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1月22日 真夜中のセンチメンタル的ななにか

 こんばんは☆


真夜中すぎて明日に突入しました。。

銀の砂を撒き散らしたような星々が、とっても綺麗な夜です。

星空のきらめく大海原、浪漫です。


けどね。


プリンセス号の乗組員、乗客一同、激しい船酔いで総倒れです。

元気なのは、船酔い対策で常に酔っ払いのドワーフさんと、常に空中に浮いてる私とギンさんのみ。

冷静沈着な船長のリグリアスさんすら、全身が青ざめてます。

毅然とした態度でいるのは、さすが年の功なんでしょうかね?


 全員船酔いの原因は、もちろん巨大人魚姫。

船の碇を肩に、強力なドルフィン泳法で進んだ結果です。

乗りなれないモーターボートの速度は、異世界の人々には刺激が強すぎたみたいです。

巨大人魚姫には、望むだけの魔力を進呈して海の底に帰っていただきました。

風の精が皆無だった海域を脱出できたし。

類まれな美女とはいえ、巨人が側を泳ぎ回るのって落ち着かないしね。

けど、船酔いのせいでプリンセス号は投錨中です。

いい風きてるんですけどねえ。


「この現状、誰のせいか理解しておるか?」


「人魚姫、真面目すぎなせいですよね」


「…そうくるか、人の仔よ」


「なにか問題でも?」


「もうよい」


心底疲れた様子で、ギンさんはそっぽを向きました。

ほんとは魔力調整しそこねて、海の精の姿を巨大化した私のせいだってこと。

よくわかってます。


 精霊の力を使うには、姿を固定化しないといけないそうです。

精霊はただあるだけの存在。

魔力のような存在で、丹田で練った魔力を与えることでこの世に出現します。

その姿を固定化するのが、魔法使いの思い描く力なのだそうです。

細かいことはすっとばすとね。

私が人魚姫を想像して、精霊の姿を固定して。

魔力を与えて現実化して、精霊の力を借りる、

私がしたのはこれなんだけど。

魔力を与えすぎて、巨大な人魚姫にしてしまったってことです。

あと、さらに魔力を与えたから、あの人魚姫は幻獣のような存在になっちゃったようです。


「これよりあの者は、魔力を糧として生きていこうぞ」


「ヴァルノーラの世界にあるマナを取り込んでってこと?」


「然り、もしくはサツキのような魔法使いから魔力を貰い受けるか」


「仲間もなく、たった一人でってこと? ちょっとかわいそうかなあ」


「もはや主の手を離れこの世に在る者ぞ。心配はいらぬ。

 もう休むがよいぞ。明日になれば皆も動けるであろう。

 今宵は吾が見張りにつこうぞ」


「うん、そうする」


 お気に入りの船首に移動して、全身に魔力を纏って寝ころがりました。

ふわふわ浮いてるから、ハンモックで寝てる感じかな。

なかなか、いい感じです。

そよそよと、潮の香りのする風が頬をなでていきます。

満天の吸いこまれそうなの星空には、私が知る星座はひとつもありません。

今、私がいるのは異世界ヴァルノーラです。

いろいろあって気にしなかったけど、私は独りなんだなって。

独りなんだなって、実感してます。

懐かしの我が家、遠く離れたせいもあるのかな。

家族と友達、懐かしい日本が、普通の日常が。


…恋しいよぅ。


海底に潜っていく孤独で巨大な人魚姫と、魔力だけが取得の私と。

ちょっとだけ、重ねてしまったのかな。

久しぶりに夢の中で、とーさん、かーさん、にーちゃんと食卓を囲む夢を見ました。

3DKのあるふれたダイニングの、4人がけの私の席に。


必ず帰ってみせるんだからね。

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