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ログホラ二次創作短編集  作者: 櫻華
異世界転移(大災害後)編
14/16

居場所◎

今回の話の主役は、一応リーゼです。



時期的には、『Route43』のヘンリエッタ達とのやり取りから少し経った頃くらいです。






作中には、津軽あまに様のところからリチョウとユタを(らいとすたっふメンバーは名前のみ)……ヤマネ様のところから櫛八玉をお借りしてます。






津軽あまに様には、ご許可を戴かずにキャラクターを使用しました。もし、不愉快ならばご一報下さい。

修正するなり、削除するなり検討致します。






──〈D.D.D〉ギルドキャッスルの一角……本来の主が不在の執務室には今、四人の女性がいる。






──その一人は……現在主不在の執務机で、膨大な量と化した書類の山を次々と処理・仕分けを行い……急を要する最重要、即対応の処理済、再考の余地有等に分け……恐ろしい程の素早い処理速度で片付けていた。



「リーゼ、これは急ぎの案件だ。すぐに対応してくれ」

「はい」


「高山、こちらは再考だ。もう少し内容を詰めさせろ」

「わかりました」


「櫛、これに素早く目を通して適切な処置を行ってくれ」

「わかったよ」


女性─朝霧は、手早く三人の女性─リーゼ、高山三佐、櫛八玉へと処理を済ませた書類を渡しつつ同時に指示を飛ばす。






だが……〈D.D.D〉関連の書類に目を通し、指示を出したり書類を処理しながらも……朝霧は同時進行で、〈円卓会議〉関連の書類にも目を通した上で、様々なところへと念話をかけて対応や話し合いを行い、さらに各々の書類の内容に対して何時、どの様な対処・指示・処理を行ったのかの詳細を書き記す報告書の記入まで行っている。






朝霧の手際良く書類を高速で処理・対応を済ませる様子に、リーゼと櫛八玉……別の場所から次々と書類を運び込んでいるリチョウとユタですら、一瞬呆気に取られて……そして、慌てて自分達の仕事に戻っていた。






◇◇◇






その怒濤の勢いでの書類整理は……約五時間半という時間をかけて、ようやく一段落した。






書類整理に一段落がついた事で……休憩を取る事にした高山三佐達は、朝霧が差し入れで持ってきてくれた『お菓子の国』で販売されているクリーム大福を各々手に取り、口にしていた。



──休憩の一時の中……朝霧は、唐突に口を開いた。



「……まずは報告だが……〈円卓会議〉関連のクラスティが本来担当する筈だった役割は、今後アイザックが担当する事になった」



「はあ?先輩、今何て言いましたか?アイザック君がクラスティ君の代わり?

……私は、アイザック君にクラスティ君の代わりが務まるとは思えないけど?」



朝霧の言葉に、櫛八玉がこう返答を返す。



「櫛、話を最後まで聞け。……あくまで、表向きの話で…アイザックを〈円卓会議代表代理〉に据えるという事だ。

……とは言え、アイザックにクラスティの担当していた業務や書類処理を全て任せるのは流石に無理だろう……

だから、そちらは私が担当する事になった。

……と言っても、〈円卓会議〉と関係無い筈の私が全部担当するのはマズイだろうからな…一部は、シロエやミチタカに負担してもらう形になる。

だから、今後〈円卓会議〉関連の案件が〈D.D.D〉に持ち込まれる事は一切ないから……安心してくれ」




朝霧の言葉で、リーゼは心の中で安堵していた。






◇◇◇






──先程まで執務室内にあった〈円卓会議〉関連の書類は、本来クラスティが戻ってきてから処理してもらう予定だった分だ。





──今回、朝霧と櫛八玉が〈D.D.D〉のギルドキャッスルを訪れたのは……以前、クラスティと朝霧の間で『〈D.D.D〉に大事が起こったら必ず協力する』という約束が交わされていたからだと……リーゼは、朝霧本人から聞いた。




そして、その約束に従って……朝霧は〈D.D.D〉を……リーゼ達を助ける為に元三羽烏……〈Drei=Klauen〉だった櫛八玉を伴って、こうしてギルドキャッスルを訪れてくれたのだ。






◇◇◇






──リーゼは、〈水楓の館〉で友人となったアカツキとヘンリエッタの事も思い出していた。






(……思えば……私は今、沢山の方々に支えていただいているのですわね。

アサツキさんとヘンリエッタさんだけではなく……今回は、朝霧様、クシ様…ユタにリチョウ様……)



