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理不尽な冤罪

国王像にヒゲを生やしただけで島流し?しかも流されている途中に嵐?しかもたどり着いたのは無人島?

リオの無人島生活で繰り広げられるポンコツぶり発揮。しかし謎のカニが助けてくれる?

無人島サバイバルかと思いきや、そこは・・・

第1話:国王像のヒゲと、俺の人生

主人公が島流しになった理由を、後に誰かが記録することはないだろう。

なにしろ理由が、あまりにもくだらない。

事件は昼下がり、村の広場で起きた。

国王像の前で、主人公・・名をリオと言う・・はくしゃみをした。

それだけだ。

季節の変わり目で鼻の調子が悪かった。

口にくわえていたのは、干しかけの海藻だった。昼飯の残りだ。

くしゃみの勢いでそれが飛び、空中で一度ひらめき、国王像の顔面に絡みついた。

よりにもよってヒゲの部分に。

緑色の、くるくるとした、立派なヒゲが完成した。

「王のヒゲに落書きだ!」

誰かが叫んだ。

リオは慌てて像に近づき、海藻を取ろうとした。

像に登った。その時点で、すでに終わっていた。

「現行犯だ!」

「反逆者!」

「ヒゲを描くとは何事か!」

衛兵が三人来た。

リオは説明しようとした。

「違うんです、これは事故で、ヒゲじゃなくて海藻で・・」

「言い訳する態度が反省していない!」

即座に手首を縄で縛られた。

その縄はなぜか異様に緩く、リオは自分で結び直した。

三日後、裁判があった。

裁判官は一度も像を見ていなかった。

「国王の威厳を汚した罪」

「流刑。島送り。」

リオは口を開いたが、

「異議あり」と言う前に判決が終わった。


島へ向かう船は古く、罪人用にしては妙に快適だった。

同乗者は二人。

一人は、王の犬に吠え返した罪で捕まった老人。

もう一人は、税金を一枚数え間違えただけで国家転覆を疑われた元会計係。

「重すぎませんかね、罪」

リオが言うと、二人とも深くうなずいた。

「だから島流しなのだろう」

老人はそう言った。

船は出航して半日で嵐に遭った。

船長は叫んだ。

「こんな嵐は想定外だ!」

会計係がぼそりと言った。

「この航路、毎週嵐ですよね」

次の瞬間、船が傾いた。

木材が割れ、波が襲い、悲鳴が上がった。

リオの記憶は、そこから途切れる。


目を覚ました時、砂が口の中にあった。

波音だけが聞こえる。

起き上がると、そこは浜辺だった。

見渡す限り、誰もいない。

船はない。

人もいない。

建物も、煙も、足跡すらない。

完全な無人島だった。

持ち物を確認する。

罪人用の薄い服。

ポケットに残った、なぜか無事な木のスプーン。

そして・・少しだけ残った海藻。

リオは砂浜に座り込み、空を見上げた。

「……国王像のヒゲより、俺の人生のほうが、よっぽど落書きされてるな」

答える者はいない。

風が吹き、ヤシの葉が揺れた。

こうしてリオは、

誰もいない島で、

誰よりも理不尽な流刑生活を始めることになった。

しかも原因は、海藻である。


第2話:無人島、火は起きず、俺だけが焦げる


無人島生活、初日。

結論から言うと、何一つ、うまくいかなかった。

まずリオは立ち上がり、周囲を見渡した。

ヤシの木、砂浜、岩場。

本で読んだことのある「無人島の要素」が、教科書通りに揃っている。

「よし……まずは火だな」

サバイバルの基本である。

火があれば、文明は半分勝ったも同然だ。

リオは流木を拾い、石を集め、見よう見まねで火起こしを始めた。

・・三十分後。

煙すら出ない。

石と石を打ちつける。

カン、カン、と情けない音だけが響く。

「……あれ?」

角度が悪いのか。

力が足りないのか。

そもそも、この石は火打石ではないのか。

一時間後、

リオの手のひらだけが、赤くなっていた。

「火って……こんなに人を拒絶するものだっけ……」

諦めて次の手段に移る。

ヤシの実だ。

島には都合よく、いくつも落ちていた。

リオは一つ拾い、地面に叩きつけた。

・・びくともしない。

「硬っ」

もう一度。

三度目。

十回目。

最後は岩に叩きつけた。

その瞬間、跳ね返ったヤシの実がリオの額に直撃した。

「ぐっ……!」

星が散った。

ヤシの実は無傷だった。

「なんでだよ……お前、果物だろ……」

文明社会では、ナイフという偉大な道具がすべてを解決していたことを、リオは思い知った。

喉が渇いた。

水を探す。

島の奥へ進むと、小さな泉のようなものを見つけた。

透明で、澄んでいて、いかにも飲めそうだ。

だが一瞬、迷う。

(……飲んで大丈夫なやつか?)

