1月8日 会議は踊っております
7色5組35本の対魔結界付のサランラップ。
外箱も虹の七色でカラーリングです。
それがふゆふゆ浮かんでホール内を飛び交ってます。
なかなかにファンキーな光景ですね、いえ、私がやってるんですけどね。
評議会の皆さん、ぽかんとしてカラフルな箱を見つめてます。
平静なのはシルバさんと、私の突飛な行動に耐性のあるハリィさん。
それと表情が分かりにくい半魚人さんと、毛なしリザードマンさんぐらいでしょうか。
あ、ギンさんがいつまで遊んでるって表情で睨んでます。
はいはい、各評議員さんに配りますね。
シルバさんには7色1組をご進呈。
他の評議員さんには、ランダムに3本づつハリィさんを除く面々にご進呈で…。
評議員の人数はシルバさんとハリィさんの除いて、全部で9人だから…。
1本あまるので、見本として円形テーブルの真ん中に着地です。
余ったのは、紫色のサランラップです。
さて、みなさんの反応はどーでしょうか?
お疑いモードから、なんじゃこれモードに移行したようです。
目論見成功ですよ、お師匠さま、あとで褒めてね。
「サツキ殿、これは魔道具ですね。鑑定するとかなりの魔力を感じます」
シルバさんが赤のサランラップの箱を手にして、裏表をじっくりと観察してます。
鑑定スキルをお持ちのようですね。
「はい、今日の召還に備えて、私が作った魔道具です。お土産として持ってきました。
対魔結界機能のついたサランラップというものです」
「対魔結界ですと?」
「あけていいか?」
「これはまた強力な魔力を帯びているな」
各評議員さんも、それぞれ手にしたサランラップに興味津々です。
開け方が解らず首を捻ってる兎の人、見てるだけでなんか和むなあ。
最初に箱を開け、薄い半透明の赤い膜を伸ばしたのはシルバさんでした。
「ほほぅ、これはまたなんと繊細で美しい魔道具でしょう」
シルバさん、ガラス窓から差し込む陽光に透かしては眺め、丁寧な手つきで一部を切り離してます。
それで空いたティーカップに蓋をしました。
「なんと、ぴたりと吸い付くようです」
「シルバ殿、これを利用すれば、魔物を生け捕りにできるのでは?」
「四角い箱の周りにこれを貼り付けて、その中に魔物を追い込めばいいか」
「軽くてしなやかで丈夫、驚くべき魔道具です」
「魔物の生態は解らない。これを使えば、いろいろ解るかもしれない」
なんじゃこれモードから、どう利用しますモードになってますね。
ところで、会議の本題はどこいった?
今日、私とギンさんを召還したのってさあ。
フィリップさんを封印したことの、質疑応答なんじゃないのかなあ?
いや、雰囲気悪かったから、議題そらしたの私とギンさんだけど。
まさか、こんなに食いつきいいと思わなかったです。
議長のシルバさんまで、あれこれ夢中だもんね。
いよいよ、会議は踊ってきました。
※※※
猿の街冒険者ギルドで、ランチナウです。
結局ね、会議は踊りまくったので一時休会になりました。
各評議員さんは、サランラップのお土産抱えて、それぞれのお宿へGO!
私達は、ホールのある猿の街冒険者ギルドの応接室で休憩中です。
ロースト翠大角鹿と新鮮な葉物野菜をはさんだ白パンサンドと、ハーブティー。
それに豊富な果物の盛り合わせって、とっても美味しいランチを頂いてます。
とーさんの銘酒コレクションからセレクトしたお酒は、ランチ前にシルバさんへご進呈。
透明で薄いガラス瓶に、シルバさんは目を見開いてました。
「すみませんね、驚くべき魔道具の出現で皆さんも興奮されたようです。
私も己の立場を忘れてしまいました」
「あのー、そんなに騒ぐものなんですか?これって」
「ええ、このような魔道具は、今まで存在していませんからね。
これを無属性魔法でクリエイトしたのは、サツキ殿ですか?」
「成り行き上、そうですねえ」
「修行中、なにやら創り上げた物ぞ」
「サツキさんは、何をするかわからないにゃ」
ギンさんもハリィさんも、その言い方酷くない?
間違ってはいないんですけど。
「サツキ殿も界渡りされた方ですね」
「そーです」
「界渡りの大魔道師の噂はご存知ですか?」
「ちょっとだけ。フィリップさんに大魔道師に間違えられて騒ぎになりました」
「なるほど、フィリップは思い込みの激しい人でしたから」
シルバさんは遠くを見るような目で、かの黒猫氏を回想してるようです。
評議会でも、あれこれ暴走してたのかなあ。
「界渡りの大魔道師殿は、サツキ殿と同じ人族の住むリフレ王国に現れたのですよ。
リフレ王国の大地は魔力が消耗していたのですが」
「リフレ王国は、青水竜王の加護する領域の中心ぞ。魔力が消耗するなぞありえぬ」
「シグムン殿、それがあったのです」
「青水竜王陛下はいかがした?」
「それは私達にもわかりませんが、大魔道師殿のおかげで魔力の消耗はおさまったようです」
「左様か…」
私からたっぷり魔力補給したギンさんは、目を閉じて考え中。
「一度、リフレまで出かけるのがよかろうか…」
と、つぶやきました。
おおぅ、いよいよ私と同じ人間に会えるのかな?
その前に、踊る会議を終えないといけないけどねえ。
さらにその前に、美味しいランチを食べちゃいましょう♪
週末、更新できずにすみません。
ちょっとあれこれ用事でばたばたしてました><