二話
少女は困っていた。
小さい頃はもっと感情豊かな人間ではなかっただろうか。
いつこんな冷めた人間になってしまったのか。
これを思春期として片付けてもよいものか。
クラスでは成績は上位であり、誰にでも平等に、分け隔てなく接してきた。
話しかけられたら愛想笑いを浮かべ、人が良さそうな笑みを作り、優しい言葉遣いで話した。
誰とでも一定の距離をとり、深く踏み込みすぎないよう、相手の地雷を踏まないように努力した。
自分は一人だ。
クラスで孤立している。
理由は分かっている。
なにせ入学式からずっと本を読んでいるのだ。
適度に距離も保っている。
相手が踏み込みかけたら一歩下がる。
これでは友達なんて作りようがない。
友達は作っておいた方が得である。
何事も、特に現代のような大衆社会においては多くのみかたを用意しておき、情報網を張り巡らせておいた方がいいに決まっている。
なのにどうしても出来ない。
本は好きだ。
だが、友達は必要だ。
努力しなければならない。
しかし、私は努力するのが嫌いだ。
勉強ならばテスト週間に少し頑張れば良いだけだ。
だか、友達ができれば今のように好きな時間に移動し、好きな時間に本を読み、好きな時間に宿題をすることができなくなるのだ。
それがとてつもなくめんどくさい。
いつもいつもくっついて表情つくってどうでもいい話に耳を傾けるなんて一生ごめんである。
よくもまあ毎日そんなことが出来るものだと、私は常日頃回りの人間を尊敬している。
さて、冒頭に戻ろう。
私は悩んでいる。
とても困っている。
理論上、友達は必要だ。
しかし、私の感情は必要としていない。
やる気がでない。
昔はあんなに必要としていたのに。
一人でいるのが怖かったのに。
いつから私は友達という存在を必要としない冷めた人間になってしまったのだろうか。