慎重さが顔を出した、その時。

足を滑らせた。

次の瞬間、

リオは泉に顔から突っ込んでいた。

「ぶはっ!」

結果的に、水は飲めた。

だが、溺れかけた上に、全身びしょ濡れという余計なオプション付きだった。

夕方。

何も食べていない。

火もない。

服は乾きかけているが、気分は湿っている。

リオは浜辺に戻り、流木に腰掛けた。

「……俺、国王像のヒゲより役に立ってないな」

ふと、視界の端で何かが動いた。

小さなカニだった。

赤く、堂々と、リオを見上げている。

その目が、なぜかやけに見下している。

「……なんだよ」

カニは逃げなかった。

むしろ、一歩近づいてきた。

「お前、食われる側だぞ」

そう言った瞬間、カニは素早くハサミを振り上げ、リオの足の甲を挟んだ。

「いっっっ!」

リオが跳ねる。

カニは勝ち誇ったように砂に潜った。

沈黙。

波音。

夕焼け。

リオは砂浜に座り込み、木のスプーンを見つめた。

なぜこれだけは失われていないのか、理由は分からない。

「……スプーンで、何ができるんだよ」

試しに砂をすくった。

虚無だった。

空が暗くなり始める。

夜が来る。

火はない。

腹は減っている。

そして、この島には・・どう考えても、俺より強そうな生き物がいる。

リオは砂浜に寝転び、星を見上げた。

「……明日こそは、ちゃんと無人島っぽいこと、成功させよう」

星は何も答えなかった。

ただ静かに瞬いていた。

こうして無人島一日目は、完全敗北で終わった。

なお、原因は海藻ではない。

本人である。


第3話:無人島には誰もいない・・はずだった

朝、リオは目を覚ました。

まず気づいたのは、寒くないということだった。

昨夜は火もなく、服も半乾きで、

覚悟としては「震えながら死にかける夜」だったはずだ。

なのに、体は妙に温かい。

「……?」

起き上がる。

すると、目の前に・・葉っぱで編まれた簡易的な風よけがあった。

「…………は?」

昨日の自分は、火起こしに失敗し、ヤシの実に殴られ、カニに敗北した男である。

そんな男が、寝ている間に、こんなものを作れるはずがない。

「俺、寝ながら文明築いた?」

否定する間もなく、腹が鳴った。

空腹だ。

リオは立ち上がり、周囲を見回す。

砂浜に・・魚の骨が並んでいた。

しかも、妙にきれいに。

「……誰か、食った?」

心臓が一瞬、嫌な跳ね方をした。

「いや、待て。ここ無人島だろ」

そうだ。

船は沈んだ。

他に漂着者はいない。

少なくとも、見ていない。

リオは慎重に歩き出した。

泉の方へ向かうと、昨日はなかったはずの・・踏み固められた道があった。

草が倒れ、人一人分の幅で、はっきりと続いている。

「……いやいやいや」

喉が乾く。

泉は変わらず澄んでいた。

だが、その縁に木の器が置いてあった。

木を削った跡。

手作りだ。

そして、どう見てもスプーン向きのサイズ。

リオはポケットから、例の木のスプーンを取り出した。

器に、ぴたりと合った。

「……俺じゃない」

声が、少し震えた。

誰かがいる。

だが、姿は見えない。

その時。

・・コホン。

背後から、咳払いが聞こえた。

「っ!」

リオは振り向いた。

誰もいない。

ヤシの木。

岩。

影。

ただの無人島の風景。

「……聞こえたよな、今」

返事はない。

だが・・今度は、足元の砂が、少しだけ動いた。

昨日のカニだ。

赤くて、堂々として、今日もやけに偉そうだ。

カニはリオを見上げ、片方のハサミを上げた。

指差すように。

「……なに?」

カニは、島の奥を指した。

「……案内してる?」

一瞬、沈黙。

そしてリオは、人生で最も理解不能な判断を下した。

「……分かった」

カニは満足そうに、先を歩き始めた。

その背中はどう見ても、この島の住人のそれだった。

リオは、自分が島流しにされた理由を思い出す。

国王像のヒゲ。

くだらない冤罪。

だが今、はっきり分かることが一つあった。

この島は・・無人ではない。

少なくとも、

「普通の無人」ではない。

リオは、木のスプーンを握りしめ、カニの後を追った。

その先に何があるのか・・まだ知らないまま。


第4話:偉い連中ほど火を囲む

赤いカニの後ろを歩きながら、リオは三度ほど「夢ではないか」と自分の頬をつねった。

痛かった。

「……現実か」

カニは振り返らない。

当然のように、島の奥へ奥へと進んでいく。

森を抜けると、

空気が変わった。

暑い。

いや、正確には・・焼けた肉の匂いがした。

「……は?」

次の瞬間、視界が開けた。

そこは、島の中心と思われる小さな広場。

そして・・バーベキュー会場だった。

大きな石の囲炉裏。

豪快に組まれた焚き火。

串に刺さった肉、魚、よく分からない発光している何か。

その周りにいたのは・・

「……いや、ちょっと待て」

リオの思考が追いつかない。

まず一番目立つのは、巨大な角を持つ男。

黒い翼。

赤い目。

玉座に座っていそうな雰囲気。

間違いない。

一番偉い悪魔だった。

その隣で、とぐろを巻いているのは・・・龍。

鱗は青金色。

空気がビリビリしている。

さらに、炭火の前にどっしりと座るのは・・白虎。

白い毛並み。

筋肉。

焼き加減に異常にうるさそうな目。

そして少し離れた丸太の上に、白装束の老人。

背後に淡く光る輪。

どう見ても偉い神様だった。

「だから言っただろ、肉は裏返すなって」

白虎が低く唸る。

「裏返さねば均等に焼けぬだろう」

龍が鼻から煙を出す。

「炭が強すぎる。焦げる」

悪魔が不満そうに言う。

「焦げもまた味わいじゃ」

神様が笑いながら言った。

「それは神の舌基準だろうが」

「お前は血の味しかしないだろ」

「今それ言う?」

軽い言い争い。

だが、誰も本気で怒っていない。

リオは、完全に置き去りだった。

「……え?」

カニが前に出た。

そしてチョキンとハサミを鳴らした。

全員の視線が、一斉にリオに向いた。

「来たか」

悪魔が言った。

「来たな」

龍が言った。

「遅かったな」

白虎が言った。

「初日で死ななかったか。偉い偉い」

神様がうなずいた。

「……えっと」

リオは、人生で最も適切な言葉を探した。

見つからなかった。

「……ここ、無人島ですよね?」

一瞬の沈黙。

次の瞬間・・・全員、同時に吹き出した。

「無人?」

「無人だと?」

「ははははは」

「定義が甘いのう」

悪魔が立ち上がり、串をひっくり返しながら言った。

「ここはな、冤罪で捨てられたものが流れ着く島だ」

「人だけとは限らぬ」

龍が言う。

「神も、獣も、悪魔も」

白虎が肉をかじる。

「全員、ちょっとした理由でな」

神様が穏やかに続けた。

「わしは『奇跡を一度多く起こした』」

「俺は『地獄の規則を一行読み飛ばした』」

「我は『雷を落とす場所を間違えた』」

「俺は……」

白虎が一瞬、目を逸らした。

「……寝坊した」

リオは、頭を抱えた。

「じゃあ……俺がここに来た理由は」

悪魔がニヤリと笑う。

「国王像のヒゲ、だったか?」

「軽罪だな」

「新人だ」

「まあ座れ」

神様が丸太を叩く。

「肉が焼けておる」

カニが、当然のようにリオの足元に戻ってきた。

案内役は、どうやらここまでだったらしい。

リオは、言われるがまま腰を下ろした。

火は温かく、

肉は香ばしく、

偉い存在たちは、

驚くほど仲が良かった。

「……無人島って」

リオは呟いた。

「思ってたのと、だいぶ違うんですけど」

神様が笑った。

「最初は皆そう言う」

火が弾ける。

煙が上がる。

こうしてリオは、無人島生活2日目にして・・世界の裏側のバーベキューに参加することになった。

なお、最初に話しかけてきたのは、昨日のカニだった。

「それ、まだ裏だぞ」

リオは、自分の串を見て、初めて笑った。


第5話:国王像のヒゲは宇宙に触れていた

バーベキューは続いていた。

肉はうまい。

魚もうまい。

なぜか星の形をした野菜も焼かれている。

リオは一応、落ち着こうとしていた。

悪魔がいて、

龍がいて、

白虎がいて、

神様がいる。

……ここまでは、もう受け入れた。

だが・・

「で、本題じゃが」

神様が串を置いた。

空気が、少しだけ変わる。

「お主の件じゃ」

「……俺ですか」

悪魔が口を開いた。

「国王像のヒゲ事件」

龍がうなずく。

「正確には」

白虎が続ける。

「ヒゲ状になった瞬間だ」

「……?」

リオの脳が、理解を拒否し始めた。

神様が指を一本立てる。

「像というのはな」

・・本来、

・・信仰を集める焦点じゃ。

「焦点?」

「力が集まり、形を取る場所」

龍が説明する。

「王の像は、国そのものの象徴」

悪魔がニヤリと笑う。

「そこにだ」

「お主は」

神様が穏やかに言った。

「偶然にも」

「宇宙的に極めて珍しい角度で」

「海藻を絡ませた」

リオは叫んだ。

「海藻です!」

「黙れ、重要なところだ」

悪魔が即座に遮る。

白虎が続きを言う。

「ヒゲ状の形」

「それがな」

龍が空を仰ぐ。

「宇宙の構造式と一致した」

沈黙。

「……え?」

神様がにっこり笑った。

「簡単に言うと」

「宇宙の裏側にある“境界線”に」

「ヒゲの形で」

「触れた」

リオは、焼き肉を落とした。

「ちょっと待ってください」

「俺、くしゃみしただけですよ?」

「くしゃみは重要じゃ」

「偶然もまた必然」

「宇宙はくだらないところから壊れる」

悪魔が肩をすくめる。

「だから王国は慌てた」

「理解できない現象は」

「罪にするのが一番楽だからな」

リオは頭を抱えた。

「じゃあ……俺は……」

神様がうなずいた。

「宇宙規模の異変の起点」

「……に、なりかけた男じゃ」

「かけた?」

白虎が肉をひっくり返す。

「未遂だ」

龍が言う。

「完全に開く前に」

「島に流した」

悪魔が笑う。

「結果、宇宙は無事」

「国は面子を守り」

「お前はここだ」

「ひどくないですか?」

全員、同時にうなずいた。

「ひどいな」

「理不尽だ」

「よくある」

「よくはない」

神様が最後に言った。

「そこでな」

火が、ぱちりと弾ける。

「詫びと言っては何じゃが」

「お主には」

「神ギフトを授けよう」

リオは顔を上げた。

「ギフト……?」

神様が手を差し出す。

光が、ふわりと集まる。

「家を作れる力じゃ」

「家?」

「正確には」

龍が補足する。

「思い描いた住処を、形にできる力」

「素材不要」

「島の法則に従う限り」

悪魔が指を鳴らす。

「つまり」

「木が欲しけりゃ木」

「石が欲しけりゃ石」

「雨が降らない屋根も可能だ」

白虎が言った。

「ただし」

「豪邸は禁止だ」

「……なんで」

「調子に乗るからだ」

リオは、しばらく黙っていた。

そして、静かに言った。

「……小さくて」

「風を防げて」

「火を使っても」

「ヤシの実に負けない家が欲しいです」

神様は、満足そうにうなずいた。

「よい」

光が、リオの胸に吸い込まれる。

一瞬、世界が揺れた。

次の瞬間。

島の端に・・素朴で、丈夫そうな小屋が立っていた。

木と石。

無駄がなく、

妙に落ち着く。

「……できた」

リオは、

自分の手を見つめた。

悪魔が笑う。

「これで死ににくくなったな」

龍が言う。

「宇宙を救った礼としては」

白虎が言う。

「まあ妥当だ」

神様が最後に言った。

「安心せい」

「お主の人生は」

「まだ」

「もっとくだらなくなる」

リオは、小屋を見て、深くため息をついた。

「……俺、国王像のヒゲに戻りたいです」

火のそばで、全員が笑った。

カニだけが、真顔でうなずいていた。

・・どうやらこの島での生活は、

ここからが本番らしい。


第6話:禁止されたから作っただけです

神ギフトを授かった翌日。

リオは、自分の小屋で目を覚ました。

壁は丈夫。

屋根は雨を通さない。

ヤシの実にも勝てる。

完璧だった。

……完璧すぎて、

つまらなかった。

「……」

リオは、神様たちの言葉を思い出す。

・・豪邸は禁止だ

・・調子に乗るからだ

「……」

そして、誰にも聞かれないように、

小さくつぶやいた。

「豪邸って……どこからだ?」

神ギフトは、思い描いた住処を形にする。

つまり・・定義の問題だった。

「城はダメだよな」

「宮殿もアウトだ」

「でも……」

リオは考えた。

「生活に必要な機能が、ちょっと多いだけなら?」

誰にも見られていないのを確認し、目を閉じた。

思い描く。

・・小屋だ

・・ただし

・・部屋が少し多い

光が、静かに広がった。

地面が揺れた。


夕方。

悪魔が最初に異変に気づいた。

「……なあ」

白虎が顔を上げる。

「なんだ」

龍が空を見た。

「島の気配が……増えている」

神様が目を細める。

「……あやつ、静かすぎると思ったが」

全員が、森の方を見る。

そこには・・建物があった。

いや、建物群だった。

石造りの外壁。

木の梁。

複数階層。

回廊。

中庭。

煙突が三本。

しかも・・なぜか景観に完璧に馴染んでいる。

「……」

「……」

「……」

白虎が言った。

「豪邸だな」

悪魔が言った。

「完全に豪邸だな」

龍が言った。

「島の規模に対して過剰だ」

神様が、ため息をついた。

「……行くか」


リオは、玄関ホールを掃いていた。

無駄に広い。

天井が高い。

風通しが良い。

なぜか音が反響する。

「よし……」

その時。

・・ギィィ……

扉が開いた。

振り向くと、神様たちが立っていた。

全員、

無言。

リオは、箒を持ったまま固まった。

「……あ」

神様が、静かに言った。

「説明を」

「えっと」

リオは、必死に考えた。

「これは……」

「小屋です」

一拍。

悪魔が笑った。

「ほう」

白虎が周囲を見回す。

「随分……機能的な小屋だな」

龍が言った。

「部屋はいくつある」

「……二十七です」

沈黙。

神様が、こめかみを押さえた。

「豪邸は禁止だと」

「言わなかったかの」

リオは、

即答した。

「城じゃないです」

「宮殿でもないです」

「生活に必要な部屋が、少し多いだけです」

「誰の生活だ」

「全員分です」

また沈黙。

その時。

悪魔が、キッチンを覗いた。

「……炭火台、いい配置だな」

白虎が床を踏む。

「床、丈夫だ」

龍が天井を見る。

「魔力循環も悪くない」

神様が、ゆっくりと笑った。

「……住み心地は」

「保証します」

リオは、真顔で言った。

「バーベキューも、室内でできます」

五秒後。

「……まあいい」

神様が言った。

「責任を取れ」

「はい?」

「同居じゃ」

こうして・・

・一番偉い悪魔

・四大神獣の龍

・白虎

・偉い神様

が、リオの豪邸に住み着いた。

なお・・最初に部屋を決めたのは、例のカニだった。

当然のように、一番日当たりのいい場所だった。

リオは、自分で作った豪邸の廊下に立ち、天井を見上げた。

「……俺、無人島に来たはずなんだけどな」

どこからどう見ても、

もう無人ではなかった。

・・しかも、この家の家主は・・文句を言える立場ではなかった。


第7話:家主というのは、静かに決まる

同居が始まって三日。

リオは悟った。

この家には・・序列が存在しないようで、存在する。

朝。

悪魔は寝起きが悪い。

龍は天井が低いと文句を言う。

白虎は廊下を全力疾走する。

神様は勝手に神棚を増やす。

そして――

全員、自分では片付けない。

「……」

リオは、無言で食堂の床を拭いていた。

昨日のバーベキューの跡。

焦げ。

油。

なぜか神聖な灰。

誰も悪いと思っていない。

白虎が通り過ぎながら言った。

「家、いいな」

「……ありがとうございます」

悪魔がソファに沈みながら言った。

「居心地がいい」

「……どうも」

龍が梁を見上げて言った。

「構造が安定している」

「……それは、よかったです」

神様が微笑んで言った。

「感謝しておるぞ」

「……」

リオは、雑巾を置いた。

そして、静かに言った。

「朝ごはん」

全員が、ぴたりと動きを止めた。

「まだです」

「え?」

「火はあります」

「材料もあります」

「でも」

リオは、一人一人を見た。

「誰も準備してません」

沈黙。

悪魔が言った。

「……誰かやるだろ」

白虎が言った。

「家主じゃないのか」

龍が言った。

「神がやることではない」

神様が言った。

「自然に発生するものじゃ」

リオは、

ゆっくり首を振った。

「発生しません」

「……」

「この家では」

「俺が作らなきゃ、出ません」

もう一度、沈黙。

そして――

カニが、チョキン、とハサミを鳴らした。

全員の視線が、カニに集まる。

カニは、リオを見て、うなずいた。

「……」

神様が、初めて真顔になった。

「つまり」

「お主が」

「家の中心、か」

「はい」

リオは、はっきり言った。

「俺は」

「この家を作りました」

「維持してます」

「掃除してます」

「火を起こします」

「料理します」

「寝床を整えます」

一拍。

「なので」

「ルールを決めます」

悪魔が、面白そうに笑った。

「ほう」

白虎が、耳を立てた。

龍が、尾を静かに畳んだ。

神様が、腕を組んだ。

「第一」


「廊下で走らない」

白虎が目を逸らした。

「第二」

「勝手に部屋を増やさない」

神様が咳払いした。

「第三」

「炭火は指定場所のみ」

悪魔が舌打ちした。

「第四」

「梁にとぐろを巻かない」

龍が静かにうなずいた。

「そして」

リオは、一番大事なことを言った。

「文句がある人は、自炊してください」

沈黙。

長い、長い沈黙。

そして・・

「……朝飯は何だ」

悪魔が言った。

「焼き魚」

「……手伝おう」

白虎が立ち上がった。

「皿は運ぶ」

龍が言った。

「火加減は任せろ」

神様が、小さく笑った。

「……家主じゃな」

その瞬間。リオは、

はっきり理解した。

この家で一番偉いのは・・宇宙の存在たちではない。

鍵を持っている者だ。

カニが、台所の隅で、満足そうにうなずいていた。

・・こうしてリオは、

無人島にて・・神と悪魔と神獣を管理する家主になった。

なお、最終的な決定権は、献立にあった。


第8話:家主不在で始まると、だいたいこうなる

その日は、静かだった。

朝。

潮風。

波音。

リオは薪を拾いながら、少しだけ幸せを感じていた。

「今日は平和だな……」

フラグである。

・・

家に戻ると、

庭が増えていた。

「……?」

いや、正確には・・見覚えのない存在が増えていた。

赤い羽毛が燃えるように揺れ、翼を畳んでもなお存在感が消えない巨大な鳥。

「おーい」

悪魔が手を振っている。

「紹介しよう。朱雀だ」

朱雀は胸を張った。

「我は四方を司る――」

「ストップ」

リオは即座に遮った。

「まず」

「誰が呼んだ」

白虎が尻尾を振った。

「俺」

「なんで」

「バーベキューの肉、足りなかった」

朱雀が感動したように言った。

「なるほど!火を使う宴と聞いて!」

「聞いてない」

龍が梁から顔を出す。

「ついでに」

「精霊も来ている」

「ついでにって何」

・・その瞬間。

庭のあちこちから、

ポン、ポン、ポンと音がした。

小さな光。

風の塊。

水たまりから立ち上がる人型。

石がゴロゴロ動いて目を開く。

「……精霊?」

火の精霊が朱雀を見て敬礼した。

「火の先輩!」

「後輩よ!」

なぜか上下関係ができている。

風の精霊が家の中を高速周回し始めた。

「廊下!広い!」

「走るな!」

水の精霊がキッチンに入り込む。

「シンク!快適!」

「出て!」

土の精霊が壁を叩く。

「いい壁!」

「壊すな!」

・・神様が、いつもの笑顔で言った。

「にぎやかでよいではないか」

リオは、静かに深呼吸した。

「……」

「神様」

「何じゃ」

「招待制です」

朱雀が首をかしげる。

「我は神獣だぞ?」

「関係ありません」

「精霊も?」

「関係ありません」

「悪魔は?」

「……ギリギリ関係あります」

悪魔が笑った。

「線引きが雑だな」

リオは、家の中央に立った。

そして・・家主モードに入った。

「全員聞いてください」

精霊たちがピタッと止まる。

朱雀が姿勢を正す。

神獣と神と悪魔が、なぜか並ぶ。

「この家には」

「ルールがあります」

第一。

「勝手に客を呼ばない」

第二。

「精霊は一部屋につき二体まで」

第三。

「火属性は庭、入浴禁止」

朱雀が手を挙げた。

「バーベキューは?」

「指定場所のみ」

第四。

「神獣、サイズは建物基準に合わせる」

朱雀が少し縮んだ。

第五。

「泊まるなら働く」

沈黙。

「……」

「皿洗い」

「掃除」

「薪割り」

「庭の整備」

精霊たちがざわつく。

火の精霊が言った。

「働くの?」

「はい」

風の精霊。

「遊びじゃないの?」

「違います」

朱雀が、なぜか楽しそうに笑った。

「面白い人間だな」

「そうですか」

「我、肉を焼こう」

「お願いします」

・・

その日の夕方。

朱雀は焼き担当。

火の精霊は火力管理。

風の精霊はうちわ係。

水の精霊は飲み物冷却。

土の精霊は――なぜか椅子になっていた。

悪魔が言った。

「統率が取れているな」

龍が言った。

「完全に家主だ」

白虎が言った。

「逆らえない」

神様が、満足そうにうなずいた。

「この家は」

「リオのものじゃな」

リオは、串をひっくり返しながら思った。

(……)

(島流しって)

(こういう意味だったのかもしれない)

カニが、いつの間にか朱雀の隣で、エプロンを着ていた。

・・こうして・・無人島の豪邸は、神・神獣・精霊が集う、完全予約制の家になった。


なお。

次に勝手に客を呼んだ者は、トイレ掃除担当である。

朱雀は、そのルールをまだ知らない。


第9話:料理に本気を出す朱雀は、だいたい災害

異変は、朝から始まった。

・・

庭。

そこには朱雀がいた。

エプロン姿で。

「……」

リオは無言で後ずさった。

「おはよう人間!」

朱雀はやけに爽やかだった。

「今日は仕込みだ!」

「何の」

「三日後の本番に向けた下準備!」

「何の本番」

「バーベキュー」

「日常のやつですよね?」

「違う!」

朱雀は翼を広げた。

「芸術だ」

嫌な予感しかしない。

・・

朱雀は完全に料理にハマっていた。

・火力を一瞬で変える

・炭の声を聞く

・肉の脂が落ちる音で焼き加減を判断

・野菜に話しかける

神獣なのに。

悪魔が見物しながら言った。

「料理人の顔してるな」

白虎が尻尾を振る。

「強そう」

龍は腕を組んだ。

「火の制御が異常に精密だ」

神様は遠くでうなずいている。

「うむ、よい焼き色じゃ」

リオだけが、ちょっと拗ねていた。

「……」

「俺、いつも普通に焼いてるだけなのに」

朱雀がピタッと止まった。

「む?」

「どうした人間」

「いや……」

リオは正直に言った。

「なんか」

「うらやましいなって」

沈黙。

次の瞬間。

朱雀は、ニヤリと笑った。

「教えよう」

「え?」

「火の使い方」

「え??」

悪魔が即座に止めに入った。

「やめとけ」

龍も言った。

「人間には早い」

白虎も言った。

「家が燃える」

神様も言った。

「島が消える」

朱雀は胸を張った。

「問題ない!」

「この人間は」

「火を恐れない目をしている!」

「そんな基準!?」

・・

朱雀はリオを庭の中央に立たせた。

「まず」

「火を見るな」

「え?」

「火を“感じろ”」

「抽象的すぎません?」

朱雀は翼で地面をなぞった。

すると・・小さな火が生まれた。

だがそれは、揺れない。

暴れない。

静かだった。

「火は暴力ではない」

「料理の火は」

「対話だ」

悪魔が小声で言う。

「めんどくさい思想に入ったな」

朱雀はリオの手を取った。

「力を込めるな」

「欲張るな」

「燃やそうとするな」

「……」

「ただ、温度を思い出せ」

その瞬間。

リオの掌に、小さな炎が灯った。

弱い。

でも・・安定している。

神様が目を細めた。

「ほう……」

龍が息をのむ。

「これは……」

白虎が首をかしげる。

「うまそう」

朱雀は満足そうに言った。

「成功だ」

「これが」

「料理用火魔法・初歩」

「初歩?」

「うむ」

朱雀は続けた。

「これは」

「肉を焦がさない」

「鍋を割らない」

「家を燃やさない」

「だが」

「味だけは確実に上がる」

リオは、ゆっくり笑った。

「……すごい」

その日の夜。

リオが焼いた肉は・・異様にうまかった。

精霊たちが騒ぐ。

「うまい!」

「柔らかい!」

「火が優しい!」

悪魔が言った。

「……悔しい」

白虎が言った。

「負けた」

龍が言った。

「恐ろしい」

神様が言った。

「料理とは、力じゃな」

朱雀は腕を組み、誇らしげだった。

「次は」

「煮込み用火を教えよう」

「ちょっと待って」

悪魔が真顔で言った。

「それ」

「戦争に使えるぞ」

朱雀は即答した。

「使わん」

「この火は」

「家庭用だ」

リオは思った。

(……)

(俺)

(無人島で)

(何を手に入れてるんだ)

カニが、鍋の前で静かにうなずいた。

・・こうしてリオは、

紙獣直伝の**火魔法(料理特化)**を習得した。

なお。

この火魔法で作った料理は、

神ですらおかわりする。

そして朱雀は、完全にこの家の「料理担当・副家主」を名乗り始めた。


第10話:冤罪アスラ、だいたい自爆

その日・・島の浜辺に、異物が流れ着いた。

「……」

六本の腕。

三つの顔。

筋肉。

筋肉。

筋肉。

リオは鍋を持ったまま固まった。

「……え?」

砂浜に突き刺さるように倒れていたのは、

アスラ族の戦士だった。

三つの顔が同時に目を開く。

右の顔

「ここは戦場か?」

左の顔

「敵は?」

中央の顔

「腹減った」

「真ん中が本音だな!?」

・・アスラは名乗った。

「我が名は――」

ドンッ!!と胸を叩く。

「ガル=ドゥラ=バッシュ=破壊王=三面六腕=」

「長い!」

「島流し罪人だ!!」

「そこ自慢!?」

朱雀が空から降りてきた。

「ほう」

「アスラか」

白虎が低く唸る。

「戦闘狂」

龍が眉をひそめる。

「なぜ流されてきた」

神様も聞く。

「何をやらかした」

アスラは胸を張った。

「聞いて驚け」

「冤罪だ」

一同

「……」

「王都の武闘大会」

「試合前」

「控室で」

「腕立て伏せしてたら」

「?」

「床が抜けた」

「?」

「地下倉庫が崩れた」

「?」

「結果」

「王のワイン三百樽が爆発した」

「???」

アスラは叫んだ。

「納得できるか!!」

「できない!!」

悪魔が即答した。

「いやお前が悪い」

アスラ

「違う!」

「俺は」

「鍛えていただけだ!!」

朱雀

「場所を考えろ」

白虎

「建物を考えろ」

「力を考えろ」

神様

「王を考えろ」

アスラは崩れ落ちた。

「だから島流しか……」

「理不尽だ……」

リオは、ちょっと同情した。

「……ご飯、食べる?」

アスラの三つの顔が同時に輝いた。

「食う!!」


・・その夜。

アスラは、リオの料理を食べて・・泣いた。

右の顔

「うまい……」

左の顔

「優しい……」

中央の顔

「戦う理由を思い出した……」

「重い!」

朱雀が腕を組む。

「この火……」

「俺の教えが生きている」

アスラはリオを見た。

「貴様」

「戦士か?」

「いえ」

「料理人?」

「半分」

「……」

アスラは立ち上がった。

「決めた」

「ここに残る」

「なんで!?」

「理由は三つある!」

一本目の腕

「飯がうまい!」

二本目

「殴ってくる奴がいそう!」

三本目

「神獣がいる!」

「全部危険!」

神様がため息をつく。

「……また厄介なのが来たな」

悪魔が笑う。

「面白くなってきた」

白虎はアスラの腕に噛みついた。

「強そう」

龍は静かに言った。

「島の耐久が心配だ」

その瞬間。

アスラは庭の岩を軽く叩いた。

島が揺れた。

リオ

「やめて!!」

朱雀

「戦闘禁止!」

アスラ

「え?」

「じゃあ」

「素振りは?」

全員

「ダメ!!」

こうして・・超くだらない冤罪で島流しにされたバトルジャンキーアスラは、

・戦えない

・壊せない

・でも飯はうまい

という地獄のような平和に放り込まれた。

なお。

アスラは毎朝、

「今日こそ誰か殴っていいか?」

 と聞いてくる。

答えは、毎回NOである。


第11話:弟子入りした結果、風圧だけ出るようになりました

リオは思った。

(……アスラ、強いよな)

六本の腕。

三つの顔。

島を揺らす筋力。

(ああいうの、ちょっと憧れる)


朝。

庭で何も壊さない縛り付き素振りをしているアスラに、リオは意を決して声をかけた。

「……あの」

アスラの三つの顔が同時に向く。

「敵か?」

「戦うのか?」

中央

「飯の追加か?」

「真ん中で」

リオは深呼吸した。

「弟子にしてください」

一瞬の沈黙。

次の瞬間、アスラの六本の腕がリオを持ち上げた。

「よく言ったァ!!」

「重い重い重い!!」

朱雀が屋根の上から見下ろす。

「やめとけ」

白虎

「死ぬぞ」

「骨格が違う」

神様

「保険入ってる?」

「入ってません!!」


修行開始。

アスラは言った。

「まずは基本だ」

「気合だ!!」

「精神論!?」

「次」

「叫べ!!」

「声帯壊れる!!」

「最後」

「構えろ!!」

リオは必死に真似した。

結果。

・・ドン。

「?」

地面に小さな風圧が走った。

砂が、ちょっと舞った。

全員

「……」

アスラ

「お?」

朱雀

「お?」

白虎

「……?」

「……?」

神様

「……え?」

リオ

「今の何!?」

神様が確認する。

「……ギフト、発動してるな」

「え?」

アスラが感動して叫んだ。

「弟子よ!!」

「貴様!!」

「才能がない!!」

「褒めてない!!」

神様が説明する。

「これは……」

「気合に反応して、無害な衝撃波を出すギフトだ」

「無害!?」

「威力ゼロ」

「殺傷力ゼロ」

「物理的影響ほぼゼロ」

リオ

「じゃあ何に使うんですか!?」

神様

「……」

「……洗濯物を乾かす、とか」

朱雀

「焼き魚の煙を散らすとか」

白虎

「蚊を追い払う」

「船出の演出」

アスラは真顔だった。

「すごいじゃないか」

「え?」

「戦場では」

「敵がビビる」

「ビビらないよ!?」

アスラはリオの肩に手を置いた。

「いいか弟子」

「強さとはな」

「破壊だけではない」

「……?」

「無駄を極めることだ」

「哲学っぽく言うな!!」


その夜。

リオは焚き火の前で、何度もギフトを使っていた。

「はっ!」

・・ふわっ

「……」

「はっ!」

・・ふわわっ

精霊たちが集まってきた。

風の精霊

「心地いい」

火の精霊

「酸素助かる」

水の精霊

「湿気飛ぶ」

土の精霊

「砂が舞うのやめて」

朱雀がうなずいた。

「悪くない」

「だろ?」

アスラは満足そうだった。

「弟子よ」

「はい」

「お前は」

「最弱だ」

「知ってます」

「だが」

「一番安全だ」

神様がぼそっと言った。

「この島に、やっと安心要員ができたな」

リオ

「扱いひどくない!?」

こうしてリオは、

・敵を倒せない

・物を壊せない

・でも空気だけは動かせる

というどうでもよすぎるギフトを手に入れた。

なお。

アスラは毎朝こう言う。

「今日こそ実戦か?」

答えは今日も・・NOである。


第12話:無害です(※当社比)

朝。

庭。

アスラが、目を輝かせていた。

「弟子」

「嫌な予感しかしないんですけど」

アスラは真顔で言った。

「昨夜」

「考えた」

「無害衝撃波は」

「?」

「殴らなければいい」

「???」

朱雀が屋根から即ツッコミ。

「殴らなきゃ戦闘じゃねぇだろ」

アスラ

「違う」

「当てなければいい」

「余計わからん!」

・・

実験開始。

アスラは、島の中央に巨大な空間魔法陣を描かせた。

描かせたのは・・精霊たち。

「楽しそう」

「事故りそう」

「溺れそう」

「やめたい」

神様

「やめなさい」

アスラ

「大丈夫だ」

「弟子」

「はい」

「撃て」

「え」

「全力で」

「えぇ!?」

リオは叫んだ。

「はあああっ!!」

・・ふわあああああっ。

いつもより、ちょっと強めの無害衝撃波。

その瞬間。

アスラが六本の腕を振り上げた。

「今だ!!」

・・ズン。

衝撃波が、空間魔法陣の中で反射した。

一回。

二回。

十回。

百回。

「……」

朱雀

「……あれ?」

白虎

「音が」

「消えた?」

神様

「……止まってる?」

衝撃波は、消えていなかった。

圧縮されていた。

無害なまま。

だが。

・・ボン。

音が、消えた衝撃が発生した。

島の周囲の雲が、円形に吹き飛んだ。

海面が、静かに凹んだ。

遠くの山が、なにも起きていないのに揺れた。

リオ

「……え?」

神様

「……ちょっと待て」

「……衝撃波が・・現象として干渉していない」

朱雀

「でも・・世界が揺れてる」

白虎

「怖い」

アスラは、感動して震えていた。

「弟子……」

「これだ」

「力とは」

「直接殴らなくても」

「世界をビビらせることだ!!」

「哲学にすな!!」


神様が本気の顔になった。

「……アスラ」

「これは」

「戦闘用にしちゃいけないやつだ」

「え?」

「戦えば」

「勝敗が発生しない」

「?」

「負けも勝ちもない」

「ただ」

「周囲が納得する」

リオ

「何に!?」

神様

「……『自分が悪かった』って」

朱雀

「怖すぎる」

白虎

「精神攻撃?」

「因果干渉だな」

精霊たちがざわつく。

「崇めよ」

「祭れ」

「祀るやつ」

「触らない方がいい」

リオ

「ちょっと待って!」

「これ無害なんですよね!?」

神様

「無害だ」

「物理的には」

「精神的には?」

「……強烈だ」

アスラは満足そうに頷いた。

「弟子」

「はい……」

「お前は」

「殴らない戦士だ」

「やめて!!」

その日から。

・無害衝撃波(圧縮)

・音なし

・被害なし

・でも空気が「謝る」

という、意味不明な現象は、神々の間でこう呼ばれるようになった。


「リオ式・納得砲」

なお。

アスラはこの後、

「これで王都に行けば戦わずに優勝できるのでは?」

 と提案し、全員に止められた。


第13話:調査という名の嫌味

その船は、やたら立派だった。

金ピカ。

装飾過多。

無駄に大きい。

浜辺に降り立ったのは・・・王都貴族調査団。

先頭に立つのは、細い口ひげ、細い目、細い心。

「ほほう」

「ここが」

「流刑地の無人島ですか」

リオ

「……」

貴族は周囲を見回した。

豪邸。

整った庭。

バーベキュー跡。

「……」

「随分と」

「楽しそうですね?」

嫌味レベル:MAX。

後ろの貴族が笑う。

「流刑者が」

「家主ごっこですか?」

「可哀想に」

神様たちは、全員人間の姿で沈黙していた。

朱雀は歯を食いしばる。

白虎は尻尾をピシピシ。

龍は無言で拳を握る。

アスラは・・一歩前に出ようとして止められた。

リオが出た。

「調査ですよね?」

「どうぞ」

「全部見てってください」

貴族は鼻で笑った。

「ええ」

「どうせハッタリでしょうし」

・・

調査開始。

「ほう」

「この柱」

「見た目だけは立派ですね」

「中身は空洞ですか?」

リオ

「無垢です」

「……」

次。

「庭も」

「形だけ整えて」

「魔力は低そうだ」

リオ

「計測どうぞ」

計測器。

・・ピシッ。

壊れた。

貴族

「……」

「不良品ですね」

神様(小声)

「私のせいだ」

次。

台所。

「料理も」

「平民風ですね」

朱雀が微笑んだ。

「味見、どうぞ?」

一口。

貴族

「……」

「……」

「……美味いが」

「流刑者にしては」

「まだ言う!?」

・・

最後。

庭の中央。

団長が言った。

「結論として」

「ここは」

「無人島であり」

「危険性は――」

アスラが動いた。

リオ

「待って」

「……」

リオは、無害衝撃波をほんの、ほんの少しだけ放った。

・・ふわ。

空気が、

「……」

 と言った。

貴族たちは、突然・・

「……」

「……我々は」

「……」

「少し」

「言い過ぎました」

「え?」

「いや」

「かなり」

「すみませんでした」

全員、深々と頭を下げた。

団長

「我々は」

「王都に戻り」

「ここは平穏で何もない島だと」

「報告します」

「それが」

「一番正しいと」

リオ

「え?」

団長は、苦虫を噛み潰したような顔で、

「……流刑地には」

「夢がありました」

と言い残し、船に乗り込んだ。


船が去った後。

沈黙。

神様

「……使ったな?」

リオ

「ほんのちょっとです」

朱雀

「ちょっとで人が謝るな」

白虎

「怖い」

「文明兵器だな」

アスラは感動していた。

「弟子……」

「誇らしいぞ」

「やめて!!」

その日、王都に届いた報告書はこう書かれていた。

「当該無人島は、特筆すべき点のない、静かで、何も起きていない島である」

なお。

報告書の端には、強く噛み締めた跡が残っていた。


第13話

調査という名の嫌味

その船は、

やたら立派だった。

金ピカ。

装飾過多。

無駄に大きい。

浜辺に降り立ったのは――

王都貴族調査団。

先頭に立つのは、

細い口ひげ、細い目、細い心。

「ほほう」

「ここが」

「流刑地の無人島ですか」

リオ

「……」

貴族は周囲を見回した。

豪邸。

整った庭。

バーベキュー跡。

「……」

「随分と」

「楽しそうですね?」

嫌味レベル:MAX。

後ろの貴族が笑う。

「流刑者が」

「家主ごっこですか?」

「可哀想に」

神様たちは、

全員人間の姿で沈黙していた。

朱雀は歯を食いしばる。

白虎は尻尾をピシピシ。

龍は無言で拳を握る。

アスラは――

一歩前に出ようとして止められた。

リオが出た。

「調査ですよね?」

「どうぞ」

「全部見てってください」

貴族は鼻で笑った。

「ええ」

「どうせハッタリでしょうし」

・・

調査開始。

「ほう」

「この柱」

「見た目だけは立派ですね」

「中身は空洞ですか?」

リオ

「無垢です」

「……」

次。

「庭も」

「形だけ整えて」

「魔力は低そうだ」

リオ

「計測どうぞ」

計測器。

――ピシッ。

壊れた。

貴族

「……」

「不良品ですね」

神様(小声)

