1月4日 ラッピングしました
「どうやら対魔結界のようなもので封じておるようじゃ」
魔力で浮かせ、くるくると回転する黒い石版@たぶんもとフィリップ氏。
それを前後左右上下くまなく調べて、ギンさんはそう結論をだしました。
「どのような攻撃も、これには効くまいぞ」
なんともいえない目つきで私を見つつ、そう告げるギンさん。
無意識に私がしでかしたことを、責めてるわけじゃないけど。
それでも、自然に頭がさがります。
「ギンさん、ごめんなさい」
「起きてしまったことは元に戻せぬ。これから如何するかが肝心ぞ」
「うん、そうだね」
私はハリィさんの前で、ギンさんがフィリップ氏を消滅させるのを見せたくなかった。
魔物になったフィリップ氏が、ハリィさん達を襲うところ見たくなかった。
だから、無意識に魔力でなにかしたんだろうね。
何をどうしたか、さっぱり解らないのが問題だけど。
空中に浮く石版の手を伸ばし、両手で抱え込む。
スケッチブックほどの大きさの石版は、ほのかに暖かい。
どこか憎しみをたたえた黄色い猫の目と渦巻く黒い霧。
見ているだけで不安になるようで、あまり気持ちのいいものじゃない。
「ハリィさん。フィリップさんは…石版は、私の家に連れて帰るよ。
ギルドに置いておくのは、よくないから」
「それは…」
「大丈夫、私の家は、強い結界に守られてるし」
「それがよかろうぞ。ハリィケルンは、事件の顛末を説明せねばなるまい」
怒り狂ったフィリップ氏をギルド内に搬入したの、たくさんの猫さんが見てました。
なのに、出て行く、もしくは搬出されるフィリップ氏は誰も見ないことになります。
前ギルド長フィリップ氏の行方は?
ミステリーです、殺人事件の疑い濃厚です。
フィリップ氏が最後に運びこまれたのは、ギルド長執務室。
そこにいたのは現ギルド長と受付嬢、幻獣に人族の女。
容疑者は二猫と一頭と一人。
謎は謎を呼び、猫は猫を呼び、入り乱れる猫模様。
おおぅ、火曜サスペンス劇場の世界ですね。
「何を考えておる、帰るぞ」
妄想し…現実逃避してる間に、ギンさんとハリィさんの話合いは終わってました。
「サツキさん、その、ありがとにゃ」
ハリィさんが深々と頭を下げてます。
「私はできることしただけにゃ」
「私も私にできる最善をつくすにゃ」
私が抱える石版に触れ、そう決意するハリィさんの目は真剣そのもの。
ハリィさんの側に寄り添うトルナ嬢が、なんとも可憐な雰囲気です。
悔しいけど、お似合いですよ、お二方。
「今日はこれで帰ります、また明日ね」
「気をつけて」
トラベリングストーンに魔力を通して作動させ、転移開始です。
予定では、あれこれハリィさんに聞いたり、採取したクローバー換金するはずだったけど。
空き瓶の販売交渉とかするはずだったのになあ。
まさかフィリップ氏@石版バージョン、お持ち帰りになるとは思いませんでした。
今日はもうなにもしないで、自宅で引きこもりましょう。
おなじみの浮遊感と落下感を体感して、無事に自宅ダイニングに転移完了です。
心なしかギルドでみた石版の不安感、自宅だとそれほどでもありません。
面白い抽象画のような印象になります。
「ねえギンさん、中にいるフィリップさん魔物バージョン、なにか感じてるのかな?」
「それは解らぬな」
「そっか、とりあえず、どこに置いておこうかなあ」
で、石版なんですが、このまま置いとくのはあれなので。
いつぞやクリエイトした透明結界魔道具サランラップ、魔除け効果絶大のすぐれもの。
ピンク色のこれで可愛くラッピングしてみる。
まるまる一本使って、黒い色緩和、ついでに同色のリボンもかけてみようかな。
「…なにをしておる?」
「んー。せめてものお詫びにフィリップさんを可愛くしてます」
「…左様か」
ギンさん、なんで深いため息ついてるんですか?
尻尾がだらりとたれてますよ。
元気、だしてくださいね?
今日の更新です。
…ラップでラッピング…(脱兎)




