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ログホラ二次創作短編集  作者: 櫻華
異世界転移(大災害後)編
9/16

影の守り人 ◎

今回は、明確な主人公はいません。



時期としては、〈軽食販売クレセントムーン〉の開店から少し経った頃です。




尚、このエピソードは妄想屋様の『太陽の貴公子《http://nk.syosetu.com/n2554ch/?guid=on》』の感想でのやり取りがきっかけで誕生しました。



また、『太陽の貴公子』の第12話とも関わり合う短編です。

一度、そちらも読まれる事をお勧めします。




後、陽輔達の科白や一部のネタは妄想屋様監修です。



妄想屋様、色々とありがとうございました!!



──〈アキバの街〉では今、一つのギルドが注目の的であった。






──中規模ギルド〈三日月同盟〉。




そのギルドが開店した〈軽食販売クレセントムーン〉で販売された〈クレセントバーガー〉を含む、“味のある食事”の数々は…〈大災害〉以降、味の無い食事を食べ続け…味に飢えていた多くの〈冒険者〉達には、この商品の数々を食して歓喜し、この店の出店は大いに歓迎された。











──しかし…〈軽食販売クレセントムーン〉の存在は、必ずしも好意的に受け止められるとは限らない。






世の中、善意ある人が居れば…悪意ある人も居る。




味のある食事で注目の的となったギルド〈三日月同盟〉に悪意を向ける者達も…少なからず居た。






◇◇◇






──ギルド会館、〈強欲なる者達キング・オブ・グリード〉のギルドホール内。



そこは、このギルドホール内にある会議室。

このギルドの作戦会議や活動合議を行う場でもある。



「──分かっているとは思うが……今、この〈アキバ〉では大注目の“あるモノ”がある」

「〈クレセントバーガー〉を初めとする“味のある食事”ですね!」


このギルドのギルドマスター─罪深き堕天使─が、今後の活動についての話し合いの会議の最初の議題に挙げたのは…今、〈アキバの街〉に住む〈冒険者〉の誰もが注目している“味のある食事”の事だった。


「あの食べられたもんじゃない食い物と違って…味があるし、変な食感も無い」

「けど…このアキバでは、需要がかなり高い“味のある食事”なだけに…求める者の数は多い」

「そうそう。いっつも長い行列が出来ていて…なかなか入手が難しいんすよねぇ〜」


ギルドメンバーから次々と挙がる言葉に、罪深き堕天使がニヤリと笑みを浮かべる。


「……おいおい。何、良い子ぶった連中と同じ様に礼儀正しく並んでいるんだ?

俺達は、俺達のやり方で手に入れればいいじゃないか」


ギルドマスターのその言葉に、ギルドメンバーの視線が一点に集中する。


「〈三日月同盟あそこ〉のギルドマスターは、お人好しだ。

大事なギルメンを人質に取られたら、俺達に快く“味のある食事”を提供してくれるさ。

なぁ〜に、この世界には法律も警察も裁判所も無いんだ。

誰も、俺達の事を裁けやしねぇーよ」


ギルドマスターのその言葉に、ギルドメンバーは同意する。




──この事態に陥ってから今まで…自分達は、他者を踏みにじって自分達の欲望を満たしてきたんだ。


今更、人一人を拐って脅迫するのに…躊躇う必要なんて有りはしない。




そう結論付けた〈強欲なる者達〉のメンバーは、次に入念な襲撃計画を企て始めた。






◇◇◇






──アキバ近隣の森。




──今日は、〈三日月同盟〉の材料調達班である小竜,飛燕,直継と…最近、にゃん太班長からの推薦で一緒に協力している陽輔,舞,カイト,イーサンの七人は、このフィールドで〈軽食販売クレセントムーン〉の商品の材料となる鹿を生け捕る為にやって来ていた。