「私のせいだ」

次。

台所。

「料理も」

「平民風ですね」

朱雀が微笑んだ。

「味見、どうぞ?」

一口。

貴族

「……」

「……」

「……美味いが」

「流刑者にしては」

「まだ言う!?」

・・

最後。

庭の中央。

団長が言った。

「結論として」

「ここは」

「無人島であり」

「危険性は――」

アスラが動いた。

リオ

「待って」

「……」

リオは、

無害衝撃波を――

ほんの、ほんの少しだけ放った。

――ふわ。

空気が、

「……」

と言った。

貴族たちは、

突然――

「……」

「……我々は」

「……」

「少し」

「言い過ぎました」

「え?」

「いや」

「かなり」

「すみませんでした」

全員、深々と頭を下げた。

団長

「我々は」

「王都に戻り」

「ここは平穏で何もない島だと」

「報告します」

「それが」

「一番正しいと」

リオ

「え?」

団長は、

苦虫を噛み潰したような顔で、

「……流刑地には」

「夢がありました」

と言い残し、

船に乗り込んだ。

・・

船が去った後。

沈黙。

神様

「……使ったな?」

リオ

「ほんのちょっとです」

朱雀

「ちょっとで人が謝るな」

白虎

「怖い」

「文明兵器だな」

アスラは感動していた。

「弟子……」

「誇らしいぞ」

「やめて!!」

その日、

王都に届いた報告書はこう書かれていた。

「当該無人島は、

特筆すべき点のない、

静かで、

何も起きていない島である」

なお。

報告書の端には、

強く噛み締めた跡が残っていた。


第14話:第1回・無人島魚つり大会

発端は、本当にどうでもいい一言だった。

「魚、余ってますよね」

リオのその一言に、島が反応した。


即席会議。

神様

「大会にしよう」

朱雀

「焼く理由が欲しい」

白虎

「獲物」

「ルールは?」

アスラ

「殴っていい?」

全員

「ダメ」

こうして始まった・・第1回・無人島魚つり大会。

ルールは簡単。

・釣り竿使用

・魔法は補助まで

・殴らない

・島を沈めない

アスラ

「縛りが多い!」


開始。

リオは静かに糸を垂らす。

朱雀は火で海面を温める(反則スレスレ)。

白虎は爪で引っかけようとして却下。

龍は海と会話して怒られた。

神様は椅子を出して観戦。

精霊たちは応援。

「がんばれー」

「揺らすなよー」

「落ちるなよー」


その時。

リオの竿が、止まった。

「……?」

引かない。

揺れない。

ただ、沈んだまま。

「……根掛かり?」

次の瞬間。

・・ズン。

海が、呼吸した。

全員

「……?」

水面が割れた。

巨大な影。

島の影より大きい。

白虎

「獲物?」

「いや」

朱雀

「……あれ」

神様

「釣っちゃダメなやつだ」

アスラ

「殴っていい?」

「ダメ!!」

影が、ゆっくり浮上する。

そこに現れたのは・・魚の形をした、なにか偉そうな存在。

目が、やたら賢い。

口が、やたら丁寧。

「……失礼」

「それ」

「私のヒゲです」

リオ

「え?」

竿の先。

ヒゲが糸とお祭りしている。

「釣れてない!!」

神様

「……ああ」

「こいつは」

「海域管理者だ」

「一応」

「敵か?」

「味方か?」

影は考えた。

「……今日は」

「魚つり大会と聞いています」

「聞いてる!?」

「見学に来ました」

朱雀

「見学でヒゲ出すな」

「癖で」

アスラ

「殴りたい」

「ダメ!!」

リオは恐る恐る聞いた。

「敵……では?」

「違います」

「味方……?」

「中立です」

「一番めんどくさい!!」

影は、海からとんでもない魚を放り投げた。

・・ドォン。

島が揺れた。

「本日の」

「参加賞です」

白虎

「でかい」

朱雀

「焼ける?」

「神話級だな」

神様

「……大会、続行」

リオ

「え!?」

「では」

「邪魔をしました」

そう言って、影は海に沈んだ。

最後に一言。

「……次は」

「針を小さくしてください」


沈黙。

アスラ

「で」

「優勝は?」

神様

「……」

「ヒゲを釣ったリオだな」

リオ

「不本意!!」

こうして。

第1回・無人島魚つり大会は、敵でも味方でもない存在が現れたまま無事終了した。

なお。

その夜。

神話級の魚は・・普通に美味かった。


第15話:王都の三番目は、空気を読まない

発端は、王都の酒場だった。

「聞いたか?」

「無人島で」

「海の管理者のヒゲを釣ったらしい」

「は?」

「しかも素手の竿で」

「意味わからん」

噂は、盛られに盛られ・・

・海を釣った

・神を引っ張り上げた

・島が動いた

・ヒゲが本体

最終的に、最悪の耳に届いた。


その男の名は・・王都防衛軍・第三将軍。

肩書きは立派。

実績も本物。

ただ一つ問題がある。

筋肉で物事を解決したがる。

「……面白い」

第三将軍は笑った。

「三番目でも」

「一番強いと証明する機会だ」

部下

「調査では……?」

「調査?」

「殴って分かる」

「ダメですそれ」


数日後。

島。

空が、割れた。

ズドン。

重装甲。

巨大武器。

無駄に気合。

第三将軍、

単身上陸。

アスラが、反応した。

六本の腕が、ピクリと動く。

三つの顔が、同時に笑う。

「……強い」

「……来た」

中央

「……殴れる?」

全員

「ダメ!!」

将軍はアスラを見て、即断した。

「貴様だな、噂の筋肉」

アスラ

「褒め言葉だ」

将軍

「俺は・・王都三番目の・・」

アスラ

「弱そう」

「言った!!」

空気が、凍った。

朱雀

「やばい」

白虎

「やばい」

「島が耐えない」

神様

「止めろ止めろ止めろ」

将軍の魔力が、膨れ上がる。

「……後悔させてやる」

アスラ

「弟子」

リオ

「はい!?」

「止めるな」

「無理です!!」

将軍が、地面を踏み抜いた。

・・ドン!!

島が、傾いた。

アスラは、一歩・・出なかった。

代わりに、リオが出た。

「……やめてください」

将軍

「退け」

「雑魚」

リオ

「……」

無害衝撃波・圧縮。

・・ふわ。

空気が、

「あっ」

 と言った。

将軍の動きが、止まった。

「……?」

拳が、震える。

呼吸が、乱れる。

「……なぜだ」

「戦いたいのに」

「……体が」

「納得している……?」

アスラ

「……」

三つの顔が、真剣だった。

「将軍」

「いい拳だ」

「だが」

「ここでは振るうな」

将軍

「……」

「……」

歯を食いしばり、唇を噛む。

「……俺は」

「逃げるのか」

アスラ

「違う・・生き残った」

沈黙。

将軍は、武器を下ろした。

「……また来る」

「今度は」

「ちゃんと戦える場所で」

アスラ

「約束だ」

将軍は空へ飛び去った。


静寂。

アスラは、リオを見下ろした。

「弟子」

「はい……」

「……惜しかったな」

「何がですか」

「あと一歩で殴れた」

「ダメです!!」

神様が、深く息を吐いた。

「……世界の均衡が」

「また一つズレたな」

朱雀

「将軍が・・素直に帰った……」

白虎

「怖い」

「……リオ」

「お前」

「兵器だぞ」

リオ

「やめてください!!」

その夜。

王都では、第三将軍が、一睡もできなかった。

理由は一つ。

「……負けてないのに」

「……納得した……」

という、最悪の後味だった。


第16話:梅雨なので、世界は休戦しました

露の時期。

空は灰色。

雨は本気。

外は無理。

屋敷の屋根を叩く音が、ずっと「今日は何もしないでいい」と言っている。

リオは毛布を肩にかけて言った。

「……暇ですね」

神様

「暇だな」

朱雀

「焼けない」

白虎

「走れない」

「飛べない」

アスラ

「殴れない」

全員

「いつも殴るな」


やることがなくなった結果。

テーブルの上に、よくわからない道具が並んだ。

・紙

・石

・木の枝

・貝殻

・なぜか精霊が持ってきた光る何か

リオ

「じゃあ」

「くだらないゲームやりましょう」

アスラ

「いいな!」

「勝ったら殴っていいか?」

「ダメです」


第一種目。

神経衰弱(物理)

カードは貝殻。

裏返す役は白虎。

白虎

「覚えた」

三秒後。

白虎

「……忘れた」

朱雀

「早い」

「早いな」

アスラ

「気合が足りん!」

「記憶力に気合使うな!」


第二種目。

無害衝撃波すごろく

マスに書いてある内容。

・一マス戻る

・褒められる

・精霊が拍手

・特に意味はない

アスラが止まったマス。

「全力で気合を入れる」

アスラ

「おおおおお!!」

・・ふわっ。

全員

「……」

精霊

「いい風」

神様

「平和だな」

「これ戦いですらないですからね!?」


第三種目。

即興あだ名付けゲーム

ルール:相手が怒ったら負け。

朱雀 → リオ

「家主」

セーフ。

白虎 → 神様

「暇神」

アウト。

神様

「……後で覚えとけ」

白虎

「すみません」

アスラ → 龍

「でかい」

「事実だ」

リオ → アスラ

「自制心ゼロ」

アスラ

「……」

「褒めてる?」

「褒めてません」

・・

最後。

外はまだ大雨。

全員、床に転がっている。

アスラは天井を見て言った。

「……なあ」

「戦わない日も」

「悪くないな」

朱雀

「珍しい発言」

白虎

「成長?」

「明日は忘れる」

神様

「今日だけだな」

リオは笑った。

「この家」

「こういう日が一番平和ですね」

雷が鳴る。

雨が強くなる。

でも・・誰も気にしない。

世界を揺らす存在たちが、くだらないゲームで負けて拗ねている。

それだけの、露の日だった。


第17話:悪魔、帰還。ついでに名前が重い

露は明けた。

空は晴れ。

庭は水浸し。

芝は死んだ。

リオがため息をついていると・・空間が、ベキィと嫌な音を立てて裂けた。

「ただいま」

黒いコート。

気だるげな声。

どう見ても仕事帰り。

悪魔が、魔界出張から帰ってきた。

朱雀

「遅い」

白虎

「臭う」

「魔界の書類仕事は地獄だろ」

悪魔

「地獄だよ」

「文字通り」

リオ

「あ、おかえりなさい」

悪魔は一瞬止まり、少しだけ目を細めた。

「……もう」

「完全に家扱いだな、ここ」

・・

神様が腕を組んだ。

「で?」

「魔界はどうだった」

悪魔は肩をすくめる。

「いつも通り」

「揉めて」

「殴って」

「署名して」

「揉めた」

「悪魔の仕事、荒い!」

そのとき。

精霊の一人が、ぽつりと言った。

「……そういえば」

「あなた」

「名前、聞いてなかった」

空気が止まった。

朱雀

「確かに」

白虎

「呼びづらい」

「ずっと“悪魔”だな」

リオ

「……あ」

「そういえば」

全員の視線が、悪魔に集まる。

悪魔は、一拍おいて・・

「……言ってなかったか」

ため息。

「俺の名は」

「ヴァルディス」

一瞬。

神様

「……」

朱雀

「……」

「……」

白虎

「……あ?」

神様が静かに言った。

「それ」

「魔界公文書に載るやつだぞ」

ヴァルディス

「そうだが?」

朱雀

「最高位じゃねぇか」

白虎

「え、偉い?」

「かなり」

リオ

「……え?」

「え?」

「え??」

ヴァルディスは首を鳴らした。

「一応」

「魔界統括代行・第一席」

「仮だけどな」

リオ

「仮でそれ!?」

神様

「……」

「お前」

「なんでここで」

「ゴロゴロしてる」

ヴァルディスはソファに倒れ込んだ。

「理由は三つ」

指を立てる。

「一」

「魔界は椅子が硬い」

「二」

「ここは飯がうまい」

「三」

リオを見る。

「……家主が」

「放っといてくれる」

リオ

「そんな理由で!?」

ヴァルディスは目を閉じた。

「名前を出すと」

「面倒が増える」

「だから黙ってた」

朱雀

「今さらだ」

白虎

「もう遅い」

「島の格がまた上がったな」

リオは頭を抱えた。

「……あの」

「これ以上」

「偉い人」

「増えませんよね?」

全員、目を逸らした。

ヴァルディスだけが言った。

「安心しろ」

「俺より上は」

「基本」

「忙しい」

「基本!?」

その夜。

王都でも。

魔界でも。

なぜか同時に、嫌な予感が走った。

なお。

ヴァルディスは翌朝、普通に皿洗いをしていた。

エプロン姿で。


第18話:玄武、来る。神様、名乗る。新人、殴りたい。

昼。

庭。

ヴァルディスが洗った皿を乾かしている横で、アスラが腕立て伏せをしていた(禁止区域)。

その時・・庭の池が、ぬるりと動いた。

水面が盛り上がり、

黒く、重く、やたら落ち着いた存在が現れる。

巨大な甲羅。

蛇の尾。

動きが、遅い。

だが。

空気が、逃げた。

朱雀

「……来たか」

白虎

「遅い」

「やっとか」

リオ

「え、誰です?」

その存在は、ゆっくりと首を下げた。

「久しいな」

声が、低い。

「我は・・玄武」

四大神獣、最後の一柱。

リオ

「……」

「でっっっか!!」

玄武

「よく言われる」


アスラが、目を輝かせた。

「……殴れる?」

全員

「ダメ」

玄武はアスラを一瞥し、

一言。

「若いな」

アスラ

「はい!!」

「返事いいな!?」


その流れで。

ずっと「神様」と呼ばれていた存在が、咳払いをした。

「……」

「そろそろ」

「名前くらい」

「明かすか」

リオ

「お願いします!」

神様は腕を組み、淡々と言った。

「我が名は」

「アルケイオス」

「秩序と調停を司る」

「……一応、主神格だ」

一瞬の沈黙。

リオ

「一応!?」

ヴァルディス

「一応って言うな」

朱雀

「軽いな」

白虎

「軽い」

「軽い」

アルケイオス

「うるさい」

玄武

「相変わらずだな」


ここで。

アスラが、我慢できなくなった。

「なあ」

「でかいのと」

「偉いのが」

「増えたが」

「誰が一番強い?」

場が凍る。

リオ

「聞くな!!」

玄武

「……」

アルケイオス

「……」

ヴァルディス

「……」

朱雀

「やめとけ」

白虎

「本当にやめろ」

「島が消える」

アスラは真剣だった。

「新人だから」

「序列を知りたい」

玄武は、しばらく考え・・言った。

「序列は」

「家主の下だ」

全員

「……」

リオ

「え?」

アルケイオス

「事実だ」

ヴァルディス

「否定できん」

アスラ

「えっ」

「じゃあ」

「俺の上司は」

「この人?」

リオ

「違います!!」

ヴァルディスが、アスラを見下ろす。

「新人」

「言っとくが」

「ここでは」

「拳を振るう前に」

「家主を見る」

アスラ

「……」

「了解!!」

「素直か!!」

玄武は満足そうに頷いた。

「良い新人だ」

「育つ」

リオ

「育てないでください!」

アルケイオスがため息をつく。

「……こうして見ると」

「この家」

「問題児の集合体だな」

ヴァルディス

「今さら?」

朱雀

「遅い」

白虎

「遅い」

「諦めろ」

玄武

「居心地は良い」

リオは頭を抱えた。

「……あの」

「これ以上」

「増えませんよね?」

玄武

「増える」

即答。

リオ

「即答やめて!!」

その夜。

四大神獣が揃い、

主神と魔界第一席が同席し、新人アスラが腕立て伏せをしている家で晩ごはんは、

普通の煮魚だった。

誰も文句を言わない。

それが一番、

異常だった。


第19話:壊していい場所を作ったら、みんな目が輝いた

発端は、アスラの正座だった。

珍しい。

とても珍しい。

「……玄武」

玄武

「何だ」

アスラ

「頼みがある」

全員

「嫌な予感」

アスラは、珍しく丁寧に言った。

「思いっきり暴れていい場所が欲しい」

沈黙。

朱雀

「今まで我慢してたの?」

白虎

「偉い」

「偉いが危険」

アルケイオス

「却下……と言いたいが」

ヴァルディス

「作るな」

玄武は、しばらく考え・・

「……良い」

全員

「えっ」

リオ

「えっ!?」

玄武

「条件がある・・結界の内側は、世界から切り離す・・壊れても・・揺れても・・因果が漏れない」

アルケイオス

「……それ」

「神域仕様だぞ」

玄武

「だから良い」

リオ

「軽い!!」


建設開始。

玄武が地面に爪を置く。

・・ズン。

大地が、折り畳まれた。

地下に空間。

上空に空間。

内側だけが、

別の世界。

結界が、何重にも張られる。

・物理遮断

・魔力遮断

・精神遮断

・因果遮断

・ご近所迷惑遮断

アスラ

「最高か?」

玄武

「最高だ」

ヴァルディス

「……やりすぎだ」

完成。

名付けて・・・無人島総合闘技場(暫定)

リオ

「暫定!?」


告知。

「武闘大会、やります」

言い出しっぺ:神様アルケイオス

朱雀

「焼き担当」

白虎

「実況やる」

「安全確認(嘘)」

ヴァルディス

「賭けはしないぞ」

アスラ

「出場する!!」

リオ

「観客で!!」


大会当日。

結界の内側。

アスラが、泣いていた。

「……殴っていい」

「壊していい」

「全力でいい」

「夢か?」

玄武

「現実だ」

第一試合。

アスラ vs 空気(準備運動)

・・ドォン!!

衝撃。

・・ドォン!!

二回目。

観客席。

リオ

「……あの」

「結界、大丈夫ですよね?」

アルケイオス

「五重だ」

ヴァルディス

「六重だな」

玄武

「七重ある」

朱雀

「盛るな」

白虎

「数字増やすな」

第二試合。

アスラ vs 結界耐久テスト用ゴーレム。

開始三秒。

・・消滅。

白虎

「KO!!」

アスラ

「弱い!!」

玄武

「次を用意する」

「用意できるの!?」


気づけば。

・精霊部門

・神獣部門(模擬)

・悪魔部門(軽め)

勝手にカテゴリが増えていた。

リオ

「大会の規模!」

アルケイオス

「……これ」

「正式行事にするか」

「やめて!!」

アスラは、満足そうに肩で息をしていた。

「……ありがとう」

玄武

「礼は要らん」

「暴れたい者に」

「場所を与えただけだ」

ヴァルディス

「結果」

「集まりたい奴が増える」

「世界はそういうものだ」

リオ

「ですよね!!」

こうして。

・いくら壊してもいい

・誰も困らない

・むしろストレス発散

という危険なのに優しい闘技場が完成し、無人島武闘大会は、開催決定となった。

なお。

第一回大会の参加希望者は、すでに王都から届き始めている。


第20話:闘技場より忙しいのは、だいたいトイレ

朝。

島の沖合に、点が見えた。

一つ。

二つ。

十。

二十。

リオ

「……船?」

次の瞬間。

朱雀

「いや」

白虎

「多い」

「多すぎる」

アルケイオス

「……来たな」

アスラ

「参加者だな!!」

「観戦者もだよ!!」


昼。

島は、もはや無人ではなかった。

・武闘家

・傭兵

・冒険者

貴族ひやかし

・なぜか吟遊詩人

・絶対戦わない系学者

・絶対に笑わない男

全員、勝手に集まってきた。

リオ

「聞いてません!!」

ヴァルディス

「告知してない」

玄武

「だが来た」

アルケイオス

「人はそういうものだ」

「納得しないで!!」


問題①

食べ物がない

朱雀

「任せろ」

次の瞬間。

火柱。

鉄板。

肉。

朱雀の露店が爆誕した。

「焼きそば!」

「串焼き!」

「焦げはサービスだ!」

「うまい!!」

リオ

「仕事早っ!?」

朱雀

「屋台は戦場だ」

・・

問題②

トイレがない

リオ

「これ一番ダメなやつ!!」

玄武が、静かに動く。

地面に爪。

・・ズン。

一瞬で、耐久・防臭・結界付きトイレ完成。

案内板付き。

白虎

「早い」

「完璧」

「神か?」

玄武

「……黙って使え」


問題③

治安

アスラ

「殴ればいい?」

「ダメです!!」

代わりに。

ヴァルディスが、ぼそっと言った。

「……規則」

空気が、冷えた。

観戦者

「……はい」

誰も騒がない。

リオ

「何したんですか」

ヴァルディス

「何も」

「そう思わせただけ」

怖い。

・・

問題④

人が増えすぎる

島の中央。

即席掲示板。

・島を壊さない

・勝手に戦わない

・家主に迷惑をかけない

最後の一文。

破った者は、玄武と話し合い

観戦者

「やめとこう」

・・

夕方。

島はもう、祭りだった。

朱雀の屋台は行列。

白虎は子どもに囲まれている。

龍は空の安全確認(ついでに見せ物)。

アルケイオスは進行表を整理。

玄武はトイレ管理。

アスラは、

闘技場を見つめてそわそわしている。

リオは・・走り回っていた。

「そっち列整理!!」

「露店代、払って!!」

「勝手に神像建てないで!!」

誰も言うことを聞かない。

その時。

朱雀が、

焼き串を一本差し出した。

「ほれ」

リオ

「……」

一口。

「……おいしい」

朱雀

「だろ」

白虎

「祭りだな」

「始まったな」

アルケイオス

「後戻りはできん」

玄武

「覚悟しろ」

アスラ

「明日!!」

「やっと殴れる!!」

リオ

「今日一日で疲れ切ったよ!!」

こうして。

武闘大会前夜。

島は、戦う前が一番忙しいという事実を、全員が思い知った。


第21話:無法地帯は、だいたい早く落ち着く

朝。

大会当日。

リオは、嫌な予感で目が覚めた。

外が、うるさい。

嫌な方向に。


島の広場。

昨日の公式露店の横に・・勝手に増えた露店。

・串焼き(似てる)

・串焼き(絶対違う)

・串焼き(火力がおかしい)

・なぜか武器屋

・なぜか占い

・なぜか賭場

リオ

「ちょっと待って!!」

「聞いてない!!」

露店主

「え?」

「みんなやってるから」

一番ダメな理由!!

