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第6話 「共同生活援助(グループホーム)と差別の壁」

「次のステップは、事業所(仮)からの卒業です」


霧の魔物討伐から数日後。悠斗は、ギルドから支払われた支援費をテーブルに広げながら、ガルドたちに告げた。


「卒業? 我々は、この隔離施設を出るのか?」ガルドが驚いた声を上げる。


「ええ。我々が提供するのは、一時的な支援ではない。地域に根差した『共同生活援助グループホーム』です」


悠斗は街の地図を指差した。


「この施設は街外れで、支援を必要とする人々にとってアクセスが悪すぎる。我々は、街の中心に近い空き家を借り上げ、支援が必要な人々が共同で生活し、地域に溶け込むための拠点を作る」


リーファは不安げに俯いた。


「でも……私たちが街中にいたら、皆、怖がります。私は呪い師、ジンは盲目、ガルドは傷痍軍人……」


「それが、この事業の最大の壁だ」


悠斗は真剣な表情で言った。


「我々が今から挑むのは、魔物ではなく、この世界に根付いた『差別』という名の障壁だ」


悠斗が目をつけたのは、かつて裕福な貴族が所有していた、中央市場にも近い大きな屋敷だった。立地は完璧だが、長く空き家だったため、異様なほど安価だった。


屋敷の購入手続きを進めようとすると、すぐに地元の名士たちが動き出した。


「待て! その屋敷に『不適合者』を集めるなど、断じて認めん!」


「我々の治安は乱れる! 貴様らは街の美観を損なうつもりか!」


街の代表者である商人組合の長が、悠斗に詰め寄った。彼らの顔には、明確な嫌悪感が浮かんでいる。


悠斗は微笑んだ。施設でクレーマー対応に慣れた、プロの笑顔だ。


「失礼ですが、あなた方は『不適合者』が何をできるか、まだ理解していないようだ」


悠斗は、背後に控えていたガルド、リーファ、ジンを前に出した。


「ガルドは今、ギルドの『緊急護衛要員』として契約しています。彼の『機能障害』は、定期的な身体介護により、むしろ健常者よりも強靭な身体へと進化しつつある」


ガルドは、悠斗の言葉に応えるように、床を踏み鳴らした。その振動は力強い。


「リーファは、ギルドで最も危険な『呪いの解析』を請け負っています。彼女の魔力は、【行動援護】により完璧に制御され、今や街の魔除けとなっている」


リーファは静かに手をかざし、部屋の隅にあるランプの火を、制御された微弱な魔力で一瞬だけ青く染めて見せた。


「そしてジンは、我々の『夜間警備担当』だ」


ジンが静かに矢筒から一本の矢を取り出す。


「この屋敷の周辺で不審な動きがあれば、目が見えずとも、私の【同行援護】が彼を世界最強の狙撃手にする。あなた方の夜間治安は、以前よりも格段に向上するでしょう」


悠斗は胸を張った。


「これは慈善事業ではない。我々は、彼らの能力を最大限に引き出し、地域社会に『貢献リターン』する『福祉サービス』を提供するのだ。彼らは、街の『負債』ではなく、『最高級の治安資源』になる」


商人組合の長は、悠斗の論理と、三人の放つ自信に満ちたオーラに圧倒された。彼らが以前の怯えた「不適合者」ではないことは明らかだ。


「しかし……共同生活とは」


「ご心配なく。我々の共同生活には、『個別支援計画』に基づいて『ルール』が存在します」


悠斗は、具体的な数字とルールを提示した。


「起床時間、門限、食事、掃除の役割分担。全てが決められた『規範ノーム』に基づき運営されます。それは、あなた方の生活を乱すどころか、彼らが模範的な市民になるための『訓練リハビリ』の場となる」


悠斗の、「差別を否定せず、経済合理性と秩序でねじ伏せる」交渉術は完璧だった。


数日後、悠斗は屋敷の鍵を手に入れた。


「やりましたね、悠斗! これで、私たちの新しい家だ!」リーファが歓声を上げた。


「ここはただの家じゃない、リーファ」悠斗は言った。


「ここが、この異世界初の、『共同生活援助・悠悠自適ゆうゆうじてき』の拠点だ。ここから、世界を変えていく」


悠斗の目に、新たな支援計画のフローチャートが煌めいていた。

どもー、作者です!グループホーム設立回、いかがでしたか?


今回のクライマックスは、魔物との戦闘ではなく、「差別」という名の住民との交渉でした!こういうのが書きたかったんですよ!


悠斗くんの交渉術、さすが元介護福祉士ですね。感情論ではなく、「うちの利用者は最高級の治安資源になる」という経済合理性と、ルール(個別支援計画)という名の秩序で、見事に差別主義者を黙らせました。


「共同生活援助」という言葉が、異世界で「最強の治安向上システム」として機能しているのが、書いてて最高に楽しかったです!


これで「悠悠自適」事業所の拠点も確保。次回以降は、支援の規模が拡大し、このグループホームから新たな仲間が加わったり、あるいは、差別する側だった住民が支援を求めてきたり、といった展開も面白そうです。


ご感想、お待ちしてます!また次話で会いましょう!

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