表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

忘れられたストーリー達

異世界から異世界へ

どうも瀬木御 ゆうやです。

タイトルが適当に思えますが、温かい目で見てください。

これは別の短編の続きとなっております。


私は自ら命を絶って異世界でやり直した。



異世界に来てからもう5年も経った。

住み込みの屋敷から出てから、苦難の多い旅路を歩いた。

いろんな災害に見舞われ、様々な悪党と出会い、この世界に生息する魔物とも戦った。



長く険しすぎる道のりだ。

でも、その間に私に好意的に接してくれた者たちもいた。

私はその人たちに会うたびに自分の内を明かして話す。

一人旅が寂しいというのもあるのだろうが、そのおかげで私はより一層私が唯一恋した人物を探す旅に喝が入るものだ。


旅をしていくうちに元の世界では手にすることも無かった直剣を手にし、独学で自分に合った戦い方を習得した。


その過程で、私は多くの悪人を斬り倒したがそれは自業自得だろう。


他にも通りかかった国の親切な魔法使いから治癒魔法とやらを教えてもらい、自分の旅路はこれだけで少なくない数を助けられてきた。



そうして旅をしていくうちに、私はある狂気の魔王と出会う。


それは遠い南の大地の女神を殺し大魔王と称され、多くの魔物を使役する見た目が私と同い年くらいの者だった。


元々南の大地に人は住んでいないのだが、私は今いる場所に彼がいないのを悟ってこの地に自らの足で赴いたのだ。


荒廃した大地に、突然現れた魔王に私は驚くが、このような事態は慣れだ。

悪党が走ってくるのと同じ感覚なので新鮮味もない。



「汝はどうして旅をする? 汝が欲する者はこの世界にはいないぞ」



出会って早々に同情的で悲しげな目をした魔王が、私の目を見据えて言った。



「この世界に彼がいないのをあなたは知っているのですか?」


「汝より世界を知っている。これより先は死の大地だ、多くの者が生き絶える場所にかような者がおるはずもなし。そして、汝の想い人はこの世界におらぬ」


「そうですか…。でも、ここは私の世界とは違う世界なんですから他の世界にはいるんですね?」


「そういう話ではない。もう死の世界にいると言っているのだ」



大魔王は私にそう言って色々と話してくれました。

異世界で転生した私について。

異世界で異常事態が起きた際に呼ばれる事。

それを倒す役目がある者。

素質と資質がある者

私が大魔王にあだなす者……と。



正直私にはスケールのでかい話だった。


つまり私は、大魔王を倒すためにこの世界に転生したって事だったようです。

それを聞いて私は落胆します。


君がいなかった事に。

君は、もう二度と私の目の前に現れてくれない事に。


そう思うと、途端に全てが虚しくなった。

考えてみればそうだ。

なぜ私がこの世界にきているのに、君まで来ていると思っていたのか。

どうして今までそんな漠然とした考え方で旅をしていたのかと……、それはつまり生きようとしたからだ。


君がいると思って生きようと力を尽くした。

あの汚い世界よりもずっとマシなこの世界で、君と一緒に行きたいと思ったから。そう思ったから私は君を求めた。




つまり、最初から無いものを追いかけていたのだ。




大魔王の前で膝をついて絶望する私。

どうして目の前に大魔王とやらが現れたのか分かった。

私を殺すからだ。

無理も無い、私は大魔王が言う通りなら彼女に仇なす危険分子なのだから早めに殺しておいたほうが身のためだ。


その方がいい。

ずっと君の幻想を追いかけるよりよっぽどマシだ。

あの世で君に出会えた方がまだ良い。



2度目の死に、私はなんの後悔も無かった

だが大魔王は私に言う。



「汝は失敗するな。かつて目の前の欲望で狂気に溺れ、多くの命を奪った私の二の舞はやめるのだ……。汝なら、いつの日か愛しき者に会えるだろう、これはその為の旅だ。

汝が見てきた光景を、愛する者が笑いながら聞いてくれるのを期待していたのではないのか?」



そう言って大魔王は私にあるものを持たせてくれた。

一枚の切符のようなものだ。


「これは我が魔力で作った魔器だ。それがあれば様々な世界に行けるであろう。かつて失敗したと気付いた時に作った物であったが、時間の逆行が出来ぬ代物で狂気に暴れたが……まさか役立つとはな」


私は聞く。


「どうして私にここまでしてくれるんですか? 私は貴女を倒す存在じゃないんですか?」


私は大魔王の顔を見る。

彼女はさっきとは別に、遠い何かを見る目で私を見つめ、両手を握ってくれた。


「だって、貴女も私も別の意味があって異世界に来たんだから」


そう年相応の少女に相応しい笑顔を向けると、両手を離した。

その瞬間、私の身体は宙に浮いてどこか別の場所に引っ張られる。

引っ張られた先には、荒廃した茶色い風景一点に空いた黒い穴がある。

私はそこに引っ張られ、吸い込まれた。





私がいた元の世界と違う世界。

どちらの世界でも良いところと悪いところがあった。


元の世界には君がいて、他は無くて。

異世界では君がいなくて、他があって。


異世界ではいろんな人たちに出会って、いろんな物語を見てきた。もちろんお世話になった恩もある。



でも、結局のところ私は一つのものを求める。



異世界から異世界へと。


多分……きっと私と同じように、愛する者がいたあの大魔王が私に与えてくれたこの切符を手に、私は他の世界へ行って君を探す。


たとえいなくても。



たとえ出会えなくても。



今生で会えずとも。



死んだ時に君に話す冒険譚をたくさん用意してくる。




私は諦めない。


どんなに辛い現実があろうと。


私はずっと君を愛しているから。




----------------------------------------------------



異世界に迷い込んだ彼女はいずれ答えを導き出すはず。


ここでお話は少し終わるが、巡り合わせは続く。


誰かにとって、別の世界がある限り。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