第5話 「三位一体のケアと社会資源の活用」
「さて、メンバーも揃ったところで、実践だ」
悠斗は、事業所の共有スペースで、ガルド、リーファ、ジンを前に立たせた。
「今日の依頼は、ギルド経由の『特別支援依頼』。街の東側、外れの森で最近発生している『霧の魔物』の討伐だ」
ガルドが険しい顔をした。
「霧の魔物……厄介だ。実体を持たず、幻覚を見せる。視覚も物理攻撃も効きにくい」
「通常の冒険者では、幻覚に惑わされて同士討ちになる危険が高い」ジンが、光を失った瞳の奥で分析する。
悠斗は黒板に大きな図を書き始めた。これは、【個別支援計画】に基づいた、今回の討伐における三人の「支援・連携計画」だ。
「厄介な魔物だが、逆に言えば、我々の『支援の特性』を最大限に活かせる相手だ」
霧の森。その名の通り、分厚い白い霧が立ち込め、方向感覚を完全に奪う。
「ちくしょう、前が全く見えねぇ! 幻覚のせいで、リーファが敵に見える!」ガルドが剣を構え、警戒する。
「落ち着いて、ガルド。私の顔を見て。あなたは私を信頼し、【身体介護】を受け入れた。その信頼こそが、幻覚への『心理的バリア』になる」
悠斗はガルドの肩に手を置き、【身体介護】スキルを発動させ、彼の体幹と精神を安定させた。
「俺は動かない。『固定された社会資源』として、この場に留まる」
悠斗はそう宣言し、森の中央で、三人を囲むように目印の布を結び始めた。これが、彼らの連携における「安全地帯」となる。
「リーファ、【行動援護】だ。君の感情は、今、極限まで冷静だ。魔力暴走の心配はない。魔物を『特定』して、『閉じ込める』作業に集中しろ」
リーファは頷いた。彼女は手をかざし、周囲の霧に特殊な魔力を流し込んだ。魔力は、幻覚を作り出す霧の中に隠れた実体――霧の魔物の「感情の波」を捉える。
「捕捉しました! 正面、8メートルに一体! 幻覚を作り出す『興奮の波動』が強いです!」リーファが冷静に報告する。
「ジン、聞こえたな。リーファの波動の報告と、俺の【同行援護】の座標を照合しろ」悠斗が指示を出す。
ジンは静かに弓を引き絞った。目は見えない。しかし、彼の耳には、リーファの「感情の波動」が発する微かな音と、悠斗のナビゲーションが完全に同期して届いていた。
右前方、30度! 霧の揺らぎが収束する地点!
ジンが放った矢は、正確に霧の魔物の「核」を貫いた。
「ギィィヤァァァ!」
甲高い悲鳴と共に、魔物は霧を散らし、消滅した。
「やった……! ジン、見事だ!」ガルドが感嘆の声を上げる。
「見える……。俺には、音と波動の形が見える……」ジンは興奮気味に言った。
その後も、彼らの連携は完璧だった。
悠斗は、常にガルドとリーファの『支援員』として、彼らの「残存能力」をフル活用する指示を出す。
ガルドは、剣で周囲を払いながら、『移動支援』としてリーファとジンの動線を確保。リーファは、魔物の波動を感知し、『居宅介護』のように安全な「領域」を確保する。そしてジンが、悠斗の【同行援護】を頼りに、百発百中の精密射撃で核を撃ち抜いていく。
全ての魔物を討伐し終えた後、悠斗は満足そうに笑った。
「戦闘終了。お疲れ様でした。今回のMVPは、『三人の連携』そのものだ。それぞれが自分の役割を果たし、『社会資源(スキルと能力)』を最大限に活用できた。完璧な個別支援計画の達成だ」
ガルド、リーファ、ジンは、自分たちが単なる「不適合者」ではなく、「最強の専門職集団」であることを実感した。彼らは悠斗の存在によって、初めて自分たちの『価値』を見出せたのだ。
彼らの支援事業所の名声は、この討伐を境に、街中に広がり始めることとなる。
どもー、作者です!今回は実戦回でしたね!
『霧の魔物』という厄介な敵を用意しましたが、案の定、悠斗くんの介護チートの前では敵じゃありませんでした。
だって考えてみてください。幻覚でパニックになる敵に対して、【身体介護】と【行動援護】で冷静沈着なバリアを張って、【同行援護】で精密誘導するんですよ? 介護職員として訓練されたプロのチームワークです。最強です。
今回のポイントは、悠斗が戦わない『固定された社会資源』として振る舞ったところ。これは現実の支援の考え方ですね。支援員は、利用者が自立するための『道具』であり『環境』であるべき、と。
これで彼らの実力は証明されました。次回以降は、ギルドの闇や、この世界が抱える「差別」といった、もっと大きな問題に『制度設計』と『支援』で挑んでいく予定です。
また次話で会いましょう!感想ください!




