ウィリス・アンダーソン(2)
フィオナとアルクの後について、ミミトはウィリスの家に入った。
乗ってきた馬車の様に外見は奇抜だったのに中は思ったより綺麗だった。
玄関の正面にある階段の踊り場にある大きな窓のお陰で室内は光に溢れ、明るい。
壁にしつらえている通気口はそこら中の壁に備えられているものの、
壁紙と色が同じなせいか、そんなに気にならない。
調度品も品が良く、貴族の別宅のような雰囲気を醸し出していた。
フィオナに案内されたのは二階の、多分客間として使われているだろう部屋だった。
案内された後、フィオナが出ていき、
戻ってきた時には温かい紅茶とクッキーが運ばれてアルクとミミトの前に置かれた。
「主人を呼んできますので、少々お待ち下さい」
綺麗な一礼を二人にし、フィオナがまた部屋から出ていった。
緊張と興奮で喉が渇いていたミミトは、紅茶に手を伸ばした。
甘い、上品な香りがしてとても美味しい。
「緊張してるか?」
「……うん。だってここでこれから生活するし、ウィリスさんと初めて会うし……」
ぎゅ、とカップを両手で包む。
温かさが薄いガラスから手にしみ込んでいく。
「私、大丈夫かな」
「大丈夫だ。俺からフィオナに良く言っておく」
くしゃとアルクがミミトの髪を撫でる。
幾分気持ちが収まって、ミミトは笑顔を返した。
―アルクさんの為にも、私の為にも。不安な顔を見せるのはもうおしまい。
まだ微かに残っている不安な気持ちを飲み込むように紅茶を飲み込んだ。
こんこん、と控えめなノックが部屋に響いた。
そしてすぐにフィオナの声がした。
「失礼します、主人を連れてまいりました」
ミミトはその瞬間ドアに釘つけになった。
とうとうウィリスと対面するのだ。どんな人なのだろうと想像が一気に膨らむ。
そして、ドアが開いた。
「待たせたようだねえ。久し振りー」
フィオナの後ろから呑気な声がした。
フィオナの後ろにいたのは、ウィリス・アンダーソンその人だった。
背は高め、だろうか。少し長めな金色の髪にレンズ越しの緑の目。
実験の途中なのか私服なのか分からないけれど、薄汚れた白衣。
もっとちゃんとしたらそれなりに見えるだろうけれど、本人はそんな事に多分お構いなしなのだろう。
ミミトの視線に気がついたように、ウィリスがミミトを見た。
「あ、君がミミトさん?宜しくねー、僕はウィリス。名前は好きに呼んでね」
「よ、よよ宜しくお願いします」
ぎこちない動作だったが、なんとかミミトは頭を下げた。
ウィリスは笑っていた。
その笑顔が子供の様に無邪気で、ミミトは一瞬だけその笑顔に見入ってしまった。
「アルクからどうせ変わり者とか聞いてると思うけど、僕は普通の魔術師だから、そんな緊張しないで、ね?ちょっと天才なだけだから」
「自分で天才って言うあたりおかしいだろ」
呆れたようにアルクが言う。
ひどいなーとウィリスがそれにむくれたように返す。
「……まあ、お前に頼むのは心配だからフィオナに言っておく。ミミトの事、宜しく頼む」
「承知いたしました」
「えー、なんで僕に言ってくれないのー!大丈夫だって。ミミトさんはちゃんと一人前の魔術師になって返すから」
「……ミミト様、部屋に案内いたしますのでこちらへどうぞ」
「え、あ、はい!」
フィオナはウィリスの扱いに馴れているのか、騒いでいるウィリスを無視してミミトの方に向いて言った。
フィオナの綺麗な顔にどきりとする。
「何か?」
「い、いえ何も!」
まさか見惚れていたなど言える訳もなく、ミミトは目を逸らした。