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「ピカレスク誕生」もしくは「正気ではいられない」
その時爆発音がした。そして――
イラスト提供:瀬見堂準様
その時爆発音がした。
衝撃が体中を揺るがし、振動がビリビリと体中を駆け抜ける。
たまりにたまった怒り、不満が爆発し、はじけ飛ぶ。
爆発したのは自分の心の中。壊れてはいけない何かが砕け散った。
もうもうと立ち昇る真っ白な粉塵の中に俺は立ち尽くす。
バラバラと粉砕された断片が降り注ぐ。
それは消し飛んでしまった俺の良心、倫理観。
俺が人間だった時のくだらない欠片。
「人として」と刷り込まれたくだらないしがらみ。
こいつらのおかげで俺の人生がどんなに息苦しかったか。
俺は今日から自分の思いのままに生きる。
もうなにも俺を縛る物はない。
もう人ではない俺の人生が、今、始まった。
「良心」「道徳」を振り切ったピカレスク誕生の瞬間です。
バイオレンスと怒りに満ちた「ピカレスク」(悪漢)を瀬見堂準さんに描いていただきました。幸せに荒ぶっています。
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