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定年後のウェクアップコール

作者: 三好英治

定年後、全ての責務から解放された地方のホテルマンが体験する宇宙旅行。

   定年後のウェクアップコール 

              三好英治

 いやぁー、本当に長かった本当に辛かった、地方の小さなホテルのホテルマンとしてやっと俺の使命を果たせたぞ、もうこれで自由だ、今まで辛抱に辛抱を重ねた結果だ、もうこれからは好きな事をし好きな事を考える毎日にするぞ、さてさて明日はどうしょうかな、明日は俺が一番気に入ってる場所で好きな音楽を聴きながら自由を満喫するぞ、現役諸君達うらやましいだろうなぁ、今日は最高の天気だ、さぁ車を発進させて出発だ、ここは香川県、面積も狭く全国的にもあまり知られていない県だ、だが俺の目指しているところは俺の家から三十分程度の所にあるまったくの穴場だ、あまり人に教えたくない俺の一番好きな場所だ、さぁ着いたぞ、ここは大串半島、瀬戸内海を見下ろし何て綺麗な所だ、車を止めて半島のなだらかな斜面を降りて中腹にある小さな桜の木の下に陣取った、桜の下の芝生に大の字に横たわった、うぁー空が真っ青だ、海と青い空と心地よい風が俺を包んでくれる目の前の桜がうっすら赤く染まり風に揺らいでいる、まさにここは天国だ,ありがたい本当に生きてて良かったヘツドホーンから聞こえる村井秀清の心地よい音楽が聞こえてくる、まるで世界の街角を旅しているような気持ちにさせる。しかし、この綺麗な海や澄み切った空が我々の毎日生活する際の生活排水や洗濯などに使用する洗剤が海になだれ込み海を汚していないだろうか、また毎日毎日世界中で何万機と飛んでいるジェツト機が大量の酸素を消費し大量の排気ガスを排出し大気を汚している現状で、この美しい環境を守り続ける事が出来るのか本当に心配だ、しばらく景色を眺めていて、この美しい空や海そして点在する島々はいったい何から出来ているのだろうか、物質の根源になるものは何でできているのだろうか、現役の時は思いもよらなかった事がふと脳裏をよぎった、ちよっと調べてみようと持参したパソコンを開いた、何々各物質はある決まった質量をもつ粒子の集まりである、その粒子は原子だ、じゃあ原子はそれ以上に分割できないだろうか、原子はそれ以上分割できないとなっている、万物の各物質はみな同じ原子からできているって、じゃ何故、見た目も重さも違うものが一緒なんだ、空気や水や木や金までもが元は同じなんて信じられない、何故なんだ、もう少し調べて見よう、なになに原子は同じ素材で出来ている、素材の組み合わせ方が異なっているだけ信じられない、じゃビックバンで出来た、元は一つのこの広大な宇宙は物質の全ては同じもので出来ているって本当にそうなのかな、じゃ今後も宇宙開発が推進され人類がたとえ宇宙の果てまで行つても見るもの触れるものは我々の地球にあるものと同じ物質て分けか、あまりロマンがないなぁ、じゃ本当にそうなのだろうか調べて見よう、原子の構造は中心部にプラスの電荷を帯びた陽子があり陽子のとなりにプラスでもないマイナスでもない中性子があり、その二つを構成しているのが総称して核と呼ばれる、なるほど、その核の周りを回るマイナスの電荷を帯びた電子で構成されている、これが物質の根源の素粒子だそうだ、ウソーこれを人間社会にたとえれば働き続ける男がいて近くに夜の街にうごめくオカマがいて、その周りをあざけ笑うように周り続ずける女がいるって感じだな、男も女も惹かれあう、そりゃしょうがないさぁ男も女も、みんな電気を帯びているプラスとマイナスがくっくのは当たり前だ、さてさて前へ進めよう、たとえば何百万年前の恐竜の化石が発見されて骨だけであつても、その骨を構成している素粒子の電子は未だに周り