ランスロットと陽輔の初めての邂逅☆
これは、妄想屋様とのやり取りの中で誕生した短編です。
時期としては、約四年前位になります。
陽輔君とランスロットさんが如何様にして出会ったかを書いた話となっています。
尚、作中に登場するサナエ、陽輔、カイトの台詞及び後半部分の面白ネタは妄想屋様監修です!
読んで大いに笑って下さい!!
平成28年1月23日、妄想屋様のご指摘により一部修正しました。
──サナエは、陽輔達に聞こえない様に舌打ちしていた。
今、自分達が相手にしている三体のモンスターは…本来ならばこのフィールドには絶対に出現しない筈のレベル帯であり、この先の別フィールドに出現する筈の種類だ。
──つまり、何処かの馬鹿が自分達にMPKを仕掛ける為に、そのフィールドからここまで…わざわざ誘導してきたという事だ。
(けどなぁ、あたし達全員〈ホネスティ〉なんだけどなぁ…大手も関係無しか?)
MPKを仕掛けた奴の思考を読み取ろうと考えてみるが……サナエには、その程度の事を考え付く位が限界だった。
──すぐに、目の前の戦闘に集中するが……今相手しているモンスター三体と戦闘になった際に、すぐに〈師範システム〉を解除し、自分とヤッホーは本来のレベルに戻した事で、今は戦闘を拮抗させる事が出来ている。
しかし、戦線を拮抗させるのが限界だ。
──こちらの攻撃の要である〈暗殺者〉のカイトと〈盗剣士〉の陽輔は、目の前のモンスター達とはレベル差があり過ぎて、あまりダメージを与えられていない状況。
──レベルを元に戻したとはいえ、自分とヤッホーは陽輔とカイトのレベル上げの為に直前まで行っていた戦闘で、MPを半分以下─現在進行形で、今は三割以下にまで消費している。
──このままだと、モンスター三体全てを仕留める前に自分かヤッホーのMPが切れるのが先だろう。
(……チッ!面白くねぇな)
サナエは、そう心の中で悪態ついた。
──この状況を打破する様な何かを考えるのは、自分には向いていない事位はサナエにもわかっている。
先輩の様な優れた指揮能力や俯瞰した広い視野を持つ訳もなく、先輩の様な突拍子もない思い付きで状況を打破してしまう様な高い適応力を持つ訳もなく、フェイディットの様な戦況操作能力を持つ訳でもない。
今の自分に出来る事は、精々…挑発特技でモンスター達の敵愾心を出来るだけ多く稼ぎ、レベルの低いカイトや陽輔が攻撃対象にならない様に引き付け続ける位だ。
(う〜ん、どうすっかなぁ…このまんまじゃ不味いよなぁ…)
今の自分の打てる手では、現状維持が精々で……戦況を大きく覆すには、モンスター達を一気に掃討できるだけの火力が必要だ。
(しまったなぁ…トシも連れてくりゃ良かったぜ)
陽輔達を連れて〈ホネスティ〉のギルド本部ビルを出る際に、土方歳三が「何でしたら、自分も同行しましょうか?」と同行を申し出てくれたが…自分はそれを無下に断ったのだ。
申し出を断らなければよかった…と、今更後悔しても後の祭りである。
──とにかく、何か打開策を…とサナエが無い知恵を絞って考えようとした時、一陣の蒼い風がサナエの前に現れた。
それと同時に、サナエのモニター画面に“二人分”のパーティー申請が表示される。
「ほほう、良い所に来たな」
表示されているPC名を見て、ニヤリと笑みを浮かべながら…そう呟いたサナエは、パーティー申請の『Yes』を押した。
◇◇◇
──陽輔は、歯痒い思いを抱いていた。
唐突に仕掛けられたMPKに多少は驚いたものの…素早いサナエの指示で、現在は三体いるモンスターの内の一体へと攻撃を集中させている。
しかし、自分の攻撃もカイトの攻撃も…決定的な一撃とはなり得ず、戦闘は現在も長引いている。
