間話 リュージの原動力は…
界渡りをするの物あるいは者は、常に上位世界から下位世界への一方通行だ。
水が常に高い所から低い所へ流れるように。世界を支えるマナも、常に上から下へと流れている。
上位世界には、ほとんどマナを使わない世界もある。
そのような世界の物あるいは者が、なんらかの要因で界渡りをする時がある。
偶然、あるいは必然。
たまたま界の裂け目に迷い込んだり。
下位世界の何者かが召還したり。
そのような要因で界渡りをした物あるいは者は、膨大なマナを界渡りした世界にもたらす。
膨大なマナは、魔力となって世界を循環し、活性化させる。
活性化は力となり、世界を変化させる原動力となる。
それ故に、界渡りした物や者は、数奇な運命を歩むことになる。
リフレ王国 魔術院 マナの書より抜粋
※※※
エルフの魔術師シャーマインには、姉と妹がいるそうだ。
姉さんはすでに結婚してるそうだが、妹さんは独身ですと。
「恥ずかしながら、まだ100才にもなってない未熟者ですよ」
と、笑いながら話すシャーマイン。
朝食のカップ麺をすするTシャツ姿のエルフなのに、後光がさすほど美形ってなんだよ。
けど、さすが長命なエルフ様だ。
100歳未満だと、未熟者とはな。
「そろそろ服とか、下着とか乾いたようだぜ」
俺はベランダから、冒険者ご一行様の服を取り入れて各自に渡す。
鎧や剣とかの修理と手入れをしていたアルフレッドは、嬉しそうに受け取った。
「リュージ殿、何から何までお世話になりました。ありがとうございます」
「困った時はお互いさまだよ。あ、それとリックさんにはこれな」
親父が趣味で集めてる中東のジャンビーヤてナイフを、一本渡した。
ちょっと長めの湾曲した、実用一点張りの飾りっけのない短剣だ。
もっと派手なキンキラしたのを買ったとき、おまけに貰ったとかいってた。
こっそり切れ味ためしたら、なかなかだったので俺がいただいたものだ。
「あんた、武器が壊れたっていってたよな。冒険者が丸腰ってのはどーよじゃね?」
「リュージの旦那、すまねえ」
盗賊…シーフにジャンビーヤって、イメージあってなかなかいいんじゃね?
リック本人は、鞘から抜いたジャンビーヤの刀身を指で愛でてる。
「リュージの旦那、こいつは魔力を帯びてるぜ。ほんとに貰っていいのか?」
「俺の親父もただで貰った短剣だ。かまわねえよ」
「リュージ殿、魔力を帯びた武器は、とても効果で珍しいのですよ」
神官のロベルトが、乾いた自分の服に着替えながらそう教えてくれた。
「そうなのか?ま、気にすんなっての」
使える人が使える品を持つのが、当然だろうよ。
そんなことよりだ。
俺の脳内は、まだ会ったこともないシャーマインの妹さんでいっぱいだ。
それ以外の話は、ほとんど素通りしている。
なんといってもエルフ様。
本物のエルフの女の子に伝手ができたんだぜ。
他はどうでもいいってのが、俺の本音だ。
いや、シャーマインの妹さんをどうこうしたいってわけじゃないから。
そこだけ誤解すんなってばよ。
そもそも俺は、彼女いない歴と年齢が同じなんだからさ。
どうこうできるとは思ってねえよ。
「さ、俺の旅の準備はできた。お宅らも、準備オッケーかい?」
家中にあったカップ麺と、インスタント食品に缶詰と、日持ちのする食料。
フリーズドライの味噌汁やら、スープや、
防災用のセット一式。
ありったけのペットボトルや水筒につめた水。
それを『蒼き流星』のみんなと、俺とで分け合って持つ。
どうやら、インベントリとかマジックバックのような便利なものはないそうだ。
あれば便利なのになあ。
「じゃ、いっちょ救世主しに行くか」
救世主に俺はなる!
その原動力がエルフの女の子を見たいってのも、いいんじゃねって思うんだ。
※※※
後に「界渡りの大魔道師」と呼ばれる異界の人族、リュージ・ヒガシ。
彼は、自宅と庭ごと、ヴァルノーラ世界に界渡りを果たした。
彼の庭に繁茂していた異界の樹木は、砂漠化したリフレの大地に根付き生き返らせた。
全ての属性と、無限の魔力、体力を有したこの偉大なる魔道師が最も愛した種族はエルフ族だという。
そのためだろうか。
水と緑の土の属性がより強化され、彼の行くところ、あらゆる豊穣の大地になったと伝説は伝える。
ちょっと説明的な更新です。