続ずけてるてことか、じゃ恐竜の元の素材は未だ生き続けている事と同じじゃないか、いやぁーこれは素晴らしい、全ての物質は常に電子が周り続ずけているって事は全ての素粒子が今も動き活動をし続けているって事か、また家庭用の電子レンジは大変便利で愛用して何気なく使っているが何で食品が温かくなるのか分らないまま今日まで来たがこれも、ちょっと調べてみよう、ふーむ何々電子レンジは食物中の水分子をマイクロ波で素粒子を激しく回転させて温度を上げる、なるほど、そうしたら水は何から出来ているんだろうか、何々一個の酸素原子と二個の水素原子が結合してできた分子だ、この水分子の温度が下がると分子の動きが鈍くなり分子間に働く引力により結びつく、ええーこんな微小な世界にも引力があるって本当かな、それからどんどん温度がさがってやがて結晶となり氷になる、いやぁーこれは実に面白い、温度が上がれば分子構造がばらばらになり液体の水になる、そして、もっと温度が上がれば水蒸気となりもの凄い速度で舞い上がり、やがて雲となる、まるで童話みたいだ、しかし、どうして素粒子で造られた全宇宙は何の目的で誰の為に造られた世界何だろう我々人類だけのものとは到底思えない実に不思議だ不可思議だ、こうなれば宇宙全体の事をもっと知りたいと思い始めた時、あれれっ―、なんだか体が軽くなってゆく、どうしたんだろう体が少し浮かんだ様な気がする、何だか体が回転しながら、ゆっくりと舞い上がって行く、うわぁー上から見る大串半島も綺麗だなぁ、半島がだんだん小さくなってゆく瀬戸内海の海は上から見ると本当に雄大だ、耳から聞こえる軽快な音楽が余計に自然を満喫させてくれる、いったいこれは何だろう、上昇が止まらない何層もの雲を抜けてゆく、寒くなってきた空が青から黒へと変わってゆく、ああ本当に寒い本当に息が苦しくなってきた、まだまだ上昇する氷つくような寒さだ、何だあたりは真っ暗じゃないか空気もないし何か過ごしにくいとこだ、まだまだ上昇している、あれれれーあれは月じゃないか地上から見た月は本当に綺麗だがどんな感じなんだろうか、こんどは月に降り立った、灰のようなものが一面に降り積もっている灰色の世界だ、水も空気もない本当に味気ない星だな、こんなとこ長居してもしょうがないと次を目指そう、次は太陽に一番近い星、水星だ、いやぁー暑いとにかく暑い、これじゃぁ地表に降りられない上空から観察しょう、わぁ何んて醜い星だ、しわだらけだ巨大な盆地があるだけだ早々に退散しょうと、次は金星だ明けの明星と呼ばれるぐらいロマンあふれる綺麗な星だろうなぁ、さぁ着いたぞ、やっぱり暑い体が半分に押しつぶされそうになるくらい大気圧がすごい、それに我々の地球とは違い自転がまったく逆の回転だ太陽が西から昇るし頭が変になりそうだ、空からは濃硫酸の雨が降るし、さしてた傘がぼろぼろだ、こんなとこいられるか、そそくさと退散だ、次を目指すは火星だ今度は期待が持てるぞ、あれあれ何も無い荒地、時々変化といえば竜巻が地表を駒の様にすべっていくぐらいの現象しか起きない、ただの赤い砂漠じゃないか大したことないねぇー、さぁは次は木星だ、わぁでっかいぞう、この惑星まるで風船を膨らしたみたいだ、大赤斑が渦をまいている、中はどうなっているんだろうか、ちょっと覗いて見よう大変な嵐だ強烈な風が吹いている嵐というものは治まるものだが木星の大赤斑は昔から大きさも場所もあまり変わらずにいるのは何故だろう、地表はぬかるみに入った様に足がとられる、こんな猛烈な台風の中で景色など見る余裕はない、そく退散だ、いやぁーひどい目にあった水素分子が体中について気持ちが悪いし火がついたら一巻の終わりだ次へ行こう、太陽系の宝石と呼ばれる土星だ近ずいて見よう、これが噂に聞く土星の輪か、うーむ、なるほど、もっと近ずいて見よう大小の氷の塊が土星の周りを回ってる地球から見る輪と近