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美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます   作者: 網野ホウ
巨塊討伐編 第三章:セレナの役目、店主の役目

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客じゃない客の置き土産 6

 体が宝石で出来ている魔物は同種の魔物よりも格段に強力。そして同種の自然に産出される宝石よりも硬度や輝度が高く価値もある。

 市場では投資の対象の一つにもなっているようで、その価値を低める店主の作業を見た調査員二人はその残骸を見てとても残念そうに感じているようだ。

 店主の作業で作られた物は、本来の形の周りが削られた太い円柱。

 その真ん中には穴が開けられ、貫通されていた。


「何と言う、勿体ないことを……」


 そんな調査員をセレナは部屋から追い出し、店主を作業部屋から急かして部屋から連れ出した。

 そして今、カウンターの前のソファーに店主とセレナが並んで座り、調査員二人がテーブルを挟んで店主たちと向き合う位置で座っている。


「テンシュ、見覚えはあると思うけど……」

「覚える気はねぇよ?」


 紹介も出鼻をくじく店主。これだけでどんな人間かの紹介は為されたようなもの。


「こんな人ですいません……で、こちらが調査員のチュレガーナさん、ギャッカーさん。……テンシュ、この二人とも妖魔族なの」


 妖魔族という一括りだが、その姿は多種多様。

 同じ姿の者が少ないということと、その者達同士で子孫を残すという意識がほとんどない。そんな共通点がある。いつの間にかどこからか出現し、その姿のまま成長しないという特徴もある。


「調査員って割には随分きちんとした身なりをしておられる。うちのモンは汚れてもいいような恰好をしてるが、上から指図するだけの人達かな?」

「作業用の服をその上に着たり脱いだりしてるだけよ。何いきなりそんな嫌味を言ってんのよ」


 黒い上下のスーツにサングラス。一見どちらがどちらか分からない。が、茶を飲むその動きで、チュレガーナと呼ばれた男の方の手が長いことが分かる。


「で、テンシュさんが所望しておられる地図の事なんですが、こんな簡略な物しかなくて……差し上げますのでお納めいただけたらと」


 ギャッカーと紹介された男がテーブルの上に出したのは、いくつかに分割されて描かれている地図。

 ほぼ半円から均等な感覚で四方向に真っ直ぐ伸びる線。その四本の線すべてが途中から枝分かれして半円にむかっている図。

 一本の線の拡大されたものという説明がついた図は、洞窟の長さと広さの収縮図。ほぼ直線だが枝分かれした先は下り坂になっている。

 枝分かれした後、ほぼ水平に伸びる洞窟と下りた先の洞窟の二つの絵が別に描かれている。それぞれの絵の所々に赤い丸がついている。


「よし、こいつをコピーして、コピーした奴を鼻紙にしよう」

「……いちいち嫌がらせになるようなことしなくていいからっ。それと、言われたとおり持ってきたわよ。石」


 セレナはカウンターの上に石を一列に置き始める。列の一番右と一番左に一個ずつ。そしてその間の幅が均等になるように四個置く。最後のその中心に一個置いて、手にしてきた石をすべて並べ終えた。

 入口から奥に行く方向で、岩石の一部、橙色の石、白色の石、赤い石、黒く輝く石、緑の石、黄色がかった岩の一部の順。


「地図に赤い印ついてるでしょ? その位置でこの石を拾ったってこと。拾ったと言ってもテンシュの指示通り、転がってある物じゃなくて大きな岩を割ったり、半分くらい埋まってた物を掘り出してきたから」


 その印は一目見た後、トンネルの一番奥から採った石を一個ずつ手に取って注目する店主。


「……これ、御影石じゃねぇか? 墓石の材料になるんだが、この世界じゃ墓は作ってねぇか?」


「墓? とは?」


「あ、多分テンシュの住んでる所で使われてるものですよ。ね? テンシュ」


 セレナは店主がどこから来たかを調査員には詳しく伝えていないらしい。

 それはそれで面倒な事にはならないだろうと店主は判断し、石の判別に集中する。


「……入口から採ってきた石は堆積岩か。まあ泥から水分がなくなって固まった岩だが、そんなのもあるし花崗岩もあるし……ってそんな科学者っぽい人はいるだろうからその判別は無用か。となると……」


 一つずつ見つめ、触り、手に取りじっくりと観察する店主。それを見守る五人。


「入口の石と一番奥、それから黒。こいつがちょっと……」

「ちょっと……何でしょうか?」


 ギャッカーが即座に反応する。が店主の返答は鈍い。


「すべての石には力がある。ただ強弱の差はある。そして関知しづらいほど微弱な力を持つ石もある。だがもともとそういう力を持った石なんだが……」


 言い方を迷っているのか言葉が出てこないのか、店主は腕組みをしてしかめっ面で宙を見る。


「力がない、ということ?」


 セレナが、持ってきた石には何の手掛かりもないのかという不安を持ちながら質問をする。


「いや、力はすべての石が持っている。けど、元々は違うっていうか……あぁ、そうか。こいつと同じか」


 堆積岩と判別した石を手にする。


「石が力をいつ持つかってとこまでは分かんねえ。けど、そうだなぁ。例えば……そうだなぁ……。冷たい力と熱い力を両方同じ場所から放出する魔術ってのはあるか?」


「意味はないわね。防御壁で重ねて出すことはあるけど、混ざると効果は消えちゃうもの」


「石に宿る力は自然の中で得られるはずだから、そんな正反対の属性は一緒には身につかないはずだ」


「でもスウォードの防具には正反対の属性の七種類を付属させたんじゃなかった?」

「スウォードって誰だっけ?」


「……テンシュ……それはもういいから」


 今日も今日で真面目な話を始めても、店主は相変わらずだった。

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いつも見て頂きましてありがとうございます。
新作小説始めました。


勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした
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