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魔術と魔法

「  」:今野五十鈴こんのいすず

『  』:雅章がしょう

「ねえ、魔術とか、魔法とか、何がどう違うの?

 そう言えば、仙術っていうのもあるし~」

『そうじゃな、簡単に言えば、全ては魔術に通じるわけじゃな』

「魔術に?」


   ***魔術について***


『魔術とは、文字通り“魔”の“術”じゃ。

 魔とは、神に近しい程の力であり、不特定多数にとって、悪影響を及ぼす可能性があるものを指すわけじゃ。

 術とは、これは言うまでも無いが手段。

 つまり、強大な力を行使する為の手段、それが魔術じゃな』

「ん~と、それって魔法とかとどう違うのかな?」

『魔法と言うのは、手段を用いて行う方法の事になるからのぅ。

 魔術師が、行使する方法を生み出されたものが魔法、と言う事になる訳じゃな』

「えっと、つまりは魔術っていうのは手段の研究とか、そういう事かな」

『まあ、そういう事じゃな。

 そもそも魔術とは、お嬢さんの様な来訪者の感覚だと、論法を纏めた研究書の様なものじゃな。

 既存の術式や、新たに生み出した式を記録するまでが魔術の領域であって、それを行うのが魔術師となる』

「そっか、研究者であり、司書であり、データバンクの人でもあるみたいな感じだね」

『魔法だけでなく仙術にしても、それを行使する方式が分からなければ、手も出せんからな』

「それじゃ、魔法とかを効率良くしたり、変化アレンジさせたりもしてるんだよね?」

『いや、それは魔法師や、魔具師、仙術師等の領域じゃな。

 魔術の領域は、既存の式の記録と、新たな式の開発じゃよ。それらを見、その扱いに法則性を付けるのが魔道師の領域になる』


   ***魔道について***


「魔道師?」

『魔道は、道じゃな。

 生み出された式が、表に出せぬ様なものであれば封印とし、表に出せる式であっても扱いを指導する。

 要は規則作りと監視、あとは魔術師等の指導役を担うのが、魔道師となる』

「でもさ、目を盗んで禁止行為をする人も居るんじゃないの?」

『その為に、現在の魔道師は、表に出る前の式に禁止事項を組み込む。

 禁止事項を行った場合には、発動を無効化する。あるいは、発動者本人に害が向く様に組み込むわけじゃな』

「それって厳しすぎる気がするんですけど」

『そうだの、ではお嬢さんにも分かり易い例を挙げてみるか。

 確か符術師じゃったな。その場合、式による恩恵の一つに、箱があるじゃろ。

 箱から符を取り出す時に、自分の手元では無く、離れた場所に取り出す方法を思い付いたと聞いたが、それでも“自分の物を自分で取り出す”という前提は変わらん。

 これが、他者の物も取り出せるとしたらどうじゃ?』

「それって、収納枠の意味無いよね?」

『よく考えてみると良い。

 収納枠はあくまでも、物を情報収納出来るというのが基本じゃぞ?

 そこに“自分の物のみ出し入れ出来る”という規制がかけられなければ、認識出来る範囲内では、誰の物でも取り出せる事になる』

「そっか、単にそういう事が出来るだけじゃダメなんだ」


   ***魔法や術について***


『つまり、この世の理に沿った何かを実現させる方法を生み出し、また管理するのが魔術となり、その魔術を監視し、管理するのが魔道とも言えるわけじゃな』

「それを行うのが魔法って事?」

『魔法だけでは無いぞ。

 魔術で生み出された式を、どの様に行使するかによって、様々な分類が有る訳じゃな。

 式を音声によって展開し行使するのが音声魔術と呼ばれる、お嬢さんがイメージする詠唱を必要とする魔法じゃな。

 魔法陣によって行使するのが陣魔法と呼ばれる。この陣の書き方の違いで魔法陣や符と呼ばれ方も変わる。

 書く物が武器や防具、鏃や銃の為等となった魔具も、陣魔法の一つと言えるわけじゃ。

 符術音声魔法と陣魔法を組み合わせた様なものは陰陽道などで用いられるのう。

 要は、決まった式をどの様に用いるかによって手段か変わるわけじゃな』

「え~、それだと道具とかも魔具だから、魔法を使ってるって事になるの?」

『その通りじゃな。

 ただ、多くの道具や防具等は、式で完結しておるし、それを用いる場合にも自身を燃料として行使する訳じゃ無いからのう。

 例外的なのは武器じゃな。その式を行使するには、自身を燃料として発動させる魔法と同じじゃ。

 違うのは、魔法師の場合はその場で式を書くが、武器の場合は書かれた式しか使えんからのう』


   ***行使について***


「自身の燃料って、何?