くからみる輪はかなり違う様に思える、ごつごつと氷の塊がひしめきあってる、あまり魅力がないな地表面もぶよぶよだ立ってられないガスの匂いでいたためられない、次は天王星だ、この星も木星と同じガス惑星だ、しかしこの惑星は面白い自転が真横になって回転している大昔に他の天体にぶつけられて倒れて横になったそうだ本当かな、さぁ次に向かおう海王星だ氷に覆われた太陽から遠くはなれた星だ地表に降りると、いやぁ寒いマイナス二百度以下だ、あまりにも寒すぎる、この星は一面スケートリンクのようだ、これじゃ、ここでは暮らしていけない、その上吹く風が時速二千キロ以上だ、吹き飛ばせれ大気圏外へ放り出されてしまった、いやぁ凄すぎる、次は冥王星だ、星の周りに薄い五つの輪がある氷の惑星だ地表の大気は嵐で吹き荒れてる、やはり人間の住むとこではなさそうだ、つい最近準惑星に降格された非常に小さな星だ、太陽の周りを楕円の軌道を描く為、内側を回る海王星の軌道の中を入る時があるずうずうい星だ、やっと我々の兄弟星全て見終わった、しかしアインシュタインの相対性理論によれば一番質量の大きい太陽が空間を歪め地球も含めた惑星が落ちる様に重力の影響で太陽の周りを回ってる落ちて行くという事は上と下があるって事か、宇宙に上も下も無い筈だのに不思議だな、その上地球の様な豊富に大気がある惑星が軌道を回る際、歪んだ空間の面を回転しているのだから、その接触面で大気が押し潰されないのだろうかと色々考えさせられる、アインシュタインの空間を星が歪めるという歪められる空間とは何んなんだろう何かあるから歪がむんで何か構成する物質が必ずある筈だ、最近ハッブル宇宙望遠鏡の観測から宇宙に点在する銀河の距離を計測して宇宙地図を作ったところ、どの様に宇宙が構成されているか分かってきた万遍なく点在すると考えられていた銀河団の形態が泡状をしている事が分かったそうだ泡の中身は何んにもなく泡同士の接触面に銀河が網の目の様に点在する事が分かった一体これはどういう事か、重力レンズ効果の観測からも銀河団を包み込む様に暗黒物質がある事が分かった暗黒物質があるところだけしか星が生まれ無かった様だ、ということは未だ解明されていない暗黒物質とは一体全体何ぞやという事になる塵を集めガスを集め星々を集める暗黒物質というものは重力場の様なものではないかと自分は思う、これはまったくの素人考えだが、そんな気がする我々が子供の時に遊んだシャボン玉のストローから吹き出る無数の泡がくっいた形が我々の宇宙てことか、やっぱり我々の住む宇宙は物理学にもとずいた自然現象でできた宇宙の様に思えるし、この宇宙全体を作った原因は必ずある筈だ、これをわからずして自分は死ぬ分けにはいかない、もっと調べて見よう、何々宇宙の始まりはビックバンだって宇宙の最初の大きさはビー玉ぐらいの大きさと物理学者はいう、我々のいる銀河だけでも約一千億個の星が集まっている、その銀河がこの宇宙に何と二千億もある膨大な質量の元がビー玉ぐらいだなんて信じられないし、これは物理学に反しているような気がするインフレーション理論もあるが本当に証拠があるのだろうか、それに自分が一番信じられないのがビックバンの爆発のメカニズムだ、まるで散弾銃を発射したようにその星々が狭い範囲で一定の方向で膨張している、爆発の原理というものは何もない抵抗もない宇宙で三百六十度球形に広がる筈だ、なのに一部の僅かな範囲で一定方向に飛び続けているは何故だろう何か原因がある筈だ、また我々の宇宙は膨張をし続け、いずれ終着点がくる筈だ、それは何処なんだろう、もし宇宙の果てがあり、そこへたどり着いても、じゃその先は何があるのだろうか気体にしろ液体にしろ固体にしろやはり素粒子で出来てる筈だ、じゃその先はそのまた先は無限が広がっているじゃないか有限に住む我々は想像もつかない無限の世界の中で構成されているなんて信じられない話だ、だから絶対に解き明かせないものがあるという事がはっきりしてきた。