──今回、〈シンジュク御苑の森〉でのイノシシ狩りの方は…二つ返事で夜櫻が引き受けてくれたので、そちらは彼女達に任せてある。




そうやって最近は、善意で協力してくれる人達の存在もあり…材料調達班を務める小竜としては、とても有り難く思っていた。




「陽輔さん、いつも材料調達に協力して下さってありがとうございます」


その日、休憩を取る際に丁度良く陽輔の近くに行ける機会に恵まれた小竜は、改めて陽輔にそうお礼を述べた。


「いや、まぁ別に…。

僕も、何か手伝えたらって思っていたし…まぁ、微力だけどさ」


そう言いながら、陽輔は少し照れくさそうに頬をポリポリと掻いている。


「そんな事ありません!ムチャクチャ助かってますから!」

「そ、そうかな…?」

「そうですよ!」


小竜の本心からのその言葉に…陽輔はまた少し照れくささを感じた。


「陽輔君、そろそろ休憩終わりだって」

「ああ、うん、分かった。

さてと。じゃあ行こうか」

「はい!」


わざわざ知らせに来てくれた舞に感謝を述べると…陽輔と小竜は再度、鹿狩りへと戻る為に移動を始める。




──その三人の後ろ姿を…隠密系特技ハイディング・スキルで姿を隠したまま、密かに監視していた〈暗殺者アサシン〉の男は…何処かへと念話を掛ける。



「〈三日月同盟〉の連中以外に、狩りに参加している奴等が居る」

『何処の誰か判るか?』

「片方は〈ホネスティ〉だ。

もう片方は……〈ホネスティ〉の下部組織のヤツだな。

しかも、レベルはカンストもしてない女の回復職だ」

『なら──』


ギルドマスターからの指示で、襲撃ポイントでの作戦目標を少しばかり修正して…〈暗殺者〉の男は、作戦ポイントまで三人を追跡する事にした。






◇◇◇






──しばらくして…いつも通り充分な収穫が得られ、必要な数の鹿を生け捕りにする事が出来た。





「──おう、檻がもう満杯だし…そろそろリポップも限界だと思うぜ。

だから、今日はこれで終わり祭りだ。

……さてっと。今日の収穫祭も終わったし、そろそろ戻るか」


報告の念話を終え、直継が親指を立てながら告げたその言葉に…皆の心がアキバへの帰還で緩んだ隙を突く様に、その者達は突如現れた。



──目眩ましの様に辺りにばら蒔かれた煙玉で一時的に視界を奪われた直継達に、何処からか矢が複数回放たれる。




それを直継,陽輔,カイトの三人は全て切り払い、飛燕は軽やかに避け、イーサンは盾を構えて防ぎ、舞は陽輔に素早く背後に庇われて事なきを得る。


「ぐっ!」


直継達と同様に矢を切り払っていた筈の小竜だったが…突如、短い呻き声を上げて両手に持っていた武器を落としてしまった。


「小竜君!!」


突然の小竜の様子の急変に一瞬気を取られた陽輔だったが…背後の舞が短い悲鳴を上げた。


「きゃあっ!」

「舞ちゃん!?」


陽輔が慌てて背後を振り向き…そして、その光景に青ざめた。




──そこには、小太刀を首元に突き付けられた状態で忍者風の装いをした男に捕らえられた舞の姿があった。




「うっ…」

「何だお前ら!?」

「よぅ、す…け、くん…」

「おっと、動くなよ!テメェーら!!

ちょっとでも動くと、この女に〈アサシネイト〉を叩き込むぜ!」

「くっ…!」


その言葉に、舞を助けようと動こうとしていたカイトと陽輔は足を止める。



周りの状況を把握しようと、軽く見渡せば…直継と飛燕もその場から動けずにいた。




──それもその筈。




いつの間にか現れた襲撃者の仲間らしき者達が、少し顔色が悪くなった小竜を舞と同じ様に捕らえ…直継達を牽制していた。


「ヒヒヒ!オレ様特製の毒針、効果覿面だな」

「…直継さん、すみません…」

「動くなよ?動くとコイツをバラバラにすっぞ!」

「クソッ!卑怯だぞ!!」

「ざっと見て、30人か……

流石に、ピンチ祭りだなこりゃ……」


小竜を人質に取られ、直継達も迂闊に動けずにいる。


(ん?これは…?)


直継のサブ職業〈辺境巡視〉の“感知”に何かが引っ掛かる。


しかし、すぐに目の前の状況に集中して気を引き締めた。






◇◇◇






──いつの間にか自分達を包囲する様に現れた襲撃者達は、まるで狙ったかの様に高レベルプレイヤーへの牽制として各々に人質を取っている。



(舞ちゃんと小竜君を人質に…しかも、こんな人数で統率が利いてるなんて……計画した人間は、かなりの切れ者か?)


再度、周囲を見渡せば…イーサンは盾を構えているが、舞を人質に取られている事で自分達と同様に迂闊に動けずにいて…とてもじゃないが、頼れそうにはない。


「舞先輩!」

(一体どうしたら…)


表情を歪ませ、苦悩する陽輔達を見ながら…襲撃者達─〈強欲なる者達キング・オブ・グリード〉のメンバー達─は優越感を感じていた。




──〈ホネスティ〉所属メンバーの存在に…一時は、作戦遂行は無理かと諦めかけたが…再度練り直した作戦は上手くいき、当初の目的の〈三日月同盟〉への人質と…〈ホネスティ〉への牽制となる人質を捕まえる事に成功した。




その為、『最早、此処にいる者達には自分達を止められはしないだろう』…という思いが優越感を抱かせていた。




──そして…襲撃者達の作戦が成功した今の状況では、陽輔達がその状況を覆すのはほぼ無理だった。






──そう。“第三者”という存在を除けば…






突如現れた…黒装束の狼牙族の青年〈暗殺者〉が、舞を捕らえていた〈暗殺者〉の背中に〈ステルスブレイド〉を思いきり叩き込み…額に白い稲妻の模様が入った黒毛の猫人族の長身〈暗殺者〉が、拘束から解放された舞を抱き抱えて素早く陽輔達の方へと退避する。



突如現れた第三者の存在に…浮き足立った襲撃者達は、突如自分達の間を駆け抜ける様な斬撃を受ける。



痛みに一瞬気を取られると…いつの間にか、捕らえていた筈の人質の〈盗剣士スワッシュバックラー〉の青年─小竜─を左側の小脇に抱え、右手に漆黒の小太刀を握った─黒いマントを羽織り、黒い狐の仮面を着けた女〈暗殺者〉─が、直継達のすぐ傍らに現れていた。



「なっ、何だ!テメェーは!?」


顔をトマトの様に真っ赤にして、怒鳴り散らす罪深き堕天使へ…狐面の女〈暗殺者〉─朝霧─は、静かに答える。


「彼らを、影から守る者…」

(……!?)


