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貴族制度


 ティーナが目覚めて一週間が経つ。


 学校など、周囲の目がある所でのティーナは基本的に静かだから、今のところ生活に余り変化は無い。

 ただしうるさい時は、結構うるさいけどね。


 ティーナの話しは新鮮で面白い事が多い。


 ティーナ曰く、ここはゲームの世界らしい。


 ティーナのしていたゲームに物語は無かったのではないか? そう尋ねたところ、『別のゲームだと思う。残念な事に俺の知らないゲームだがな』という回答だった。


 ゲームと思う理由として、いくつも理由を挙げていた。


 例えば、彼にとっての中世ヨーロッパのような街並み、身分社会なのに、上下水道が完備している事や、その割に飲料水は井戸から汲む事などなど。


 水道の水を飲むとお腹下す人がいるから、当たり前なのだけどなぁ。


 後、何よりSI単位が云々と言っていたかな?


 モンスターの話をした時は、『よく人間社会が保てるな』と言われたが、兄様との剣の訓練や、学校での魔法の訓練を見ると納得していたみたいだ。


 ボクからすれば、魔法やモンスターがいないほうが、夢で体験した彼の社会生活は出来ないと思うのだけど……。


 そう尋ねてみると、産業革命のお陰と言っていたが、詳しい事はティーナも知らないらしく、詳しくはわからなかった。革命とは物騒だね。


 それから音姫という道具をみた時や、スーパードラッグ堂に行った時に、ここは乙女ゲーの可能性が高いとも言われた。

 まあ、ボクからすれば『ふーん』としか言いようがない。


 ティーナとの生活は、特に学校で仲の良い子がいるわけでもない僕にとっては、特段困らない――寧ろ友人が出来たようで良かった。


 そんな彼との奇妙な生活の中で、今後のボクの人生方針が決まった。


 きっかけは貴族と准貴族の違いを聞かれて、説明した時だった。



 ――――――――――――――――


 まず結論。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵が貴族。

 准男爵、士爵は准貴族だ。


 貴族は永代貴族、准貴族は一代貴族だが、それぞれ爵位を持つ者の配偶者と直接の子供に限り、貴族並びに准貴族扱いとなっている。


 制定された経緯を知りたい?


 そうだね、元々このアザル王国は150年程前に終結した、魔王との十年戦争後に作られたそうだ。


 魔王の力は凄まじく、10を超える国が滅ぼさてしまったそうだ。


 打開策が無いと人類が絶望した時に、一人の勇者が現れた。


 勇者アレク・アザル様だ。


 彼はある時は一人で、またある時は冒険者仲間と、場合によっては軍を率いて、魔王と対決した。


 最終的には、なんとか魔王を打倒した。


 150年たった今でも、その英雄譚は、本になり、授業で習い、吟遊詩人に唄われ誰もが知っている物語となっている。


 そんな十年戦争の際に先頭に立って戦った、勇者アレク・アザル様がこの滅ぼされた国々が治めていた地域をまとめて治めることを求められた。


 そして建国したのが、このボクらの国という訳さ。


 建国時に制定された貴族制度だけど、

 まず滅ぼされた国の王族や貴族が全員殺された訳ではないんだ。

 残念ながら一族郎党皆殺しだった家も多いけどね。


 とにかくそのような、元王族の後継者が公爵となり、また各地の豪族達は侯爵、伯爵となり各領を経営する事となった。


 じゃあ子爵や男爵はどういう人か?

 答えは、各領の街に代官として赴任して叙された人の爵位。

 街長という役職名で普段は呼ばれているよ。


 ようやく准貴族の説明だね。


 一代限りの准貴族だけど、一定の要件を満たすことでなれるので、毎年准貴族の人数はこの国の人口増加と比例して増えている。


 その要件と言うのも、もちろん法律で決められていて、

 ……えっとごめん、細かい規定まではわからないから調べるね。


 ただ軍や騎士団、官僚で出世したり、沢山税金を納めたらなれるんだ。


 ――――――――――――――――


 夕食後にお母様に進路を決めた事を伝えると、お父様も含めて3人で家族会議をする事になった。


 気は重いが、ボクの「心」の事も含めて話そうと思う。


 談話室にてお父様とお母様が並んで座り、ボクはその正面に座る。


 メイドのベスが紅茶を淹れてくれて退室すると、家族会議が始まった。


「母さんから聞いたが、進路を決めたそうだな。どうするのだ?」


 大きな体のお父様が、体に似合わず静かな声でそう仰られた。


 お母様は何も言わず、いつも通りニコニコしていらっしゃるのがかえって不気味だ。


 いや考えすぎだろう。追跡夢やティーナの事は知らないはずだし…


「騎士科に進もうと思います」


 何から話すべきか迷って、まずそれだけを伝えた。


「この街の騎士になるのか? まあ確かにお前には向いているが……。いやお前なら公都か、王都の騎士団かな?」


 そりゃあそこを聞かれるよね。

 ついでに、娘が部下だとやりにくそうな雰囲気。


 って、ティーナ。『お前になど絶対に屈し……おっほおおおぉおおぉぉ!!!』ってなんだよ。


 今は黙っていてよ。


「いえ……。確かにその道も考えました。ですが今は卒業したら、冒険者になろうと考えています」


 あぁーやっぱり。

 ――途端に不機嫌そうな雰囲気を、父様が醸し出している。


「冒険者か……。出来ないとは言わないが正直我が子にそんな危険なことはさせたくないぞ。なぜなのだ?」


 いやいや、騎士の兄様だって危険はあるでしょうに。


 でも、やっぱり逃げられそうにないな。

 というか、お母様はなぜ驚かないのだろう?

 あっ、こんな事思っている間にもお父様の怒りのボルテージが上がっている。


 覚悟を決めよう。


「はい。私は一刻も早く士爵になりたいのです」




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