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一話
その日、ある男が殺された。
シャープペンシルで眼球を貫かれ、後頭部をパイプ椅子で殴られ、刃物で喉を刺されていて、それは酷い有り様だったという。
凶器が誰のものであるのかははっきりしていたが、全てのものに大人数の指紋が付いており、犯人は割り出せなかった。
男が殺された時、多くの人がそれを目撃していたにも関わらず、誰も口を開かず、沈黙を続けている。
殺人に加担していることになるとわかっているはずなのに、全員が石像のように口を閉ざしたままなのだ。
警察もこれには完全にお手上げであり、多くの手がかりと目撃者がいながら、この事件は解決せずに幕を閉じることとなった。