12月23日 長い一日の終わり
浮かれ騒ぐ猫さんたちの大喧騒の中、私とハリィさんとギンさん。
一人と一猫と一頭だけの空間に、静かな静かな時が流れてます。
最初に動いたの、ハリィさんです。
たしたしって、握ってる私の右手に軽く猫パンチ。
ぜんぜん痛くはないですけどね。
「まったくあなたには驚かされてばかりにゃ」
目を細めて眩しいものを見るように、私の顔を見つめてきます。
「サツキさんの望むとおりにするにゃ」
くるりと長いふさふさの尻尾が、私の背中にまわされました。
「私の友情を常しえに、貴女の友情も常しえに」
通じたんだね、私の思い。
ありがとう、ギンさん、背中を押してくれて。
ありがとう、ハリィさん、思いを受け取ってくれて。
ヴァルノーラで二人目の大切な友人、ゲットだせ。
あとで、たーくさん、もふもふさせてね、ハリィさん♪
「さ、家に帰ってご飯にするにゃ、お腹すいたにゃ」
「うん、ご飯、ご飯、お腹すいたにゃあ」
「では、参ろうぞ」
浮かれ騒ぐ猫ごみをすり抜けて、私達はハリィさん家へ向かいました。
※※※
「猫の街の全部が、無事だったわけじゃないのにゃ」
ハリィさんはすっかりにゃにゃにゃ語になってます。
それだけ、気を許してくれたってことだよね。
台所で動きまわって、いろいろ料理してくれてます
「城壁近くの住民は、かなり魔物に殺されたにゃ」
「魔物を殲滅する前、生存者の数は2087だったよ」
「そうなんにゃ…死者の数は、千を超えそうにゃ」
ゆらゆら揺れてた尻尾が、だらりと下がってしまいました。
「魔物の襲来は朝で、まだ冒険者の猫たちが街にいるころにゃ。
けど、ギルドの対応が遅くて、遅れをとってしまったにゃ。
もっと早くに対魔結界をはるべきだったのにゃ」
「ハリィさん…」
「サツキさんとギン殿がきたにゃ、おかげで猫の街は全滅しなかったのにゃ」
「ううん、街が助かったのは、ハリィさんたちの頑張ったからだよ」
「そのとおりぞ」
居間のクッションを集めてごろごろしてたギンさん、ゆっくりと立ち上がってハリィさんの側へ移動。
3本の尻尾を交互にゆらして、うなだれてるハリィさんの背中をなでていきます。
「お主たちの対魔結界がなければ、猫の街は全滅ぞ。
そしてあの無数の魔物は我が竜王陛下の森を襲撃したであろうよ。
リザードマンの村も、火炎竜族の住まう火炎山もな。
お主たち猫族は力の限り戦い、抗い、勝ったのじゃ。
誇れ、そして亡き者を弔うがよかろう」
「…ギン殿」
「お主が猫の街の再建を指揮するがよかろうぞ」
「私の力の全てをかけてそうするにゃ」
すばらしいですね、男の友情ですよね。
ハリィさんとギンさんの尻尾が、ゆらゆらと同じリズムで揺れてます。
うんうん、ハリィさん、やっと元気になったみたい。
ささ、ご飯にしましょ、お二方。
私の胃袋は、ぐうぐう鳴きっぱなしなんですよ。
今晩はハリィさん家でお泊りです。
ゆっくりと積もる話をしましょうね。
それでは、お休みなさい。