 それこそ魔力とか、そういうの?」

『魔力とか魔素とか、来訪者が良く口にするのう。こっちでもそういうものは確認されておらんよ。

 現在までに分かっているのは、精神力の消費じゃな』

「精神力?」

『直接的な戦いでは、肉体の行使を必要とするじゃろ? その結果、肉体疲労が生じる。

 それと同じで、式の行使を行うと、精神的疲労が生じる訳じゃ。

 実際、式を行使する事が上手い者は、他者と比較して、同じ式を行使しても、精神的疲労は少ないから、その分数も行使出来るし、大きな負担を生じる式も行使できる。

 お嬢さんもそうだろうが、居心地の悪い場に居ったら、精神的疲労は普段より大きくなるじゃろ? 上手い者程、そうした環境でも負担を負わないし、集中力も高い傾向があるからのう』

「なるほどね~。

 でもさ、精神力って何なのかな?」

『電気信号、と言われておるのう』

「電気信号?」

『手を動かす、脚を動かす。そういう一つ一つの動きでさえ、電気信号で動いておるのは知っておるか?

 それを、例えばお嬢さんを例に挙げれば、お嬢さんなりの信号が、身体全体を回っておるわけじゃな。

 手を動かすという信号の様に、自身の信号で状態変化させる術、それが魔術と言われておる。』

「ん~?」

『つまりじゃな、何も無いところで火を熾すには、一番分かり易いものとしては摩擦で熱を起こし、燃えるものを燃やす方法になる。

 空気中にも様々な物質が、目に見えないだけで有るわけじゃから、それらで摩擦を起こし、また、その周囲にある可燃物質を燃やす事で、目では何も無い様に見えるところで火を熾せるわけじゃ。

 その物質への働きかけを、自身の腕や脚を動かす様に、自身の信号で命令するわけじゃな。とは言え、そこは自身の身体では無いから、思う様には命令できん。

 その為に式があるわけじゃ』

「自分への命令信号を、自分以外に使うっていう事で良いのかな?」

『そういう事じゃな。

 自然の理から外れなければ、命令を適用させてやれば、理論上はどんな事でも行える。

 とは言え、いくら式を用いようとも、自身の精神力を越えた結果は、過程の段階で負い切れんから、おのずと扱える式は限られるがのう。

 後は、認識出来ない場所や物にも、当然結果が与えられんから、基本的には認識出来る対象に対してしか、行使は出来んな』

「つまり、自分の精神力が保つ範囲なら、どんな式でも、知っていれば使えるって事だよね」

『勿論、得意不得意はあるが、そういう事になるのう』

「得意不得意って、属性とか?」

『お嬢さん達来訪者は、属性とか気にするのう。実際のところそうじゃが、来訪者がよく言う様に、反対属性がどうのとか言う事は一切無いのう。

 お嬢さんの様な人間族は土気どきを持つ生き物じゃから、そのまま土属性を得意とするが、それは他の属性より効率的に扱えるという事でしか無い。

 そうじゃな、例に挙げた火を熾す場合、火気かきを持つ種族ではそのままでも、火の行使が出来るわけじゃが、土気を持つお嬢さんでもその火属性の式は扱える。しかし実際には土属性によって摩擦を起こした結果、火を熾した方が、消費する精神力は少なくて済むんじゃよ』

「え、火属性じゃなくても火が熾せるの?」

『過程の違いでしか無いのう。

 火属性では、可燃物質がそのまま燃える。

 他属性であれば、その属性に合った物質を振動させる等して摩擦を起こすという過程が加わるだけじゃからな。

 ただ、自身の属性では無い場合、他属性への影響命令は異物への対応と同じじゃ。自身の肉体操作ではない命令を式で補って行使すると言うのに、更に他属性という異物への命令を加えるくらいなら、自身が持つ属性に命令を与えた方が通り易いじゃろう?』

