十二話
若干短いですが、キリがいいので投稿します
「白い砂浜!」
「青い海!」
「燃える太陽!」
「いいいいいいっっっっやっっっほおおおおう!!」
年頃の女性とは思えぬ雄たけびを上げて、普段着のまま海へと走っていくイリーナとターニャ。
「・・・・・・いやっほー」
お前はそんなキャラじゃないんだから、無理に合わせる必要は無いぞ、アリシア。
ノーリリア本島を出てから七日目、ルシール伯領を出てからならば二日目の今日、調査予定の中では最大の広さを持つ無人島に到着していた。
大きさはだいたい淡路島と同じくらいか、そのほとんどを原生林で占められた、この大きさの島を人の手で探すのは流石に無謀なので、現在はオウカとキッカに捜索を命じている。
このような捜索ならば、オオカミと猟犬の長所を併せ持つ彼女達の独壇場である。俺たちが手伝った所で足手まといにしかならないだろう。
その為俺たちは、空いた時間を使って休暇を・・・海水浴を楽しんでいるのだ。・・・断じてサボっているのではない。
・・・・・・まあ、多少の下心が無いとは言わないが、俺とて健全な十代の男子であることだし、最近ずいぶんと大人びてきた、彼女達の水着姿が気になるのは当然のことだろう。
ああ?悪いか?俺みたいな朴念仁が、そういうことに興味を持っちゃ!?
俺だってな、気にはなるんだよ!だけどな、前世の仲間に未練タラタラで、もしあいつらが戻ってきたら、みんなをほっぽり出して、そっちを優先しかねないような奴が真面目に“お付き合い”なんてしちゃあ駄目だろ!
・・・・・・今、『真面目にお付き合いしなければいい』なんて思った奴、ちょっと前に出ろ、ぶん殴るから。
あいつらだって俺の『仲間』には変わらない、そいつらを相手にそんな真似が出来るわけねーだろ。ってええええ!?
「いくぞ、ギーラ!必殺、ターニャミサイル!!」
不意打ち気味の言葉と共に、魔力強化済みのイリーナが渾身の力を込めてターニャの体を投げつける。
そのまま、凄まじい勢いで迫り来るターニャのドロップキックを、俺は避けることも出来ずに顔面で受けてしまった。
どこで『ミサイル』なんて言葉を覚えた?お前は!?
・・・ああ、オウカとキッカか、碌なことを教えないな、あいつら。
「せっかくの海なのだぞ、木陰で休んでないで、お前もこっちへ来たらどうだ?」
仁王立ちになってそう声を掛けるイリーナの恰好は、純白のビキニ姿に変わっている。
素材はおそらく、最近になって生産が軌道に乗った絹だろう。地球の技術を出来る限り再現しているとは言っても、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維を再現できるはずもないので、繊維についてはどうしても自然のものに頼らなければならない。
幸い――、と言っていいかは分からないが、この世界では絹の生産は数百年前に滅亡した国の独占していた技術で、完全なロストテクノロジーになっていた為に、面倒な政治的利益配分を最小限で済ませ、世界に広げることが出来た。
一般的には水に弱いとされる絹であるが、染色していない生糸ならば、濡らした後の手入れをきちんとすれば問題は無い。
だけど、本来なら下着やドレス用に流通させたはずなんだがなぁ・・・
いや、水着という存在自体がまだまだ浸透していない現在、下着をそのまま水着として着用することも多いと聞いている。ならば彼女もまた、そうしているのだろう。
・・・・・・・・・いかん、落ち着け。あれは水着、あれは水着。普段は下着として使っていようが、あれは水着。
だいたい、水着も下着も肌の出てる面積はたいして変わらないから落ち着け冷静になれ大丈夫だ平常心だ落ち着くんだ落ち着くんだギーラ落ち着けおちつけおちつけおちつけ・・・・・・
よし、落ちつい・・・た?
そんな俺の目に飛び込んできたのは、紺色のワンピースっていうか、どう見ても旧式スク水にしか見えない水着を着たアリシアと、キャミソールにショートパンツ姿のターニャ。
「ぅおぉ!?」
思わず珍妙な声をあげつつ後ろを向く、予想していなかった方向からの攻撃だけにダメージは大きい。
いつもならば何十キロ走ろうが暴れない俺の心臓が、完全に俺の制御を離れて暴走しているのが分かる。
本気で一体何年ぶりだ?こんなんなるのは・・・
「・・・珍しい、ギーラが顔に出すくらい動揺してる」
「どう?驚いた?この水着を隠す為だけに、上に一枚着てきたのよ」
うん、驚いた。特にアリシアの旧式スク水は似合いっぷりと、再現度の高さで二重に驚いた。
真剣にどうやって作った?それ・・・
あとターニャ、お前それ完全に下着だから水着じゃないから『ロロリオ商会の新商品の感想を教えて』なんていうから十九世紀あたりのスイミングスーツかと思ったらスク水とキャミソールってどんなセンスをしてるんだおかしくないかおかしいだろロロリオ商会いやまったくじつにグッジョブだロロリオ商会。
うん、駄目だ、完全に混乱してる。どうにかしてこの場を切り抜けないと・・・
「ああ、驚いた。みんな綺麗になってて、本当に見違えた」
あ゛・・・
「え?ええええええ!!?・・・う・・・うん、ありがと・・・」
「・・・・・・うん!ありがと!」
「とうとうギーラも、アタシの魅力に気が付いたようだな。遠慮は要らんぞ、いくらでも見惚れるがいい!」
三者三様の意見を見せる彼女達。
これを結果オーライと取るべきか、順調に外堀を埋められていると見るべきか・・・、悪かったなヘタレで!