今は、サナエが挑発を行ってモンスター達の攻撃を一手に引き受けてくれ、ヤッホーが攻撃を受けた事で減ったサナエのHPの回復を行う事で戦線を維持し続けてくれてはいるが…どちらかのMPが尽きた瞬間、戦線が崩壊して全滅するのが目に見えて明らかだった。
(ぐぅ…どうしよう、ジリ貧か)
焦燥に駆られていた陽輔だったが……突如、晴れ渡る大空の深い蒼色の鎧を身に付けた〈守護戦士〉がサナエとモンスター達の間に立ち塞がる様に現れた。
「えっ!?助っ人!?」
突然の〈守護戦士〉の出現に驚いていた陽輔だったが…新たに追加された“二人分”のパーティーメンバーのステータスに表示されていたギルド名を見て、更に驚く事になった。
◆◆◆
名前:ランスロット
職業:守護戦士LV80
所属ギルド:D.D.D
名前:アーサー
職業:盗剣士LV80
所属ギルド:D.D.D
◆◆◆
──それは、アキバ最大手の戦闘系ギルド〈D.D.D〉の名だった。
「えっ!?〈D.D.D〉!!?」
「〈D.D.D〉ってマジかよ!!」
表示されたステータスを見て驚く陽輔とカイトを余所に……パーティーチャットが開かれ、サナエが〈守護戦士〉─ランスロットへと声を掛ける。
「よう康介、マジ助かったぜ」
「ああ、丁度助太刀が間に合ったのなら良かったです」
そう言いながら…ランスロットは特技『ヘイトエクスチェンジ』を発動させ、サナエと自分の敵愾心を交換してモンスター達を一手に引き受ける。
「そう言えばお知り合いでしたね」
「あの、一体何が何だか…」
現れたランスロットを見て、ヤッホーは苦笑いを浮かべ…陽輔は若干戸惑い気味だ。
「おう!ただの辻支援だ。
この二人が来てくれりゃあもうでーじょーぶだしな!」
何故か絶対的な自信で、そう断言するサナエに苦笑しつつ…ランスロットは声を掛けた。
「細かい話は後です。
早苗さん、まずは簡単で構いませんので…状況報告を」
「MPKだよ」
言葉の端々から、サナエが怒り心頭なのが伺い知れる。おそらく、心の中では唾を吐き捨ててるところだろうか……
「戦闘訓練の後で全員MP三割切ってんだ。
陽輔とカイトは中堅レベルだし」
サナエからの簡易報告を受け、ランスロットは素早く状況分析を行う。
「成程、状況は概ね理解出来ました。
盾役は私が引き受けます。
早苗さんは残り少ないMPを全て攻撃に回して下さい。
アーサーはモンスターを一体相手にしつつ、陽輔君とカイト君の攻撃補佐と回復の補助を。
ヤッホー君…で合っていますか?…はそのまま回復に専念して下さい」
状況分析を終えたランスロットは、手早く指示を出すと…挑発特技『アンカーハウル』を発動させ、『フォートレス・スタンス』で防御力を上げる。
──それを合図に、サナエ達は戦闘を再開させた。
◇◇◇
──ランスロットとアーサーの参戦は、モンスター達側に傾きつつあった戦局の天秤をサナエ達へと傾けた。
ランスロットは、守りに特化した重装備の〈守護戦士〉であるのに加え、サブ職〈守護神〉の特性と『フォートレス・スタンス』の特技効果が相まって…モンスター達の猛攻を受けているにも関わらず、HPの減りは緩やかな為にアーサーがかけた『脈動回復』でも充分な位である。
また、アーサーはモンスターを一体相手にしつつ、陽輔達が相手にするモンスターに『アーリースラスト』の追加ダメージマーカーを常時設置している。
おかげで、陽輔達の現在の攻撃力でも充分なダメージを与えられる様になった。
──それに、サナエが攻撃に回った事が一番大きいのだろう。
──あんなに苦戦を強いられていたモンスター達との長時間の戦闘は、ランスロットとアーサーが参戦する事で…僅か30分で終了した。
戦闘が終了した後、サナエがランスロットへと声を掛けた。
「そういや、どっか行く予定だったのか?」