自分を支えてくれる人達の事を考え……リーゼの目尻には、思わず涙が溢れた。



「お嬢?……どうした?……大丈夫か?」



心配そうに声を掛けてくるユタに、涙を拭いながらリーゼは答えた。



「……大丈夫ですわ。

私を心配してくださった方々や助けてくださった方々の事を考えて……少し、感極まっただけですわ」



リーゼの答えに安心したのか……ユタは笑みを浮かべ、クリーム大福を頬張った。






◇◇◇






「……クラスティ君……今、何処で何をしてるのかな……」



櫛八玉の何気無い呟きに…高山三佐、リーゼ、ユタ、リチョウの四人の顔が強ばる。




その様子を見て気付いた櫛八玉は、内心「やばっ!この話題は禁句だった!!」と思っていた。




それと同時に、朝霧の様子を恐る恐る伺い見てみる。






──櫛八玉は、クラスティの行方不明を朝霧が“ある物”で感知した時の取り乱した様子を間近で目撃していた為……朝霧にとっても禁句だと思い至り、恐る恐る様子を伺い見たのだ。






──しかし、暗い表情を浮かべているのだろうと予想していた櫛八玉の予想に反して……朝霧の表情は静かで穏やかなものだった。



「……先輩……?」



自分の予想と違い、落ち着き払った朝霧の様子に櫛八玉は戸惑っていた。






──そんな戸惑う櫛八玉を余所に、朝霧は揺るがぬ強い意志を宿した瞳をしたまま……こう静かに口を開いた。



「……今、〈共鳴の絆〉の同志達と〈放蕩者の記録〉の有志達、私の古くからの友人・知人、かつての教え子達によって編成された混成部隊192人─フルレイド編成の8部隊が、各々にクラスティの消息探索に動いてくれている。

現在、ヤマトサーバー内で……〈ナインテイル〉〈フォーランド〉〈ウェストランデ〉〈イースタル〉〈エッゾ〉の各々に1部隊ずつ、ユーレッド大陸に2部隊、ウェンの大地に1部隊という感じに配置して探索させている。

表向きは、〈円卓会議〉からダンジョン調査の調査団という体裁を整えてある。

……〈Plant hwyaden〉に、今回のこの部隊の動きの意味を知られる訳にはいかないからな。

特に、〈ウェストランデ〉探索班にはフィールド移動中は〈隠行術ハイド・シャドウポーション〉を常時使用を徹底させ、主だった探索ポイントは、念話機能が使えなくなるダンジョンをメインに絞ってもらい探索してもらっている」



朝霧の口から飛び出した言葉に、リーゼ達は驚いていた。




──自分達の知らないところで、朝霧達による『クラスティの消息を捜す大捜索』が行われていたからだ。




「……一つ、尋ねたいのですが……

……〈共鳴のミスリルバングル〉の〈リアルタイム・グループチャットチャンネル〉機能でも、ミロードと連絡は取れないのですか?」



高山三佐の問い掛けに……朝霧は静かに首を横に振った。



「……そうですか……」



高山三佐の気落ちした様子を見ながら……リーゼは彼女の気持ちが理解できた。



(……高山さんは、ミロード……クラスティ様が消息を絶つ要因となった〈カラミティ・ハーツ〉の持ち主。

……そして、クラスティ様が消息を絶つ瞬間に立ち合ってしまった唯一の目撃者。

……その事で、誰よりも自分を責めていらっしゃるのね……)



そんな高山へと……一体どの様な言葉を掛けたらいいのかと、リーゼは必死に考えたが……いい言葉が全く浮かんでこず、そのまま黙り込んでしまった。






──皆が黙り込んでしまった状況の中、朝霧はさらに言葉を続ける。




「……クラスティが何処に転移したのか……今、どういう状況でどういう状態なのかは全くわからない。

……だが、今……私達がしなければならないのは、クラスティが戻ってくる居場所である〈D.D.D〉を守り……存続させていく事だと思うのだ」



朝霧のその言葉に……リーゼも、高山三佐やユタ、リチョウもハッとした。



(……そうですわ。今の私達にできる事は、クラスティ様の戻るべき居場所……〈D.D.D〉を守り、存続させ続ける事。

……私達は自責の念にかられ、立ち止まったままでなどいられませんでしたわね)



朝霧の言葉を聞きながら、リーゼは心の中でこう呟いていた。



朝霧は、さらに言葉を続ける。



「見つかるかどうかはわからないが……クラスティは、私達が必ず捜し出す。

だから……クラスティが戻るまで、皆で〈D.D.D〉を守り続けてくれ。

もし助力が必要なら、私はいつでも応じるつもりだ」



朝霧の力強い言葉に、皆で息を飲んだ。






──しばらく沈黙が場を支配したが……幾分か心の重荷が取れた高山三佐は、こう言葉を口にした。



「……そうですね。今の私達がすべき事は、〈D.D.D〉を存続させ続ける事。……確かにその通りです」



そう言葉を口にした時の高山三佐の表情は、いつもの彼女らしさを取り戻していた。



「……という訳で。クシ先輩、これからは〈D.D.D〉の為に働いて下さい」

「ちょ!?ちょっとちょっと!!何が『……という訳で』なの!?