女〈暗殺者〉のその言葉に…陽輔は、彼女の正体に僅かながら気が付く。


一方の…初めて作戦を邪魔された〈強欲なる者達〉のメンバー達は、怒り狂い…数の暴力に訴えようとした。



しかし…女〈暗殺者〉は一切怯む事は無く、落ち着いていて…



「すまないが、君らは打ち洩らしへの対処と動けない者を守ってくれ」


そう一言告げると、女〈暗殺者〉は襲い掛かる〈強欲なる者達〉に向けて駆け出した。


「!!」


その様子に、一瞬助太刀する為に動こうとした陽輔達を…黒猫〈暗殺者〉─黒雷─が手で制する。


「あの者の言う通り、打ち洩らし対策と守りに専念してくれ」

「でも…一人で、あの人数を相手するのは…」


女〈暗殺者〉の身を案じる陽輔のその言葉に、この場に相応しくない…ニコニコと明るい笑顔で青年〈暗殺者〉─疾風─が言葉を掛ける。


「大丈夫ですよ、あの人なら」

「……分かりました」


疾風のその言葉に…陽輔は若干納得いかない気もするが、舞を守る為に気を引き締め直した。






◇◇◇






──しばらくして…疾風の言う通り、女〈暗殺者〉は30人近い人数をほぼ一人で蹴散らした。




〈強欲なる者達〉と大立ち回りを演じる際、女〈暗殺者〉の姿が時々ブレた様な気がしたが…陽輔は、後から現れた〈放蕩者の記録デボーチェリ・ログ〉のメンバーや〈蒼き狼の牙〉のメンバーに襲撃者達が次々に捕縛されていく姿を眺めていく内に…その事が記憶の片隅から消えていった。











──陽輔は知らなかった…朝霧の姿が時々ブレた様に見えたのは、後に朝霧が習得する事になる口伝〈死の猟犬の狩りヘルハウンド・ハンティング〉の片鱗だった事を…











──そして、〈強欲なる者達〉のギルドメンバー達は…舞や小竜を人質に取って脅迫しようとしていた事を知って憤慨した夜櫻によって、性根を1から徹底的に叩き直され…後に、生産系の〈冒険者〉や〈大地人〉商隊の護衛を務める様になったという……

【おまけ①】




黒雷「御前。陽輔という青年は、正体に気付いてたみたいだぞ?」

朝霧「フフッ。そうかもな」

疾風「ギルマス…大丈夫なんですか?」

朝霧「心配しなくても大丈夫だ。彼は…な」

疾風「???」






【おまけ②】




◆〈シンジュク御苑の森〉から帰還中…拘束された大人数の〈冒険者〉を移送中の蒼牙達〈蒼き狼の牙〉のメンバーの姿を見つけた夜櫻、声を掛けてみる。


夜櫻「あれ、蒼牙君?何してるの?」


◆蒼牙、夜櫻に気付く。


蒼牙「御前からの依頼で、〈三日月同盟〉の材料採取班へ襲撃を行った者達を連行中です」


◆夜櫻、採取班に舞と陽輔が居た事を思い出す。


夜櫻「…ふーん」


◆夜櫻、一瞬不穏な雰囲気を醸し出す。


蒼牙「夜櫻さん…?」


◆蒼牙、その雰囲気に一瞬呑まれかける。

夜櫻、目が笑っていない笑顔で話し掛ける。


夜櫻「蒼牙君。彼らの更生をアタシが担当したいんだけど…任せてくれない?」

蒼牙「いや…しかし…」

夜櫻「ま、か、せ、て」

蒼牙「……はい、分かりました」


◆蒼牙、夜櫻の有無を言わせぬ雰囲気に根負けして承諾する。

〈強欲なる者達〉のギルドメンバー達…夜櫻の纏う恐ろしい雰囲気に恐怖し、戦慄が走る。






【おまけ③】




◆アキバの街中


冒険者A「聞いたか?〈三日月同盟〉のギルメンに手を出したギルドが、コテンパンにされたらしいぞ」

冒険者B「えっ?何処が?誰に?」

冒険者C「〈強欲な者達〉ってギルドが、〈修羅姫〉に」

冒険者D「うわぁ〜…。〈大災害〉以降も、〈修羅姫〉健在かぁ〜」






ランス「……何をしているんですか、あの人は…(呆れ)」

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