1月19日~21日 ストップ・ザ・プリンセス?
おはようございます~。
止まってますよ、困ってますよ、プリンセス号が。
三日前の夕方まで、快調に航行してた麗しのプリンセス号ですが。
今はぴくりとも動きません。
風がちっとも吹かないのです。
プリンセス号は風を受けて進む帆船ですから、風が止まると船足も止まります。
おまけに海流と海流の潮溜まりに、すっぽり嵌まり込んだみたいなのです。
「こりゃまあ、見事なベタ凪じゃのう、ガハハハ~」
と、ドワーフさんは豪快に笑ってました。
「暫くよき風が吹くのを待ちましょう」
と、リグリアス船長さんは真面目に宣言しました。
バンドルカさんに貰った風の水晶球、あれを使えば風を呼べますけどね。
なるべく使わない方向でって、船長さんが決定しました。
貴重な魔道具は、なるべく温存するみたいです。
それにベタ凪など、航海中ではよくあるのだそうです。
「私が魔法で風を起こせばいいんじゃないでしょうか?」
「やめよ。風の魔法は知らぬであろう。暴走したらなんとする!」
と、ギンさんは真剣に止めました。。
三本の尻尾で私の頭をはたくという、おまけつきです。
「……風の代わりにハリケーンがきそうにゃ」
と、シーリスさんは心配顔で、かなり凹むことを囁きました。
「それはまたゴーカイじゃのぉ、嬢ちゃん、ガハハハ~」
と、とどめをさすドワーフさんです。
…そんなわけで。
そよとも風が吹かない海上で、つかの間の休日初日。
きびきびと働いていた船員さんたちも、のんびりと甲板掃除などに勤しんでます。。
見張り台にいる船員さんも、どこか手持ち無沙汰みたいですね。
魚人の船員さんたちは、甲板から銛を片手に素潜り漁へ。
たくさんの戦果で、初日の食卓を豊かにしてくれました。
リグリアス船長の招待で、やっと豪華海鮮御膳食べられたのですよ。
満腹、満足、揺れないってすばらしいです。
人間たるもの。
やはり、二本の足で立って歩かないといけませんね。
で、二日目も同様に過ごしました。
けど、風が吹く様子はナッシング。
鏡面のような青い水面が、ちょっと悲しくなるような一日です。
はるか遠くに、リフレ王国がある陸地が見えてるだけにね。
「リフレまで飛んでいこうか、ギンさん」
「そこまで急ぐこともあるまいぞ」
「そうだねえ」
と、船の舳先に陣取って、のんびり会話した二日目の夕暮れでした。
で、三日目の朝…つまり今日なんだけど。
やはり風は吹きません。
「…どうもおかしいですね」
早朝から舳先に立ち、空を見上げてたリグリアス船長さん。
眉間に皺をよせでます。
たぶん皺をよせてるんだと思う…眉間部分の鱗がピクピクしてるから。
「風の精霊の気配がしません。三日も気配がしないなど、今までありませんでした」
「魔物の仕業かもしれぬな」
船長といっしょに舳先にいたギンさんも、同じように空を見上げてます。
寝すぎて目が覚めた私も、ギンさんの隣で空を見上げてます。
「サツキよ、精霊の動きが見えるか?」
「んー」
空を見て、海原を見て、ギンさんを見て、もう一度海原を見ました。
精霊ってなにかな。よく解りません。
「船長、すまぬが風の水晶球をサツキに渡してくれぬか」
「お安いごようですよ。ギン殿」
リグリアスさんが差し出したバンドルカさんの水晶球。
手のひらに包み込める大きさです。
「見よ、よく見よmとくと見よ」
ギンさんに従い、水晶球を見つめました。
見た、よく見た、とくと見たよ、師匠!
見えたよ、ギンさん。
中心に渦巻く魔力、その中できらめく小さな小さな何か。
「見たか?」
「見ました」
「それが精霊ぞ。もう一度、海と空を見よ」
「はい」
空を見て、海原を見て、ギンさんを見て、もう一度海原を見ました。
精霊…海にはいるけど、空にはいないです。
ううん、はるか遠くにはいるけど、私達の周りには…精霊はいません。
「ギンさん…」
「うむ、吾とサツキの邪魔をするモノがおるぞ」
きゃあ、こわいー。
と、心の中で棒読みしてみました。
さあて、今度は何がでるのかな?
ながらくお待たせしてすみません。
ゴールデンウィークは千客万来…。




