この親にして、この子あり☆
今回の主役は、ランスロットさんです。
時期としては、御前(朝霧)が〈D.D.D〉を脱退して少し経った頃になります。
そして、後の〈D.D.D〉の名物光景(?)の一つ…『〈鬼畜眼鏡〉VS〈温厚頑固眼鏡〉のガチンコ舌戦バトル』が始まった切っ掛けの話でもあります(笑)
──2010年…アキバの街、〈D.D.D〉ギルドキャッスル。
──その一角で、二人の眼鏡をかけた〈守護戦士〉が…まるで睨み合うかの様に対峙している。
──片や、ギルド〈D.D.D〉のギルドマスターにして、〈狂戦士〉の二つ名を持つ…知性的と好戦的の二面性を兼ね備えた白皙の〈守護戦士〉クラスティ。
──片や、〈D.D.D〉第二レギオン師団師団長にして、〈絶対の守護神〉や『〈D.D.D〉の不動の盾』の二つ名を持つ…頼れる紳士〈守護戦士〉ランスロット。
──二人は対峙したまま、動かない状態が長い時間続いている。
◇◇◇
──そもそも、事の発端は……この間の大規模戦闘で、助っ人として参戦していた朝霧がレイドボスの攻撃を受けた際に思わず「母さん!大丈夫ですか!?」とランスロットが声を掛けてしまった事が原因なのである。
それをしっかりと聞いていたクラスティは、“ある事”を企み…本日、ギルドキャッスルへとやって来たランスロットを呼び止めた訳である。
◇◇◇
「……で?私を呼び止めた訳は何でしょうか…」
ランスロットとしては、嫌な予感しかしないが…一応社交辞令として尋ねる。
「ランスロット。この間のレイドの時、御前の事を『母さん』と呼んでましたね?」
クラスティのその言葉に、「嫌な予感が的中した」とランスロットは心の中でそう呟く。
脳裏には、オフ会で会ったクラスティ─晴秋の意地の悪い笑みを浮かべている姿が浮かんでいる。
「……でしたら、何でしょうか」
「簡単な話だよ。御前を〈D.D.D〉に連れ戻してきてくれないかな?」
「嫌です」
クラスティのその言葉に、ランスロットは拒否の言葉で即答する。
「即答で拒否しないでくれないかな。
私としては、御前の能力を高く買っているんだよ?
だからこそ、是非〈D.D.D〉に戻ってきてもらいたいんだ。
だから…ね?御前も息子の君、直々の頼みなら聞くんじゃないのかな?」
「断固拒否します」
クラスティの説得の言葉に一切耳を貸さず、ランスロットは再び拒否の言葉で即答する。
ランスロットの頑なな様子に、ふーむと一瞬考えた後…クラスティはこう切り出す。
「これは、ギルドマスターの命令だと言ってもかい?」
「絶対にお断りします」
クラスティの言葉をピシャリと拒否の言葉で切り捨てる。
そのまま睨み合い(?)を再び続けるクラスティとランスロットの間に激しいブリザード(のイメージ)が吹き荒れる。
──その二人から醸し出される雰囲気に…興味本意に近付いた何人かのギルメンが、『絶対零度ツンドラ地帯擬似体験ツアー』へと突入する。
しばらくして、深い溜め息を洩らしながらランスロットは述べた。
「……大体、か…御前は自らの意思で〈D.D.D〉を出ていかれたんです。
もし戻ってくる気なら、自らの意思で戻られる筈です。
それに、たとえ私が戻る様に説得しようと、貴方が戻る様に説得しようと……御前本人に戻ってくる気が全く無いのなら、幾ら言っても無駄だと思いますよ」
そう言い切ったランスロットに、クスクスと笑いながら…クラスティがこう呟いた。
「流石は親子です。
御前も、一度決めた事を頑として曲げない様に…君も、一度決めた事は頑として譲らないみたいですね。
『この親にして、この子あり』……でしょうか?」
「……は?」
──そう言葉を締めて会議室へと歩き出したクラスティに…ランスロットは納得出来ないモヤモヤを抱えたまま、その後を追う様に会議室へと向かうのだった。
◇◇◇
──その後…〈D.D.D〉ギルドキャッスルの一角でたまに、〈鬼畜眼鏡〉VS〈温厚頑固眼鏡〉のガチンコ舌戦バトルが繰り広げられ、それが〈D.D.D〉ギルド内の名物光景の一つとなったのは……ここだけの話である。