12月23日 ギン戦闘機発進!
今日のお話です。
戦闘場面は難しいですね。
速い、速い。
ものすごく速いです、ギンさん。
リザードマンさんの村まで徒歩で半日。
ハリィさんの街までなら、ほぼ一日かかります。
時速5キロとして、私の家から猫族の街まで100キロ以上はあります。
なのにギンさん、ものの数十分で猫の街上空に着きました。
魔法を使うとか、スキルを使うとか。
そんな余裕私にはありませんです、はい。
けど、眼下に猫の街が見えません。
かわりに見えるのは、巨大な濁った肉色のぬめぬめとしたドームです。
そこに白毛玉の群れが突っ込んでいっては、さらに巨大化しています。
ところどころ、巨大ムカデや巨大団子虫とか、みたことない魔物@虫系がうねうねしてます。
生理的嫌悪感、マックスです。
「ギンさん、ハリィさんの街が…」
「大丈夫ぞ。魔物が半円形になっておる。街ごと結界で包んでおるのであろう」
「じゃ、猫さんたちは中で防戦してるってことだね」
「そうじゃ、が、このままではいつまで持つか解らぬ。サツキ、魔物を滅するぞ」
「ラジャー」
ギンさんは私を乗せたまま、空中で四肢をふんばりました。
全身に魔力をいきわたらせ咆哮。
声なき声に魔力をこめて、ぬめる肉の壁に叩きつけました。
凄まじい速さで猫の街の上空を飛びまわり、幾度もそれを繰り返します。
その度に、幾筋もの光が魔物を黒い煙に変えて四散させてます。
ギン戦闘機の燃料は、無限大の私の魔力。
無尽蔵の魔力を糧にして、ギン戦闘機は獅子奮迅です。
光学迷彩にしたら、シグムンステルス機ですよね。
ほんとに、多芸多才な幻獣さんです。
けど、魔物の数は減る様子がありません。
消し去った後を埋めるように、新たな魔物が増殖してます。
消した数以上に魔物が増えてるみたいなのです。
「むう、滅しても滅しても、きりがない!」
ギンさんは忌々しそうに叫び、さらに速度をあげました。
連続咆哮で、魔物を薙ぎ払っていきます。
さすがの魔物の増殖も追いつかないほどに。
どうにか、ぬめる肉壁の巨大化がとまりました。
この無敵状態なシグムンさんを眷属にしてる竜王陛下。
どんだけ強いのかな?
魔物とギン戦闘機の戦いは膠着状態になりました。
私がいるから魔力はつきないけど、ギンさんの体力は無尽蔵じゃありません。
今は大丈夫だけど、いつかはギンさんの力はつきてしまいます。
どうしたらいいかな。
なにか私にできることは…。
…あ、そだ、これなら。
魔力も体力も∞の私なら。
たぶん、大丈夫。
きっとやれる、ううん、やってみせますとも!
「ギンさん、一点集中で魔物の壁に穴あけて、街の中に入れる?」
「可能であろうが、なにかよい知恵でもあるのか?」
「うん、中から一気に殲滅できる、ううん、殲滅する」
私の言葉に何かを感じたのか、ギンさんはだまって上空へ駆け上がりました。
「しっかりつかまっておれ!」
背中の私ごと魔除けの結界で包みこみ、魔物のドームへ突っ込んでいきます。
ギンさんの背中まで震える咆哮をあげ、眼下の壁を焼き尽くしていきます。
「見えた、猫の街!」
円形にあいた隙間から、猫の街の街並みが見えました。
杖や剣をかまえる猫さんたちが見えます。
良かった、みんな生きてます。
ギンさんと私は、そのまま猫の街へ飛び込みました。
私達が通った隙間は、すぐさま虫型の魔物たちが埋め尽くしていきました。