・・

さらに問題。

闘技場の影。

布を敷き、目を光らせる連中。

「一試合目、アスラ有利三倍!」

「いや相手のゴーレム硬いぞ!」

「賭ける!賭ける!」

リオ

「博打始まってる!?」

アルケイオス

「始まってるな」

ヴァルディス

「放っとくと荒れる」

玄武

「……潰すか?」

「それは最後にしてください!!」

・・

無法状態。

叫ぶ観客。

揉める賭場。

勝手に値段を釣り上げる屋台。

朱雀

「……」

白虎

「……」

「……」

全員、

リオを見る。

リオ

「……」

深呼吸。

「……まとめます」

「え?」

「まとめます」


即席本部設置。

看板。

無人島武闘大会・運営(暫定)

リオ、

机を叩く。

「聞いてください!」

「露店、やっていいです!」

露店主

「おお!」

「ただし!場所決めます!価格表示必須!」火は朱雀チェック通過制!」

朱雀

「任せろ」

露店主

「急に締まった」

次。

「賭け!」

ざわつく。

「禁止しません!」

「おお!」

「ただし!公式一本化!取り仕切りは・・」

ヴァルディスが、前に出た。

「……俺だ」

空気が、凍る。

賭場の元締め

「……誰?」

ヴァルディス

「名乗るほどじゃない」

「が」

「逃げ場はない」

誰も逆らわなかった。

アルケイオス

「オッズ調整は私がやる」

「神が!?」

玄武

「不正は結界で弾く」

白虎

「ズルしたら噛む」

「空から見てる」

賭場

「健全すぎる……」


結果。

・露店は整列

・賭けは公正

・揉め事ゼロ

・治安、異常に良好

観戦者

「……」

「思ったより」

「安心できる」

リオ

「ですよね!?」

アスラは、闘技場を見ながら言った。

「……」

「戦う前に」

「島が一番強くなってないか?」

玄武

「気づいたか」

朱雀

「秩序ってやつだ」

アルケイオス

「皮肉だな」

ヴァルディス

「無法を放置すると荒れる」

「無法を認めると、落ち着く」

リオ

「名言っぽく言わないでください!!」


こうして。

・勝手に始まった露店

・勝手に始まった博打

・勝手に荒れかけた島

すべては・・家主の一声で管理下に入った。

観戦者たちは、気づいてしまった。

この島で一番怖いのは――

神でも

神獣でも

悪魔でも

バトルジャンキーでもなく、

「まあ、いいですよ」と言う家主だということに。


第22話:第一試合、相手が規格外

鐘が鳴った。

――ゴォン。

闘技場を包む結界が、

低く、重く、唸る。

玄武

「結界、正常」

アルケイオス

「出力問題なし」

朱雀

「客、テンション上がりすぎ」

白虎

「血の匂いしないのに騒ぎすぎ」

「……来るぞ」

リオ

「はい!? まだ紹介も――」


司会役(勝手にやらされてる冒険者)

「で、では! 第一試合!」

「挑戦者は・・」

アスラが、闘技場に出る。

いつも通り。

裸足。

楽しそう。

アスラ

「よろしくな!」

歓声。

「来たぞ島流しの狂戦士!」

「無害衝撃波のやつだ!」

「どこまでやるんだ!?」

リオ

「よしよし、普通だ」

「問題は相手――」

司会

「対するは!」

「――え?」

一瞬、言葉が止まる。

観客

「?」

司会

「……えー……」

「エントリー名――」

『無名』

ざわ。

「無名?」

「誰だよ」

「新人か?」

結界の向こう。

ゆっくり、歩いて入ってくる影。

背が低い。

細い。

武器なし。

フードを深くかぶっている。

リオ

「……」

嫌な予感が、さっきより強い。

司会

「職業、申告なし!」

「種族――」

止まる。

司会

「……不明?」

観客

「は?」

「ふざけてんのか?」

「運営!!」

リオ

「え、え、え、聞いてない!!」

アルケイオス

「……名簿に、いた」

リオ

「なんて!?」

アルケイオス

「『通りすがり』とだけ」

リオ

「書かせた覚えがない!!」


フードの人物、顔を上げる。

目が合った瞬間。

アスラ

「……」

空気が変わる。

観客が、静まる。

アスラ

「……あぁ」

「なるほど」

「そういうタイプか」

リオ

「え? 何? わかるの?」

アスラ

「うん」

「こいつ」

「戦う気がない」

観客

「???」

次の瞬間。

フードの人物、軽く手を振る。

・・ポン。

音もなく。

闘技場の床、

一部分だけが、

きれいに消えた。

えぐれたわけじゃない。

存在してなかったみたいに。

沈黙。

朱雀

「……料理じゃねぇ」

白虎

「……噛めない」

「……削除系か」

玄武

「……これは」

アルケイオス

「神格干渉ではない」

リオ

「じゃあ何!?」

フード

「……」

フード

「間違えた」

観客

「間違えた!?」

フード

「力、入れすぎた」

アスラ、大笑い。

「ははははは!!」

「いい!!」

「最高だ!!」

アスラ

「なぁ!」

「名前!」

フード

「……ない」

アスラ

「じゃあ今つける!」

「お前、第一試合の――」

「災害枠だ!」

観客

「災害!?」

リオ

「枠って何!!」

司会

「え、えー……」

「第一試合……」

「……続行?」

全神、顔を見合わせる。

玄武

「結界は……耐える」

アルケイオス

「学術的価値は高い」

朱雀

「客はもう帰らねぇ」

白虎

「止めると噛まれる」

「やれ」

リオ

「多数決ひどい!!」

鐘が、再び鳴る。

――ゴォン。


第一試合。

想定外 × 想定外。

観客はまだ知らない。

この試合が・・「大会の基準」をすべて壊すことを。


第23話:第一試合なのに決勝戦みたいな空気

鐘が鳴ったあとも、誰も、声を出せなかった。

闘技場の床に空いた・・

**“なかったことにされた空間”**を、全員が見ている。

アスラは笑っている。

だが、目は一切笑っていない。

アスラ

「なぁ……」

「お前」

「どこまで消せる?」

ざわっ。

観客

「聞いたか今」

「消せる前提だぞ」

「第一試合だよな?」

リオ

「……おかしい」

「完全におかしい」

フードの人物は、少しだけ首をかしげる。

フード

「……試合」

「するんだよね?」

アスラ

「もちろん!」

「全力で!」

フード

「……わかった」

その瞬間。

玄武の甲羅に、ヒビが入った。

玄武

「……?」

結界ではない。

闘技場でもない。

**“空気そのもの”**が、押し下げられている。

朱雀

「……おい」

「火、つかねぇ」

白虎

「……風が、噛めない」

「……これは」

アルケイオス

「……あぁ」

「ヴァルディスだ」

リオ

「……え?」

アルケイオス

「“新人アスラ”と話していた、あの」

リオ

「ちょっと待って」

「あの無害そうな研究バカ!?」

アルケイオス

「研究対象が“世界”なだけだ」


アスラ、一歩踏み出す。

ドン。

無害衝撃波。

だが今回は、“無害”の定義が違った。

衝撃は、床も、空気も、相手も壊さない。

ただ・・闘技場全体を揺らした。

観客

「うわぁぁぁ!?」

「地震!?」

「違う、戦闘だ!!」

ヴァルディス、軽く手を上げる。

・・スッ。

衝撃波が、途中で消えた。

アスラ

「……はは」

「やっぱり!」

「消す側か!」

ヴァルディス

「……改造してるね」

「その衝撃」

アスラ

「お前ほどじゃない!でも・・効かせる工夫はしてる!」

アスラが、もう一歩。

衝撃が、波ではなく“層”になる。

消せない。

ヴァルディスの目が、ほんの少し見開かれる。

ヴァルディス

「……」

「面白い」

その一言で。観客席が、爆発した。

「今の見た!?」

「第一試合だぞ!?」

「決勝だろこれ!!」

「帰れなくなった!!」

リオ

「帰れなくなったって何!?」

玄武

「結界、出力上昇」

朱雀

「露店、全部売り切れ」

白虎

「賭け倍率、崩壊」

「世界、注目し始めた」

リオ

「最悪の兆候しかない!!」


ヴァルディス、フードを脱ぐ。

観客

「……え?」

「知ってる顔だぞ?」

「え、あれ……」

「神域の……?」

ざわざわざわ。

ヴァルディス

「……名乗るの、忘れてた」

「ヴァルディス」

「肩書きは……」

一拍。

「管理者」

アスラ

「最高じゃねぇか!!」

拳を構える。

ヴァルディスも、同時に。

アルケイオス

「……これは」

「第一試合ではない」

玄武

「だが、止められん」

朱雀

「止めたら燃える」

白虎

「観客が」

「歴史が」

リオ

「誰も僕の味方いない!!」

鐘が、三度目に鳴る。

――ゴォン。

第一試合。

だが全員が理解した。

これはもう、

大会の“基準”が壊れる音だと。


第24話:人外すら置き去りの肉弾戦

・・魔法は、最初に消えた。

誰かがそう理解した瞬間には、

もう拳と拳がぶつかっていた。

ドンッ!!

音じゃない。

衝突だ。

アスラの拳とヴァルディスの掌がぶつかり、その場の空間が、ぐにゃりと歪む。

玄武

「……結界が、圧縮されている」

朱雀

「冗談だろ」

「殴って空間潰すな」

白虎

「……噛める気がしない」

「“人外”の枠を越えたな」

リオ

「もうやめて!!」

誰も聞かない。


アスラは、踏み込まない。

その場で殴る。

ヴァルディスは、下がらない。

その場で受ける。

避けない。防がない。

ただ・・耐えて、殴る。

バンッ!!

ガンッ!!

ドォンッ!!

闘技場の床が、衝撃に耐えきれず波打つ。

観客

「……」

もう悲鳴すら出ない。

ただ、口が開いたまま。

アスラ

「ははっ!!」

「いい!!」

「久しぶりだ、これ!!」

ヴァルディス

「……」

「理論が、役に立たない」

「最高だ」

ヴァルディスの拳が、

アスラの腹に突き刺さる。

ドン。

衝撃は外に出ない。

アスラの体内で、全部暴れる。

アスラ

「……っ」

一瞬、息が止まる。

だが・・笑う。

アスラ

「効いた!!」

次の瞬間、アスラの頭突き。

ゴッ!!

ヴァルディスの額に、ヒビが入る。

朱雀

「頭で行くな!!」

玄武

「結界、悲鳴を上げている」

アルケイオス

「観測不能領域に入った」

リオ

「だから止めようよ!!」


二人の動きが、見えなくなる。

いや、速いんじゃない。

“重い”。

一挙手一投足が、闘技場を押し潰す。

空気が、逃げ場を失う。

観客の中で、気絶者が出始める。

白虎

「……もう人外じゃねぇ」

「概念だ」


ヴァルディスが、低く言う。

ヴァルディス

「……君」

「壊れないね」

アスラ

「お前もな!!」

二人同時に、全力の正拳。

・・ドンッ!!!!

音が消えた。

衝撃の中心が、無音になる。

次の瞬間。闘技場の中心に、クレーター。

だが、破壊はそこまで。

玄武

「……耐えた」

朱雀

「マジで耐えた」

白虎

「俺、噛まなくてよかった」

「結界、誇っていい」


土煙の中。

二人が、立っている。

拳を下げ、息を整え・・同時に、笑った。

アスラ

「……はぁ」

「第一試合だよな?」

ヴァルディス

「……そうだね」

「信じられない」

観客

「「「だよな!?」」」

リオ

「誰か僕を信じて!!」

二人、同時に一歩引く。

アスラ

「……続き」

「またやろう」

ヴァルディス

「……次は」

「もう少し壊していい場所で」

アスラ

「最高だ!!」

鐘が、鳴る。

・・ゴォン。

勝敗は、つかなかった。

だが、全員が理解した。

これは第一試合ではない。

**世界が“上限を失った瞬間”**だと。


第25話:出場停止理由:床がへこむから

闘技場は、まだ揺れていた。

結界は耐えた。

だが床は・・べっこり。

リオは、その中央に立っていた。

リオ

「……はい」

小さく、

手を挙げる。

誰も聞いていない。

アスラとヴァルディスは、向かい合ったまま。

空気は、

まだ戦闘の続き。

リオ

「……はい!!」

声を張る。

アルケイオス

「……どうした」

リオ

「どうしたもこうしたも!!」

「床が!」

「へこんでる!!」

沈黙。

アスラ

「……それが?」

ヴァルディス

「……構造上、問題は――」

リオ

「ある!!」

「修理が大変!!だ・か・ら!二人は失格!出場停止!!」

観客

「……」

次の瞬間。

大爆笑。

「ははははは!!」

「理由そこ!?」

「出場停止の理由それ!?」

朱雀

「……俺は嫌いじゃねぇ」

白虎

「噛む気失せた」

「合理的だ」

玄武

「管理者判断として妥当」

アルケイオス

「……家主権限、強いな」


リオ、

ビシッと指を突き出す。

リオ

「アスラ!」

アスラ

「おう!」

リオ

「ヴァルディス!」

ヴァルディス

「……はい」

リオ

「二人とも」

「出場停止!!」

「理由!」

一拍。

「床が壊れるから!!」

観客

「「「ぎゃはははは!!!」」」

アスラ

「……え」

ヴァルディス

「……あ」

二人、初めて表情を崩す。

アスラ

「……マジか」

「俺、楽しくなってきたのに」

ヴァルディス

「……続き……やる気だった」

肩を落とす。

しょんぼり。

観客

「かわいいな!!」

「最強が落ち込んでる!!」

「床に負けた!!」

リオ

「泣くな!!」

観客が喜んでる!


アスラ

「……じゃあ・・いつならいい?」

リオ

「次は専用施設!!」

ヴァルディス

「……用意、できる?」

リオ

「玄武!」

玄武

「可能」

ヴァルディス

「……楽しみだ」

アスラ

「やった!!」

即・復活。

リオ

「だから嬉しそうにするな!!」


司会

「えー……」

「第一試合は」

「両者、出場停止により――」

「中断!!」

観客

「「「最高!!!!」」」

「こんな終わり方ある!?」

「史上最悪で最高だ!!」

朱雀

「出店、酒追加!」

白虎

「賭け、全部返金!」

「伝説、確定」

アルケイオス

「……記録に残す」

リオ

「残さなくていい!!」


アスラとヴァルディス。

二人並んで、観客席に座る。

アスラ

「……床、へこんだな」

ヴァルディス

「……すごく」

二人、同時にため息。

でも・・笑っている。

観客は、腹を抱えている。

こうして大会は、正式に認定された。

**「世界で一番危険で、一番くだらない武闘大会」**として。


第26話:準決勝八名、確定

その日、試合は、何度も行われた。

さすがに・・最初のアスラ&ヴァルディス級は、もう出てこない。

……はずだった。

観客

「いや基準壊れてるから」

「どれも強すぎる」

「第一試合が悪い」

リオ

「悪いのはあの二人!!」


第二試合。

筋肉で魔法を殴り返す獣人。

第三試合。

精霊と精霊使いが、喧嘩しながら連携する謎構成。

第四試合。

武器が全部“投げると帰ってくる”人。

リオ

「どこから連れてきたの!!」

朱雀

「勝手に集まった」

白虎

「噛めそうなやつ多い」

「面白いから良し」

アルケイオス

「統計的に、異常」


それでも。

出場停止ラインは、リオが引いた。

・床が割れる → 失格

・空間が消える → 失格

・観客が泣く → 一時停止

・神が立ち上がる → 即終了

アスラ

「厳しいな」

ヴァルディス

「……良い判断」

リオ

「お前らが言うな!!」


日が、傾く。

夕焼けが、闘技場を赤く染める。

玄武

「本日の試合、終了を提案」

朱雀

「客、限界」

白虎

「酒も限界」

「集中力、限界」

リオ

「全体的に限界!!」

司会

「えー……」

「本日の全試合を終了し!」

「準決勝進出者――」

一拍。

「八名、確定!!」

観客

「おおおおお!!」

歓声。

名前が、呼ばれていく。

・剛力獣人

・精霊喧嘩コンビ

・帰ってくる武器の人

・謎の回避特化剣士

・防御しか能がない盾男

・歌うだけで相手が倒れる吟遊魔術師

・笑顔が怖い僧侶

・そして・・

司会

「……最後の一名」

「通りすがり枠、代理!!」

観客

「代理!?」

アスラ

「俺か?」

ヴァルディス

「僕じゃないね」

司会

「代理は・・・明日、発表!!」

観客

「ええええ!?」

リオ

「引っ張るな!!」


夜。

準決勝メンバーは、それぞれの場所で休む。

観客は、語り続ける。

「明日どうなる?」

「代理誰だ?」

「また床壊れる?」

リオ

「壊れない!!」

闘技場に、静けさが戻る。

リオは、床を見下ろす。

べっこり。

リオ

「……直すか」

アルケイオス

「手伝おう」

玄武

「結界、調整する」

朱雀

「飯は俺が」

白虎

「噛まない」

「見守る」

リオ

「頼もしいんだか頼もしくないんだか!!」

こうして。

大会は明日に持ち越された。

準決勝、八名。

誰も知らない。

明日が、**“さらにひどくなる日”**だということを。


第27話:家主、ホテル王になる

夜だった。

島は静かで、明日に備えて、全員が休んでいる・・はずだった。

リオは、ひとり、外にいた。

リオ

「……客、多すぎない?」

昼間は闘技大会。

夜は宴会。

観戦者、参加者、便乗者。

気づけば島は、人で埋まっていた。

リオ

「テント足りない」

「家も足りない」

「……床も直したい」

ため息。

そして、

無意識にギフトを使った。


・・ゴゴゴゴゴ。

地面が、妙に素直に動く。

リオ

「あ」

嫌な音。

砂浜の端に、一棟目の建物が生える。

カジュアルな宿屋風。

リオ

「あ、待って」

止まらない。

・・ゴゴゴゴゴゴ。

二棟目。

三棟目。

四棟目。

ログハウス。

石造り。

南国風。

王都高級宿風。

朱雀

「……?」

夜空を見上げていた朱雀が、ゆっくり振り向く。

朱雀

「……増えてね?」

白虎

「噛む前に確認したい」

「島、広がってないか?」

玄武

「地形、再構築中」

アルケイオス

「……家魔法、暴走」

リオ

「止まって!!」


・・ドン。

ホテル。

三階建て。

温泉付き。

なぜか大浴場完備。

リオ

「なんで風呂!!?」

ヴァルディス

「……需要予測、正確」

アスラ

「最高!!」

もう一棟。

・・ドン。

闘技者専用宿。

壁、分厚い。

床、頑丈。

天井、高い。

アスラ

「俺のためか!?」

リオ

「違う!!」

さらに。

・・ドン。

観戦貴族向け高級ホテル。

嫌味なくらい豪華。

朱雀

「客層分析までしてるな」

白虎

「噛みたい」


観客たち、起き出す。

「え、なに?」

「宿、増えてない?」

「部屋ある!?」

「泊まれるの!?」

一瞬で満室。

リオ

「仕事早すぎ!!」

アルケイオス

「経済が回り始めた」

玄武

「治安、改善」

「島が都市化」

リオ

「誰も止めてくれない!!」


最後に。

・・・ズズズズズ。

中央に、とんでもなくでかい建物。

看板。

《無人島総合ホテル― 家主直営 ―》

リオ

「……」

沈黙。

アスラ

「お前」

「もう島流しじゃねぇな」

ヴァルディス

「……管理者超えてる」

朱雀

「ホテル王」

白虎

「噛めない」

「文明」

アルケイオス

「歴史的転換点」

リオ

「……明日」

「大会どころじゃなくない?」

全員、同時に言った。

「いや、むしろ盛り上がる」

リオ

「でしょうね!!」

こうして。無人島は・・一夜にして。

闘技大会付きリゾート地になった。


第28話:宿泊料金という最大の敵

朝だった。

太陽は爽やか。

海は青い。

ホテルは――満室。

リオ

「……で」

「金、どうするの?」

一同、沈黙。

アスラ

「泊まるだけだろ?」

ヴァルディス

「……概念的には、無料でもいい」

朱雀

「食材は?」

白虎

「酒は?」

玄武

「修繕費」

「治安維持」

アルケイオス

「労働対価」

リオ

「ほら!!全部金!!」


神々、腕を組む。

アルケイオス

「貨幣を作るか」

朱雀

「独自通貨か」

白虎

「噛める形にしろ」

リオ

「噛めるな!!」

ヴァルディス

「……世界通貨を使うと」

「王都が介入する」

リオ

「それは嫌!!」

アスラ

「じゃあ――」

「ブツブツ交換!!」

全員

「……」

アスラ

「俺、強いぞ?」

リオ

「宿泊費に戦闘力出すな!!」


試案その一。

【独自通貨案】

アルケイオス

「名称が必要だ」

朱雀

「“家貨”」

白虎

「“噛貨”」

リオ

「却下!!」

ヴァルディス

「……“リオ”」

リオ

「自分の名前を貨幣にするな!!」

問題、山積み。

・偽造

・信用

・換金

・管理

リオ

「無理!!」


試案その二。

【ブツブツ交換案】

朱雀

「料理で払う」

白虎

「狩りで払う」

アスラ

「勝利で払う!」

リオ

「勝利を泊まるな!!」

観戦者

「酒一樽で三泊!」

貴族

「宝石で永久滞在!」

怪しい商人

「情報で割引!」

島、無法地帯。

リオ

「止まれぇぇ!!」


リオ、頭を抱える。

リオ

「……折衷案だ」

全員

「?」

リオ

「独自通貨を作る」

「でも――」

一拍。

「通貨は“行動”で稼ぐ」

沈黙。

リオ

「名付けて・・《宿泊ポイント》」

朱雀

「急に現代的だな」

アルケイオス

「理にかなう」

ヴァルディス

「……評価軸は?」

リオ

「掃除」

「修理」

「警備」

「運営手伝い」

「料理」

「露店管理」

「トイレ掃除」

白虎

「最後重い」

アスラ

「俺、トイレやる!!」

リオ

「意欲が逆に怖い!!」


こうして。

島の通貨は、労働になった。

観客

「掃除すれば泊まれる!」

貴族

「……掃除?」

商人

「情報は?」

リオ

「情報は・・」

考える。

「役に立てば可」

商人

「曖昧!!」

ヴァルディス

「……管理者泣かせ」

アルケイオス

「だが回る」

・・

夕方。

ホテルは、整っていた。

床は磨かれ、風呂は満員、露店は整列。

リオ

「……あれ?」

「ちゃんとしてる」

朱雀

「人は働くと従う」

白虎

「噛まないで済む」

「文明」

玄武

「結界安定」

アスラ

「トイレピカピカ!!」

リオ

「ありがとう!!」


こうして。

無人島は、独自経済圏を手に入れた。

貨幣はない。

だが価値はある。

そして誰もが気づき始める。

・・この島、意外と住みやすいと。


第29話:準決勝、再開!そして全員寝坊

朝だった。

太陽は高い。

鐘は・・鳴りっぱなし。

――ゴォォン!

――ゴォォン!

