第4話 「同行援護(ガイド・ヘルプ)と盲目の弓使い」
ギルドとの契約を終えた悠斗は、事業所(仮)として借りた施設の一室で、ガルドとリーファに新しい方針を伝えていた。
「よし、ギルドから毎月安定した支援費が入ることになった。当面の目標は『仲間を増やすこと』だ」
「新しい仲間、ですか?」リーファが尋ねた。彼女の瞳は、以前よりずっと穏やかで澄んでいる。
「ああ。ターゲットは、元・冒険者パーティ『風の牙』のリーダーだった弓使い、ジンだ」
ガルドが顔を曇らせた。
「ジンか……彼は『風の牙』の解散後、姿を消したと聞いている。ダンジョンでの呪いで視力を失い、もう弓は引けないと」
「その通り。だが、彼こそ我々の支援事業所にとって必要な人材だ」
悠斗は立ち上がり、扉に向かった。
「俺のスキルリストに、まだ使っていない項目がある。『同行援護』。それを彼に適用する」
ジンの隠れ家は、街外れの廃墟同然の小屋だった。
悠斗が扉を開けると、中は埃っぽく、強弓の部品が壁に乱雑に掛けられている。部屋の隅で、ジンは膝を抱え、ただ座り込んでいた。鋭かったはずの瞳は、光を失っている。
「ジンさん、支援に来ました」悠斗は言った。
ジンは反応しなかった。ただ、弓を握る手に力がこもった。
「帰れ! 俺に施しはいらん! 弓も引けない、何も見えない俺に、何ができるというんだ!」
「その弓は、まだ引けますよ」
悠斗の言葉に、ジンは顔を上げた。
「大嘘つきめ! 敵の位置も、風の流れも、全ては目から得ていた! 盲目の俺に弓が引けるはずがない!」
悠斗は静かに、ジンの隣に座った。
「確かに、視覚は失われた。しかし、あなたの聴覚、触覚、空間認知能力は、健常者の十倍鋭くなっている。ただ、その情報を使う『ガイド(誘導)』がないだけだ」
悠斗はジンの肩に手を置いた。
【対象:弓使いジン(元リーダー)】 【状態:視覚機能障害(LV5・重度)】 【潜在能力:聴覚(A+)、空間認知(S)】
悠斗は、この世界に来て初めて【同行援護】スキルを発動させた。
「【同行援護・超感覚誘導】!」
スキルは、悠斗の身体能力を借り、ジンの耳や肌に届く全ての情報を、戦闘に特化した形で「翻訳」し、脳へ直接フィードバックする。
「目を閉じてください、ジンさん」
悠斗は指示し、外から小さな石を投げ込ませた。
コロン
「……今、音を聞いたな。その音の発生源の、座標と速度をイメージしろ」
「座標……? 速度……? 何を言っているんだ……?」
「大丈夫。俺が教えてやる。右斜め前、仰角20度、速度3メートル、風速は左から1メートル、着弾予測時間1.5秒」
悠斗は、正確無比な情報を淡々とジンに伝達した。それはまるで、彼の脳内に高性能なレーダーを設置し、専門用語で読み上げているかのようだった。
「なんだ、これは……! 音が、空間の座標として脳に流れ込んでくる……!?」
ジンは瞬時に立ち上がり、壁に掛けてあった強弓を掴んだ。
「その座標に、打て!」悠斗が叫ぶ。
ジンは反射的に弓を引き絞った。目が見えないはずの彼が放った矢は、小屋の外の地面に落ちていた小さな石ころの真横を正確に通過した。惜しくも外れたが、驚異的な精度だ。
「馬鹿な……! 見えない、見えないのに……!」
「惜しい! 座標は完璧だったが、離れる際の風圧によるブレを考慮できていなかった。そこは修正が必要です」悠斗は淡々と指摘する。
この支援は、ジンが完全に視力を失ったことで覚醒した「超感覚」を、悠斗の【同行援護】が戦闘用のナビゲーションシステムとして最適化した結果だった。
「これは、治療じゃない。貴方の残された能力を、前より遥かに高める『支援』だ」
ジンは震える手で弓をゆっくりと下ろした。その顔は、絶望ではなく、久しく忘れていた高揚感に満ちていた。
「悠斗……。貴様、本当に何者だ……。俺は、もう一度、戦えるのか……?」
「もちろんですよ、ジンさん。あなたには『聴覚支援の専門家』として、うちの支援事業所に入ってもらいます。最前線で、音と風を『見て』、敵を殲滅してもらう」
こうして、身体障害のガルド、精神障害のリーファ、そして視覚障害のジンという、三種の最強チートメンバーが揃ったのだった。
はいどうもー、作者です。4話も一気に読んでくれてアリガトー!
今回は『同行援護』スキル回でした。やっぱり「見えないけど最強」って、少年漫画の定番ですよね!元介護福祉士の悠斗くんの「超感覚誘導」、どうでしたか?
単なる杖代わりじゃなくて、ジンの聴覚と空間認識能力を戦闘に特化したレーダーに変えちゃうっていう、ガチのチート能力。あれはもう、同行援護じゃなくて「精密射撃支援サービス」です。
これで、ガルド(身体介護)、リーファ(行動援護)、ジン(同行援護)と、支援事業所の初期メンバーが揃いました。
ガルド: 前衛、身体を張った防御(バリアフリー化)
リーファ: 中衛、感情の制御された強力魔法
ジン: 後衛、精密な遠距離狙撃
完璧なパーティバランスですね。全部、介護スキルで成り立ってるのが最高に面白いです。
さて、次回は、この三人を率いて、本格的に街の魔物退治や、ギルドの闇を暴くような展開にしようかなと思ってます。
これからも悠斗くんたちの活躍と、僕の適当なノリにお付き合いいただけると嬉しいです!




