12月23日 猫の街が危ないみたい
今日のお話です。
成人式に参加されたみなさま、おめでとうございます^^
珈琲ブレイク後の授業は、魔除け結界のはり方です。
魔物が出現するのは、虚無の暗黒からだそうです。
虚無に対抗する力は、ここに在る力、命、生命力そのものなんだそうです。
だから魔力に自分の存在そのものを練りこんで、周囲に張り巡らせたらいいそうなんです。
…と、ギン先生はおっしゃるのですが。
私にはもうひとつ、ううん、もう三つほど理解できません。
「ならば、寄るでないと念じながら結界をはるがよかろう」
いろんな言葉を駆使して説明してくれたギンさん。
理解できない私に匙を投げた模様。
虚無の暗黒とか言われても、想像できないもん。
自分の存在を魔力に練りこむって、どうするの?なんだもん。
最初っからそう言ってくれたら、私にだってわかります。
魔力に「こっちみんな!」って練りこめばいいんだよね?
では、さっそく実践しましょう。
こっちみんな、こっちくんなって、練るとき、練れば、練った!
うん、こんな感じかな。
この練った魔力を使って、私とギンさんの周りをすっぽり囲った結界をはります。
コーチ、こんな感じでどうでしょう?
「確かに魔除けの結界になっておる。お主は本能的に理解する者のようだ」
ほうと深いため息をつきながら、尻尾をおとすギンさん。
なんか、私、間違ったのかな?
「今日の修行はここまでとする、吾は疲れた」
浮遊術と魔除けの結界をマスターしたんだから。
先生、元気だしてくださいよ。
まるで私が残念な弟子みたいじゃないですかぁ。
と、結界をといて家に入ろうとした時です。
「シグムーーーン!!」
と、叫ぶ声が森の方から聞こえました。
ギンさんはピンと耳をたて、声のするほうを見つめます。
あの細い獣道があるほうから飛び出してきたのはリザードマンさん。
いつぞやのゴールデンモヒカンなアーチャーさんです。
全速力で走ってきたらしく、ぜいぜいと荒い息をはいてます。
「いかがした?」
「シグムン、急報!猫の街、魔物、襲撃、俺、脚早い、知らせ来た」
たどたどしい言葉だけど、いいたいことはよく解りました。
猫族の街を、魔物が襲ってるんですね。
ハリィさんを筆頭に、私の愛するもふもふの街が危ないんですね。
そして私のヴァルノーラ生活基金が、風前の灯なんですね。
「ギンさん!」
「サツキ、吾に乗れ!」
ギンさんはすぐさま巨大化して、私を背に乗せました。
「結界をはれ、本気で飛ぶゆえ」」
「はい!」
「リザードマンの警備隊も、すぐに猫族の街へ向かうのじゃ、よいな」
「もう、行ってる」
「流石じゃ、行くぞ」
返事も待たず、空へ駆けるギンさん。
今までの飛び方がいかに緩やかだったか、よくわかりました。
戦闘機も真っ青な加速で上空にあがって、真っ直ぐ猫族の街へと直線飛行。
結界はってなきゃ、風で吹き飛ばされてます。
ギンさんの背中にしがみつくのが精一杯です。
トラベリングストーンを買っておけばよかった。
そうしたら一瞬でハリィさんの家に跳べたのに。
あ、トラベリングストーン。
アレをクリエイトすれば良かったんだ、私の馬鹿!
最速で飛んでるギンさんの背中で、魔法を使う余裕なんかないよ。
ハリィさん、ギルドの受付のシャム猫さん、猫族の街のみんな。
ついでに、話聞かないフィリップさん。
どうか、無事でいてね。