司会

「おかしいですねぇ……」

「選手が誰も来ません!!」

観客

「え?」

「え??」

「準決勝だぞ?」

リオ

「……」

嫌な予感。


第一の寝坊者。

剛力獣人。

原因:ホテルのベッドが良すぎた。

獣人

「起きたら……昼だった」

リオ

「高級マットレス作りすぎた!!」


第二の寝坊者。

精霊喧嘩コンビ。

原因:精霊と夜通し口論。

精霊

「お前が悪い」

使い手

「お前だろ!」

リオ

「寝ろ!!」


第三の寝坊者。

帰ってくる武器の人。

原因:武器が先に寝た。

武器

「……まだ眠い」

本人

「帰ってくるな!!」

リオ

「武器に生活リズムあるな!!」


第四の寝坊者。

謎の回避特化剣士。

原因:回避しすぎて鐘を避けた。

剣士

「気づいたら夕方」

リオ

「避けるな!!」


観客

「ひどすぎる」

「準決勝だぞ!?」

「決勝戦どこいった!」

朱雀

「宿、快適すぎたな」

白虎

「噛む必要ない」

「文明の弊害」

アルケイオス

「予測可能」

リオ

「予測するな!!」


最後の寝坊者。

・・代理枠。

部屋をノック。

リオ

「……起きてます?」

返事、なし。

扉を開ける。

中は、完璧に整った部屋。

ベッド、未使用。

机、整理済み。

窓、開。

リオ

「……いない?」

ヴァルディス

「……逃げたね」

アスラ

「面白い」

リオ

「面白がるな!!」


闘技場。

司会

「えー……」

「本日の準決勝は――」

一拍。

「全選手寝坊により」

観客

「えええええ!!?」

司会

「一時間、延期!!」

観客

「短いな!!」

リオ

「むしろ奇跡だ!!」

その頃。

ホテルの食堂。

寝坊者たち、普通に朝食。

剛力獣人

「うまい」

精霊

「負けた」

武器

「……パン」

剣士

「避けられない」

リオ

「全員まとめて来い!!」


ようやく。

準決勝、再開。

選手が揃い、

観客も戻る。

鐘が鳴る。

――ゴォン。

司会

「改めまして!」

「準決勝、開始!!」

歓声。

だが、誰も気づいていない。

この大会。戦うより“生活”の方が難しいことに。


第30話:A・Bブロック決勝進出、四名確定

準決勝は、予定よりだいぶ遅れて始まった。

だが・・始まってしまえば早い。

誰もが分かっていた。

ここから先は、もう言い訳が効かない。


Aブロック

第一試合。

剛力獣人 vs 防御しか能がない盾男

正面衝突。

剛力獣人

「押す!!」

盾男

「受ける!!

結果。

地味。

だが。

盾が割れない。

獣人が止まらない。

五分後。

獣人の足が、先に止まった。

司会

「勝者――」

「盾男!!」

観客

「地味に強い!!」

リオ

「床が無事!!」

評価高い。

第二試合。

歌うだけで相手が倒れる吟遊魔術師 vs 笑顔が怖い僧侶

吟遊魔術師

「♪~」

観客

「来た!!」

僧侶

「……」

笑顔。

倒れない。

吟遊魔術師

「え?」

僧侶

「回復」

吟遊魔術師

「歌ってるんだけど!?」

結果。

歌い疲れて倒れた吟遊魔術師。

勝者、笑顔が怖い僧侶。

朱雀

「精神力の勝利」

白虎

「噛めないタイプ」


Bブロック

第三試合。

精霊喧嘩コンビ vs 帰ってくる武器の人

開始直後。

武器、投げる。

精霊、燃やす。

武器、帰る。

精霊、怒る。

使い手

「だから火はダメだって!!」

精霊

「そっちが悪い!!」

・・内輪揉め。

帰ってくる武器の人、

何もせず勝利。

司会

「勝者・・帰ってくる武器の人!!」

リオ

「平和的!!」


第四試合。

謎の回避特化剣士 vs (代理不在につき)不戦勝枠

司会

「えー……」

「代理枠、依然不在のため・・」

剣士

「避けた」

司会

「何を!?」

剣士

「不戦敗を」

司会

「概念!!」

結果。

回避特化剣士、勝ち上がり。


鐘が鳴る。

――ゴォン。

司会

「以上をもちまして!」

「A・Bブロック決勝進出者、四名確定!!」

観客

「おおおおお!!」

リオ

「……」

メンバーを見る。

・盾男

・笑顔が怖い僧侶

・帰ってくる武器の人

・回避特化剣士

リオ

「……思ったより」

「床に優しい!!」

玄武

「良い兆候」

アルケイオス

「安定した異常」

朱雀

「売上も安定」

白虎

「噛まないで済む」

「嵐の前の静けさだな」

リオ

「やめて!!」


こうして。

A・Bブロック決勝戦。

四名、出揃う。

だが全員、

まだ知らない。

この中から。

一人だけ、絶対に“普通じゃない勝ち方”をすることを。


第31話:Aブロック決勝 地味なのに異様に怖い

闘技場は、妙に静かだった。

派手な魔法もない。

煽るような前口上もない。

ただ・・盾男と、笑顔が怖い僧侶が立っている。

観客

「……地味」

「地味すぎる」

「寝そう」

リオ

「床は安全」

玄武

「良い」


鐘が鳴る。

――ゴォン。

盾男、一歩も動かない。

僧侶、にこにこしている。

盾男

「……来ないのか」

僧侶

「ええ」

「来ませんよ?」

観客

「来ないんだ」

「決勝だぞ?」


五分経過。

盾男、まだ構えたまま。

僧侶、ずっと笑顔。

白虎

「……噛みたい」

朱雀

「我慢しろ」

「空気が重い」

アルケイオス

「異常だな」


十分経過。

盾男の呼吸が荒くなる。

盾男

「……なぜ」

「なぜ攻撃しない」

僧侶

「?」

首をかしげる。

僧侶

「だって」

「あなた、壊れませんもの」

観客

「……」

僧侶

「壊れない盾を」

「殴っても」

「意味、ないでしょう?」

盾男

「……」

僧侶

「だから」

「待ちます」

その笑顔が、一切揺れない。


盾男、ついに動く。

盾で、押す。

ドン。

僧侶、吹き飛ぶ。

観客

「おっ!」

だが。

僧侶、立ち上がる。

服、破れていない。

息、乱れていない。

僧侶

「回復」

淡々と。

盾男

「……」

押す。

吹き飛ばす。

回復。

押す。

吹き飛ばす。

回復。

何度でも。

朱雀

「……無限か?」

玄武

「魔力、尽きていない」

アルケイオス

「自己回復効率、異常」

リオ

「……あ」

気づく。

リオ

「盾男」

「疲れてる」

観客

「……あ」


二十分経過。

盾男の足が、重くなる。

僧侶、まだ笑っている。

僧侶

「大丈夫ですか?」

盾男

「……っ」

僧侶

「無理、しなくていいですよ」

その言葉が、一番怖い。

盾男

「……っ!」

最後の突進。

盾で、全力の体当たり。

僧侶、倒れる。

・・が。

立ち上がる。

僧侶

「……あ」

「少し、痛かったですね」

一歩。

僧侶が、初めて前に出る。

僧侶

「終わりにしましょう」

手を伸ばす。

触れるだけ。

・・ふわり。

盾男の体から、力が抜ける。

盾男

「……?」

膝をつく。

僧侶

「回復、止めました」

盾男

「……え」

僧侶

「“回復しない”という選択も」

「回復魔法です」

観客

「……」

沈黙。

司会

「か、勝者――」

「笑顔が怖い僧侶!!」

数秒後。

どっと笑いと悲鳴。

「怖ぇぇぇ!!」

「何今の!!」

「地味なのに決勝!!」

リオ

「……床、無事・・・でも心が無事じゃない」

白虎

「噛まなくてよかった」

朱雀

「これは効く」

「戦いとは何かを問われた」

アルケイオス

「恐怖の本質だな」


僧侶、笑顔のまま一礼。

僧侶

「ありがとうございました」

観客

「ありがとうございましたじゃない!!」

こうして。

Aブロック代表は、笑顔が怖い僧侶に決まった。

誰も疑わない。

この大会で・・一番怖いのは、この人だと。


第32話:Bブロック決勝 武器がうるさい

闘技場。

さっきまでの静まり返った恐怖が嘘みたいに、空気が軽い。

理由はひとつ。

武器が、喋っている。

「今日は勝てる気がする」

「いや俺が主役だろ」

「俺も出たい」

持ち主

「黙れ」

リオ

「もう嫌な予感しかしない」


対戦カード。

帰ってくる武器の人vs回避特化剣士

司会

「Bブロック決勝!」

「開始――」

鐘が鳴る。

・・ゴォン。

即座に。

武器の人、投げる。

剣、槍、斧。

全部。

武器

「行ってくる!」

回避特化剣士

「避ける」

全部避ける。

武器

「え?」

「え?」

「今の見た?」

「避けた?」

全武器、空中で会議。

回避特化剣士

「……帰れ」

武器

「いやもうちょい話そう」

リオ

「戦え!!」


武器、戻る。

武器の人

「どうだった」

「ダメ」

「速い」

「ムカつく」

「俺も行きたい」

武器の人

「黙れ」


第二波。

フェイント付き投擲。

武器

「今度こそ!」

回避特化剣士

「避ける」

避ける。

避ける。

避ける。

避けすぎて、観客が酔う。

観客

「目が追いつかない!」

朱雀

「酔い止め売るぞ!」

白虎

「噛めない」


武器、また空中で会議。

「当たらない」

「当てに行くな」

「語りかけろ」

武器の人

「戦術会議を空中でやるな」


次の瞬間。

武器、喋りながら攻撃。

「左行くよ!」

回避特化剣士

「右に避ける」

「言うな!!」

「じゃあ俺は静かに」

「……」

回避特化剣士

「……」

「今!」

避ける。

観客

「もう漫才!!」

リオ

「床は安全!!」


だが。

回避特化剣士、

息が乱れる。

ずっと避け続けている。

アルケイオス

「……疲労」

玄武

「蓄積している」

ヴァルディス

「……なるほど」

アスラ

「詰めるな」


武器の人、静かに言う。

武器の人

「……全部」

「同時」

「え」

「え?」

「え!?」

「俺も!?」

武器の人

「黙って行け」

一斉投擲。

無言。

音だけが、空気を裂く。

回避特化剣士、避ける。

一つ、

二つ、

三つ・・

四つ目。

足が、

わずかに遅れる。

・・コツ。

盾が、軽く触れた。

回避特化剣士

「……あ」

初めての接触。

体勢が、崩れる。

「今だ!!」

遅い。

剣は、喋った。

回避特化剣士

「避ける」

・・間に合う。

だが。

司会

「えー……」

「接触あり!!」

「回避不能判定!」

観客

「おおおおお!!」

勝敗、決まる。

司会

「勝者・・帰ってくる武器の人!!」

歓声。

武器たち、

一斉に戻る。

「勝った!」

「俺だ!」

「俺も!」

「俺!」

武器の人

「……全員だ」

リオ

「うるさい!!」


こうして。

Bブロック代表は、帰ってくる武器の人。

決勝戦は・・笑顔が怖い僧侶vs武器が喋りすぎる人

観客

「どうなるんだこれ」

リオ

「……床は」

「無事であってくれ」


第33話:3位決定戦 予想、全部外れる

決勝戦の前。

闘技場には、少しだけ肩の力が抜けた空気が流れていた。

理由は簡単。

「3位決定戦」だからだ。

派手さはない。

だが・・観る側の本音が出る。


対戦カード。

盾男vs回避特化剣士

観客席。

「俺、盾男が優勝だと思ってたんだけど」

「俺は回避剣士」

「どっちも違ったな……」

ため息と、苦笑い。

リオ

「予想屋、全滅」

朱雀

「賭け、荒れたな」

白虎

「噛まれなくて済んだ」


鐘が鳴る。

――ゴォン。

盾男、構える。

回避剣士、構えない。

盾男

「……来ないのか」

回避剣士

「……避ける」

観客

「いつものだ」


盾男、じりじり前進。

盾で、場を押す。

回避剣士、下がる。

避ける。

避ける。

観客

「避けすぎ」

「でも当たらない」

リオ

「床が無事」

評価、一定。


十分経過。

盾男、息が荒い。

観客席。

「……盾男、頑張れ」

「1位予想外れたけどさ」

「せめて3位だ」

応援が、やけに優しい。

回避剣士、小さくつぶやく。

回避剣士

「……悪いな」

盾男

「?」

回避剣士

「俺」

「長引かせすぎた」

一瞬。

回避剣士が、自分から前に出る。

盾男

「!」

盾と、剣。

・・コツ。

初めて、ちゃんとぶつかる。

盾男、踏ん張る。

回避剣士、そのまま・・わざと、当たる。

観客

「!?」

次の瞬間。

盾男の体当たり。

・・ドン。

回避剣士、吹き飛ぶ。

回避剣士

「……あ」

着地、失敗。

司会

「勝者――」

「盾男!!」

観客

「おおお……!」

拍手。

大歓声ではない。

だが、温かい拍手。

「外れたけど」

「盾男、良かったな」

「3位だぞ」

リオ

「平和だ……」

朱雀

「平和だな」

白虎

「噛まない」


盾男、深く一礼。

回避剣士も、起き上がり、頭を下げる。

回避剣士

「……すまん」

盾男

「……いい試合だった」

観客

「いい試合だった!!」

こうして。

3位:盾男

4位:回避特化剣士

決まる。

観客の多くは、自分の予想を外しながら、それでも、最後まで応援していた。

そして、全員が、次を待っている。

決勝戦。

笑顔が怖い僧侶。

武器が喋りすぎる人。

リオ

「……お願い」

「静かに終わって」

誰も、聞いていなかった。


第34話:決勝戦 生き残った者が、勝者

闘技場。

満員。

空気が重い。

理由は一つ。

決勝カード。

笑顔が怖い僧侶vs武器が喋りすぎる戦士

観客席は、真っ二つに割れていた。

「僧侶だろ」

「いや武器だ」

「武器がうるさい方が勝つ」

「僧侶、目が笑ってない」

賭け金、過去最大。

朱雀

「これは……荒れる」

白虎

「血の匂い」

リオ

「やめて」


鐘。

――ゴォン。

僧侶、微笑む。

戦士、武器が叫ぶ。

武器

『殺せ!今だ!殺れぇぇ!!』

戦士

「静かにしろ!!」

開始、三秒。

僧侶、

詠唱ゼロ。

・・ズン。

戦士の足元、床が腐る。

戦士

「!?」

武器

『避けろ避けろ避けろ避けろ!!』

僧侶

「主よ、彼を導いて」

観客

「導いて?」

次の瞬間。

光。

爆発。

闘技場が、揺れる。

防護結界、悲鳴を上げる。

朱雀

「結界ギリ!」

白虎

「いや、超えてる」

リオ

「え?」


煙。

静寂。

先に見えたのは・・戦士の体。

動かない。

司会

「……」

僧侶、立っている。

微笑んだまま。

僧侶

「……」

次の瞬間。

僧侶、崩れ落ちる。

観客

「?」

僧侶の胸、

遅れて血。

武器の刃が、心臓を貫いていた。

武器

『やったぞ……』

『相討ちだ……』

武器も、沈黙。


完全な、沈黙。

司会

「……」

「……」

「両者、死亡」

闘技場、凍る。

賭け屋

「……は?」

リオ

「……は?」

朱雀

「……あ」

白虎

「……ああ」


司会、紙を見る。

規約。

第37条。

「決勝戦において両者が戦闘不能の場合、

 直前試合の勝者を繰り上げ優勝とする」

司会

「……」

息を吸って。

司会

「優勝者――盾男!!」

一瞬。

観客

「……え?」

次の瞬間。

「うおおおおお!?」

「盾男!?」

「生きてる!!」

盾男、観客席で立ち上がる。

盾男

「俺!?」

リオ

「おめでとう!」

朱雀

「生きてて良かったな!」

白虎

「噛まれなかった者の勝ち」


そして。

観客席の一角。

「……あれ?」

「……俺」

「……盾男、優勝って……」

顔色が、変わる。

「俺……」

「予想、当たってる!?」

次の瞬間。

闘技場中で・・・

「賭け券どこだ!?」

「燃やした!?」

「昨日の服だ!!」

「トイレだ!!」

阿鼻叫喚。

賭け屋

「落ち着け!!」

賭け屋

「生存優勝は倍率10倍だ!!」

観客

「うおおおお!!」

盾男、優勝台で震える。

盾男

「……誰も死なない大会じゃなかったのか」

リオ

「理想論」

朱雀

「現実」

白虎

「でもお前は生きた」

闘技場の中央。

二つの遺体。

一つの盾。

そして。

史上もっとも微妙な優勝者。

だが、誰よりも・・運が強かった。


第35話:表彰式 誰も正解を知らない優勝

闘技場中央。

即席で組まれた

表彰台。

高さ、全部同じ。

理由:「誰が何位か揉めたから」


盾男、中央に立たされる。

盾、抱えたまま。

盾男

「……」

観客

(拍手、まばら)

朱雀

「空気重っ」

白虎

「重力か?」

リオ

「俺のせいじゃないよ?」


司会、咳払い。

司会

「では――」

「第一回無人島武闘大会」

「優勝者」

「盾男殿!」

拍手。

だが、どこか申し訳なさそう。

盾男、一歩前に出る。

盾男

「……」

司会

「……」

司会

「感想を」

盾男

「……」

沈黙。

盾男

「……」

盾男

「……生きてて、よかったです」

観客

「それな」

朱雀

「正論」

白虎

「唯一の正解」


司会

「続いて」

「優勝賞品の授与です」

観客

「おお!」

盾男

(びくっ)

リオ、一歩前へ。

リオ

「えーっと・・・賞品なんだけど」

神々、全員そっぽ向く。

盾男

「……え?」

朱雀

「決めてない」

白虎

「完全に」

悪魔

「ノリで大会開いた結果だな」


観客

「えぇ……」

司会

「賞品は……?」

リオ

「えー……」

「選べます」

観客

「おお?」

盾男

「……何を?」

リオ

「えーと」

指を折る。

「一つ目」

「この島で永久居住権」

盾男

「……重い」

「二つ目」

「神様に一回だけお願いできる券」

神々

「待て」

リオ

「三つ目」

「家魔法で作った豪邸一棟」

盾男

「現実的」

「四つ目」

「全部いらないから静かな生活」

盾男

「それがいい」

即答。


一瞬、静寂。

神々

「……」

朱雀

「それを選ぶか」

白虎

「欲がない」

悪魔

「つまらん」

リオ

「……じゃあ」

「静かな生活、授与します」

観客

「拍手!」

拍手。

でも。

リオ

「ただし」

盾男

「?」

リオ

「この島で」

盾男

「……」

盾男

「それ、静かじゃないですよね?」

リオ

「もう手遅れ」


司会

「最後にインタビューです!」

盾男

「まだあるの!?」

司会

「今後の目標は?」

盾男

「……」

盾男

「盾を」

「武器にしない」

観客

「おお……」

朱雀

「深い」

白虎

「重い」

悪魔

「地味だ」


表彰式終了。

観客、ざわつきながら帰路へ。

賭けに勝った者は歓喜。

外した者は現実逃避。

闘技場に残るのは、盾男。

「……俺」

「本当に優勝したんだよな」

リオ

「したよ。・・一番、戦わなかったのに」

盾男

「それが一番怖い」

リオ

「この島ではね」

初夏の空、やけに晴れている。

誰も納得していないが、全員が忘れられない大会。


第36話:気づいたら村長 通貨を作れと言われた日

朝。

リオ、家の玄関を開ける。

「……?」

目の前。

建物。

昨日まで、なかった。

木造、石造、テント、混在。

道、整備されている。

看板。

「盾亭」

「朱雀屋台」

「無法酒場(仮)」←仮じゃない。


リオ

「……」

三秒考える。

リオ

「……誰?」

背後から、声。

「村長!!」

振り返る。

知らない人、十数名。

知らないけど、全員丁寧。

リオ

「誰が?」

全員

「あなたです」

リオ

「……は?」


説明。

闘技大会後。

・観戦者が居残った

・露店が常設になった

・宿泊用の家が勝手に増えた

・気づいたら定住

結果。

闘技場周辺=街

名前。

「まだない」

リオ

「名前すら!?」

代表の商人

「村長が決めるものです」

リオ

「村長じゃない」

全員

「もう皆そう呼んでます」

朱雀(屋台から)

「村長〜焼き魚いる〜?」

白虎

「村長、通行税どうする?」

悪魔

「村長、騒音苦情だ」

リオ

「やめて!」


代表

「それで本題です」

リオ

「まだあった」

代表

「通貨を作ってほしい」

リオ

「無理!」

即答。

代表

「今、物々交換が地獄でして」

農家

「魚10匹で宿1泊は高い」

鍛冶屋

「盾1枚でパン3つは安い」

酒屋

「酒が基準になり始めてます」

リオ

「それはやばい」


リオ、頭を抱える。

リオ

「通貨ってさ」

「信用が必要なんだよ?」

代表

「はい」

リオ

「国家とか」

「権威とか」

全員、一斉に見る。

神々。

朱雀、肉を返す。

白虎、腕組み。

悪魔、笑う。

悪魔

「権威は足りてるな」

リオ

「足りてるの嫌だな!?」


住民

「村長が作った物なら信用します」

リオ

「重い!!」


悩んだ末。

リオ

「……条件付き」

全員

「おお!」

リオ

「この街の通貨は」

「外には持ち出せない」

「価値はここ限定」

「偽造したら俺が泣く」

全員

「問題ありません!」

リオ

「最後!」

「名前、期待しないで!」

全員

「はい!!」


その夜。

リオ、机に向かう。

素材。

金属

なぜかカニの殻

リオ

「……」

「丸くて」

「軽くて」

「丈夫で」

「適当に神っぽい」

完成。

木製コイン。

中央に、家のマーク。

裏に、盾。

リオ

「……」

名前。

「ハウス」

リオ

「安直すぎる……」

翌日。

街中。

「1ハウスでパン!」

「宿泊5ハウス!」

「酒は2ハウス!」

意外と、回っている。

リオ

「……」

盾男(優勝者)

「村長」

リオ

「やめて」

盾男

「この通貨」

「……安心します」

リオ

「え?」

盾男

「奪っても、外じゃ意味ない」

「ここで、生きるための金だ」

リオ

「……」

初めて、少しだけ。

村長扱いを、受け入れた。

その瞬間。

朱雀

「村長〜税率どうする〜?」

白虎

「治安部隊作る?」

悪魔

「通貨デザイン変更案ある」

リオ

「待って!!」

空に向かって叫ぶ。

リオ

「俺は島流しにされた一般人だ!!」

空、無言。

こうして無人島は、正式に“街”になった。


第37話:一ハウスじゃ足りない 金属通貨、爆誕

朝。

市場。

「パン1個、1ハウス!」

「盾の修理、12ハウス!」

「宿3泊、25ハウス!」

リオ

「……」

数字、多い。

財布、分厚い。

住民、数えるのに時間がかかってる。

商人

「……1、2、3、4……」

「まだ?」

商人

「ちょっと待って」

リオ

「ごめん!!」

頭を下げる村長。


会議。

即席。

参加者:リオ・朱雀・白虎・悪魔・盾男(なぜか常任)

