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1月2日 火炎山は源ぞ

「吾が住まう火炎山を中心に獣人が集うておる」


 ナポレオンの空き瓶をどんと置き、陛下はそのまわりを指し示しました。

火炎山がナポレオンで、指し示した地面が猫の街を始めとする獣人の領域ってことですね。


「吾と火炎竜種一族、眷属の役割は、獣人の国の魔力の安定と守護。

 虚無より湧きいずる魔物を滅することぞ」


空き瓶の頂上を指でちょんとついて、言葉を続けます。


「火炎山は魔力の源ぞ。吾はその源より生まれると同時に吾として在る。

 火炎山の魔力が在る限り、吾は在る。解るか?人の仔よ」


「「「陛下のお言葉、しかと解ったか、異界からの来訪者よ!」」」


 同時に叫び、きっと私を見据える彼ら。

性別がないそうですから、彼女もいるかもしれませんが。

一糸乱れぬ赤毛イケメン集団の皆様、その団結力、すんばらしいですね。


 すみません、竜王陛下。

ごめんなさい、ドラさんズ。

女子高生には難しすぎて。よく解りません。

魔力溢れる異界の酒精を帯びたせいでしょうか。

陛下はとても饒舌であらせられます。

赤毛の人型ドラさんズの一糸乱れぬ行動も、いっそう磨きがかかってます。


 正月早々、これ何の罰ゲームなんでしょうか?

火炎竜種のみなさんのせいで、なんか夢がボロ雑巾にされた気がします。

異世界トリップして出会ったドラゴンさんたち。

ファンタジーの象徴のドラゴンさんです。


神をも滅ぼす古代竜とか。

世界の源となった始原の竜とか。

闇よりも深く暗黒竜とか。

神話、伝説、小説、アニメ、ゲーム等々。

いろんな世界で活躍するドラゴンさん達。

夢を持つなってほうが、無理ゲーです。

ゲーム世界で戦士職を選んだら、一度は挑んでみたい最高峰のモンスターです。


ドラゴンスレイヤー。

ドラゴンライダー。

ドラゴンナイト。


どの称号も、手垢がついても光り輝き続ける称号ですよ。


なのに、なのにです。

火炎竜種の竜王陛下は、ヨッパ大王だし。

その一族は、体育会系の脳みそ筋肉系みたいだし。

赤毛イケメンに囲まれた逆ハー状態でも、これはあんまりですよ。


「ギンさあん」


私は慰めともふもふを求めて、傍らのギンさんにダイブです。

首をがっちりホールドして、その滑らかな毛に顔をうめました。

ほのかに香るフローラルシャンプーと、ふかふかの毛皮です。

ああ、和むなあ、癒されるなあ。

もふもふ、サイコーです。


「するいぞ、ギンよ。人の仔の魔力を独り占めか」


視界のすみで竜王陛下が指差してわめいてます。

陛下、人の姿だし、もふもふじゃないし、お酒臭いし。

首筋にだきついてもふもふしても、和めません。

赤毛ドラゴンズも同じ理由で却下です。

つやつや滑らかなキューティクルギンさんがいいです。

ほわほわギンさんをもふってるうちに、なんだか眠くなってきました。

わめく陛下の声がどんどん遠くなっていきます。

なんか、すごく眠いなあ。


※※※


『火炎山は源の一つ、それは解ったか?』


『へーかがそんなこと話してたねえ』


『火炎竜は火の源よりいでし幻獣。その王として在るは、源と同じ』


『だからへーかはぼっちなの?』


『然り、源の在り様が変容しつつある。ゆえに虚無より魔が増えつつある』


『そうなんだ』


『上位世界の人の…よ。こちらへまね…その…りょ…でみな…のへん…を』


『ええ?なに、聞こえない』


『…ま…た』


※※※


「…キ、サツキ、風邪をひく、起きよ」


耳元でギンさんが囁いてました。


「にゃ、もう、朝?」


「まだじゃ。眠っておったな」


「んん、なんか夢見てたみたい」


「うむ、源とか、ぼっちとか寝言を申しておった。それよりな…」


耳を寝かせて困った様子のギンさん、前足をひょいとさした方向には。


「我が君がすっかり臍を曲げてしもうた」


人の姿から龍の姿に変化して、とぐろを巻いてるへーかがおわしました。

燃え盛る炎のような鬣は、心なしか色あせてます。

メタリックな紅い鱗も、なんだか黒味がかってます。


「吾も人の仔の魔力を食したい。ギンばかりずるい」


ヨッパな上に、食い意地まではってたんですか、へーか…。

火炎竜種の竜王陛下っていったい…。












いつもお読みくださりありがとうございます。

誤字、脱字、おかしな文章のいいまわしなどありましたら、教えてください。

随時、訂正していきます。

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