「あ~、うん。何となく分かるかも」

『過程が違うが結果は同じであるからこそ、いかに結果に至る過程をスムーズに思い描いて行使出来るかが、発動までの早さと、精神力の消耗量を決める事になる訳じゃな』

「じゃあさ、よく使う式の結果に至る過程、それをイメージトレーニングすれば、素早く扱える事になる?」

『なるのう。

 後は、精神的な安定も重要じゃな。

 その辺りが、式を扱う為の訓練と言ったところかのう』


「て事は、私も魔法を使えるんだ」

『お嬢さん、符術師じゃろ? 符術も魔法と同じ行程じゃから、既に使っていると言えるんじゃがな』

「そう言うんじゃなくて音声魔術・・・だっけ? そういうの」

『音声に変換された式を覚えれば、当然使えるのう。

 使える範囲は、お嬢さんが扱える符と同等になるがな』

「今のところ、水流さんから貰った三等級符までしか使った事無いな~」

『それじゃと、上位式までは扱える事になるのう。

 ただ、幾つかならともかく、多くの音声式を覚えて的確に使い分けるのは訓練が必要になるからのう。

 よく使う幾つかの式のみを音声式に、残りは符を使うと言うのがお勧めじゃな』


   ***属性について***


「そういえば、符には属性があるけど、実際には過程の違いだけなんだよね?」

『そうじゃな。符は使う時に選ばないといかんから、分かり易く、結果に近い属性で符が作られているんじゃよ。

 実際には火の符なら、火を熾すという結果で下位の火属性符となっておるが、行われるのは使用者が持つ属性によって火を熾すという結果に至る式じゃから、火属性でも何でも無い。結果が火系統になるというだけじゃ』

「え、火属性の術を使うんじゃなくて、結果が火になるっていう分け方なの?」

『そういう事じゃな。

 火だけでなく、例えば水を生み出すには、水気を持つ者は周囲の構成物質から水を構成する物質のみを集めるが、火気を持つ者は熱によって分利し集める。木属性を持つ者は木の性質である水分の収集によって、等となるわけじゃ。

 経緯の違いだけで、結果として周囲にある構成物質を集めて生成する行程が式の全てという訳になるのう』


   ***術と錬金について***


「構成物質を集めて生成って、まるで科学的に作るみたいだね~。

 化学式を実際に再現する感じかな?」

『化学式、ふむ。あっちでは構成物質に性質毎に名を付けているんじゃったな』

「そうだね。水は水素と酸素、つまりH二つとO一つの組み合わせって感じ」

『そうした理論形態を取ったのが科学、あっちの流れじゃな。こっちはもっと感覚的じゃが、中身は基本同じじゃし、錬金術となるだけの違いでしかない』

「ん~? 魔術じゃなくて錬金術?」

『魔術で生じた式を扱う中には、錬金術も含まれるからのう。

 現象的な結果に至るのが魔法や仙術と言った類で、物質的な結果に至るのが錬金術となる訳じゃよ。魔法等は一時的な結果、錬金術は継続あるいは永続的な結果を生じさせると言い変えても良いが、その根本に術式を用いる事は変わらんのじゃからな』

「一時的?」

『例えば符や魔法で炎を出しても、生じさせた火は、術が解ければ直ぐに消えるじゃろ。勿論、その結果何かが燃えた場合は残るが、符で出した火は消える。

 対して錬金術で生じた火は、普通に熾した火と同じで、意図的に消すか、燃やす物が無くなって初めて消えるわけじゃな。

 例外が生活魔法と言われるものじゃな。飲み水を生じたりという簡単な術ばかりになるが、それらのほとんどは通常位の錬金術じゃからな』

「そっか、飲み水出しても、消えちゃったら意味無いもんね」

『現象効果を大きく生じさせる為に、一時的という規制を設けたのが魔法等の術と言う事になる訳じゃな』

「そっか、結果的な分類だけで、基本的にみんな一緒なんだ」

『あくまでも、手段や方法でしか無いからのう』

・・・この組み合わせだと、崩れ難いな・・・(ぇ?

次の術系説明では、今野五十鈴の魔法系オタクっぽさや、雅章の腹黒さが出せればと(色々設定資料と違う気がすryu

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