1月8日 会議はお怒りモードです
「私は猿の街冒険者ギルドの代表を務めるシルバと申します。
遠路を転移して、さぞやお疲れでしょう。まずはこちらへ」
ロマンスブルーのシルバさん、にこやかに笑って私達を案内します。
魔法陣のある石壁の部屋をぬけて。
同じく石壁に囲まれた石の階段をあがると、広々とした明るいホールにでました。
はめ殺しの分厚いガラス窓から、陽光が降り注いでます。
中央にはどっしりとした円形の大きなテーブルがあります。
そこにはいろんな獣人たちが座ってます。
狼さん、犬さん、毛のないリザードマンさんに兎さん、あと半魚人さんとか。
みんな猫の街に救援物資を届けてくれた種族の人です。
ホールのドアを背景にした椅子は空席で、その対面の椅子も空席です。
空席の椅子も獣人が座ってる椅子も、立派な座り心地のよさそうな椅子です。
「猫の街の新ギルド長、ハリィケルン殿はそちらの席へ。
サツキ殿とシグムン殿は、ハリィケルン殿の後ろへお座りを」
対面の空席がハリィさんの席のようですね。
円形テーブルについたハリィさん、緊張してるのか尻尾が小刻みに揺れてます。
シルバさんは入口前の空席に座りました。
ギンさんはハリィさんの後ろにある、ふかふかの大きなクッションでくつろぎモード。
私はその隣の椅子に座りました。
ここからは、ホールの中が良く見えます。
ってことは、円形テーブルのみなさんからも良く見えるってことで。
獣な人たちの視線が、私とギンさんに集中。
ギンさんは気にすることなくくつろいでますけど。
私は集中する視線が痛くて、緊張しまくりです。
人間がそんなに珍しいのかな、見ないで欲しいなあ…。
「気にするでない、魔力でも練っておれ」
ギンさんが小さな声で囁きました。
アドバイス、ありがとうございます。
魔力練っておきます。
練る練る練る、です!
「これより獣人領域冒険者ギルドの評議会を開催します」
シルバさんが立ち上がって優雅に一礼しました。
さっと彼が手をふると、かわいい猿な娘さんたちが現れてお茶をだしてくれました。
ギンさんの前には大きなボウル状の銀の器にはいったお茶をおきます。
私には陶器のカップに入ったお茶。
いい香りのハーブティーのようで、飲むと緊張がとけました。
ありがとう、猿の娘さん、もふもふな茶色い毛並みが素敵です。
「まずは評議会のあらたな一員となった、猫の街のギルド長ハリィケルン殿を紹介しましょう。
ハリィケルン殿、一言挨拶を」
「はい、この度、猫の街冒険者ギルドの代表に任命されたハリィケルンです。
どうぞよろしくお願いします。
猫の街の災厄にあたり、いろいろな助力をたまわり、住民を代表してお礼申し上げます」
堂々としたハリィさんの挨拶に、拍手で返す獣人たち。
「困ったときに助け合うのは当たり前、そのためのギルドだろう」
狼さんが発言し、他の人たちもうなづいてます。
「それより、前のギルド長が『堕ちた』と聞いたが、真か?」
毛のないリザードマンさんが、ハリィさんに質問しました。
いきなりの核心にせまる質問に、ハリィさんの背中が固まってます。
だらりとたれた尻尾が、彼の心情のまんまだろうね。
「『堕ちた』ら、最悪の魔物になる。彼を消滅させたか?」
リザードマンさんの追撃は続きます。
「フィリップは長い間、猫の街のギルド長で我等の同輩だった。
彼の最後を知りたいのだ」
「彼は、まだ消滅していません。彼は…」
「なんだと?『堕ちた』者を取り逃がしたのか?」
犬さんが牙をむいて、立ち上がりました。
「猫の街の冒険者は、魔物を倒さなかったとゆうのか?
同じ種族だからと見逃したか?」
「断じてそんな事はしてません。魔物を見逃す冒険者は、我がギルドにはいません」
「だが、死んでいないと、消滅させてないと、言ったではないか」
「今からその説明をしますから」
ホール内が騒然としてきました。
犬さんは今にもハリィさんにつかみかかりそうだし。
まるでハリィさんの査問会みたくなってます。
フィリップさんの件は、全部私のせいなのに。
こんなのおかしいです。
こんなの嫌だ。
「サツキ!」
暴走しそうな私を牽制して、ギンさんが立ち上がります。
うん、大丈夫、叫ぶだけだから。
魔法とか、そんなの使いません。
「フィリップさんは私が封印しました!」
円形テーブルのみんなの視線が集中、視線が痛いよ。
事態を見守ってたシルバさんが静かにいいました。
「その話を聞きたくて、あなたとギン殿を召還したのですよ。サツキ殿」
今日の更新です。
明日は、職場の会議が踊るので更新はお休みです。ごめんなさい。