のことを明かすわけにはいかない。

 下手に触われるわけにもいかないし、岩の力が飽和状態になる可能性があることも伝えるわけにはいかない。 

 そして店主はセレナの名前はまだ伏せておいた。

 その上で従業員達を説得した。


「下手に触ると手垢がつくしな。採掘者でもある所有者はそのうち来店すると思う。産地も、まだ知られてない場所だから報せないで欲しいとのことだ。ちなみにその場所がどこかは、私は聞いている。当然……」


「知られていないってんなら採掘場が荒らされる可能性もありますね。歴史的に重要な場所でなきゃいいんですが……」


 先代からの従業員で、今では主に営業担当の注連野陵子が最初に反応した。

 その業務上いろんなところから多くの知識を仕入れてくる。

 浅いながらも店主の専門である宝石関連の知識も身に着けているし、多岐にわたるサブカルチャーの知識量はなかなかのもの。おまけに九条と同じくらい気が回る。

 店主が考えもしないそんな方面にも視野を向けてきた。

 ところが彼女の発言は、社内の身内ばかりではなく第三者の宝石業関係者から産地の追及をされたときにどうするか、という先回りの対策を求めて意見。

 それに店主は、所有権もない上一時的に置かせている立場でもあり、余計なことは口にしない対応を、という対案を出す。それには全員異議なしの意を表した。

 だが店主は他にも秘策がある。

 その店主の提案は、あくまでも受け身の姿勢。

 部外者からそんな質問をされないようにすれば、店主の対案も杞憂で済むはず。

 そしてそれは従業員達への秘密とし、この日の会合も終わって従業員全員の退社を見送ったあと、その行動に出た。

 商店街が寝静まったのを確認すると懐中電灯と何色かのペンキを持ち出して、宝石岩に塗装を始めた。

 三時間ほどしてその作業は完成する。

 どんな生き物をモチーフにしたのか分からないが、ゆるキャラのようなキャラクターがその岩に描かれた。

 そして『ペンキ塗りたて』の看板を立て、秘策は完了。誰が見ても宝石には見えない。

 この宝石岩が店の前に鎮座してからというもの、店主の立場はなぜか悪くなっていった。

 そこに住んでいてそんな異変に気付かなかったのかということと、宝石についてはうるさい店主がその岩の話題になると口数が減っていくことに不信感を持ち始めたからだ。

 それが翌朝から好転した。


「何のキャラですかこれ」

「何か、可愛げがありますね」

「名前つけたらどうでしょう?」


 しかも定期的に配色を変える予定を考えている。

 それによって、常にペンキ塗りたての表示は必要になるので、誰もそれに触ろうとしない。

 やんちゃすぎる輩が蹴りを入れたりするかもしれない。

 しかしそのペンキがつくので犯人はすぐにばれる。

 粗方店主の心配事は解消された。

 それどころか、新たな悩みの種を生み出してしまった。

 普段から閑散としている商店街組合の人達から、商店街の目玉にできないかという相談を持ち掛けられるようになった。


「手のひら返しにもほどがあるだろうに。……それにしても、力の抽出さえ出来れば飽和状態からの爆発は避けられそうだよな」


 岩がもたらす店主の心配の種を何とか減らそうと自分なりにあれこれ考えるが、結局のところセレナが動いてくれない事にはどうしようもない。

 確かに理論的には、宝石岩を利用すれば飽和状態になるかもしれないその力の量を減らすことは出来る。

 だがセレナがこの店に来ることで、異世界の存在を知られて自分の立場が面倒になるのも避けたい。


「危ない橋を渡らなきゃならない事態じゃないから無理はしないでおこうか」


 作業場から、自分が塗装したゆるキャラに親しみを持ち始める従業員達を見守る。

 とりあえずは店主の秘策は見事に成功。

 店主の絵心のセンスまで褒められるおまけ付きとなった。


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いつも見て頂きましてありがとうございます。
新作小説始めました。


勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした
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