議題:通貨問題

鍛冶屋

「木製は軽いが嵩張る」

農家

「袋が破れる」

宿屋

「数えるのが地獄」

朱雀

「焼き鳥と交換のほうが早い」

白虎

「原始」

悪魔

「文明後退」

リオ

「……」

リオ

「金属だな」

全員

「おお」

リオ

「硬貨」

「価値を段階分け」

「少ない枚数で済む」

朱雀

「それ村じゃなくて国家だよ?」

リオ

「言わないで」


問題。

金属。

代表

「……どこから?」

全員、黙る。

白虎

「掘る」

リオ

「誰が?」

白虎

「村長」

リオ

「なんで!?」

悪魔

「責任者」

朱雀

「筋トレになるよ!」

盾男

「盾で掘りますか?」

リオ

「やめて!」


結局。

採掘隊、結成。

メンバー:リオ(監督)白虎(破壊担当)アスラ(楽しそう)盾男(安全係)

場所:島の裏山。

白虎

「ここ」

リオ

「適当すぎない?」

白虎、地面を殴る。

・・ドゴォン。

山、割れる。

中。

金属の光。

アスラ

「おおお!!」

リオ

「あるんだ……」

白虎

「当然」

盾男

「世界が雑だ」


鍛冶場。

熱。

汗。

朱雀、料理しながら見学。

朱雀

「金属通貨かぁ」

「名前どうする?」

リオ

「……」

リオ

「小さいの」

「ハウス・コイン」

全員

「……」

悪魔

「センスが死んでる」

リオ

「うるさい!」

次。

大きめ。

リオ

「ホーム」

白虎

「弱い」

朱雀

「可愛すぎ」

盾男

「守れそうではある」


結局。

決定。

・鉄貨:1ホーム=10ハウス

・銅貨:5ホーム

・銀貨:10ホーム

金貨?→「怖いから却下」

刻印。

表:家

裏:盾

鍛冶屋

「……これ」

「本気で国家の貨幣ですよ」

リオ

「知らない」


流通開始。

市場。

「パン1個、1ホーム!」

「宿1泊、2ホーム!」

商人

「楽!!」

「軽い!!」

財布、薄くなる。

みんな、笑顔。

リオ

「……よかった」

その時。

子供

「ねえ村長!」

リオ

「村長やめて!」

子供

「この銀貨、噛んだら歯折れた!」

リオ

「噛むな!!」


夜。

リオ、通貨を眺める。

木→金属。

物々交換→経済。

島流し→村長。

リオ

「……人生どこで間違えた」

悪魔

「最初」

白虎

「ヒゲ」

朱雀

「ヒゲだね」

リオ

「言うな!」

こうして無人島は、正式に“金属通貨を持つ街”になった。


第38話:まさかの金貨爆誕 神は余計なことしかしない

昼。

市場。

「銀貨1枚で魚5匹!」

「銅貨足りない!」

「細かいの誰か!」

平和。

……だった。

空が、割れる。

ズドン。

街外れ。

光。

土煙。

住民

「なに!?」

リオ

「なに今の!?」

朱雀

「隕石?」

白虎

「違う」

悪魔

「帰ってきたな」


土煙の中。

立っている影。

ローブ。

金色。

出張帰りの神様。

「ただいま」

リオ

「おかえりじゃない!今のなに!?」

「着地」

白虎

「下手」

朱雀

「雑」

「まあいい」

神、足元を見る。

地面。

キラ。

「……?」

しゃがむ。

掴む。

黄金。

「金だ」

リオ

「え?」

住民

「え?」

悪魔

「……やったな」

「出張先で金の気配を追って帰ってきた」

リオ

「追うな!!」


神、指を鳴らす。

地面、開く。

中。

金、金、金。

朱雀

「わぁ」

白虎

「眩しい」

盾男

「嫌な予感しかしない」

リオ

「埋めて!」

「もったいない」


「よし」

「金貨を作ろう」

リオ

「だめ!」

即答。

「もう作った」

リオ

「はやい!」


鍛冶場。

金色の熱。

神、楽しそう。

「純度完璧」

「変色しない」

「噛んでも歯が折れない」

子供

「ほんとだ!」

リオ

「試すな!」


完成。

金貨。

サイズ、大きい。

重い。

刻印。

表:家

裏:盾

縁:なぜか神のサイン

リオ

「サインいらない!!」

「芸術」


問題。

価値。

住民

「いくら?」

リオ

「……」

頭を抱える。

リオ

「銀貨10ホームで1金貨……?」

「安い」

白虎

「低い」

悪魔

「弱い」

朱雀

「料理一生分」

リオ

「やめて!」


決定。

1金貨=100ホーム

場、静まる。

次の瞬間。

市場

「えええええ!?」

商人

「でかい!!」

住民

「夢がある!」

盾男

「盾何枚分だ……」


即日。

問題発生。

・金貨を見せびらかす人

・盗難未遂

・隠し持つ者

・数えるとき落として足の上

リオ

「だから嫌だった!」

「楽しいだろ?」

リオ

「楽しくない!」


夜。

リオ、机。

木貨

金属貨

金貨

三種。

リオ

「これ」

「完全に国家だよね?」

悪魔

「うん」

白虎

「立派」

朱雀

「税と法律いこう!」

リオ

「言うな!!」

神、満足そう。

「通貨は文明の証」

リオ

「俺の島流し先でやるな!」

空。

星。

金色に、少しだけ輝く。

こうして街は、ついに“金貨”を持ってしまった。


第39話:黄金狂騒 神アルケイオスと悪魔ヴァルディスは止まらない

朝。

街。

眩しい。

昨日まで“ちょっと金が多い街”だったはずが、

今日はもう・・・

黄金都市(仮)

リオ

「……」

道の縁、金。

看板、金縁。

噴水、なぜか金色。

リオ

「一晩で何があった?」

背後。

ヴァルディス

「神が本気を出した」

リオ

「やめて」


原因。

広場中央。

神アルケイオス、地面に座っている。

アルケイオス

「金は使ってこそ価値がある」

白虎

「戦利品の基本」

朱雀

「料理素材!」

玄武

「建材にもなる」

ヴァルディス

「浪費の権化だな」

リオ

「誰か止めろ!!」

アルケイオス

「安心しろ」

「文明の発展だ」

リオ

「急加速すぎる!」


まず、料理。

朱雀の屋台。

今日の看板。

『黄金フルコース』

・金箔包み焼き魚

・金糸麺(スープは透明)

・金粉入り蒸し肉

・金箔デザート

リオ

「金、主張してる?」

朱雀

「しないよ・・・味は」

リオ

「じゃあ何で入れた!」

朱雀

「テンション」

ヴァルディス

「悪魔的理由だ」

アルケイオス

「文化だ」

リオ

「全部嫌だ!」


試食。

リオ、恐る恐る。

リオ

「……」

リオ

「普通に美味しいのが腹立つ」

朱雀

「金は邪魔しない」

玄武

「存在感だけ」

白虎

「威圧感」

ヴァルディス

「精神的満足度は高いな」

リオ

「そこかよ!」


次。

仕立て屋。

アルケイオス監修。

服。

金糸刺繍の正装。

家の紋章。

盾の紋章。

神紋(アルケイオス直筆)。

リオ

「サイン文化いらない!」

アルケイオス

「後世に残る」

ヴァルディス

「黒歴史になるやつだ」

リオ

「やめろ!」


試着。

リオ、鏡を見る。

金糸、控えめだが重厚。

リオ

「……」

リオ

「村長じゃなくて王じゃん」

ヴァルディス

「通貨発行してる時点で手遅れ」

白虎

「威厳はある」

朱雀

「似合ってるよ?」

リオ

「褒めないで!」


街。

住民。

・金の杯で酒

・金の椅子

・金の鍋

・金のドアノブ(重い)

子供

「金の石!」

投げる。

リオ

「投げるな!!」

アルケイオス

「ここでは石だ」

ヴァルディス

「希少性が死んだ世界」

リオ

「経済学が墓から出てきて殴ってくる!」


夜。

宴。

金の皿。

金の杯。

金箔料理。

アルケイオス、満足。

アルケイオス

「豊かだ」

ヴァルディス

「堕落だ」

玄武

「安定している」

白虎

「戦える」

朱雀

「おいしい!」

リオ

「俺だけ胃が痛い!」


リオ、金貨を一枚置く。

カン、と音。

リオ

「なあアルケイオス」

「金って」

「これで良かったのか?」

アルケイオス

「価値は人が決める」

ヴァルディス

「そして壊す」

白虎

「今は楽しい」

玄武

「そのうち反動が来る」

朱雀

「でも今日のご飯は最高!」

リオ

「現実見て!」


夜空。

星。

金色の街。

掲示板に、新しい張り紙。

『金貨の使用は節度を持って』

※料理・刺繍は例外(朱雀署名)

リオ

「……」

リオ

「止める気ないだろ」

ヴァルディス

「ないな」

アルケイオス

「文明は止まらない」

こうして街は、神と悪魔公認の“黄金狂騒期”に突入した。


第40話:黄金の国ハウス 噂は剣より早く飛ぶ

遠い、他国。

王城。

重厚な会議室。

地図の上に、赤い印。

大臣

「この位置に・・・黄金の国ハウスが存在するとの報告です」

将軍

「国?」

大臣

「正式な国号かは不明」

「ただし」

書類を、机に叩く。

「金貨を大量鋳造」

「街全体が金色」

「神獣級の存在が常駐」

場、ざわつく。

「……冗談では?」

大臣

「偵察兵三名が、同じ報告を」

将軍

「帰ってきたのか?」

大臣

「……一名だけ」

沈黙。

「続けよ」

大臣

「無人島だったはずの地に、突如、都市、通貨、神格存在・・・そして、統治者らしき人物」

「王か?」

大臣

「……“村長”と呼ばれているそうです」

将軍

「舐めてるな」


別の国。

商業国家。

会議。

商人長

「黄金が石扱い?」

商人

「金貨が市場に溢れていると」

商人長

「……なら」

「奪う価値はある」

傭兵長

「島か」

「落としやすい」

商人長

「神がいるらしいが?」

傭兵長

「金があるなら、神も釣れる」


また別の国。

宗教国家。

聖堂。

司祭

「黄金を弄ぶ国……」

「堕落の象徴」

司教

「神を名乗る存在が金を振る舞う?」

「異端だ」

「浄化が必要」

信徒

「遠征を?」

司教

「準備せよ」


一方。

黄金の国ハウス(自称)。

朝。

リオ、洗濯物を干している。

リオ

「……」

金糸入りの服。

リオ

「干しにくいなこれ」

背後。

ヴァルディス

「外が騒がしい」

リオ

「いつもでしょ?」

ヴァルディス

「島の外だ」

リオ

「……」

嫌な予感。


アルケイオス、空を見上げる。

アルケイオス

「噂が広がっている」

リオ

「止めて!」

アルケイオス

「無理だ」

白虎

「嗅ぎつける」

玄武

「時間の問題」

朱雀

「お客さん?」

リオ

「侵略だよ!!」


ヴァルディス

「面白いな」

リオ

「何が!?」

ヴァルディス

「黄金」

「神」

「無人島」

「これは」

「国家に見える」

リオ

「見えなくていい!!」


その夜。

港。

見張り台。

盾男、海を睨む。

盾男

「……」

遠く。

帆。

一つ。

また一つ。

数は、まだ少ない。

だが。

確実に、こちらを向いている。

盾男

「村長」

リオ

「やめろって……」

盾男

「……来ます」

リオ

「……」

後ろ。

アルケイオス

「侵略か」

白虎

「狩りか」

朱雀

「料理素材?」

玄武

「防衛準備を」

ヴァルディス

「選択肢は三つだな」

リオ

「聞きたくないけど聞く」

ヴァルディス

「迎撃」

「交渉」

「放置」

リオ

「どれも嫌!」

ヴァルディス

「国家とはそういうものだ」

リオ

「俺はヒゲを描いただけなんだぞ!!」

誰も、反論しない。

海風。

金の街。

黄金は、必ず争いを呼ぶ。


第41話:三つ巴海戦 玄武の結界、海は墓標になる

夜明け前。

霧。

海。

黄金の国ハウス沖合。

見張り台。

盾男

「……来ました」

リオ

「何隻?」

盾男

「……数え切れません」

水平線。

三方向。

・王国艦隊

・商業国家の私掠船団

・宗教国家の聖戦船

三つ巴。

リオ

「……最悪の組み合わせだ」

背後。

玄武、静かに立つ。

玄武

「交渉は?」

リオ

「無理」

ヴァルディス

「金の匂いで正気を失っている」

アルケイオス

「人は欲望の前で神を忘れる」

朱雀

「……料理できないやつ?」

白虎

「敵だ」


沖合。

最初の砲撃。

・・ドン。

王国艦が、宗教船に命中。

次の瞬間。

商業船団、横腹を撃つ。

宗教船、祈りと共に火矢。

地獄。

誰も、島を見ていない。

全員、「金」だけを見ている。


海が、燃える。

船が、割れる。

人が、落ちる。

悲鳴。

祈り。

罵声。

混ざって、消える。

リオ

「……止められないのか?」

玄武

「止めるのは簡単だ」

リオ

「じゃあ!」

玄武

「だが」

「入れないようにする方が確実」

リオ

「……」


玄武、一歩前へ。

海に向かって、手を広げる。

玄武

「――結界、展開」

ドォン。

空間が、歪む。

黄金の国ハウスを囲む、半球状の透明な壁。

次の瞬間。

逃げようとした小舟が・・弾かれる。

ゴン、と音。

転覆。

悲鳴。

リオ

「玄武……」

玄武

「内部への侵入は」

「生者も、死者も」

「許可されていない」

ヴァルディス

「完全遮断か」

白虎

「慈悲は?」

玄武

「与える相手がいない」


海戦は、続く。

だが、逃げ場がない。

島に近づこうとする船は、全て弾かれる。

壊れた船。

流される人。

だが・・結界は開かない。

リオ

「助けられないのか……?」

アルケイオス

「助ければ」

「次は四つ目が来る」

リオ

「……」

朱雀

「……」

朱雀、いつもより静か。


やがて。

音が、減る。

火が、消える。

霧の中。

浮かぶのは、破片だけ。

人影は、ない。

海は、何も語らない。

盾男

「……」

盾男

「生存者」

「……確認できません」

リオ

「……」

拳、握る。

リオ

「俺は」

「戦争を始めたかったわけじゃない」

ヴァルディス

「だが」

「国家と呼ばれた瞬間」

「避けられない」

アルケイオス

「黄金は」

「血を呼ぶ」

玄武

「結界を解くか?」

リオ

「……」

しばらく、黙ってから。

リオ

「……今日は、やめて」

玄武

「了解した」

結界、そのまま。


夜。

海。

静か。

あまりにも。

月明かりに、金色の破片が沈んでいく。

黄金を求めた船は、黄金に辿り着けなかった。


第42話:海の向こうの反応 怒り、諦め、そして笑顔

三日後。

各国に、同じ報告が届く。

「黄金の国ハウス沖にて、三国家艦隊、全滅。生存者、確認されず。原因:巨大結界。神獣級存在“玄武”を確認」

紙は、どこでも同じ。

だが、反応は、まったく違った。


怒り狂う国家

軍事国家。

王城。

報告書が、床に叩きつけられる。

「ふざけるな!!」

将軍

「結界……」

「神だと!?」

「神が国を守るだと!?」

玉座の横。

剣が、引き抜かれる。

「なら奪う」

「神ごとだ」

将軍

「……再遠征を?」

「当然だ」

「今度は」

「神を殺す準備をしていけ」

沈黙。

将軍

「……了解」

怒りは、理性を食い潰す。

この国は、まだ何も学んでいない。


諦める国家

商業国家。

会議室。

重い沈黙。

商人長

「……損失」

帳簿が、閉じられる。

商人

「金貨……」

商人長

「無理だ」

「近づけない国に」

「商売は成立しない」

別の商人

「では……」

商人長

「撤退」

全員、安堵の息。

商人長

「黄金は魅力だが」

「命より安くはない」

「噂は……」

少し、笑って。

「酒の席で語る程度にしておけ」

この国は、生き残る。


懐柔を選ぶ国家

宗教国家。

静かな聖堂。

報告を聞いた司教、目を閉じる。

司教

「……結界の内に」

「神と悪魔と神獣」

信徒

「侵略は?」

司教

「愚策」

ゆっくりと、微笑む。

司教

「ならば」

「友となろう」

信徒

「……友、ですか?」

司教

「神は、信仰に弱い。黄金は慈善に使える。そして孤立した国は、承認を欲する」

信徒

「使者を?」

司教

「贈り物を携えて、武器ではなく、言葉で行け」

この国は、剣を持たずに近づく。


一方。

黄金の国ハウス。

朝。

リオ、報告書を読む。

盾男

「各国」

「反応、三通りです」

リオ

「だろうね……」

ヴァルディス

「面白い」

アルケイオス

「人の本性だ」

玄武

「次は」

「戦争ではない」

朱雀

「お客さん?」

リオ

「外交だよ……」

遠く。

水平線。

戦艦は、いない。

だが。

旗のない船が、一隻だけ向かってくる。

白虎

「敵意は?」

玄武

「……ない」

リオ

「一番怖いやつだ」

黄金の国は、今・・剣ではなく、言葉で試される。


第43話:贈り物が重すぎる 村長、外交デビュー

朝。

港。

霧の中から、一隻の船。

旗、なし。

武装、なし。

代わりに・・鐘の音。

チリン、と静か。

盾男

「……使節船です」

リオ

「静かすぎて怖い」

ヴァルディス

「礼儀はあるな」

アルケイオス

「信仰国家の作法だ」

朱雀

「料理しなくていい?」

リオ

「今日はだめ!」


船、接岸。

甲板に立つのは三人。

・白装束の使節長

・記録係

・荷運び(明らかに腰が限界)

使節長

「黄金の国ハウスの代表に」

「謁見を願います」

リオ

「代表……」

全員の視線が、一斉にリオへ。

リオ

「……はい、村長です」

使節長

「では」

深く、礼。

使節長

「本日は、友好の証をお持ちしました」

合図。

荷運び、

震える手で箱を落とす。

・・ドォン。

地面、

陥没。

リオ

「重っ!?」

朱雀

「料理じゃないね」

白虎

「武器でもない」

玄武

「……概念だ」

リオ

「嫌な言い方やめて!」


箱、開封。

中。

金色の書。

厚い。

重い。

表紙に、宗教紋章。

使節長

「これは我が国の聖典写本・原本級」

リオ

「原本級!?」

ヴァルディス

「重いわけだ」

アルケイオス

「信仰の塊だな」


使節長

「この書は金と神の関係、富の正しい使い道、国家と信仰の在り方が記されています」

リオ

「……」

嫌な予感。

使節長

「これを黄金の国に贈呈いたします」

沈黙。

朱雀

「読める?」

白虎

「燃やす?」

リオ

「どっちもだめ!」


リオ、深呼吸。

リオ

「……ありがとう、ございます」

噛まずに言えた。

使節長、微笑む。

使節長

「そしてもう一つ」

荷運び、二つ目の箱。

更に、重い。

・・ドン。

リオ

「まだあるの!?」

箱の中。

金貨。

だが。

刻印が違う。

十字。

祈りの文。

リオ

「……これは?」

使節長

「献金用金貨です」

リオ

「用途が限定的すぎる!」

ヴァルディス

「宗教国家らしい」

アルケイオス

「純粋だ」

リオ

「純粋すぎて扱えない!」


使節長

「我が国は、侵略を望みません。交易も武力もただ」

一歩、前へ。

使節長

「承認をこの国を正式な国家として」

リオ

「……」

頭が、痛い。

リオ

「ちょっと待って、俺、村長で国とかやる気なくて」

使節長

「存じています」

即答。

リオ

「!?」

使節長

「ですが国は、意思とは無関係に成立するものです」

ヴァルディス

「正論」

玄武

「重い」

朱雀

「ご飯食べよ?」

リオ

「現実見て!」


リオ、額を押さえる。

リオ

「……友好はありがたい。でも信仰の押し付けは困る」

使節長、驚いたように目を見開く。

そして。

・・笑う。

使節長

「素晴らしい」

リオ

「え?」

使節長

「神を前にそう言える人間こそ信用できます」

アルケイオス

「ほう」

ヴァルディス

「面白いな」


使節長

「では本日の外交は、成功ということで」

深く、礼。

使節長

「また使者を送ります」

リオ

「頻度下げて!」

船、離岸。

港に残るのは・・

・重すぎる聖典

・用途が限られすぎる金貨

・胃の痛い村長

リオ

「……外交って」

「こんなに疲れるの?」

盾男

「戦争より、静かに、削られます」

リオ

「やめてくれ……」

アルケイオス

「だが、第一歩だ」

ヴァルディス

「もう逃げられん」

朱雀

「お祝い料理作る?」

リオ

「やけ食いはしない!」

黄金の国ハウス。

ついに“言葉の戦場”へ足を踏み入れた。


第44話:聖典の扱いで大変に揉めた


問題の聖典。

置き場所:村長の家(仮)