さぁ-次を目指していこう、太陽系を離れて一番近い恒星アルファケンタウリまで一っ飛びだ、待てよ、そうはいかなかった恒星まで約四光年、光の速さで四年も掛かる余りにも遠過ぎる、我々の太陽系とは比べものにならない位遠すぎる、宇宙は距離という要塞で出来ている余りにも星と星が離れすぎている極端にいえばスカスカの宇宙だ、望遠鏡で見る銀河は密集した宝石箱の様に星がぎっしりと詰まった様に見えるが実際は人間にとっては退屈で広すぎる宇宙だ、我々の銀河の直径が約十万光年、宇宙全体の直径が約四百五十億光年、いやぁー余りにも広すぎる、人類が半世紀にわたり他の惑星の知的生物とコンタクトをとろうと巨大電波塔で宇宙からの電波を拾おうと観測しているが未だ発見されていないという事は本当に他に知的生物が居るのだろうか、宇宙船で世代を重ねて他の星へ行こうとしても行ける距離ではなさそうだ、じゃぁ、どうして他の宇宙を旅するんだ、慌てる事はない、たとえば我々の銀河の隣にあるアンドロメダ銀河に行きたければ待てばいい待って待ち続ければいい、そこで出てくるのがやはり重力だ、約三十億年後重力によって二つの銀河が合体するそうだ、高い経費を使い時間を掛けずに行く大変効率の良い方法だと思われるが如何だろうか、そんな呑気な事できるかって失礼しました、さて太陽の寿命は約五十億年巨大赤色惑星となって寿命を終える地球も赤色惑星に飲み込まれ一生を終える、という事は人類はどこか代替地を探さなくては生きていけない、生物が生存できる惑星を見つけなければならない、だが例え見つけたとしても、それでいいのだろうか、空気も水も豊富にあり生命に適した温度であれば一定の条件が揃えば新しい生命が誕生する可能性が非常に高い生命が誕生すれば、その生命が進化をとげ始める、そこへ我々が居住地を造りビルを建て多くの人間が生活を始めると、そこの生命は進化どころではなくなるのではないか、この事は自然の法則に反する事だ、我々はエイリアンになりたくない、地球の寿命が終える時は静かに地球と全人類が運命をともにする事が当然のルールと考える。本当に長い旅だった、やっと地球に戻ってきたぞ本当に地球はいいなぁー、何万何千種の動植物に溢れ、蝶が舞い鳥が飛び、たくさんの動物が原野を駆け巡る、海は大小の魚で溢れ美しい山々に囲まれ花が咲き乱れ快適な暮らしができる、正にここは天国かも知れない、そこに暮らしている我々はもしかすると宇宙創造の神々かも知れない古くから星を崇め星に名前を付け万点の星の空を愛した人々、その星を目印に未知の海を大航海した人々、多くの学者が全宇宙を毎日毎日賢明に観測し研究し続けながら宇宙誕生の謎を解き明かそうと努力している人達、この事は宇宙を知る事が出来る唯一の宇宙の理解者ではないだろうか、人が思いもよらないリンゴが落ちる何気ない現象から引力を発見したアイザックニュートン、まだ性能の良くなかった望遠鏡で膨張する宇宙を発見したハッブル博士、理論物理学者で空間の歪みで光まで曲がる事を発見したアインシュタイン博士、素粒子の原子核を発見したニールスボーア博士、初めて人類が月に降り立つ事ができたアポロ計画を支えた人々、また「人間とは生きようとする生命である。こう認識することで私たちはあらゆるものの生命に畏敬の念をもつことが出来る。自分の生命の中に、他者の生命を体験するのである。悪とは生命を傷つけ破壊することである。全ての生命は他の生命を犠牲にして生きているしかし人間は自分を破滅させる怖れのある他の種さえも思いやる同情心と、判断力を持っている唯一の生き物だ」と言葉を残したシュバイツァ博士や、一才と七ヶ月で病気にかかり突然目も耳も不自由となり、口もきけない三重苦の障害を負いながら社会貢献で世界中を飛び回ったヘレンケラー女子や幼い頃から神童ぶりを発揮し五歳でメヌエット、八歳で交響曲を作曲したモーツァルト未だに世界中で愛される作曲家だ、この様に人類は宇宙に目を向け医学の発展に邁進し、芸能文化スポーツの発展に日夜努力を続けている全ての人類に絶賛を贈りたい。