微妙に言葉を出すのが恥ずかしく、沈黙が場を支配する。そんな時、
「ラブコメが一段落したところで、昼食の用意が出来たぞ、食うんだろお前ら」
そんな空気を察したのか、ティオが声を掛けてくる。助かった・・・お前マジ親友。
ちなみに彼は二ヶ月前に“憧れのお姉さん”であったバーギス侯爵の末の妹(二十二歳、やや病弱気味なネコミミ合法ロリ)との婚約が発表され、来年には結婚が決まっている。
・・・世間一般では、出来ちゃった婚であるとの噂も流れているが、その噂が真実であることを知っているのは俺たちくらいである。
うん、あれだ・・・爆発しろ。
お前が言うな?わかってるわ、そんなもん。
目の前に広がる夕焼けの海、その雄大な景色を見ながらリンゴの果汁の入った器を脇に置き寝そべる。思わずこれが隣国の私掠船、その拠点の調査であることを忘れてしまいそうな穏やかな一日。
「平和だなぁ・・・」
思わずそんな言葉が口に出る。
心を許せる親友と綺麗に成長した幼馴染の少女たちと共に、ジュースを片手に持って夕方の浜辺に寝そべる。
これで文句など言ったら、間違いなくバチが当たる。・・・・・・出来ればアルコールが欲しいが、未だ順調に成長中のこの体では呑むことが出来ないので諦める。
こんなに穏やかな日はいつ以来だろう、少なくとも義威羅であった頃には、『学園』のみんなが居なくなってからは記憶に無い。
・・・ああ、そうだ、俺はこんな日々を送りたかったのだ。
世界中に存在する、ありとあらゆる神話や伝説、都市伝説の怪物が出現し、混乱の坩堝となっていたかつての地球。
ユダヤ・キリスト教の天使・悪魔や仏教系の神仏に悪鬼羅刹、日本神話や道教、北欧神話のような地方ローカルの神々、そしてスプライトやコロポックルのような伝承上の妖精、さらにはクトゥルフ神話の邪神や、空飛ぶスパゲティー・モンスターのような創作物の魔物まで。
それらに加えて、それに伴う魔術・呪術の発見と復刻・開発が重なり、『大混乱期』と呼ばれる地獄を作り出した。
昨日まで一緒に遊んでいた友人がその日の夜、口裂け女に襲われ命を落とす。駅で別れた同級生が、聞いたことも無い駅にいるというメールを最後に姿を消す。
そんな事件が毎日のように起き、俺もまた六十までは生きることなど出来ないだろうと覚悟していた。
だからせめて、日々をかけがえの無い仲間と共に過ごしたかった。『あいつら』と一緒に生きていたかった。
心に刺さる痛みから目を背けながら、隣で飲み物や菓子を片手にはしゃぐ、今世の幼馴染たちに目を向ける。
もう、二度と失ってたまるものか。
今ではかつて義彦に抱いていた異常とも思える対抗心も、幻のように消え去っている。今の俺の心にあるのは、昔のように、本当に昔のように仲間と共に、仲間の為に生きようという思いだけだ。
二十数年ぶりに取り戻した思いを胸に、声にならない感謝の念を送る。
ありがとうな、みんな。
―― おやおや、なーにをいい話で終わらそうとしてるんですか、ギーラ殿下。この私がいる限り、そんなつまらない結果にさせるはずが無いでしょう。さあさあ、下準備は既に済み、後は結末を待つばかり、どんなバッドエンドを迎えるかは殿下次第。あは、あははハは、あHAHAハはははHAハハははHAははハはハHA!!! ――
残業続きのうえ、しばらく風邪気味で頭がぼーっとしてるので、文章が荒いのはご容赦を
ってーか、何でアルラが出てるんだ?こいつが出てくるとバッドエンド一直線なんで、関与は裏設定のはずだったのに・・・
ギーラじゃ対抗できないし、対抗できるキャラをだすとギーラの物語じゃなくなるし・・・
さて、どーしよう・・・




