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予備試験2


 ボクがお邪魔させて貰った班は、結果として最左翼を担当する班だ。

 街道から順次離れていく、一番初めの分隊だった。


 各班に分かれ、50メートル程度の感覚を開けて逆V字の隊形で進む。

 最前列が1班、二列目に2班と3班、3列目が両翼に4班、5班となる。

 ちょっと今回は特別で、4班と5班の間に、分隊長と研修組と冒険者の中央がある。


 ボクと先生は4班だ。

 騎士科希望者なら、中央じゃお客さん扱いにも度が過ぎるからね。

 もちろん一人で4班を担当するという話しでは無い。

 基本的に戦闘は4班が行うけど、丁度良い一団がいたら、ボクが一人で殲滅するのが今回の試験。


 街道から離れて3時間ほどが経過した。

 今のところ戦闘は1班と、3班が2度ずつ行っただけだ。

 ゴブリン相手なので当然だが、さほど時間がかかる訳もなく、寧ろ研修組が行っている魔石の取り出しのほうが慣れていない分、時間がかかっていた。


 さらに2時間が経過したが、相変わらず、4班は戦闘せずにいた。

 左手も半分森に変わりつつあり、また正面の森も入り口が視界に入ってきた。

 すでに周囲の草も、ところにより胸の高さぐらいある。

 ゴブリンの背丈よりも高いので注意が必要な状態だ。


 そろそろ、時間の余裕が無くなってきたので、先生と1班へ移動するか相談していたところ、試験は突然始まった。


 試験開始直前に、2班が会敵したと声を上げてきた。

 ゴブリンの数が多いとの事で、念の為にと援護要請があった。

 戦闘らしい戦闘もしていなかったし、他から援護を送ると、隊形が崩れ、中央の守りが手薄になる。


 4班が援護に向かったのは、まあ妥当な判断だったと思う。


 タイミング悪く、4班が2班の援護に到着したころ、ボクの左前方から3体のモンスターが飛び出してきた。


「……先生、もうあれで良いですか?」

「……まあいいでしょう、無理しないように」


『あれゴブリンちゃう。ホブゴブリンや』

 わっ! びっくりした。いきなり大きな声出さないでよ。

 わかっているよティーナ、背丈ボクぐらいあるからね。

 でも、


「パワード!」


 まずは身体強化。

 正直なところ、上級魔法のファイヤーボールでまとめて吹き飛ばしても良いのだけど、魔力の無駄だし、この先で戦っている人達が爆発に動揺するかもしれない。

 正面から走ってくるホブゴブリンに対し、右手の掌を向け魔力を集中。


 まずは牽制から。


「ファイヤーアロー!」


 掌に集まった魔力は発動光を放ち、次の瞬間に炎の矢となり、それなりの速度で敵へ飛翔する。

 牽制のつもりで放った魔法は、意外にも中央のホブゴブリンの顔に命中。

 燃える顔の火を消すため中央の敵が地面を転がる。


「ギャギャッ!」


 仲間のダメージに動揺し、動きの止まった左右の敵。

 右手の敵に狙いをつけ一気に接近、距離を詰める。

 未だに動揺している敵に対し、腰に下げたロングソードを抜剣と同時に一閃。奴の首を刎ね飛ばす。


『グロッ!!』

 うるさいよ。


 左手のホブゴブリンがようやく我に帰ったのか、こちらへ棒のような物を振りかぶる。

 流石はホブゴブリンだね。

 ゴブリンなら反応できないよ。


 でも遅すぎる。


「せいっ!」


 左手の敵を袈裟切りにすると、上半身が回転しながら宙を舞った。

 返り血が面倒だが、仕方ない。


 火を消そうと、転がり悶えている最後の一匹を刺殺す。


 念の為、索敵魔法『エアソナー』を使うが、周辺50メートルに敵はいないようだ。

 敵の全滅という結果で戦闘は終了した。


「文句なしに合格です。流石は副騎士団長のご令嬢と言ったところでしょうか。本試験での他の生徒との模擬戦では手加減したほうが良いかもしれませんね」

「たしかに、家族旅行のイベントに、ゴブリン狩りを組み込むのはうちの父ぐらいだと思いますがね」

「そっ、そうですか。それはともかく強いて言うなら、貴女の場合は強化魔法はいらなかったかもしれません。まあ、他に敵が出てきた場合を想定すれば、間違いとは言えないでしょう」


 ホブゴブリンを認識した時に『エアソナー』で索敵したくせによく言うよ。

 そのお陰で他の敵はいないと判断出来たのだけどね。


 先生と戦闘後に、評定を行っていると、右手前方の草むらから、ガサガサという音がした。

 敵かと思い前方へ剣を向けると、少しして人影が現れた。


「あれ? 先輩じゃないですか」

「トーマス君。どうしたの? こんなところで」

「いえ、2班の戦闘がもうすぐ終わるから、魔石回収へ行けと言われまして……って、先輩血だらけじゃないですか! 大丈夫ですか!?」


 あぁこれは返り血だから大丈夫だよ。

 そう言いかけて、ボクはその言葉を飲み込んだ。

 いつの間にか――恐らくは左手の森から出てきたと思われる――オークが、彼の後ろに現れたからだ。


「危ない! 後ろ!」

「へっ? うわ! クレイガード!」


 トーマス君は、とっさに出した土魔法による盾でオークの攻撃を、防ごうとする。

 横なぎの攻撃を、真正面から受け止めようとした魔法の盾は、あっさり砕かれるも、幾分その勢いを落とす。


 まずい!


 そう思った瞬間、突然ボクの目の前に、突然魔法の発動光が現れた。

 一瞬遮られた視界が開けた次の瞬間、ボクが見た光景は、


 オークへ向かってボクの体から放たれファイヤーアローと、攻撃をくらい、宙を飛ぶトーマス君だった。


「ファイヤージャベリン!!」


 先に飛んだ炎の矢が掠めるも、対してダメージが無い。

 なおもトーマス君へ追撃を加えようとするオークを止める為、ボクが駆け出すと同時に先生の放った炎の槍が命中。


 よし。炎の槍に貫かれ、ターゲットをこちらへ変更したようだ。


 半狂乱状態でこちらへ突っ込んで来るオークを迎え撃つ。


「ンゴォォォ!!」

「せりゃぁ!!」

『くぁwせdrftgyふじこlp!!!!』


 うるさい!!




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