1月5日~8日 猿な人の街へ
私達が召還された猿な人達が住む猿の街。
そこは、火炎山の向こうに広がる森のさらに先にあるそうです。
火炎山の向こう側の森は、ギンさんと同じシグムンのトキさんが守る森です。
その森の外側に点在する獣人の街の中で、猿の街は最も大きく栄えているそうです。
「猿族は手先が器用で頭も良く、好奇心旺盛で交渉能力に長けた者が多いにゃ。
獣人領域の周りにある国々とも盛んに交易してるにゃ。
それもあってギルド評議会の代表は、猿の街冒険者ギルド長が代々勤める慣わしにゃ。
先ほどの映像に現れたシルバ殿が、今の評議会の代表にゃ。
シルバ殿直々の召還にゃ。悪いことではないにゃ」
ハリィさんが執務机の上に地図を広げて説明してます。
竜王陛下のいる火炎山を中心に、大きく広がる大森林地帯。
その周りにいろんな動物の顔と、お城のマークが描かれています。
もふもふ巻毛のリザードマンさんの村や、ここの猫の街。
こちら側の森の中には、新たに記された私の家もあります。
猿の顔とお城のマークは、火炎山の向こう側の森。
歩いていくとしたら、四日どころでは行けそうにないですね。
「この八面体の転移石は、数人用の遠距離を転移できる特別な魔道具にゃ。
これがあればみんないっしょに転移できるにゃ。
四日後の朝、いっしょに猿の街に出発するにゃ」
「よかろうぞ。それまでは今までと同じ、森の巡回と復興の手助けぞ」
「うんうん、がんばろうね。ハリィさん、ギンさん」
「サツキは修行も忘れるでない」
…せっかく、きれいにまとめかけたのに。
ギンさん、一言多いですよぉ。
冒険者ギルドは、ヴァルノーラ世界に住む人々にとって共通の、唯一の組織です。
人間を中心とする国々と、獣人を中心とする獣人領域と大きく二つに分かれてるけど。
お互いの組織の交流と、技術や新しい知識の交換は盛んです。
ギルドの最大の目的は、虚無の暗黒から生まれる魔物討伐。
魔物は生ある存在にとって、避けがたい脅威です。
竜族を筆頭とする幻獣たちが魔物を退治しても、魔物の脅威はなくなりません。
そのためにも、強力や交流はかかせません。
冒険者ギルドの評議会は、主だった国や独立都市のギルド長によって構成されてます。
緊急事態や、新しいギルド長任命のときなどに領域ごとで評議会が開かれます。
この前の猫の街魔物来襲は、大きな災厄とみなされ緊急評議会がありました。
その時に、対応のおくれた猫の街冒険者ギルドの責任を問われたのがフィリップさん。
かわりに新たなギルド長に任命されたのが、ハリィさん。
そして魔物殲滅と街の復興に深くかかわったのが、私とギンさん。
新しい長に任命されたハリィさんはともかく。
私とギンさんが召還された理由は、このへんなのだろうなあ。
※※※
さて、四日目の朝です。
今日まで、朝起きてメールチェックとネット検索。
午前は森のパトロールや薬草採取。
午後は猫の街の復興手伝いと、おなじみのルーチンワーク。
その合間をぬって、猿の街にもっていくお土産の準備とかしてました。
いっそ対魔結界機能付の魔道具がいいんじゃないかと思ってね。
無属性魔法クリエイトで作りましたよ、カラーなサランラップ。
虹の七色で、各色5本セットで合計35本です。
シルバギルド長には、とーさんの銘酒コレクションから1本セレクト。
ごめんね、とーさん。
でもお土産は日本人のデフォルトでしょ?
喜んでくれるかな、猿な人たち。
ギンさんはサランラップの山を見てため息ついてましたけど。
「準備はいいかにゃ?」
「よいぞ」
「オッケーですよ」
「ではいくにゃ」
冒険者ギルド長の執務室に集まった私達。
ハリィさんのかかげる青い八面体のクリスタルを中心にして、光につつまれました。
トルナ嬢が行ってらっしゃいと手を振ってます。
「猿の街へ転移するにゃ」
ハリィさんが魔力を通して、発動させます。
おなじみの浮遊感と、落下感。
光が消えたあと、私とギンさんとハリィさんは見慣れない部屋に立ってました。
魔法陣の描かれた石の床と、タペストリーのかかった石の壁。
そして魔法陣の側に立つ、青みがかった白い毛並みの猿の人。
「ようこそ、猿の街へ」
深々とお辞儀する、猿の街の冒険者ギルド長シルバさんです。
まっすぐな背筋の、大きな猿の人です。
全身から威厳と、真面目さがあふれでてるような立派なお猿さんです。
グーグル先生によりますと。
ロマンスグレイは、白髪まじりのダンディな初老の男性をさすそうですが。
それならシルバさんは、ロマンスブルーになるのかな?
おまたせしました。
宴会後更新ですw




