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第三話

「さて、俺の考えを聞いてくれるかな?」

「うふふ、いいわよご主人様」


 俺はヘティと房中術の訓練に努め(おかげでLv.2までは取得できた)、少しばかり満足のいったらしい彼女を抱きしめた。

 いや房中術の訓練は簡単であった。鑑定スキルで彼女の心理グラフがリアルタイムで分かるわけで。それはつまりどの部分が効果的なのかということがすぐに分かるのだ。

 一般に、一人前に上手であるのをLv.2とするのだから、今晩で俺はつまり、随分上手になったらしい。


 ヘティは流石に手ごわい女性であったし、通算でいえば俺の方が彼女に負け越した(何がとは言わないが)のだが、彼女が思わず体をよじらせて身悶えたのは感慨深かった。

 その後も続けて責め続けると、大人のお姉さんぶって頑張ってたものの枕に涎をこぼす、という有り体で、彼女の可愛らしい部分が出てきたと言える。


 奴隷命令でそれ以上壊れる寸前まで続けても良かったが(そうすれば房中術はLv.4ぐらいまで伸びていた気がする)、というかその欲求に駆られたが、それこそ本末転倒。

 今夜はあくまで相談したいことがあったのだから、節制しなくてはならない。


 ヘティの信頼度と愛情度がぎりぎり下がらない閾値まで責め立てて、結果的に丁度いいバランスで落ち着いた。


「俺が何の話をするのかは分かるよな」

「奴隷を冒険者に、でしょ?」


 打てば響く、この賢さこそヘティの良いところだ。

 思わずヘティを撫でてしまい「あらあら、年下君に頭なでられちゃった」と苦笑されてしまった。


「そうそれ。俺はカイエン他五名程度を奴隷から冒険者へと解放させてやりたいんだ」

「へえ」


 なぜ、とかどうやって、とかを聞いてこない代わりに、彼女は次を待っている。

 俺は言葉を選びつつ、なるべく正確に自分の考えを述べるように噛み砕いた。


「まず、今度のサバクダイオウグモの討伐で、彼らに頑張ってもらって実力をアピールする」

「ええ」

「もしかしたら衛兵にスカウトされるかもしれないが、それはそのときだ。俺の狙いはその功績をもって、彼らを冒険者に登録させ直せないかと思ったのさ」


 まだふわっとしか構想が出来ていない方法。

 でも、初めてのキャリアコンサルティング。どうかな、と返事を待つと、彼女は真っ直ぐこちらを見ていた。

 口元が微かに動いている。「貴方がやりたいことってこれなのね」と。


「ん?」

「うふふ、ご主人様って優しいのね」


 ヘティはそう言って抱きついてきた。


「でもご主人様」


 同時に、近くなった距離のまま彼女は諭すように喋った。


「奴隷になるような人間は訳ありよ。冒険者ギルドが簡単に認めるとは限らないはずよ」

「ああ、その通りさ」


 そう、話のもっとも難しいところはそこなのだ。

 訳ありのすねに傷を持つ奴隷。たとえ経歴にやましいところがなくても、奴隷であったということそれ自体がマイナス要因である。

 彼らを一般人として再起させるのは困難だ。


 しかし、犯罪奴隷と他の奴隷は違う。

 犯罪奴隷は犯罪者であることを示す刻印が彫られる。それは二度と消えない入れ墨だ。

 他の奴隷が入れられる奴隷刻印は、その犯罪を示す紋様がない。


 そして、幸いなことに、普通の奴隷上がりで冒険者になるのは困難ではない。

 戦闘奴隷から任期を終えて解放された奴隷が、ならばその体という資本を活かして金稼ぎを、となると冒険者になるのは普通らしい。

 よって冒険者ギルドは、奴隷に対する風あたりはあまりないほうなのだ。


「でもヘティも知ってるだろうけど、冒険者業界は奴隷上がりに対する偏見は余りない世界なのさ。俺がこの世界で初めて、奴隷キャリアコンサルタントするには打ってつけとも言える」

「キャリア……? うふふ、まあいいわ。そっちより大事なことがあるの」


 キャリアコンサルタント、という言葉の意味が分からなかったようだが、彼女はそっちよりも本題の方を鋭く指摘した。


「そう、普通の奴隷上がりなら問題ないの。でも一人だけ、犯罪奴隷がいるじゃない。カイエンよ」

「……ああ、そうなんだよ」


 そこが問題なのだ。

 カイエンは元犯罪者。犯罪者から更正した、という第三者からのお墨付きがないとたとえ冒険者業界ですら、彼を受け入れてくれないだろう。


「つまり、カイエンが過去にどんな罪を犯したのか調べる義務があって、それの反省を示す証拠も必要になる。骨が折れるわね」

「普通ならね」


 ヘティの声音はあきらめが入っていた。

 カイエンも口にしたくない過去があるだろう、そんな犯罪の過去など喋りたくもないだろう。

 更にはその犯罪の反省の証拠だなんて、どうやって持ってくればよいのか、無理なものは無理だ。


 全く正しい判断だ。

 普通ならば。


 しかし俺には、鑑定スキルというものが存在する。

 カイエンの過去の罪ならばどんなことをしてきたのかを洗うことが可能なのだ。


「普通なら?」

「はは、きょとんとした顔もかわいいな」


 新しく発見をした。不意打ち気味に褒めると、ヘティは弱い。

 ぽっ、と頬を少し染めた彼女は「意地の悪い人」とちょっと拗ねてしまった。


 俺はヘティの機嫌をとるために、ちょっとした駆け引きを要求されてしまった。

 因みに余談だが、何故か知らないが今夜ヘティを誘ったときの駆け引きやこの機嫌取りの駆け引きによって交渉スキルがLv.1になったことは秘密である。






「カイエン」


 俺が声を掛けたとき、カイエンは胡乱げな表情だった。

 その表情、何かあったのか、と思ったが違ったようだ。


「旦那、女の臭いをさせるたぁ隅に置けないな」


 ああ、リザードマンは鼻が利くのか。

 俺はそう考えて「はは、分かるか、流石」と口にして、一瞬だけポーカーフェイスを要求されてしまった。

 カイエンから警戒心を感じ取ったからだ。


(昨晩の会話、聞かれてたか?)


 カイエンが警戒するとしたらそれしか有り得ない。

 過去の犯罪を聞き出す。それはカイエンにとっては嫌なことでしかないのだろう。


(だが許せ。俺には、鑑定スキルがあるんだ……)


 ちょっとだけ良心がとがめたが、俺は鑑定スキルを使うことにした。

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