理由:重すぎて動かせない

テーブルがきしむ。

床が鳴く。

リオ

「まずさ」

「これ」

「どうする?」

沈黙。

ヴァルディス

「読む」

即答。

朱雀

「飾る」

軽い。

白虎

「売る」

現実的。

玄武

「封印」

重い。

アルケイオス

「神に返す」

一番面倒。

リオ

「全員却下!」


ヴァルディス

「なぜだ」

リオ

「読む → 国家になる」

「飾る → 宗教国家になる」

「売る → 世界敵対」

「封印 → 神が来る」

「返す → 神が来る」

アルケイオス

「論理的だな」

リオ

「喜ぶな!」


盾男

「では中身を確認するだけでも」

リオ

「最小限ね」

ページを一枚。

・・ズン。

空気が重くなる。

文字、金。

祈り、長。

注釈、地獄。

朱雀

「……これ」

「何ページ?」

リオ

「……四千」

白虎

「武器だな」

リオ

「精神攻撃やめろ!」


ヴァルディス

「信仰とは」

「力だ」

アルケイオス

「富と結びつけば」

「国家を動かす」

玄武

「放置は危険」

リオ

「わかってる!!だから!くだらなく使う!」

全員

「?」


リオ、立ち上がる。

リオ

「聖典ってさ」

「ありがたがられるから強いんだろ?」

アルケイオス

「概ね」

リオ

「なら」

「ありがたがられない使い方をする」

朱雀

「料理?」

リオ

「近いけど違う!」

白虎

「椅子?」

リオ

「惜しい!」

ヴァルディス

「……重石か」

リオ

「それだ!!!」


沈黙。

玄武

「……重石?」

リオ

「そう」

「重すぎる本は」

「重石に最適」

朱雀

「発酵?」

リオ

「漬物!」

アルケイオス

「……」

ヴァルディス

「……」

盾男

「……」

全員

「…………」

リオ

「聖なる漬物だよ」

リオ

「金属の重石より、ありがたみあるだろ?」

朱雀

「白菜いけるね」

白虎

「魚も」

玄武

「密閉性は高い」

ヴァルディス

「……」

ヴァルディス

「神が泣くぞ」

リオ

「知らん!押し付けたのは、そっち!」


結果。

聖典:黄金の重石(仮)

用途

・漬物

・干し肉の圧縮

・紙が飛ばないように置く

・風が強い日の押さえ

扱い方ルール

・祈らない

・読まない

・ありがたがらない

・うっかり拝まない

玄武

「徹底している」

アルケイオス

「これは」

「信仰破壊兵器だな」

リオ

「平和利用だ!」


翌日。村人

「村長」

「白菜」

「すごく美味いです」

リオ

「だろ?」

村人

「名前どうします?」

リオ

「……」

考える。

リオ

「神漬け」

朱雀

「いいね!」

ヴァルディス

「最悪だ」

アルケイオス

「だがこれで、聖典は武器にならん」

リオ

「そう。この国では、神より飯」

全員、黙って頷いた。

黄金の国ハウス。

世界で唯一、聖典を漬物に使う国家が誕生した瞬間である。


第45話村長、全力で知らん顔する

朝。

平和。

市場の匂い。

焼き魚。

神漬け。

完璧。

……だった。

空が、

割れる。

・・ピシ。

・・バキ。

朱雀

「……来たね」

白虎

「来たな」

玄武

「予定より早い」

アルケイオス

「“様子見”と言ったはずだが」

リオ

「知らん」

即答。

リオ

「俺は今日・・・何も知らない村長です」


来訪者。

神。

名前:

???(名乗らないタイプ)

威圧。

光。

重力。

BGM付き。

「・・聖典は」

リオ

「パン美味いな」

「……」

朱雀

「村長?」

リオ

「聞こえない」

盾男

「村長、目が合ってます」

リオ

「視力が悪い」


「この地に我が聖なる・・」

リオ

「今日の特売♪魚2匹で1ホーム」

「……」

神、

一歩近づく。

大地が震える。

「聖典を」

リオ

「天気いいですね」

「……」

白虎

「強い」

アルケイオス

「覚悟が決まっている」

玄武

「無知を装うとは」

ヴァルディス

「いや」

「本気で逃げている」


「村長」

名指し。

リオ

「ちがいます」

「……」

リオ

「人違いです」

「額に“村長”と書いてあるが」

リオ

「落書きです」

朱雀

「誰が書いたの?」

リオ

「神」

全員

「お前か!!」


沈黙。

「……」

「聖典はどこだ」

リオ

「知りません」

「金の装丁」

リオ

「知らん」

「四千頁」

リオ

「読んでない」

「白菜の匂い」

リオ

「……」

一瞬。

本当に、一瞬。

リオ

「風評被害です」

「……」


神、視線をずらす。

そこに。

樽。

重し。

聖典(現役)

白菜、漬かっている。

「…………」

世界が、止まる。

朱雀

「よく漬かってます」

白虎

「歯ごたえ良し」

盾男

「盾より硬いです」

玄武

「保存性は高い」

アルケイオス

「……」

アルケイオス

「見なかった事にしよう」

「…………」

リオ

「?」

リオ

「何か?」

「……」

「いや」

「何も見ていない」

リオ

「ですよね?」

「……」

神、

ゆっくり空へ戻る。

消える前。

小さく一言。

「……美味いのか」

リオ

「美味いです」

「……そうか」

消失。


沈黙。

数秒。

朱雀

「勝ったね」

白虎

「完全勝利」

玄武

「神格の敗北」

ヴァルディス

「……」

ヴァルディス

「歴史に残るぞ」

リオ

「残すな」


夜。

リオ、漬物を食べる。

ポリ。ポリ。

リオ

「……」

リオ

「知らん顔って最強だな」

アルケイオス

「神ですら、対処不能だ」

朱雀

「称号つくよ」

リオ

「やめろ!」

翌朝。

掲示板。

《神対応実績:なし》

村長、今日も全力で何も知らない。


第46話:大宇宙神レインボー、神漬を土産に持って帰る

朝。

市場。

平和。

昨日まで、神と白菜で戦争していたとは思えない。

リオ

「……静かだな」

朱雀

「嵐の前だよ」

白虎

「もしくは二度寝」

玄武

「油断は禁物」

アルケイオス

「来るな」

リオ

「来るな」


・・空、七色に歪む。

虹。

直径、村一個分。

登場。

大宇宙神・レインボー

BGM:やたら壮大。でもちょっと陽気。

レインボー

「やあ」

全員

「来た!!」

リオ

「知らん顔!」

レインボー

「いや今日は普通に来た」

リオ

「……?」

レインボー

「客として」

朱雀

「え?」

白虎

「?」

玄武

「?」

アルケイオス

「……え?」


レインボー、普通に歩く。

屋台を見る。

レインボー

「お、魚、いい焼き色」

店主

「1ホームです」

レインボー

「はい」

・・銀貨。

店主

「毎度!」

リオ

「払った……」

朱雀

「払ったね……」

白虎

「神が……」


レインボー

「さて」

レインボー

「本命は」

視線。

あの樽。

神漬(白菜)

レインボー

「……」

深呼吸。

レインボー

「いい香りだ」

リオ

「知らん」

レインボー

「いや知ってるだろ」

リオ

「知らん」

レインボー

「……」

レインボー

「一樽ください」

リオ

「!?」

朱雀

「売るの!?」

玄武

「神に?」

白虎

「正気か」

盾男

「値段は?」

リオ

「……」

リオ

「5ホーム」

レインボー

「安い!」

・・金貨。

ドン。

リオ

「出すな!!」

レインボー

「お釣りはいらない」

全員

「神!!」


レインボー、神漬を抱える。

めちゃくちゃ嬉しそう。

レインボー

「実はね」

「神界で流行ってるんだ」

朱雀

「何が」

レインボー

「“雑な奇跡飯”」

白虎

「最悪のネーミング」

アルケイオス

「……まさか」

レインボー

「君の漬物」

リオ

「やめろ」

レインボー

「今度は」

「きゅうりも頼む」

リオ

「帰れ!」


帰り際。

レインボー

「そうそう、聖典の件だけど」

全員

「……!」

レインボー

「正式に食品利用可にしておいた」

リオ

「おい!!」

レインボー

「神も食う」

「問題ない」

玄武

「歴史が壊れた」

白虎

「もう戻らない」

朱雀

「漬け放題だね」


空へ戻るレインボー。

手には神漬。

レインボー

「また来るよ」

リオ

「来るな!」

レインボー

「来週」

リオ

「常連か!!」

虹、消失。


夜。

掲示板。

《本日の来客》

・大宇宙神レインボー

・目的:神漬

・支払い:金貨

・滞在時間:30分

リオ

「……」

リオ

「俺・・・島流しだったよな?」

アルケイオス

「だった」

朱雀

「今は?」

リオ

「神の行きつけ」

白虎

「諦めろ」

玄武

「これが文明」


第47話:カルタンの使者、聖典にクレーム

朝。

港。

穏やかな海。

村長・リオは、漬物樽の前で昨日の残りの神漬を試食中。

ポリポリ。

リオ

「……今日も静かだな」

盾男

「……違います」

遠く。

白装束の船影。

朱雀

「また使者?」

白虎

「……多すぎる」

玄武

「油断は禁物」

アルケイオス

「いや、これは外交地獄の始まり」


船、接岸。

三人の使者が降り立つ。

・使節長(高慢)

・書記(緊張)

・荷運び(小柄)

使節長、開口一番。

使節長

「黄金の国ハウス!聖典の扱いについて説明を求む!」

リオ

「……知らん」

盾男

「村長……本当に言うの?」

リオ

「言う!俺は今日も全力で知らん顔だ!」


使節長、怒りで顔面蒼白。

使節長

「神の聖なる書物を漬物に!?国家間の礼儀を無視するとは!」

リオ

「知らん」

白虎

「圧倒的無視」

玄武

「防御力高いな」


使節長、書類を取り出す。

使節長

「正式抗議書!国家レベルの公式文書!」

リオ

「知らん」

朱雀

「強い」

アルケイオス

「本当に知らん顔」


その瞬間。

空が七色に光る。

・・虹。

大宇宙神・レインボー登場。

レインボー

「やあ」

使節長

「神!?あなたは……!」

リオ

「知ってる」

盾男

「全力で知らん顔」

レインボー、静かに漬物樽に手をかける。

レインボー

「この“神漬”か?」

リオ

「はい」

レインボー

「問題ない」

使節長、震える。

レインボー

「美味い」

使節長

「……!?」

レインボー、漬物を一口。

レインボー

「……完全に神に勝った」

リオ

「……知らん」


沈黙。

使節長、頭を下げる。

使節長

「……我々の判断が間違っておりました。この村長および、大宇宙神レインボーの御前では、聖典の扱いに口を出すべきではありませんでした」

荷運び、床に額をつける。

書記、震えながら涙目。

リオ

「よし、終わったな」

盾男

「静かすぎる勝利」

朱雀

「神の力+漬物か……」

白虎

「戦闘力0で降伏とか」

玄武

「平和的解決の極致」

アルケイオス

「歴史に残る村長の外交」

レインボー

「また来週、神漬を取りにくる」

リオ

「常連化はやめろ!」


夜。

港に漂う香りは、神漬。

黄金の国ハウス。

国家間交渉の結論:聖典=漬物。

文句を言う者は土下座。

神が味見。

全員平和。


第48話:神漬専門店爆誕

朝。

港。

市場。

神漬樽がずらり。

朱雀

「すごいことになってる」

白虎

「もう村じゃない」

玄武

「国家レベル」

アルケイオス

「文明後退もここまでくると笑える」

リオ

「いや、待って」


港の一角。

神漬専門店

堂々オープン。

看板:「神漬 大宇宙神公認」

店前には行列。

レインボー

「週末はここで買うと決めてる」

盾男

「客、神まで来てるぞ」

朱雀

「普通に常連」

リオ

「いやいやいやいや!俺は村長!!村長のまま!!」


しかし。

港に集まる客。

国家レベルの使者たち。

商人国家、宗教国家、王国、

全員、黄金や金貨を握り締めて行列。

客A

「村長、買いたい!」

客B

「村長、売ってくれ!」

リオ

「いや、村長だから無理!」


しかし、ある瞬間。

書記(カルタンの使者)が、レインボーと共にやってくる。

書記

「正式に、国家として承認します」

リオ

「え?」

レインボー

「村長じゃ足りない。国王として運営してください」

リオ

「いやいやいやいやいやいや!!!俺、いや!!!!」


朱雀

「すでに王冠置いてあるよ?」

玄武

「決定事項」

白虎

「振り回されるだけ」

アルケイオス

「まあ……国王でも村長でも、どうでもいい気がする」


仕方なく。

リオ、王冠をかぶる。

鏡を見て、ため息。

リオ

「……普通に国王になってる」

盾男

「そういう運命」


市場。

神漬は飛ぶように売れる。

レインボー

「この神漬は完璧だ」

リオ

「俺の意思は無視か」

朱雀

「王としての業務開始」

リオ

「いやいやいや、漬物売るだけで十分だろ!!」


夜。

リオ、王座に座る。

樽の神漬を前に、全力で知らん顔。

リオ

「……国王って、面倒すぎる」

玄武

「でも君の漬物は、国家レベル」

白虎

「王権も漬物も、どっちも重い」

アルケイオス

「歴史に残る国王の誕生だな」

リオ

「残さないでくれ!!」

レインボー

「また来週、土産に神漬持ってくる」

リオ

「……国王、辞めるチャンスないな」


こうして黄金の国ハウスは、神漬専門店付きの国家となった。

村長は消え、国王・リオが誕生。

もちろん本人は完全に嫌がっている。


第49話:ヴァルディスとアスラ、旅行から帰還

朝。

港。

リオ、国王椅子に座る。

神漬樽を眺めつつ、平和を享受……のはずだった。

――ゴォォォ。

遠くから船の音。

朱雀

「……帰ってきた?」

白虎

「奴らだな」

玄武

「……覚悟は必要」

アルケイオス

「村長時代の平和とは違うぞ」

リオ

「嫌な予感しかしない」


港に停泊したのは、ヴァルディスとアスラの船。

甲板で二人が手を振る。

ヴァルディス

「国王ー!」

アスラ

「ただいまー!」

リオ

「……無視!」

朱雀

「もう諦めてる」

白虎

「……しかし」

玄武

「持ってるものが、かなりやばそうだ」


二人、船から降りる。

手には大きな箱。

アスラ

「お土産です!」

ヴァルディス

「世界各地で拾ってきました!」

リオ

「箱!?」

盾男

「重量オーバーっぽい」

朱雀

「嫌な予感しかしない」

箱、開封。

中身:

・自動で歩き回る小型砲台

・燃えるキャンドル(爆発注意)

・暴走する風船型精霊

・謎の動く宝石(光で周囲を眩ませる)

リオ

「やばい!!」

白虎

「……無理だ」

玄武

「結界が必要」

アルケイオス

「村長の頃より被害規模デカイな」


アスラ

「触らなければ大丈夫です!」

ヴァルディス

「多分」

リオ

「多分じゃねぇ!」

盾男

「村長の頃の安全神話は崩壊」


箱の中から、風船精霊が飛び出す。

ピヨピヨ。

朱雀

「かわいいけど危険」

精霊

「遊ぼう!」

リオ

「遊ぶな!!」

ヴァルディス

「ちょっと待って」

ヴァルディス、砲台を動かす。

・・ドカン!

近くの樽が吹っ飛ぶ。

リオ

「神漬!!」

アスラ

「わー、すごい!」

リオ

「すごくない!止めろ!」


結局。

リオ、王冠を押さえつつ、深呼吸。

リオ

「……無理。今日も平和は終わった」

朱雀

「まあ、毎日がこんな感じだね」

白虎

「静かな日は来るのか?」

玄武

「漬物と神と精霊と砲台と」

アルケイオス

「…組み合わせがひどい」

盾男

「国王業は重い」

リオ

「漬物だけでよかったのに!!」


夜。

港の明かり。

神漬の香りの向こう、箱と精霊が跳ね回る音。

リオ

「……国王業、嫌い」

レインボー(空から)

「持ってきたね、神漬のお土産と一緒に!」

リオ

「来るな!!」


こうして、黄金の国ハウスに新しいトラブルが持ち込まれた瞬間である。


第50話:遊びに行っていた龍が友達を連れて帰ってくる

朝。

港。

神漬の香りと漬物樽の山がいつもどおり。

リオ、王冠を押さえ、深呼吸。

リオ

「……今日こそ平和か」

盾男

「……いや、違う」

朱雀

「視界が赤い」

白虎

「龍の影」

玄武

「やばい」

アルケイオス

「来るな」


遠く、空。

ドゴォォォン。

七色の光の後、巨大な影が地平線を越える。

リオ

「え!? また虹か?」

違う。

それは、龍。

顔が笑ってる。

翼で港の水面を叩き、波が屋台まで押し寄せる。

「ただいまー!」

リオ

「またお前か!!!!」

朱雀

「顔が楽しそうで怖い」

白虎

「嫌な予感しかしない」

玄武

「……暴力」

アルケイオス

「楽しそうな暴力だな」


龍、船着き場に着地。

背後からぞろぞろ出てくる影。

凶悪な友達たち:

・火を吐く小型ドラゴン×3

・跳ね回る巨大ゴーレム×2

・目が光る悪戯妖精軍団×多数

リオ

「なんで連れて帰ってきてるの!!!?」

ヴァルディス&アスラの旅行トラブルとは比べ物にならない規模。


港、瞬時にパニック。

住民、逃げ惑う。

商人

「金貨!!財布!!」

農民

「白菜!!神漬!!」

朱雀

「漬物だけは守れ」

白虎

「戦闘準備!」

玄武

「結界、急げ」

アルケイオス

「……もう国家レベルで無理」

盾男

「国王、指示を」

リオ

「指示!?漬物と王冠だけ守る!」


龍、笑顔。

「見て見てー!新しい友達だよー!」

小型ドラゴンが屋台を吹き飛ばす。

ゴーレムが樽を蹴る。

妖精軍団が屋根の上で踊る。

リオ

「漬物……漬物が……!」

朱雀

「国が壊れる前に神呼ぶ?」

リオ

「いや、呼ぶ!!」


空に虹が出る。

・・レインボー、登場。

レインボー

「おや、今日は賑やかだね」

「レインボー!見て!友達!」

レインボー

「……また増えてる」

リオ

「止めてくれ!!」

レインボー、翼を広げ、光を放つ。

小型ドラゴン、妖精軍団、ゴーレム。

みるみる力を抑えられ、浮遊状態で静止。

レインボー

「平和利用の範囲内に制御しました」

住民

「歓声……?」

朱雀

「歓声じゃない。安心だ」

リオ

「……国王やっててよかった」

龍、少し拗ねてる。

「えー?俺たち遊びに来ただけなのにー」

リオ

「いやいやいやいや!!!漬物壊すな!!!!」


夜。

黄金の国ハウス。

港。

神漬樽は無事。

住民、やや混乱。

国王リオ、疲弊。

リオ

「もう……王冠重すぎる」

レインボー

「また来週、龍たちと遊びに来る」

リオ

「常連化、やめろ!!!!」

朱雀

「これも平和の一種」

白虎

「漬物国家、今日も無事」

玄武

「しかし、次は何が来る?」

アルケイオス

「知らん」

盾男

「国王、深呼吸」

リオ

「漬物しか守れない国王……!」


第51話:軍事国家ナチャイ

朝。

ナチャイ軍本部。

巨大な戦略地図に、金色で輝く島が描かれる。

将軍A

「黄金の国ハウスか…神漬が国民の生命線、漬物を守り切れば国家崩壊の恐れ」

将軍B

「しかも、龍が遊びに来るたびパニックが発生…守備力計算不能」

将軍C

「さらに神界から大宇宙神レインボーが守っているらしい」

参謀

「つまり、侵略は……ほぼ無理です」

将軍A

「しかし、国家の名誉のため、攻略案を練らねばならぬ!」


作戦会議、開始。

白板に書かれるキーワード:

•「神漬制圧」

•「龍の監視」

•「精霊の封印」

•「レインボーへの対応」

•「国王リオの排除」

参謀

「……国王はどうする?」

将軍B

「漬物王…いや、村長時代からの英雄らしい。漬物しか守れないが、指示は絶対」

将軍A

「漬物外交を制すれば、国を屈服させられる!」


ナチャイ軍、

本気の計算を始める。

・砲撃計画

・上陸ルート

・偵察隊投入

・精霊監視用魔法陣

・神界連絡手段の調査

参謀

「しかし…結界と大宇宙神の存在が障害すぎる」

将軍C

「漬物が防衛の中心とか、笑うしかない」

将軍A

「笑うな。これは真剣だ」


将軍会議、さらにヒートアップ。

将軍B

「情報によれば、龍は友達連れて島に戻る」

将軍C

「小型ドラゴン、ゴーレム、精霊……無理ゲーだ」

将軍A

「いや、勝つ方法はある!」

参謀

「……どんな方法ですか?」

将軍A

「漬物を奪う」

将軍B・C・参謀

「……!!?」

将軍A

「神漬樽を奪えば国王リオは動かざるを得ない」

参謀

「しかし、レインボーも来る」

将軍A

「漬物外交を駆使する!俺たちも神漬に感動したフリをするんだ!」

将軍C

「……意味不明すぎる」


最後に、軍事国家ナチャイ、作戦名を決定。

作戦名:漬物攻略作戦“ゴールデンピクルス”

全員

「……はい?」

将軍A

「名前が最重要だ。世界に轟かせる」

参謀

「いや、それより現実的に防衛網どうするんですか」

将軍B

「……知らん」


夜。

ナチャイ軍本部、緊張感MAX。

作戦会議は続く。

地図にはハウスの神漬屋台と、国王リオの王座、龍、精霊、ゴーレムの位置が詳細に描かれている。

将軍A

「……明日から偵察隊を送り込む」

将軍B

「……全滅必至」

参謀

「……それでも行くのか」

将軍A

「国家の誇りのためだ!」


遠く、黄金の国ハウス。

リオ、王冠を押さえ、神漬樽を抱きしめる。

リオ

「……いやな予感しかしない」

朱雀

「来週あたり戦争フラグかな」

白虎

「漬物だけは守れ」

玄武

「結界フル稼働」

アルケイオス

「国家間戦略会議を台無しにしてるな」

盾男

「国王、深呼吸」

リオ

「漬物王国の国王……やっぱ重い……!」


第52話:神漬、奪取される。結界発動不能、黄金の国ハウス大ピンチ

夜明け前。

霧。

港。

静かすぎる。

白虎

「……静かだな」

玄武

「嫌な静けさだ」

朱雀

「匂いが……ない」

リオ

「え?」

リオ、鼻をひく。

リオ

「……神漬の匂いがしない」

全員

「!!」


神漬専門店。

扉、開いている。

樽、ない。

床に残るのは・・縄と濡れた木屑。

盾男

「奪われました」

アルケイオス

「やられたな」

リオ

「……待て」

リオ

「結界は?」

玄武、目を閉じる。

玄武

「……発動しない」

朱雀

「え?」

白虎

「どういうことだ」

玄武

「結界核は・・」

全員

「……神漬」

リオ

「……あ」


沖。

霧の向こう。

小船。

ナチャイ偵察隊。

船の中央に・・神漬の樽。

隊長

「成功だ」

隊員

「本当に結界が止まった!」

隊長

「噂通りだな」

「この国は漬物で回っている」


港。

警鐘。

ゴォォォン。

住民、騒然。

商人

「結界が……!」

農民

「龍は!?」

朱雀

「来てない!」

白虎

「レインボーも不在!」

アルケイオス

「最悪のタイミングだ」


リオ、王冠を握る。

リオ

「……」

リオ

「国王として」

「最悪だな」

盾男

「今こそ指示を」

リオ

「……」

リオ

「取り返す」

全員

「!?」

朱雀

「船だよ?」

白虎

「軍事国家の精鋭だぞ?」

玄武

「結界なしで?」

アルケイオス

「無謀だ」

リオ

「……」

リオ

「でも神漬がないと、この国、ただの島だ」


その瞬間。

沖の小船から、光。

魔導信号弾。

ナチャイ本国へ。

隊長

「結界解除、確認」

「攻略可能」


王都・ナチャイ。

司令室。

将軍A

「……来たな」

参謀

「成功です」

将軍A

「全軍、動け」

「黄金の国ハウス、侵攻開始」


港。

黒い船影。

遠く、戦艦。

住民、悲鳴。

子供

「結界が……ない……」

リオ

「……」

リオ、深呼吸。

リオ

「よし」

王冠を外す。

リオ

「一回」

「村長に戻る」

朱雀

「?」

白虎

「?」

リオ

「村長は無茶をする役だ」

盾男

「……相変わらずだ」

アルケイオス

「面白くなってきた」

玄武

「結界はない」

朱雀

「神もいない」

白虎

「でも」

全員、リオを見る。

白虎

「漬物は取り返す」


霧の向こう。

小船、揺れる。

神漬の樽、きしむ。

誰も知らない。

その樽の中で、白菜が・・静かに光り始めていることを。


第53話(前編):ヴァルディス&アスラ、攻撃隊に任命

変な兵器しかないけど、ナチャイ海軍とガチバトル

港。

結界、なし。

神漬、奪取されたまま。

沖には・・

ナチャイ海軍の戦艦群。

黒い帆。

整列。

ガチのやつ。

住民

「……終わった」

商人

「金貨……」

子供

「龍は……?」

リオ

「来てない」

静まり返る港。


リオ、深呼吸。

リオ

「……よし」

リオ

「攻撃隊、編成」

全員

「!!」

朱雀

「誰が行くの?」

リオ

「……」

リオ

「一番、失敗しても大丈夫な二人」

同時に。

ヴァルディス

「俺か」

アスラ

「俺だな!」

白虎

「適任」

玄武

「問題ない」

盾男

「国王、心が強い」

リオ

「信頼だ」

二人

「やった!」


装備確認。

並べられる“兵器”。

・自動で歩き回る小型砲台

・燃えるキャンドル(爆発注意)

・暴走する風船型精霊

・謎の動く宝石(光で周囲を眩ませる)

沈黙。

朱雀

「……勝てる?」

リオ

「知らん」

ヴァルディス

「面白そうだ」

アスラ

「全部同時に使えばいいんですね!」

リオ

「段階って言葉を覚えろ」


小舟。

二人、出航。

港から離れる。

ナチャイ海軍、気づく。

敵艦・見張り

「小舟だ!」

「偵察か?」

「いや……二人だけ?」

司令

「舐めるな。警戒せよ」


戦闘開始。

アスラ

「まずこれ!」

・・小型砲台、投下。

着水。

次の瞬間。

カシャ。

自立起動。

砲台

「目標確認」

・・ドン!

