12月19日 人の集落って、人のですよね~
本日のお話、投稿です。
鑑定でリザードマンのアーチャーとでた人。
筋肉粒々で、頭のてっぺんに鮮やかな金色の巻き毛が渦巻いてます。
ふわふわのゴールドモヒカンです。
ぶんぶん振ってる尻尾や、くるぶしや、手首にもキューティクルなふっさふさ。
そこだけ見てたらもふもふです。
けどね、そこ以外は鱗スキン。
口から先がふたつに分かれた舌が、時々出現してるしね。
ううう、どうか私にけも耳さん、プリーズ。
彼は、火炎竜族の竜王を王とあおぐ、リザードマンたちの警備兵。
近くの集落から交代で、魔物が跋扈する森を巡回してるそうです。
やたらと溢れかえる私の魔力を、魔物がだす魔力と思って攻撃したんだそうです。
「俺、悪くない。間違えただけ、シグムン、怒る、おかしい」
かんかんに怒ってるギンさんの前で、たどたどしい言葉で話すリザードマンさん。
悪びれた様子もなく、木に刺さった矢を回収中。
縦長な爬虫類特有の目が、私を見下ろし指差して一言。
「メスか?」
って、思いっきり失礼な質問をしてきました。
いや、確かに生物学上、メスですけどね。
16歳の乙女に、メス、はないでしょうが~。
「私は、人間の、女の子ですっ!!!」
「怒る、何故?ケガ、治った、命、ある。問題ない」
神聖魔法の発動で治った私の右頬を軽くさするリザードマンさん。
「あのね、そうじゃなくてねえ」
リザードマンさんがきょとんとした感じで見つめてきます。
「何、問題か?」
あー、だめだ、話が通じなさげです。
言葉の壁とか、言葉のニュアンスとか、高すぎます。
怒ってさらにリザードマンさんを叱ろうとするギンさんを止めました。
「もう、いいか、俺、先にいく」
「もうよい、行け。攻撃相手はよく見極めよ、解ったな」
「解った、シグムン」
回収した矢を持って、リザードマンさんは悠々と森の中へ去っていきました。
あー、脱力。
それといやな疑問がわいてきました。
森から歩いて半日の「人」の集落って…まさか、ねえ。
「ギンさん、聞いていい?」
「なんであろうか、サツキ」
「ギンさんが話してた人の集落って、あのリザードマンさんの村なのかな?」
「…そうともいうな、人の仔よ」
ああ、やっぱりですか、そーですか。
明後日の方を向いて、尻尾をふるギンさん。
さらに脱力する私のお腹の虫が、きゅるる~と鳴きました。
「…お昼休憩しましょうか」
「よかろう、魔よけの結界をはっておくとするか」
「お願いします」
ギンさんの先導で小さい泉のそばに移動。
ギンさんによりかかって、お昼のお弁当を広げます。
ハムと卵のサンドイッチ、ほどよくなじんで食べごろです。
ん、おいしい、自画自賛。
はむはむと食べていたら、ギンさんが興味をもったみたい。
「異界の食べ物も魔力を帯びているのだな」
「そうなの?ギンさんも、少し食べてみる?それとも食べられないの?」
「吾は基本、魔力しか食べぬが、人や獣の食物も相伴できるぞ」
つまりは、食べたい、ですね。
「おひとつ、どうぞ~」
と、サンドイッチをさしだしました。
少し鼻先で匂いをかいでから、ぱくりってひとのみ。
「おお、これもまた美味な魔力を帯びている」
と、すごく満足そうです。
ギンさんって、美食家みたいですね。
ためしにサンドイッチを鑑定してみたら。
『上位世界の料理 サンドイッチ 異界の卵、ハム、パンと調味料を使用 多大なる魔力を持つ』
って、文字情報がでました。
みかんとバナナも。上位世界の果物で魔力をもってるそうです。
つまり、我が家の食料は、全部魔力持ちみたいですね。
異世界法則は、謎に満ちてます。
それにしても。
この世界の、私と同じようなそれ「人」にはあえるんでしょうか?
「ギンさん、私と同じような人の集落は、遠いの?」
「うむ、遠い。サツキの足で歩いていくと、一日以上の場所にある」
いよいよキャンプセット、登場ですね。
野営とか野宿とかしなきゃ、人…人間には会えないみたいです。
ギンさんは頼もしいけど、人の常識には疎いみたいだし。
「心配するに及ばず、サツキよ。吾がそこまで連れていくゆえ」
「いいんですか?魔物を狩らなきゃいけないんじゃないの?」
「今日のように、魔物を狩りながら行く。竜族と人族も交流しておるな」
そこで言葉をとめて、期待に満ちた目で見つめてくるギンさん。
3本の尻尾が、パタパタと小刻みに揺れてます。
カワイイです、ギンさん。
食後のマッサージをご所望なのですね、殿。
仰せに従いますから、その目つき、やめてくれませんか。
幻獣へのイメージが、がらんがらんと崩壊してるんですけど。
ああ、もふもふには、勝てません。
それではせーので。
「ゴッドハンドマッサージの時間だ!」