「実は、我々は次の大規模戦闘に必要な高性能の回復アイテムの素材アイテムの一つが入手出来るクエストに向かっている最中で…たまたま、早苗さん達がモンスター達に苦戦しているのを見掛けましたので……アーサーと助太刀に来たんです」
ランスロットとサナエの会話を聞きながら、ヤッホーが呟いた。
「大規模戦闘か…そういや最近行ってねぇなぁ」
「レイドすげー!」
会話を聞いていたカイトは、目をキラキラと輝かせている。
陽輔は、改めてランスロット達にお礼を述べた。
「あの、ありがとうございます」
ポリポリと頬を掻きながら陽輔の述べたお礼の言葉に、ランスロットは笑みを浮かべて答えた。
「別に構いませんよ」
そう述べたランスロットに、陽輔とカイトも笑みを浮かべた。
少しの間、皆で笑い合った後に…ニヤニヤと笑いながらサナエが提案した。
「ついでだからフレンド登録してもらえ」
「あ、良いですか?」
「じゃ俺も♪」
少し躊躇い気味な陽輔と若干興奮気味なカイトからの頼みに…ランスロットは快く承諾した。
「ええ、構いませんよ」
ランスロットからの承諾を貰い、陽輔達は自身の〈フレンド・リスト〉にランスロットとアーサーの両名を登録する。
ランスロットとアーサーも、既に登録されているサナエを除いた…陽輔、カイト、ヤッホーの三名を〈フレンド・リスト〉に登録する。
お互いのフレンド登録が終了すると、ランスロット達はクエストへと向かう為にサナエ達と別れた。
◇◇◇
──サナエ達には知らされていなかったが……この時、ランスロットは〈D.D.D〉共有のパーティー、レイド、レギオン専用テキストチャット掲示板を利用して、残りのパーティーメンバーにMPKを仕掛けたプレイヤーの探索とステータスの確認を行ってもらっていた。
サナエ達と別れた後に、ランスロットはその一連の出来事を全て〈蒼き狼の牙〉のギルマスである蒼牙へと報告し、報告を受けた蒼牙は…追跡調査を行い、サナエ達を襲撃したMPKが無差別にMPKを仕掛けている事を突き止め、その質の悪いMPKが〈F.O.E〉から『垢バン』を食らったのは言うまでもない……
◇◇◇
──東京都 某所。
──今、少し洒落た居酒屋の広い店内には…結構な人数が集まっていた。
本日、この居酒屋を完全に貸し切って…〈エルダー・テイル〉のオフ会を兼ねたレイドクリアを祝う為の打ち上げが行われているのだ。
──今日のオフ会は、〈D.D.D〉主催で行われてはいるが……今回の大隊規模戦闘は、〈ホネスティ〉から情報提供の全面協力を得て、〈D.D.D〉と〈ホネスティ〉各々の大規模戦闘者精鋭、そして助っ人として参加した凄腕の大規模戦闘者の〈神祇官〉と〈武士〉の尽力によりクリアしたと言っても過言ではないだろう。
──そんな場に…早苗に誘われて、若干戸惑い気味の陽輔と興奮気味に周囲を見回している戒斗が来ていた。
陽輔は烏龍茶、戒斗はジンジャーエールが注がれたグラスを持って佇んでいると…早苗が長い黒髪の女性を伴って近付いてきた。
「おう、二人共楽しんでるか♪」
「これが…打ち上げっすか!!!」
「あの、来て良かったんですか」
人生初の為興奮気味の戒斗と、言葉では戸惑っている様だが…実際の態度は、人生初につきそわそわしている陽輔の対称的な態度に、早苗と傍にいる女性がクスクスと笑う。
「陽輔、言葉と表情が真逆だぜ♪」
「クスクス♪面白い子達だね♪
…で、この子が舞ちゃんの?」
「あい!彼氏の陽輔ですぜ、うえっへっへっへっへ」
陽輔を紹介している筈なのだが……何故か、早苗は悪代官に媚びを売る悪商人風の手もみをしている。
「……さーちゃん、アタシは寧ろ成敗する方なんだけど(笑)」
「そう言えば、そうだった!!」
女性からのツッコミに、早苗は気が付いて衝撃を受けた様な表情を見せる。