私の意思を無視しないでよ!?」

「今、〈D.D.D〉は存続の危機なのです。

今回の件で、私とリーゼだけでは力不足である事を痛感させられました。

『三羽烏─〈Drei=Klauen〉は、三人揃って初めて機能する』という事をよく理解できたので…この非常事態を乗り切る為にも、クシ先輩には是非是非働いてもらわなくては」

「まてまて。どうどう。

私にも、選択する権利がなくない?

山ちゃんの気持ちは、わかるけど……私にも〈太陽の軌跡サン・ロード〉という場所を守らないとね?」



いつもの調子を取り戻した高山三佐と櫛八玉のやり取りに、心の中で少し笑いつつ……リーゼは櫛八玉に言葉を掛けた。



「クシ様、私からもお願いいたします。

私達〈D.D.D〉の為に、ご助力をお願いしますわ」=

「ううっ……。リっちゃんからお願いされたら、無下に断れないじゃない……」



リーゼからの頼み事に、櫛八玉は渋々折れた。



「櫛、安心しろ。私も一緒に巻き込まれてやる」

「ううっ……。せんぱ〜い!!」



協力する気満々の朝霧の追撃の言葉に、櫛八玉は完全に撃沈していた。



「朝霧様、クシ様……本当に、ありがとうございます」



リーゼは二人に感謝し、深く頭を下げた。



「そうと決まれば、緊急幹部会議だな。

……ランスロット、各レギオンリーダーを含む幹部全員を急ぎ会議室へ集めてくれ」



そう念話しながら、リチョウは執務室を後にする。



「あ、ゴザル?……悪いけど、俺会議と厨二とMAJIDEを連れて会議室に集まってくれないか。

は?三羽烏は参加するかって?

……緊急幹部会議に、お嬢達が参加しない訳ないだろ。

おい!何喜んでるんだ!!不謹慎にも程が……!!」


ゴザルこと狐猿と念話していたユタは、怒鳴りながら執務室を後にする。



──それら、いつもの光景に苦笑しつつ……リーゼ、高山三佐、櫛八玉、朝霧の四人も執務室を出る。



「御前、今取り組むべき課題は何でしょうか?」

「……まずは、報相連(※報告・相談・連絡の略称)の仕組みの再確認。

それから、現在の総員数の確認及び各レギオン師団の員数確認。

後は、脱退者が出ているところで欠員がいるところは再編成だな。

ここら辺は、幹部全員で話し合って決めていくしかないだろう」

「ううっ……。早速、やる事が沢山あるし……」

「クシ先輩、いい加減覚悟を決めて下さい」

「ううっ……。山ちゃん、ちょっと冷たいんじゃないかい?」



そんな他愛もないやり取りを眺めながら、リーゼの心は穏やかに澄んでいた。






──自分は……もう一人で悩まなくていいのだ。






(……そう思える様になったのは、ヘンリエッタさんとアカツキさんのおかげですわね)



そう思い、リーゼは心の中で二人に感謝する。



「リーゼ。私は、オブザーバーとしての会議参加でいいのか?」



問い掛けてくる朝霧の言葉に、リーゼは笑みを浮かべながら答える。



「いいえ。朝霧様には、元三羽烏の一人として御意見をお伺いしたいですし……ミロードが以前、こうおっしゃられていました。『御前は、自分の意図を正しく理解できる一人だ』…と」

「……つまり、私にはアドバイザー兼クラスティの代弁者として、会議に臨席して欲しい……と?」

「はい」

「……わかった」



朝霧の了承の返事を聞いたリーゼは、心の中で笑みを浮かべる。






(……さあ、ここからが正念場ですわ!)










──そう心の中で自らを鼓舞すると、リーゼは高山三佐、櫛八玉、朝霧と共に会議室へと向け歩き出し、決意を新たに緊急幹部会議へと臨むのだった。

沢山の人達に支えられてながら、リーゼさんが立ち直っていく話でした。




私個人としては、朝霧を思いきり〈D.D.D〉メンバー達と絡ませられたので満足です!!

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