異世界へ...
投稿ペースはまだ不安定なので、お許しください!
目の前の小さな少女から自分が死んだ事と、その原因が自分だという事を告げられた俺は、これから自分がどうなるのかを尋ねていた。
「本当にごめん!謝って済むことじゃないのはわかってる、ボクがいなかったら、君は死なずに済んだのに...」
ゼウス様は体が90度に折れ曲がるほど頭を俺に下げていた。
なぜなら、自分のせいで神とは言え一人の少年の人生を奪ってしまったのだから。
しかし、唯一は全く自分を死なせた存在が憎いとは思っていなかった。
相手がこれでもかというぐらい謝ってきたのもあるが、もう1つは...
。
「ゼウス様、もう頭を上げてください。」
「いやできない!君を殺したのは実際ボクなんだ!君の将来にはきっと楽しい事がたくさんあったのに...ボクは自分を許すことができない!」
そう言うゼウス様の顔から涙が流れていく。俺はそれを見て思ってしまう。とてもいい人だな、と。正確には神様だけど。
頭を下げないゼウス様に俺はゆっくりと語りかけるように言う。
「俺は、死んでしまいましたげど、1つ神様を助けた事で良いことか分からないですけど、分かった事があります。それは...」
俺の顔を見上げて来るゼウス様に言う。
「自分は命をかけて誰かを助ける事が、できるのだと。それに俺はゼウス様みたいな美少女を庇って死ねたんですから、逆に俺にとってはご褒美ですよ。」
最後はゼウス様を宥めるために言ったが、最初に言いはなった事は、唯一の本心である。学校、家、それまた色んなところで、人に優しく接し、誰かに嫌われるようなことは一度もなかった。しかし、自分は本当に優しいんだろうか、自分を犠牲にしてまで誰かを助ける事が出来るのだろうか?これが唯一の悩みであった。
実は本人は無意識で自分を犠牲にしている行動はあるのだが、無意識ゆえに、ずっと悩み続けていた。
だから、自分は命を捨ててでも誰かを助ける事が出来るのだと。これは唯一にとっては答えが出ないものであり、今はそれが解消された事で喜びすら覚えているほどだった。
そして、それを聞いたゼウス様は...。
「ユイ君...う...うああああああぁぁ!」
「ゼ、ゼウス様!?」
頭を上げたかと思ったら、飛びついてきて俺の体に抱きついて、謝りながら顔を擦りつけてくる。それを見て可愛いなぁ...なんて思ったのは秘密だ。
「ごめんね...恥ずかしい所見せちゃって。」
まだ少し顔が赤いがゼウス様は落ち着きを取り戻していた。
「いえいえ、とても素晴らしい体験をさせてもらいました。」
美少女に泣きながら抱きつかれるという。
「もう...恥ずかしいから忘れてね。」
無理です。というかそれより...
「ここどこですか?」
今俺がいるのは公園。まだ空は夕焼けに染まるような素振りも見せないほど、明るいので話しをするのには不便ではないのだけれど...
人がいないのである。いや....生命体か?今は夏だと言うのにセミの鳴き声も聞こえない。ここ、いやおそらくこの世界にいるのは、俺と神様だけなのである。
「ここはね、ボクがユイ君と話す、もとい謝るための場所。ボクこんなんだけど一応神様だから。それともう1つ。キミを生きかえらせる、いや、ファンタジーなんかでよくある、『転生』ってやつさ。」
神様は朗らかな笑顔で言う。
そして、今俺は転生の準備らしきもの、言ってしまえば心構え、それと今まで住んでいた世界に未練なんかを消すための時間。
もちろん俺は神様に否定の意見など言ってすらない。というか、その言葉に興奮しすぎてちょっと引かれたぐらい。しかし、それは当然というものだと思う。俺tueeeeeeしたい訳でもないし、戦いを求めるような狂人でもないし。理由として特にはないが、異世界転生なんて物語の中でしか、あり得ない事だろうからね。
「おーい、準備できたよー。」
一人自分の世界に浸っていた俺は神様の声でハッとなる。
「こっちに来てー」
「分かりました。」
神様に呼ばれて来てみるとそこには...
「なんじゃこりゃ?」
異次元に繋がってそうな扉があり、扉は開いているものの、扉の中はブラックホールみたいになってて、なーんも見えない。
「ここに入れば自動的にあっち、つまり異世界に着くはずさ。...本当に大丈夫かい?」
その言葉に俺は頷く。未練などは捨てた。自分の中ではだけど。
それを見て神様は満足そうな顔で言葉を続ける。
「よし、もう異世界に行く前にボクがしなくちゃいけないことがある。それはキミが異世界で求めるものを、ボクが授ける。...罪滅ぼしにもならないとは思うけれど。」
ゼウスの最後の呟きは唯一には聞こえなかった。そして言葉を続ける。
「それこそ、その世界でキミの世界でいうチートって呼ばれる物でもいいし、瞬間移動、この世界での偉い地位、言うなれば王族なんかでもいい。キミが求めるものを1つ、『何でも』叶えてあげるよ?」
その言葉を聞いて唯一は混乱していた。何でもアリと言われれば悩むのは仕方ない事だが、唯一が考えているのは全く違うものだった。
おかしい。神様は優しいはず。だけど、俺が行く世界に影響を与えてまで俺にチート的な物を了承するなんて...。
そこで唯一は気づく。ゼウスが自分を殺した罪悪感にまだ苛まれており、普段言わないような事を言っているのだと。そう考えた唯一はゼウスにあえて荒くれ者のような言葉遣いにし言い放つ。
「いい加減にしてくれよ。...もうあんたの責任感とか、罪悪感とかに付き合ってたら、おかしくなっちまう。しかもよぉ、苛つくぜ。『何でも』叶えてやるだと?もう悲しくなるよ...あんたが俺をそんな目で視ていたということにな。...世話になった。もう会うことはないだろう。じゃあな。」
唯一は言葉を切り、歪んでいる扉に入り込んだ。それが罪悪感からでたものか、早く異世界に行きたいという気持ちからでたものなのかを判断する事は唯一を見れば一目瞭然だ。もちろん前者だろう。唯一はそんな気持ちを抑えながら、まだかまだかと歪な扉の中で周りを見渡す。そこで一瞬目に入ったのは、ゼウスの泣きそうな顔だった。
そして無事といって言いかはともかく、見た目だけは何にも変わらない姿で異世界ラクーナへと到着した唯一。しかし、彼の耳、いや頭に響く声がなければの話だったが。
「おぬし、一体何者だ?」
目の前を見ると、そこにいるのは...ドラゴン。唯一は知らないがこの世界、ラクーナで、最も手を出してはいけない生命体の一体として知られているモンスターだった。
唯一は思わずにはいられなかった。
(異世界転生っていう話はどうなったんだよ!またすぐに天国行きじゃねぇか!)
しかし、その考えはすぐになくなる事になる。なぜなら...「おぬし、儂と話をせんか?決して乱暴なんかはせん。話をするだけじゃ。決して、悪いようにはせんぞ?」親しみを覚えるような声で唯一へと話かけたからである。