女性と早苗の一連の漫才(?)に、戒斗はウケて大爆笑している。
しかし、陽輔は早苗の行動には慣れっこだったので…早苗と女性の親しげな感じの態度を見て、陽輔は早苗がいつも楽しげに語る『先輩』が目の前の女性ではないだろうか?という推測を冷静に考えて尋ねた。
「あの、もしかしてその人が『先輩』ですか?」
「チッ、陽輔には不発だったか」
陽輔が自分の渾身のボケに全く反応を見せなかった事で、掴みが失敗したのを早苗は本気で悔しがっている。
「残念だったね〜、さーちゃん。…後、アタシは違うよ」
「えっ?」
自分の推測が外れ、困惑する陽輔に笑顔を見せながら女性が答えた。
「多分、それはアタシの妹の方だよ。
あ、アタシの名前は早川咲良。PC名は『夜櫻』だよ」
「『夜櫻』って、あの〈剣速の姫侍〉とか〈渡り姫〉とか呼ばれている…!?」
「うん?」
女性─咲良の自己紹介を聞いた戒斗は驚き、大興奮していたが…陽輔は知らないのか疑問顔だ。
「何だよ知らねぇのかよ!あの『夜櫻』さんの中の人だぞおい!!!」
「分かったから、肩揺するなよ」
web上で動画や話題にもよく登場する有名人の一人の…その中の人に会えて大興奮する戒斗は、反応の浅い陽輔の肩を掴み揺さぶる。
肝心の陽輔は、戒斗に揺さぶられて首から上がガクガクしている。
そんな陽輔達を脇に置いたまま、早苗は咲良に尋ねていた。
「ところで…先輩は来てないんすか?」
「ああ。朝香は、今日は会社で重役会議があって…忙しいから来れないって」
「えぇ〜〜〜!!……折角一緒に飲めると思ったのにぃ」
咲良の答えを聞いて残念そうな雰囲気を思いきり漂わせる早苗に、咲良と陽輔達は苦笑いを浮かべる。
「仕方がありませんよ。母にも現実の都合というものがあります」
「だって康介よぅ、先輩一番活躍してたじゃんかよぅ、主役じゃねーかよぅ」
「……何処のヤンキーですか!」
「いやいや。朝香も社長という立場上、会社を疎かには出来ないでしょ」
いつの間にか近付いてきた男性─康介の言葉に、往年の不良みたいに康介を下から睨み付ける様な仕草をする早苗を…苦笑いしながらも、咲良は慣れた手つきで羽交い締めにして引き剥がす。
「……あっ!もしかして、ランスロットさんですか?」
康介の声と名前で思い出した陽輔は、そう問い掛ける。
◆◆◆
──以前、MPKを受けて助けられた際にランスロットという〈守護戦士〉に向けて早苗が『よう康介、マジ助かったぜ』と声を掛けていた事をしっかりと覚えていたのだ。
また、その後は早苗に頼まれて何度か陽輔達のレベル上げやクエスト挑戦にも付き合ってくれていた事もあり、彼の声を覚えていたのだ。
◆◆◆
「(ピクッ!)」
陽輔の言葉に、戒斗が僅かに反応する。
──多分、アニメやマンガだったら耳がダンボ状態になっていただろう…と思われる様な反応だ。
「ええ、そうですよ陽輔君。君達も、今回の打ち上げに参加しているんですね」
「あ、はい…早苗さんに誘われて…」
ポリポリと頭を掻きながら答える陽輔の横で…しばらくプルプルと小刻みに震えていた戒斗は、目をキラキラと輝かせながらさらに大興奮して喋り出した。
「あ、あの、〈D.D.D〉のランスロットさんですか!?」
「うん、この前レベル上げに付き合ってくれたランスロットさんだけど」
「〈絶対の守護神〉とか『〈D.D.D〉の不動の盾』とか言われてる人だよ!お前何冷静に俺に突っ込んでんだよ!!!」
大興奮している戒斗の言葉に…苦笑いを浮かべながらの陽輔から冷静なツッコミが入り、戒斗は大興奮状態のまま陽輔を睨み付ける。
「…すみません、コイツミーハーで…」
「おや?私の二つ名をご存知ですか。陽輔君、彼は?」
「幼馴染みの戒斗です。
〈暗殺者〉でPC名『カイト』はコイツです」