さてさて今までの自分の疑問を知りたければ自分で探索する以外ないし、その事が出来れば俺は死んでもいいと思っている、行く方法が在ればどんな事でもする覚悟だ、そんな事出来る筈がないじゃないか、待てよインターネットの時代だ調べて見よう、宇宙飛行士募集で検索だ、いろいろ出たけど条件が厳しくって六十歳を過ぎた俺には合致するものはない、そんな事当然じゃないか、あれーこのページは何だ宇宙飛行士募集、年齢経験を問わず何だこれ信じられるか、どこの財団だ、なにぃー月面全宇宙開発推進機構って聞いたことがないが何でもいいから応募してみよう、絶対無理な話だが諦めず募集要項を打ち込んでクリックだ、暫くすると海の方から何やしらパタパタという音が聞こえてきた、その音がだんだんと大きくなってきた、何だかやかましい音だと思った瞬間に木々を揺らす風と共に頭上に大きな自衛隊のヘリが舞い降りてきた、着陸すると二人の隊員が降りてきて足早に向かってくる何か周辺で有事でも起こったのかなと思った矢先に隊員の一人が自分の名前を呼び「今、応募された方ですね」と問いかけてきた、思わず「そうですが」と答えた、隊員達は自分の腕を抱えヘリに無理やり搭乗させられた、直ぐにヘリは上昇をはじめ海の方へ方向を変えた、「何処へ連れて行くつもりなんだ」慣れないヘリの中で思わず叫んだ、隊員の一人は「命令です」と答えた、海の上を飛ぶこと数時間、隊員の一人が「到着です」と言った、自分は「ここは何処なんだ」と大声で叫んだ、ここは「種子島宇宙センターです」と答えた、そこには大型ロケット発射場があった、空に向かって聳え立つH2Aロケットが、そこに在った、今にも飛び立たんばかりのように液体燃料の白い煙が見えた、隊員達は着陸すると直ぐに腕を抱え発射場のエレベーターに無理やり乗せるとロケットの先端に向かって上り始めた、わずか数十秒で最上階まできた、ドアが開き地上を垣間見る通路を渡りロケットの搭乗口へと来た、開いたドアから宇宙服を着た二人の飛行士が横になった状態で待機している様子だった、自衛隊員が自分をロケットの椅子に座わらせ安全ベルトを締めると「我々の任務は終了しました」と答え立ち去った、両脇に座る飛行士は無表情で計器類の点検やセンターとのやり取りに追われていた、暫くすると一人の飛行士が発射準備完了とセンターに交信すると、まもなく秒読みが始まった、自分は思わず横の飛行士に「自分は何んの訓練も受けてないんです」と不安げに言うと一人の隊員が「大丈夫です」と答えた、何が大丈夫か理解に苦しんだが、もう一度、俺は問いかけて見た「日本はまだ有人飛行のノウハウは持っていなかった筈だが」と言うと飛行士が「このロケットで何度も荷物を運んでいる」と言ったので俺は「人を運ぶのは初めてですか」と尋ねると「そうです」と答えた、それを聞いた俺は余計に不安が募ってきた、一人の飛行士が「荷物を今まで事故も無く安全に宇宙ステーションまで届けている、荷物置き場の一部に人が乗れるように椅子を置いただけです」それを聞いた俺は唖然とした、間もなく轟音と共に機体を揺らす振動と共に飛び立った、重力の重みをを感じながら、ただ耐えるだけだった、一段ロケットの切り離し十数分で宇宙に到達した、俺は思わず聞いた「次の目的地は何処ですか」飛行士の一人は言った「月です」俺は「ええっ月ってあの月」飛行士は「そうです」と言った、俺は「日本はもう月まで行ける様になっていたのか」と思った、宇宙空間を旅すること五日、ついに月面上空まで来た、前に見たことのあるクレータと灰色の世界だ、一人の飛