12月25日 ちょっとかなり恥ずかしい朝
おはようございます。
気がついたら知らない天上でした。
ヴァルノーラに来てから二回目のテンプレセリフですね。
昨晩は不覚をとりました。
お風呂でのぼせて溺れてしまうとは。
ギンさんに運ばれ、冒険者ギルドの猫さんたちを右往左往させちゃいました。
脅かせてすいません。
脳内で想像したギンさんの人仕様、腐った女子な部分が過剰反応したのです。
そんな人仕様なギンさんに、あんなこと、こんなこと見られたかと思うとね。
(は、は、恥ずかしいよう!!)
で、頭に血が上ったみたいな。
そのギンさんですが、今もいっしょに寝ています。
ふかふか尻尾が掛け布団なのも同じくで、あったかくて気持ちいいです。
「目覚めたか、サツキ」
「ふぁい、昨日はありがとう、心配かけてごめんなさい」
「お主とおると退屈せんでよいわ」
「左様でございますか…ようございました」
としか言えませんよね、うう、精進せねばならぬ。
※※※
ギルド併設の食堂兼酒場では、朝食の炊き出しをしてました。
ここでも活躍してるのは、リザードマンのご一行様。
昨日、獲物を解体したあとにでた骨や臓物で、滋養たっぷりのシチューを作ってます。
彼らの住む森でとれる香草を惜しげなくいれた、野性味あふれる料理です。
リザードマン村名物の、特性シチューなんだって。
「おお、人のメスさま、食べるか?」
昨日、焼肉を大盛りしてくれた亜麻色巻毛のリザードマンさんが手をふってます。
「おはようです、喜んでいただきます」
「大盛り、ないしょ、ないしょ」
やっぱり亜麻色巻毛さん、いい人ですね。
ホールに寝ていた怪我猫さんたちも、今日は起きあがってました。
たっぷり食べて、よく寝たら、動けるようになったみたい。
よかった、昨日頑張ったかいがあります。
「サツキ、もう大丈夫にゃ?」
リザードマンシチューをはふはふしてると、トルナさんとハリィさんが声をかけてきました。
二人とも心配そうな表情です。
昨日の湯あたり騒動のせいだね。
「おはようです。大丈夫です。心配かけてすみません」
「元気ならいいのにゃ。昨日はサツキのおかげで助かったにゃ」
ハリィさんもトルナさんも、私と同じテーブルに座って食事を始めました。
「今朝からいろんな救援物資が届き始めたにゃ。
瓦礫撤去と平行して、魔物発生の原因調査も始まったにゃ。
亡くなった住民の争議と埋葬もしなきゃいけないにゃ…」
「ハリィさんも忙しくなるね」
「今まで好き勝手に生きてきたにゃ。そのつけが回ってきたにゃ」
「ハリィケルン、私も手伝うにゃ、頑張るにゃよ」
「ありがとう、トルナシェルン」
見詰め合う目と目、しっかり合わせあう肉球と肉球。
二猫そろって、プルルルと喉をならしてます。
尻尾がお互いの背中にまわされ、ゆらゆらです。
朝からご馳走様、リア充猫も爆…げふんげふん。
「ハリィ、あのこうるさい黒猫はいかがした?」
二猫の世界を破ったのは、ギンさんでした。
そういえば、KYな黒猫フィリップ氏は、冒険者ギルドの長でしたね。
神速猫パンチで撃沈されてから、ぜんぜん見かけませんが。
「にゃ、彼なら自分の屋敷に引きこもってるにゃ、ふじゃーけてるにゃ!」
と、鼻に皺をよせ威嚇するトルナさん。
せっかくの美猫な顔が、めっちゃ怖くなってます。
よほどの思いをさせられてきたみたいですね。
ちょっとかかわっただけな私でも、あれはないよねって思う猫さんだもんね。
「面目喪失ですにゃ、無理もないにゃ」
「ハリィ、この非常事態に引きこもるなんて、立場的にも非常識にゃ。
これだけでも引責問題になるにゃ」
「それは冒険者ギルド評議会は決めることにゃ」
「それはそうにゃ。けど」
「当面、引きこもってるほうが都合はよかろう。しばし捨て置くが得策ぞ」
ギンさんは万事解決とばかり、にいっと腹黒笑いです。
「吾とサツキは、引き続き撤去作業をいたす、それでよいか?」
「お願いします、ギン殿、サツキさん」
「ではサツキ、準備はよいか?」
「オッケーですよ」
食べ終わったシチューの皿を返すだけです。
「では参るぞ」
「ラジャー」
ギン救援機、今日も元気に発進です!
本日、二話目の更新です。