「ほう、そうなんですか」
陽輔の紹介で、康介は戒斗がカイトである事を理解出来た。
「すげー!すげー!動画にも載ってた!超有名人だ!この人が中の人かー!!!」
「そうだろ、すげーだろ!!」
戒斗のテンションはさらに上がり、ハイテンション状態で康介の周りをグルグルと回りながら見ている。
──しかも、質が悪い事に早苗がさらに煽っている。
「フフ、君の様な若者にその様に言われると…何だか照れくさいですね」
「戒斗、あんまり回るなよ。犬かお前は」
大興奮状態で康介の周りを回る戒斗の様子に…陽輔は若干呆れ気味の表情を見せ、康介は微笑ましそうにそれらを眺めている。
「だってよ!だってよ!」
「ランスロットさんって有名人だったんですね。後で調べてビックリしたんですけど…」
「クスクス。別に、嫌ではありませんから構いませんよ」
戒斗は未だに大興奮中で、ポリポリと照れ隠しの様に陽輔は頭を掻いている。
──実は、戒斗程では無いが…陽輔も偶然知り合った人が〈エルダー・テイル〉では有名人であった事、そんな人をフレンド登録した事、そして度々レベル上げやクエスト挑戦を手伝ってもらっていた事を嬉しく思っているのだ。
そんな陽輔の気持ちを薄々感じ取っている康介は、突然こう切り出した。
「そういえば、早苗さんから聞きましたが……二人共、もうすぐカンストするそうですね」
「あぁ、はい」
「はいっす!!!」
康介の言葉に…陽輔はあっさりと答え、戒斗は何故か敬礼している。
「なら、今度一緒にレイドに挑戦してみませんか?
勿論、君達の今のPCの装備でも充分に挑戦可能な簡単なレイドですが」
「…えっ?」
「…なん、だ、と…!?」
康介からの突然の提案に、陽輔達は一瞬思考が停止するが…その意味を理解すると同時に驚いた。
「レイド…来たああああああああああああああああああああああ!!!!!」
戒斗は今日一番のテンションMAXモードで絶叫する。
「あの、えと、良いんですか…?」
「ええ」
「レイドだレイド〜!初めてのレイドーーー!!!」
戒斗は、嬉しさの余り、スキップしながら小躍りしている。
「あ、あの、ありがとう、御座います」
陽輔も、照れながら期待でワクワクしている。
「ほほ〜う、副長から直々の誘いとな」
意地の悪い笑みを浮かべながら…早苗がそう呟く。
「副長?」
「知らねぇのかよ!〈D.D.D〉のサブマス任されてんだよ!!!」
疑問顔の陽輔に、戒斗はそう言って突っ込む。
「直々の誘いだからな、下手こいたら『らいとすたっふ』にフルボッコされるから気を付けろよ」
意地の悪い笑みでニヤニヤと笑いながら早苗はそう言葉を続ける。
「ふぇっ!?」
それを聞いた戒斗は涙目になり、ガタガタブルブルと震え出す。
「……そんな事しませんし、させませんよ。
後、誤解を招く様な事を仰らないで下さい。
実質、〈D.D.D〉のサブマスはリチョウかクシ君ですよ」
「ほ、本当っすか!?」
「戒斗、早苗さんのブラックジョークだよ」
康介のその言葉に…戒斗はすがり付く様に聞き返し、陽輔は苦笑いを浮かべている。
「冗談はさておき、そんときゃあたしも参加してやるか♪」
「ならアタシも、知り合いを何人か連れて参加しようか?」
「ええ。伯母さん、その時は宜しくお願いしますね」
「うん!バッチリと任せとけ!!」
胸をドンと叩いて宣言する咲良の様子に、康介は苦笑いを浮かべていた。
──そんな康介達の一連のやり取りが、周りの打ち上げ参加者の密かな娯楽になったのは……ここだけの話だ。
◇◇◇
──それから数日後、ランスロットに誘われて陽輔とカイトは初レイドに挑戦し、見事クリアしたと言う。
──その…陽輔達の初レイド挑戦が、どんな感じであったのかは……また別の話である。