ナチャイ艦、側面に穴。

司令

「何だ今の!?」

砲台、歩き出す。

水上を。

司令

「……歩いてる?」

「歩いてます!!」


ヴァルディス

「次、風船」

暴走する風船型精霊、解放。

ぷくー。

一気に膨張。

精霊

「遊ぼう!!」

・・バン!

戦艦の甲板に着地。

跳ねる。

転がる。

「うわああ!!」

船、揺れる。

司令

「落ち着け!!」

精霊

「もっと遊ぼう!!」

司令

「誰か黙らせろ!!」


アスラ

「キャンドル、行きます!」

ヴァルディス

「待て待て待て!」

・・遅い。

燃えるキャンドル、点火。

ポイ。

着弾。

一瞬の静寂。

・・ドカン!!

爆発。

帆が吹き飛ぶ。

司令

「……」

司令

「これ、戦争か?」

「わかりません!!」


最後。

ヴァルディス

「宝石、今だ」

謎の動く宝石、投擲。

宝石、空中で回転。

・・ピカァァァ!!

眩光。

海一帯、白。

「目があああ!!」

司令

「前が見えん!!」

艦隊、隊列崩壊。

衝突。

座礁。

大混乱。


港。

望遠鏡。

朱雀

「……勝ってない?」

白虎

「勝ってるな」

玄武

「結界なしで?」

盾男

「兵器が反則」

リオ

「……」

リオ

「あいつら、やりすぎだ」


海上。

ヴァルディス

「楽しいな」

アスラ

「楽しいですね!」

背後。

ナチャイ旗艦。

まだ、沈んでいない。

司令

「……反撃準備」

巨大魔導砲、展開。

光、収束。

司令

「撃て」

ヴァルディス

「……」

アスラ

「……」

二人、同時に。

「「やばくない?」」

魔導砲、発射準備完了。


第53話(後編):家、吹き飛ぶ。ヴァルディスとアスラ、物理でキレる

海上。

――ズドォォォン!!!

巨大な魔導砲、発射。

白い光が一直線に走る。

ヴァルディス

「避けろ!!」

アスラ

「了解!!」

小舟、紙一重で回避。

次の瞬間。

・・・・・

ドガァァァァァン!!!

黄金の国ハウス。

王城兼住宅兼神漬倉庫(仮)が、

吹き飛ぶ。

瓦礫。

煙。

沈黙。


港。

朱雀

「……」

白虎

「……」

玄武

「……家が」

盾男

「……家が」

アルケイオス

「……ああ」

リオ

「……」

リオ

「…………」

リオ

「俺の」

リオ

「家ぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


海上。

爆煙の向こう。

それを見た二人。

ヴァルディス

「……」

アスラ

「……」

沈黙、2秒。

ヴァルディス

「……やばくないか」

アスラ

「やばいですね」

ヴァルディス

「国王の家だよな」

アスラ

「国王の家ですね」

ヴァルディス

「……」

アスラ

「……」

二人、同時に。

「「顔が立たねぇ!!」」


ヴァルディス

「行くぞ」

アスラ

「はい」

方向転換。

小舟、敵旗艦へ全速。

敵艦。

司令

「小舟が突っ込んでくる!?」

「止まりません!!」

・・ドン!!

小舟、艦側面に激突。

次の瞬間。

人が飛んだ。

ヴァルディス、着地。

甲板、へこむ。

アスラ、続く。

「の、乗ってきた!?」

司令

「迎撃しろ!!」


物理戦、開始。

ヴァルディス、拳。

・・ドゴン!!

兵、吹き飛ぶ。

アスラ、蹴り。

・・バキィ!!

砲台、壊れる。

アスラ

「無害衝撃波、戦闘仕様・改!」

・・ドン!

兵、全員後退。

司令

「な、何者だ!?」

ヴァルディス

「家を壊された側だ」

司令

「……」


別艦。

「敵が跳んでくる!?」

ヴァルディス、海を蹴って跳躍。

着艦。

甲板、粉砕。

アスラ

「次はこっちです!」

二人、艦から艦へ。

完全に人外。


港。

望遠鏡。

朱雀

「……完全にキレてる」

白虎

「正しい怒りだ」

玄武

「結界より怖い」

盾男

「家を壊すと、こうなる」

リオ

「……」

リオ

「……」

リオ

「俺は怒っていいよな?」

アルケイオス

「いい」


海上。

司令室。

司令

「……撤退だ」

「え!?」

司令

「家を壊したのが悪い」

「それ理由ですか!?」

司令

「理由だ!!」


最後。

旗艦。

ヴァルディス、司令を壁に埋める。

アスラ

「命までは取りません」

ヴァルディス

「顔が立ったな」

アスラ

「立ちました」

二人、満足。


夕方。

海軍、撤退。

沈没艦、多数。

黄金の国ハウス。

家、ない。

リオ

「……」

瓦礫の前。

ヴァルディス&アスラ、土下座。

二人

「すみませんでした!!」

リオ

「……」

リオ

「……」

リオ

「家は」

リオ

「また作る」

二人

「!!」

リオ

「でも」

リオ

「次壊したら、漬物抜き」

二人

「それだけはやめてください!!」

朱雀

「平和だね」

白虎

「基準が変」

玄武

「だが守られた」

アルケイオス

「国は残った」

瓦礫の向こう。

夕日。

家は壊れたが、黄金の国ハウスは、まだ立っている。


第54話:国王、調子に乗る王城(※加減を知らない)

瓦礫。

平地。

かつて家だった場所。

リオ、腕を組む。

リオ

「……よし」

ヴァルディス

「よし、じゃない」

アスラ

「嫌な予感しかしません」

朱雀

「城、建てるんだよね?」

リオ

「うん」

白虎

「普通の?」

リオ

「普通の城は、さっき壊れた」

玄武

「理屈が怖い」

アルケイオス

「……設計図は?」

リオ

「ある」

・・ドン

地面に叩きつけられる巻物。

広がる。

長い。

異常に長い。

端が見えない。

盾男

「……これ、横に何ページある?」

リオ

「縦」

全員

「縦!?」

リオ

「今回はな」

リオ

「攻撃されてもいい城にする」

ヴァルディス

「嫌な言い方だな」

アスラ

「防御強化、ですね?」

リオ

「違う」

リオ

「壊されても困らない城」

沈黙。

朱雀

「……城の定義とは」


リオ、魔力解放。

――ゴゴゴゴゴ……

地面が、沈む。

白虎

「下に行った!?」

玄武

「いや、違う……」

地面の下から。

別の地面がせり上がる。

石。

金。

黒曜石。

水晶。

意味不明な素材。

アスラ

「素材、どこから?」

リオ

「余ってた」

ヴァルディス

「余るな」


第一層、完成。

王城・基礎部

・厚さ:城

・硬さ:国

・意味:不明

第二層、出現。

塔。

塔。

塔。

やたら多い塔。

朱雀

「塔、多くない?」

リオ

「見張り用」

白虎

「全部?」

リオ

「全部」

玄武

「何を見張る?」

リオ

「全部」


第三層。

空中。

浮いた回廊。

浮いた庭。

浮いた書庫。

浮いた台所。

盾男

「台所、浮いてるぞ」

リオ

「落ちてもいい」

盾男

「よくない」


第四層。

動く。

城が。

ゆっくり、向きを変える。

ヴァルディス

「……城、回った?」

アスラ

「回りましたね」

リオ

「死角なくした」

朱雀

「国が酔う」


第五層。

城壁に顔がある。

白虎

「……顔?」

城壁

『侵入者、発見』

全員

「喋った!?」

リオ

「自律警戒式」

アスラ

「表情、必要ですか?」

城壁

『不快指数、上昇』

ヴァルディス

「やめろ」


完成。

――超王城・ハウス――

・地上

・地下

・空中

・半分異界

・全部リオ趣味

沈黙。

風。

鳥、逃げる。

朱雀

「……ねぇ」

白虎

「うん」

玄武

「これ」

盾男

「王城というより」

アルケイオス

「ダンジョンだな」

リオ

「?」

リオ

「城だよ?」

全員

「違う」


その夜。

初来訪の役人。

門をくぐる。

城壁

『ようこそ』

役人

「ひっ!?」

「……」

床、動く。

役人

「ぎゃあああ!!」

別の床

『歓迎演出』


玉座の間。

玉座、浮いている。

リオ、座る。

ヴァルディス

「座り心地どうだ」

リオ

「慣れる」

アスラ

「国民、慣れません」

朱雀

「敵も来ないね」

白虎

「来たくない」

玄武

「城が最大の抑止力」

アルケイオス

「国は守られた」

盾男

「代償は?」

アルケイオス

「訪問者の精神」


翌朝。

噂。

「王城が睨んでくる」

「床が意見を言う」

「城が移動した」

ナチャイ

「……もう攻めるのやめよう」

他国

「近づかないでおこう」

龍(遅れて登場)

「うわ、引くわ」


リオ

「……ちょっとやりすぎたかな」

全員

「ちょっと?」

リオ

「でも」

リオ

「もう壊れない」

ヴァルディス

「壊せない」

アスラ

「入りたくない」

朱雀

「住みたくない」

白虎

「逃げたい」

玄武

「だが、国王の城だ」

夕日。

城、満足そうに光る。


第55話:戦争は金で死ぬ

軍事国家ナチャイ。

かつては

「兵は正義」

「砲は外交」

「戦争は日課」

そんな国だった。

・・だった。

・・・

会議室。

将軍、痩せている。

宰相、白髪が増えている。

財務官、無言。

地図の上には赤い印。

×

×

×

将軍

「……次の艦隊は?」

財務官

「ありません」

将軍

「徴兵は?」

宰相

「農村が空です」

将軍

「……弾薬は?」

沈黙。

財務官

「戦費が、尽きました」

重い言葉。

あのハウス侵攻。

魔導艦喪失。

精鋭兵消失。

さらに・・

・城が壊れない

・国王が出てこない

・代わりに壁が喋る

将軍

「……勝ち目は?」

誰も答えない。

宰相

「正直に言います」

宰相

「もう、戦争を続ける理由がない」

将軍

「……」

将軍

「理由は、あった」

将軍

「勝てると思っていた」

・・・

数日後。

ナチャイ各地で起こるもの。

・給金遅配

・兵の脱走

・地方軍の独立宣言

・港湾都市の反乱

噂は広がる。

「ハウスを攻めて国が死んだ」

「城に睨まれた」

「壁に人格があった」

兵士

「……もう、戦いたくねぇ」

軍隊は、心が折れると早い。

・・・

そこへ。

隣国――帝国。

外交使節団、到着。

金。

食糧。

治安維持部隊。

帝国使者

「援助、しましょう」

ナチャイ宰相

「条件は?」

帝国使者

「簡単です」

帝国使者

「吸収合併」

沈黙。

将軍

「……主権は?」

帝国使者

「名目上は」

将軍

「軍は?」

帝国使者

「解体です」

将軍

「……国旗は?」

帝国使者

「博物館に」

長い沈黙の後。

宰相、頷く。

宰相

「……国を残すより」

宰相

「人を残します」

こうして。

軍事国家ナチャイ、終焉。

戦争ではなく、会計で死んだ。

・・・

数週間後。

帝国領、拡大。

旧ナチャイ領、帝国色に塗り替えられる。

帝国上層部。

報告。

官僚

「ハウス王国周辺、安定しました」

貴族

「ナチャイが消えたのは好機だ」

皇帝

「……ハウス?」

官僚

「例の“城が意思を持つ国”です」

皇帝

「攻める価値は?」

官僚

「……ありません」

皇帝

「理由は?」

官僚

「費用対効果が、未知数すぎます」

皇帝

「……賢明だ」

地図から、侵攻矢印が消される。

・・・

一方、ハウス。

城。

リオ、玉座で書類を見ている。

朱雀

「ねぇ、聞いた?」

リオ

「なに?」

朱雀

「ナチャイ、無くなったって」

リオ

「……へぇ」

白虎

「帝国が吸収したらしいよ」

リオ

「ふーん」

玄武

「……あの」

玄武

「国王?」

リオ

「?」

玄武

「我々、何かしましたか?」

リオ

「城、建てただけ」

ヴァルディス

「城で戦争終わらせるな」

アスラ

「前例がありません」

盾男

「盾、要らなかったな」

・・・

その夜。

遠くの海。

沈んだ艦隊の残骸。

波に揺れる、誰も回収しない旗。

世界は理解する。

ハウスは、攻める国ではない。

攻めようとした国が、消える国だ。

城壁

『平和指数、上昇』

リオ

「……城、喋るな」


第56話:戦勝記念・国民鼓舞

朝。

号砲。

――ドォン。

国民

「!?」

島中に響く音。

掲示板。

《戦勝記念・国民鼓舞運動会 開催》

参加自由

観戦無料

優勝賞品:よくわからない名誉

リオ

「……誰が決めた?」

朱雀

「城」

リオ

「城かぁ……」

城壁

『士気向上プログラム起動』

リオ

「余計なことすんな!!」


第一競技

家押しリレー

説明。

・巨大な家型ブロックを

・四人一組で

・全力で押す

ルール

「倒したら失格」

白虎

「簡単だな」

――ドン。

家、砕ける。

失格。

白虎

「……?」

リオ

「加減しろ!!」


第二競技

神漬早食い選手権

参加者

・一般市民

・悪魔

・神(観光中)

レインボー(大宇宙神)

「うまい」

宗教国家カルタン出身者

「聖典より神漬のほうが信仰深いのでは……?」

僧侶、思想崩壊。

朱雀

「宗教壊すな」


第三競技

結界鬼ごっこ

・玄武が張った結界の中

・逃げる

・追う

・壁が増える

子供

「出口ないよ!」

玄武

「安心しろ」

玄武

「最初から無い」

リオ

「安心要素どこ!?」


第四競技

盾男 無限防御耐久

ルール

・盾男を殴り続ける

・盾が壊れたら終了

結果

→ 日没

観客

「まだ立ってる……」

盾男

「盾は、心です」

誰も勝てないため

競技ごと消滅。


最終競技

国王を見つけろ

ルール

・城内に紛れた国王を探す

リオ

「聞いてない!」

『擬態開始』

玉座

→ 偽物

→ 偽物

→ 偽物

本物リオ

→ 物置で体育座り。

子供

「いた!」

リオ

「やめろぉ!!」


結果

勝者

→ 該当者なし

理由

・ルールが意味不明

・神が混じってた

・城が勝手に動いた

だが。

国民

「楽しかった!」

「生きててよかった!」

「明日も働ける!」

リオ

「……まあ、いいか」


同時刻。

帝国。

地図。

皇帝

「軍事国家は消えた」

皇帝

「次は商業国家だ」

側近

「戦争では?」

皇帝

「違う」

皇帝

「市場で殺す」

・通貨操作

・物流遮断

・価格破壊

帝国

「武器は、金だ」

側近

「……ハウスは?」

皇帝

「触るな」

皇帝

「あそこは、運動会で国がまとまる」


夜。

花火。

意味不明競技の余韻。

城壁

『国民士気:最大』

リオ

「……戦争より効いてない?」

朱雀

「効いてるね」

白虎

「次は綱引きだな」

リオ

「やめろ!」


第57話:帝国、商業侵略開始

大陸中央。

商業国家 メルカディア。

・関税ゼロ

・通貨安定

・物流最強

・中立宣言

帝国が誇る

「理想の商業国家モデル」。

皇帝

「……ここを潰す」

側近

「帝国の成功例ですが」

皇帝

「だからだ」

「“成功しても守られない”と示す」


第一段階

過剰成功

帝国資本、流入。

・投資

・融資

・合弁会社

街は活気。

商人

「黄金期だ!」

「帝国と組めば未来は安泰!」

数字、右肩上がり。

誰も疑わない。


第二段階

効率化という名の首輪

条件追加。

・物流一元化

・決済システム統合

・帝国通貨併用

中央銀行

「便利ですね」

帝国使節

「当然です」

「“成功している国”には、必要でしょう?」


第三段階

価格の支配

帝国側。

倉庫。

局長

「流す」

大量放出。

・塩

・穀物

・鉄

相場崩壊。

地元生産者

「価格が……」

「作るほど赤字だ……」

帝国商人

「効率が悪いだけですよ?」


第四段階

信用の切断

ある日。

帝国

「融資、停止」

理由

「信用不安」

銀行

「……資金がない」

商人

「昨日まで好景気だったのに!?」


崩壊

連鎖。

・倒産

・失業

・暴動

帝国は、動かない。

皇帝

「予定通り」

側近

「軍は?」

皇帝

「要らん」

「数字で殺した」


終わり

数ヶ月後。

メルカディア。

国名、消滅。

帝国報告書。

《商業国家モデル:廃棄》

注釈「成功は、管理できなければ害」


余波

諸国。

恐怖。

「帝国と組むな」

「でも組まなければ生きられない」

噂。

「黄金の国ハウスは、帝国のやり方を“拒否した”らしい」

皇帝

「……だから厄介だ」


第58話:久々の新入り、冤罪で流されたエロい女

昼。

浜。

漂着物。

木箱。

樽。

看板。

「罪人」

リオ

「……嫌な予感しかしない」

箱、ガタッ。

中から。

女。

長い髪。

意味深な衣装。

目つき、余裕。

「……ここが、噂の黄金の国?」

リオ

「違う」

「あなたが国王?」

リオ

「違うって言ってるだろ」

「ふふ……運命ね」

リオ

「話聞け」


自己紹介

「私の名は――リュミナ」

ポーズ。

リュミナ

「冤罪で島流しにされた、可憐で無実でちょっと色っぽい女」

朱雀

「自己評価高いな」

白虎

「確かに色気はある」

玄武

「問題は“冤罪の内容”だ」


冤罪の理由

リオ

「……何やったの」

リュミナ

「王城の舞踏会で」

間。

リュミナ

「王妃のドレスより、露出が多かった」

沈黙。

リオ

「……それで?」

リュミナ

「“風紀を乱した罪”」

朱雀

「くだらなさが過去最高」

ヴァルディス

「帝国なら死刑だな」

リュミナ

「ひどい!」


勝手に妃宣言

リュミナ

「で」

一歩近づく。

リオ

「近い近い」

リュミナ

「国王でしょ?」

リオ

「一応」

リュミナ

「じゃあ私、妃ね」

リオ

「却下!!」

リュミナ

「もう言いふらしたわ」

外。

子供

「国王の奥さん来たー!」

リオ

「誰が許可した!!」


神々の反応

レインボー

「ほう……人間は面白い」

アルケイオス

「混沌が増えたな」

白虎

「城がまた変な判断しそうだ」

『妃用居室、準備開始』

リオ

「やめろぉぉ!!」


しかし

夜。

宴。

リュミナ、普通に馴染む。

・神漬を配る

・商人と談笑

・子供に人気

朱雀

「……仕事できるね」

玄武

「生存能力が高い」

ヴァルディス

「厄介なタイプだ」


リオ、降参気味

リオ

「……妃はダメだ」

リュミナ

「じゃあ?」

リオ

「とりあえず」

「居候」

リュミナ

「妃予備?」

リオ

「違う!!」

リュミナ

「ふふ、じゃあそれで」


夜。

リオ

「なんで俺、無人島で妃候補出来てんの」

白虎

「ヒゲ」

朱雀

「ヒゲだね」

リオ

「関係ない!!」













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