行士が「着陸船に移動をお願いします」と言った、俺は閉めていたベルトを外し頭上のハッチに向かって移動を始めた、狭いハッチの通路を体が上昇する様に着陸船の椅子に座った、下からヘッドフォンをかける指示が聞こえた、俺は耳にかけるとヘッドフォンからハッチを閉める指示が聞こえた、俺は思わず「一人で月に降りるの」と聞いた、飛行士は「大丈夫です、コンピューター制御で全ての作業をこなしてくれます我々の任務はここまでです、ご無事で」と通信が途絶えた、徐々に降下している様子だった、静かに月面が近ずくと何やら見慣れないものが見えてきた、まるで石油コンビナートような建物が幾つも見えてきた、その建物からパイプラインの様なものが真直ぐに月面を一周していた、スケールの大きさを感じた、そうこうしてる間に一つの建物の上に降り立った、自動的に下のハッチが開くと下の建物の中に十数名の人たちが見上げていた、俺はハッチを降りると一人の白髪の天然パーマのかかった老人が握手を求めて来た、老人は「ようこそ、月面全宇宙開発推進機構へ」と言った、俺は思わず「自分がどうして選ばれここまで来たのか理解できない」と答えた、老人は「あなたが初めて応募された方だったんですよ」と答えた、俺は「他に一人もお応募がなかったんですか」と聞いた、老人は「他に一人も応募がなかったんです」と答えた、おれは思った、いくらなんでも俺の様な素人を採用するなんてと思った、俺は「宇宙に関する研究をしたとかの知識はほとんどなく、自分は元ホテルマンで貴方のお食事の世話や飲み物のお世話でしたらできますが」と言った、老人は「貴方は応募要項を良くお読みにならんかったんですか、最後の項目に小さく、このプロジェクトの乗員は二度と地球に戻って来れないという条文が明記されています」と言った。俺は老眼だしメガネをかけないと字が読めないし、これはどっかの電力会社の災害給付金請求書の様に思えた、老人はこれよりプロジェクトの概要の説明をしたいと思います、その前に我々の研究施設をご案内したいと思います、それではどうぞ」と前を歩き始めた、老人の名札には一石博士と書かれていた、どっかで聞いた事のある名だと思った、大きな建物に入った、一石博士は説明を始めた「ここにあるのは超大型ハドロン衝突型加速器で、ここにあるのは大型検出器です、超伝導磁石のパイプは延々月を一周しています」、俺は何て巨大な施設だと思った、続けて「地球にある大型ハドロン衝突型加速器の検出器はだいたい四箇所に設置されていますが我々の検出器はこの一箇所だけです、地球にある検出器では思った成果を出せず思い切ってここに造り上げました、陽子ビームを入射し光の速度で衝突をさせる事で宇宙成り立ちを研究しております」わぁー凄い研究だ、一石博士は「幸い月の重力は地球の六分の一で、中の陽子ビームが重力の影響を受けにくく大量の陽子ビームを一度に衝突させる事が可能となりました、その証拠に現在行われている初めての実験でかなりの成果を得られた模様です、実験結果を覗いて見ますか」と俺をリフトに乗せ検出器の横にある丸い覗き窓まで来た、中を覗くと検出器の中心部で何か爆発が起きキラキラ光っている様子だった、一石博士は「今、実験結果を多くのスタッフで何が起きたか分析中です」と答えた、俺は思った「俺みたいな素人をこんな研究に参加させてもらえるのだろうか」一石博士は「あなたがこれからして頂くプロジェクトはグラビトン計画です、長年の研究の結果、私は空間の歪みを利用して宇宙の果てまで行ける宇宙船を開発しました」と言った、俺はそんな馬鹿なと思った、一石博士は「グラビトン計画は空間の歪みを利用して移動する宇宙船で今まで行けなかった所が行けるようになり全ての宇宙を探索し宇宙誕生の謎を解く壮大な計画です、それでは、その宇宙船にご案内いたしますと別の巨大建物に連れて行った、そこには全長