ワキアシさん
深夜、受験勉強に疲れて気まぐれにコンビニに足を向けたのだが後ろから足音が聴こえてくる。コツコツコツと、ピンヒールを勢い良く踏み鳴らしたような響いた足音が。先ほどチラッと後ろを見たけどあれは、変質者だった。後ろに引き返して家に帰るのもすれ違うから怖いし早くコンビニにつかないかな。
もしかしたら、変質者さんの家が私の向かう方向にあるのかもしれないしね。ああ、こんな事なら甘味を求めて家をこっそり出るんじゃなかった。
しかし、私は甘味が大好きだ。現在2年間働いていた事と今年受験生と言う事を伏せてバイトの回数を極端に減らしてる今、お金が無いからシュークリーム様しか買えないがそのシュークリーム様が欲しいのだ。
家から少し遠いがあるコンビニで期間限定で販売されてるクッキーシューを食べなかったら甘い物好きとしてはダメな気がする。CMを見なければ良かった。いや、後から知って後悔しなかったからいや……そんな感じで出かけたのだが角を曲がり電灯が少なくなった所で気づいたのだ。
後ろを、全身白タイツで身を包みヒールを履いた男か女かも分からないものが付いてきていることに……。顔まで覆われているから怖い。
想像してみて欲しい、後ろを怪しさMAXで着いてくる人がいるのだ昼間ならともかく深夜だと怖い。しかもだ、怖くて足を早めると向こうもコツコツコツという音が早くなるのだ。
あれ、これ確信的じゃない?私狙われてるのでは?
これは、ヤバイヤバイゾ。どうにかして逃げなきゃと走り出した時肩にトンと軽く触れる何かがあった。
見てはいけない、それは分かっているのに見てしまうのは人間の性なのか肩に白い手らしきものがあった。紛れもない後ろの変質者さんの手だ。先程まで後ろの方でコツコツと音が鳴っていたから距離がまだあると安心していたのにいつの間にという恐怖。間近で見るとお腹にワキアシと書いてあって意味わからなくて怖いとか、もうパニックだ。
「毛が欲しいかいらないか」
「へっ」
「毛が欲しいかいらないか」
い……意味がわからない。何?もし欲しいとか言ったら変質者さんの毛が貰えるというの?いらない、本気でいらない。
「いっいりません」
「どこのがいらないか?」
やけに機械音みたいな声でさらに意味のわからない事を聞かれた。えっ?何事かこれはあれか 、自分の毛ならどこのがいらないかという事か?どこのだっていらないよ。
怖いけど気持ち悪くて意味わからなくて逃げようと左足をさげた時変質者さんは、ゆっくりとその白い手を私の髪の毛目がけて伸ばしてきた。
とっさに右腕で防御してしまったが変質者さんは、右腕の毛承知と呟いた後消えたのだった。
何だかシュークリームとか言ってられなくて家に帰った次の日妹だけに変質者さんに合ったことを話したら驚くような事を言われた。深夜に出かけたなんて言ったら親に暫く外出禁止をくらいそうだしあんな怖い目にあったのだ姉として妹に注意喚起をしなくてはと思ったのだ。
「お姉ちゃん知らないの?それワキアシさんだよ」
「ワキアシさん?」
「そう、友達の咲ちゃんがね教えてくれたんだけど都市伝説なんだって」
「都市伝説……オバケだったの?」
「うーん、そうなのかな?あのね、ワキアシさんは永久脱毛のプロなの。ワキアシさんに毛が欲しいかいらないかと聞かれていらないと答えた後いらない所を言えばそこの毛を脱毛してくれるんだって、何も言わないと脱毛する部分をワキアシさんが決めるみたいだね。後ね、ワキアシさんは、植毛も得意らしく……もう、聞いてるの?」
「聞いてるよ」
「ワキアシさんの特徴は、真っ白の全身白タイツにワキアシとデカデカと書かれている事らしいけど本当なんだね、後初めは深夜12時に1人で歩いていると会うらしいね」
「初めは?」
「うん、会う人は何回か出会うらしいよ?いいなーあってみたい」
「怖いから、会わない方がいいよ、んじゃ下に行ってるね」
「ご飯できたら呼んでね」
「わかってるよ」
もう、聞いてられなくて話を断ち切ったがもう1度あれに会うのはごめんだ。
私の右腕には、もう毛がなかった。もしも、あの時……そう考えるとゾッとした。
髪は女の命である