表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

「トラウマ」



「ねーねー凜香ちゃん!おままごとしようよ~」


「ヤだ。いつも私が夫役だもん。私、妻役やりたいのに」


「えー、でも僕もやりたいんだもん~」


「私もやりたいの!」


あ、しまった。と思う間もなく目の前のふにゃっとした顔が崩れ—・・・


「うぇええぇん!凜香ちゃんだめぇ?」


と泣き出して

遠くにいた親に


「ちょっと凜香ぁ?おままごとの役くらい譲ってあげなさいよ」


「え~、でも、」


「でもじゃないの。全くナオくん泣かせちゃダメでしょ?あなた本当に女の子なのかしら?男の子なかすなんて。」


「だってぇ・・・」


「だってじゃないの。いいわね?」


「うん・・・。」


じりりりりり・・・


「う・・・ん・・・」


目を覚ますといつも見慣れた部屋の天井が見える。

東から差し込む光がカーテンに遮られて影ができる。


「朝か・・・」


鳴りっぱなしの目覚ましに手をかけ、音を止める。


「ふあぁ・・・」


5月14日。

今日の科目は


数Ⅱ、科学、古典、世界史、原文、総合。


中学とは一転する時間割。

高校生になって1ヶ月が経った。


「ふぁああ・・・」


もう一度盛大にあくびをして制服を見る。


「あーあ、あのガッコ行きたかったな」


日本女子高校。

偏差値はー・・・68。


「惨敗、か」


短く呟くとそれに応えたように遠くで蝉が鳴り出した。




焦れたように5分経過の度に鳴り出すアラームの音がまた奏で始めた。


バッハのメヌエット。


音楽は詳しくないが何故かこの音楽だけが頭にあり結局はアラーム音もこれにしてしまった。


「凛香ー?遅刻するわよ−」


慌ててパジャマを脱ぎ制服を着る。


「行ってきまーす!」


お母さんの「ちょっとご飯は−!?」という声を聞き流し心の隅でごめん・・・と短く謝る。









駅は相変わらずうるさく混雑している。


♪ドーファソラシドーファーファー

シードシラソ ラーシラソファ ♪


着信に気づいた私は通話ボタンにてをかけた。


そして着信相手の名を見て思わず渋面を作る。


「ナオ、おはよ。何?」


『おは、凛香。・・・別に用事はねーよ』


「・・・切るよ」


『ちょっ!凛香!』


「ふふっ、冗談だよ」


『冗談って・・・』


はあ、と向こうからため息が聞こえる。

よほど焦ったらしい。


萩村 素直。

素直って書いてナオって呼ぶ。


「そうだ。ナオが作ったトラウマ。今日夢でちょっとみた。」


思い出して声にすると当人は朗らかに言った。


『懐かしーねー、そんなときもあっt』


「切るね」


相手の返事を待たず通話を切る。


まったく・・・。

ナオのせいで今までイヤなことばっかだったんだからねーー・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