三百メートルに余る長方形の巨大宇宙船が横たわっていた、一石博士は「これが私が設計した宇宙船です」と誇らしげに言った、さらに「この宇宙船は空間の歪みを捉えて行くため宇宙船がしなりに耐える設計にするのに大変苦労しました、外の造りは釘やボルトなど一切使用せず欅の木を組み合わせただけの宇宙船です、製作にあたっては京都の宮大工が三年の歳月を掛け作り上げた物です」俺は「じゃこの宇宙船で行くんですか」と聞いた、一石博士は「そうです」と答えた、俺は心の中で「空間のしなりはいいが恒星の近くを通ったら焼けてしまうじゃないか」と思った、しかし俺は宇宙誕生の謎や宇宙の果てが分かるんだったら死んでもかまわないと思ってる、俺はこの与えられた使命に感謝した、いよいよ出発の時が来た一石博士は「操縦に関しては何の心配も要りません、全てがコンピューター制御されているので、ただ貴方の思いをコンピューターに言葉で問いかければ、その回答を得る事ができます、それも日常生活の事まで管理してくれるコンピューターです、それから操縦席のうしろにある地球儀みたいな大きな物は宇宙全体を示す位置情報システムです、ほらここに赤い点が在りますがこれが我が地球です、常に空間を航海する際の位置が直ぐ分かる様になってます、それから航海の際のこれから起きる様々な出来事を記録した物やあなたの報告書などを操縦席の隣の収納箱に沢山のビンがありますので、このビンの中に入れてコルクで蓋をして船外に放り出して下さい、このビンは必ず何十億年か先に他の惑星に流れ着き拾われる筈です、以上です」と淡々と語った、俺は思った「昔の航海みたいに、わざわざビンを使わなくていいだろう」何かピントが外れている様な気がした、一石博士は「いよいよ出発です、準備はいいですね」と言った、俺は「はい」と答えた、一石博士は「じゃ出発前に記念撮影をしましょう」と俺の周りを助手達と取り囲んだ、一石博士は俺の横で舌を思いっきり出して記念撮影を終えた、周りの助手達は涙をいっぱい浮かべて俺に握手を求めてきた、宇宙船に搭乗すると外で一石博士や助手達が手を振っていた、いよいよ出発だ、ここまで来た宇宙船と違って、まるでプリウスのような静かな出だしだった、月面では一石博士達がまだ手を振っていた、月面の一石博士は手を振り終えた後、静かに助手達に言った「気の毒だが二度と戻ってこれない、だから、あの宇宙船を棺おけの形にした、本人には言わなかったが・・・、それにあの宇宙船が最後を迎えた時直ぐに燃え尽きる事が出来るように、わざわざ木製にしたんだ」横にいた助手が「気の毒に」と一言、言った、一方俺は「さてさて最初に何処に行こうか、先ずは百三十七億年前の宇宙の原点である特異点に向かってまっしぐらだ、特異点に行けば必ずビックバンの時の痕跡がある筈だ、俺の胸は高鳴った空間を横切る際に宇宙船がミシミシと音をたてた、幾度もの空間を乗り越えながら、だんだんと特異点に向かって行った、本当に周りは何にもない真っ黒闇の世界が続いた、何も無い本当に何も無い、無の世界が続いていた、やっとの思いで特異点と思われる地点に到達したビックバンの痕跡を求めて辺りを探し回ったが何一つ見つから無かった、これはどういう事だと顔を上げた、その瞬間全宇宙空間に星々が上も下も横もあらゆる方向三百六十度、我々が来た銀河を含めて遠くに星が広がっているじゃないか、まるで打ち上げ花火の中にいる様な感じだった、やはり俺の思った通りだった、我々の宇宙は一部に過ぎなかったんだ我々は宇宙の一部しか観測してなかったんだ、宇宙はもっと広大で我々の宇宙の三百六十倍の広さが在ったんだ、俺はそこで思った多分宇宙空間に長年の歳月を掛け暗黒物質が成長を遂げ宇宙空間で、ある時期飽和状態となり何かのきっかけで暗黒物質が集まり始め特異点の周辺に大きな塊を作った、重力作用で宇宙空間の無の世界で発生した