強盗事件の顛末
「お時間を取らせてしまい申し訳ありません。ご協力ありがとうございました」
「いえ、ご苦労様です。それでボクらの馬車は?」
「門の近くに連れて来るように命じております。そちらまでお送りします」
「わかりました」
駐屯地敷地内を歩きながら、兵士さんに連れられて歩く。
事情聴取が長引き、建物を出た頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。お腹すいたな。
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最初はちょっと高圧的な兵士さん達だったが、ボクの身分を知ると手の平を返す……とまでは言わないけど、かなり丁寧な態度になった。なんだかなぁ。
それはともかく、結局、強盗達はスラムの住人だったみたいだ。
彼らの犯罪は、彼らが持っていたクロスボウ(もちろん制圧後に取り上げていた)が決め手となり、立証されたそうだ。
なんでも、一部は支給品、一部は盗品だったが、購入者本人が使っていたものがあったらしい。
街の外で作業をするので、警備員はもちろんいるし、武器も当然持っている。
けれども、警備員じゃない犯人が、自身で購入したボウガンを所持していた為、言い逃れは出来なかったようだ。
『製造番号すら削らないとは、なんとも杜撰だなぁ』
そう言ってティーナも呆れていた。
準備期間もほぼ無かったからだろうけど、場当たり過ぎるよね。
後は、彼らを雇っていた孫請け会社に、慰謝料と損害賠償を請求行うか否か、兵士さんに問われたが、断った。
そんな事に時間は割かれたくないし、下請けや元請けと揉めたら碌なことにならない。
大手は地元の有力者と繋がっているから、下手するとこの街の貴族に睨まれるかもしれないもの。
まあ、孫請け会社は遠からず潰れるだろうけど、そっちは仕方ない。
強盗達本人は、数年は鉱山で採掘の苦役に課せられるそうなので、逆恨みの事はしばらく、心配なさそう。
『戻ってきたら、戻ってきたで、元請が高給取りの仕事を斡旋してくれるさ。きっと月300万ペリカぐらいの給料が貰えるぞ。ビール一本5万ペリカする、物価の高い場所だろうがな』
それなら完全に心配ないのかな。
ところでペリカってどこの通貨なの?
『えっと。地下?』
なんで疑問形なのさ。
結局今回の一件は、骨折り損のくたびれ儲けって言葉が相応しい。
強いて言えば、金一封は貰えるそうだが、宿の一泊分程度にしかならないしね。
まったく時間を無駄にしたよ。
それでも、強盗を返り討ちにしただけなのに、場合によって、傷害罪になるという理不尽な目にあわずに済んだので、良しとする他ないよなぁ。
他ないし、彼らの処遇など今さらどうでも良いのだけれど、時間を食われたのがとても辛い。
正直、この時間になると馬車も預けられる宿を取れない気がする。
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「あぁ、ところで」
「なんでしょう?」
「サザーランド商会から迎えが来ているそうですよ」
うそ! なんで? 公都にいる事を知っているの?
あー、うん。そうか、今回の件でボクの事を照会したのか……。
そりゃそうだ。
「何やら不都合でしたか? それでしたら申し訳ありません」
「いいえ。仕方ないですよ」
まったく。それもこれも、強盗達が悪い。
……違うな。ボクの危機管理がお粗末だっただけだ。
そんな反省に思いを巡らせているうちに、駐屯地の入り口にたどり着く。
ボク達の馬車の隣に、もう一台馬車が止まっているね。はぁ。
そして一人の貴婦人がお待ちになっている。っと。
なんで自ら来るかね?
「これはサザーランド夫人。この様な場所でお待たせしてしまい大変申し訳ございません」
付き添いの兵士さんはお祖母様を見知っているようだが、門番の兵士は知らなかったらしい。
顔を真っ青にして、こちらを伺っている。
「構いませんよ。今日は孫を迎えに来た一人の祖母ですから。それよりもご苦労様です。この3人は私が引き受けますから、お仕事に戻ってください」
「ありがとうございます。小官は失礼します。改めまして、皆さま。ご協力ありがとうございました」
お祖母様と、ついでにボクらにも感謝の意を示して、付き添いの兵士さんは戻っていった。
「さて、久々ですね。クリス。すっかり大きくなって……何年ぶりかしら?」
「5年程です。なんの挨拶も無く申し訳ありません。お元気そうで何よりです」
「まだまだ元気よ。別に挨拶など良いのですよ。遠くに住んでいるのですからね。それで、そちらの可愛いお嬢さん2人はお友達かしら?」
レベッカさんも、お祖母様からすればお嬢さんらしい。
特にボクが紹介する事もなく二人が答える。
「はじめまして。フィオナ・アップルです。クリスとはパーティーを組んでます」
「はじめまして。クリスの祖母のアンナです。クリスが迷惑かけているかもしれないけれど、宜しくね」
「とんでもない。クリスには私の方こそいつもお世話になっています」
「ふふ。そう。なら仲良くしてやってね」
「はい。ありがとうございます」
……なんか上手く社交辞令を口にするフィオって意外だなぁ。あれ? 初対面の兄様にもちゃんとしていたっけ?
『つまりは――ギャップ萌え?』
もう! そういう意味じゃないでしょ。
「はじめまして、サザーランド夫人。お噂はかねがね。レベッカ・シューカーです。私は開発中の村で知り合いまして、ここまで乗せてきて貰いました」
「あらあら、それで今回の騒ぎに巻き込まれたの。貴女も災難でしたね。何かお礼をしなければなりませんねぇ」
すっかり忘れていた。
そうだ、レベッカさんに何かしらお詫びしないと。
「いいえ。有望なお孫様に縁を持てた事に比べれば、何でも無い事ですし、お礼など頂いたらバチが当たりますわ」
「あらお上手。ともかく、何か困った事があれば商会に来て頂ければ、便宜を図りますから……。ところで、今日はこれからご予定でも? 良かったらお食事でもいかがかしら?」
……あぁ、やっぱりそういう流れになるか。
「申し訳ありません。この後、ちょっと予定が入っていまして」
「あら残念。では遅らせましょう」
さっそくお祖母様は従者を呼ぶ。
最初は辞退していたレベッカさんだが、最終的に折れて送ってもらう事にしたらしい。
「じゃあね。二人とも。今日はありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございました。何かまた機会があればよろしくお願いします」
「レベッカさん。ちゃんと教えてもらったエステに行きます」
最後にまたねと告げてレベッカさんは帰った。
公都のギルドで知りあいの知人が出来たのは大収穫だね。
「さて、私たちも戻りましょうか」
「あーそうですね」
レベッカさんを見送ると、何でも無いようにお祖母様はボクの馬車に乗る。
「お祖母様。邸宅まででよろしいですか? それとも商会の方が都合が良いでしょうか?」
「何言っているのかしら? 貴女も邸宅に泊まるでしょう?」
「……そうですね。では2,3日お願いします」
ふう。仕方ないか。
お祖母様は良いのだけれど、お祖父様がなぁ……。




