12月25日 人族だったら好きになったかもね
水平飛行に急降下、ホバリングに急上昇。
三本の金色に輝く尻尾を舵代わりに、ギン救援機は自由自在の飛行をします。
背中に乗ってる私は、目が回りそうです。
今日の私の役割は、ギンさんのエネルギータンクですね。
破壊された住宅の瓦礫撤去は、細心の注意が必要です。
…中には逃げ切れなかった猫さんたちの亡骸が眠ってますから。
空から状況を確認し、どこを魔法で持ち上げ、どこを取り除いたらいいのか。
ギンさんは素早く判断して、指示をだし、瓦礫を取り除いていきます。
冒険者の猫さんたちが黙々と作業しています。
時々、亡骸を収容して、担架にのせて冥福を祈ります。
「辛かったら、ギルドの手伝いをしてもよいのだぞ」
無口になってく私を心配してか、ギンさんが声をかけてきました。
「ううん」
私は、自分に出きることをするって決めましたから。
だからギンさんやみんなの手伝いをします。
「よいのだな?」
「うん」
…ほんとはね、時が戻せたら、一番いいんだけどね。
時戻しの魔法で、壊れた家具や道具はもとに戻せてもね。
命あるものは、戻せないんだって。
竜王陛下でも、魔力無限大の私でもできないんだって。
それは、一なる御方でもできないだろうって。
失われた命に私達ができるのは、世界を巡る魔力の循環へ帰還できるように。
祈るだけだって。
そう、ギンさんが教えてくれました。
鑑定君が出してくれた文字情報によると。
一なる御方は、ヴァルノーラ世界そのものを創造した神様のような存在。
最初に混沌の海より出でて、言の葉と唱によって世界を魔力で充たした存在。
一成る御方は、ヴァルノーラ全てを知る源。
…あれ、どっかで聞いたような言葉だな。
どこで聞いたんだっけ、思い出せません。
なんかとっても大切な事だったような気がするなあ。
「そろそろ昼ぞ。一度戻るとしよう」
「そだね」
中央広場に運ばれていく担架を見送って、私達はギルド上空へ戻りました。
お昼ご飯を食べる前に一仕事です。
チームリザードマンの作ったお昼の弁当、瓦礫撤去してる猫さんたちに配達です。
ここで私のオートマップスキルが活かせます。
32インチ画面を展開して、どこの現場にどれだけ弁当が必要か確認。
仕分けしたお弁当を浮遊させて、一気に拡散配達しますよ。
それいけ、弁当便発進です。
「おお、弁当、飛ぶ、早い、さすが人のメスさま」
「持ってく、いらない、すごい、人のメスさま」
「俺たち、らく、ありがと、人のメスさま」
もう慣れたけどね、やっぱり複雑です、メスさま連呼。
「これ、メスさま食べる、特別大盛り、ないしょ、ないしょ」
こそっと近寄ってきた亜麻色巻毛のリザードマンさん。
大きな包みのお弁当を渡してくれました。
ありがとう、亜麻色巻毛さん。
あなたがイケメンな人族だったら、きっと好きになってたかもです。
けど、あなたも「メスさま」なんですね。
私もあなたの名前、聞いたことないから…仕方がないかな。
ちなみにチームリザードマンのお昼ご飯。
細かく切った肉を卵焼きにした黒パンサンドです。
ピリ辛でうまうまでした。
チームリザードマンは、これからまた狩りにいくそうです。
元気あふれる彼らに、負けてはいられませんね。
午後からは瓦礫撤去と、救援物資搬入のお手伝いです。
頑張りましょう、えいえいおーっ!
いつもお読みいただきありがとうございます。