、あらゆる素粒子が集まり始め何兆年もの時を経て我々の太陽の数千兆倍の大きさの火の玉が出来あがった、そして、ある時点でその球体自体支えきれなく成り収縮を始め我々の太陽の数千億倍位の大きさの時点で大爆発を起こし三百六十度球形に膨張した、そして取り囲んでいた暗黒物質も爆発の衝撃波で泡状と化し今に至っているのではないかと思った、俺はこの大爆発をメガバーンと呼んだ、何だ我々の想像以上の世界だったんだ、しかし、ここまで来て何も持って帰るものが無いのが残念だ、せめてメガバーンの痕跡をみやげにしたかった、さぁ次の目的地である宇宙の果てへの探索だ、また来た方向の逆戻りだ、延々と長い航海が続き、広がり続ける星々が近ずいてきた、その星々を通り過ぎ、また真っ暗闇の空間が続いていたが何かこの先に障害物が有るようだ、何だろうスピードを落とさないとぶっかってしまう障害物がかなり近ずいて来た障害物の側まで来た、これが宇宙の果てなんだろうか、何か黒い大きな壁のようだサンプルを取って調べて見ようアームを出しサンプルの収集にあたったがなかなか旨く取れない、かなり固いものらしい、この障害物が延々と続いている様だ、どうもチタン合金出来ているらしい、どうしてこんな所にこんな物があるんだろかと不思議に思った、もうこれ以上進めない障害物に沿って進んでいると遠くに薄っすらと灯台が照らす様な一直線の明かりが見えてきた、何だろう近くまで来た大きな丸い窓の様だった俺はその窓の透明のガラスにへばりつき窓の中を覗いて見た、ああ、人がいるそれも巨人だ数十名が何かをしている、その中の一人がどっかで見た事がある、ええー一石博士じゃないか、俺は宇宙船の中から叫んだ「一石博士」と到底聞こえるものではなかった、中では何かを喋ってる、何を話しているか聞いてみよう、その中では助手の一人が「一石博士、この覗き窓についてる木屑のような物はなんでしょうか」と尋ねた一石博士は「陽子ビーム同士の衝突によってできたゴミだろう」と言った、俺は思わず「違うゴミじゃない、俺だ」と叫んだ、一石博士が回りの助手に指示をしている様子だった「君達この超大型ハドロン衝突型加速器の始めての実験で大きな成果を得たようだデータの分析には数年掛かると思うが君たち頑張ってくれたまえ」助手達は「はい」と答えた、さらに一石博士は「今回の、この検出器の実験を終了し、次の実験に移ろうと思う」と助手達に言った、助手の一人が「はい」と答え、さらに「一石博士、検出器の電源を落としますと検出器の中の実験データが全て消滅しますがよろしいですか」と聞いた、一石博士は「かまわない」と答えた、それを聞いた俺は思わず叫んだ「一石博士、その実験を終了すれば、そこにいる全員が消滅するぞ」だが聞こえるものではなかった、一人の助手がスイッチのレバーに手を掛けた瞬間、俺は「やめろー」と叫んだ・・・耳元から村井秀清の何ともいえない軽快な音楽が聞こえ目が覚めた、辺りは夕焼けに包まれ大変綺麗な瀬戸内海が広がっていた、俺は「さて、そろそろ帰ろうか」と呟いた、パソコンを閉じようと画面を見たら「臨時ニュースです、NASAの発表によりますと初めて知的生物が発した電波を捉えた模様です、宇宙の果てから発せられた電波のようです、現在その電波を分析中です、まもなく発表があるとの事です」俺は、ええー大変な事が起きたじゃないかと思った、続いてニュースは「NASAより発表がありました、捉えられた電波の内容は日本語に近い言語で解読内容は「実験終了」との事です。

その瞬間、全ての宇宙が消滅した。               

終わり









宇宙の果てを初めて見ることができた定年後の地方のホテルマンは一体全体どうなるのだろうか?

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